このトレード何!? 実は主役はマサリン。ペリカンズがホーキンスまで放出した理由

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9月8日、ニューオーリンズ・ペリカンズとメンフィス・グリズリーズの間で、4選手が動くトレードが成立しました。ペリカンズはジョーダン・ホーキンス、マイカ・ピービー、将来の2巡目指名権、さらに将来の2巡目指名権スワップをグリズリーズへ放出。代わりにAJ・ジョンソンとタージ・ギブソンを獲得しています。

こうやって交換内容だけを見ると、ちょっと不思議じゃないでしょうか。2023年ドラフト14位のホーキンスに若手のピービー、さらに2巡目指名権とスワップまで付けて、獲得したのがAJ・ジョンソンと41歳のタージ・ギブソンです。

ペリカンズ、何してるの?笑

ただ、このトレードは動いた選手だけを見ていると意味が分かりません。実は本当の主役は、今回のトレードに名前すら入っていないベネディクト・マサリンです。今回はこの一見すると謎にも見えるトレードから、NBAではなぜ「選手と選手の交換」だけを見ていてもトレードを理解できないのか考えてみます。

そもそもの始まりはマサリンとの2年1600万ドル契約

ペリカンズは8月26日、ベネディクト・マサリンと2年1600万ドルの契約で合意しました。契約にはプレイヤーオプションも含まれており、マサリンは昨季54試合に出場して平均17.6得点、5.4リバウンド、2.4アシストを記録しています。

個人的には、年平均800万ドルでマサリンなら普通に面白い補強だと思います。自分でシュートまで持っていけるスコアラーで、まだ20代半ば。ベンチから平均17点前後を期待できる選手をこの金額で加えられるのであれば、戦力的にはかなり分かりやすい補強です。

ところが、NBAでは「契約したい選手がいる、お金も払える、じゃあ契約しよう」と簡単にはいきません。ここでペリカンズの前に立ちはだかったのが、現在のNBAでチーム作りをややこしくしているファーストエプロンでした。

マサリンを取るにはサラリーを減らす必要があった

マサリンとの契約によって、ペリカンズはファーストエプロンでハードキャップされます。かなり簡単に言えば、「今季はこの金額より上までチームサラリーを増やしてはいけません」という絶対的な上限が設定されるということです。

マサリンとは契約したい。でも、そのまま契約するとファーストエプロンとの距離が近すぎて、その後のロスター運用がかなり苦しくなる。そこでペリカンズは、先に既存選手のサラリーを整理して余裕を作る必要がありました。

今回のトレードによって、ペリカンズはファーストエプロンまで約950万ドルの余裕を確保したと報じられています。つまり今回の目的は、「ホーキンスをAJ・ジョンソンに交換したかった」でも、「タージ・ギブソンがどうしても欲しかった」でもありません。

マサリンを取るためのスペースを作りたかった。

これが一番重要なポイントです。

タージ・ギブソンが欲しかったわけではない。笑

特に分かりやすいのがタージ・ギブソンです。41歳のギブソンはペリカンズ加入後にウェイブされる見込みとされており、一方のAJ・ジョンソンはトレーニングキャンプに参加してロスター入りを争うと見られています。

つまり、「経験豊富なギブソンを加えてロッカールームを引き締めるぞ!」という補強ではありません。ギブソンについては、かなりサラリー調整の意味合いが強い取引です。

これがNBAのトレードの面白いところでもあります。名前だけ見て「ホーキンスとギブソンならどっちが上?」と考えても、そもそも両チームがしている計算が全然違うので答えが出ません。

それでもホーキンスまで出す必要あった?

個人的に一番気になったのはここです。ホーキンスは2023年ドラフト14位。昨季は51試合で平均5.1得点、3P成功率34.8%、平均出場時間も13.6分まで減っており、ニューオーリンズでの立場がかなり小さくなっていました。

それでもまだ若く、何よりドラフト14位で獲得したシューターです。ルーキーシーズンには1試合34得点を記録したこともあり、NBAレベルでシュート力を見せた時期もありました。そんな選手を放出するだけでなく、さらに2巡目指名権とスワップまで付けるわけです。

正直、ちょっともったいなく見えます。ただペリカンズからすれば、ホーキンスが将来の中心選手になる可能性と、今マサリンを加えるメリットを比較した結果なのでしょう。言い換えれば、ペリカンズはホーキンスよりマサリンを明確に選んだとも考えられます。

逆から見るとグリズリーズがかなりうまい

そして今回のトレード、グリズリーズ側から見ると全然違う景色になります。メンフィスが出したのはAJ・ジョンソンとタージ・ギブソン。それに対してホーキンス、ピービー、2巡目指名権、さらに指名権スワップまで受け取っています。

なぜこんなことができるのか。大きな理由の一つが、グリズリーズにはサラリーを受け入れられる余裕があったからです。

何かスター選手を差し出したわけではありません。主力を犠牲にしたわけでもありません。ペリカンズが減らしたいサラリーを引き受けられるスペースがあった。その対価として若手とドラフト資産をもらったわけです。

これ、結構すごいですよね。NBAでは「お金を使っていないこと」「サラリーに余裕があること」自体が、トレード市場で売れる資産になります。

NBA版「空きスペース貸します」

僕はこういうトレードを見るたびに、NBA版の倉庫貸しみたいだなと思います。笑

「うち、サラリー空いてますよ」「じゃあこの選手を引き取ってください」「いいですよ。その代わり指名権ください」。もちろん実際のルールはもっと複雑ですが、構造だけ見れば結構これに近いです。

だから再建中のチームが、必ずしもFA市場で空いているキャップスペースを全部使う必要はありません。あえて余白を残しておけば、シーズン中やオフシーズンに他チームのサラリーダンプを手伝い、その対価としてドラフト指名権や若手を回収できます。

キャップスペースを選手獲得に使うのではなく、キャップスペースそのものを売る。

これもNBAで再建を進める重要な方法の一つです。

ホーキンスが復活したらグリズリーズはかなりおいしい

もちろん今回獲得した選手全員が、そのままメンフィスの将来を担うとは限りません。今回の取引後はロスター整理も必要になるため、開幕までに競争があります。

ただ、その中でもホーキンスは面白い存在です。元ドラフト14位で、まだ若く、NBAで通用する可能性のあるシュート力も持っています。ニューオーリンズでは役割を失いましたが、環境が変わって出場時間が増えれば評価が変わる可能性もあります。

もしホーキンスがメンフィスで復活したら、グリズリーズとしてはかなりおいしい。サラリーを受け入れただけで元1巡目指名選手と追加のドラフト資産を手に入れ、その選手まで戦力になれば大成功です。

ペリカンズはそれだけマサリンを評価している

一方でペリカンズ側を単純に「損した」と決めつけるのも違うと思います。今回の動きから分かるのは、それだけマサリンを戦力として評価しているということです。

マサリンは自分でリングへアタックでき、フリースローも獲得できるスコアラーです。3Pだけを待つタイプではなく、ボールを渡せば自分で得点まで持っていける。ザイオン・ウィリアムソンを中心に戦うペリカンズにとって、オフェンスが停滞した時間に自力で点を取れる選手はかなり使いやすいはずです。

しかも2年1600万ドル。もしマサリンが平均15〜18得点程度を維持できるなら、契約自体が新たなトレード資産になる可能性すらあります。ペリカンズは今回、ホーキンスの将来性よりも「今のマサリン」の価値を取ったのでしょう。

「トレードに入っていない選手」が本当の主役

今回のトレードで一番面白いのは、やっぱりここだと思います。普通トレードを見ると、「誰がどこへ行ったのか」「どちらが良い選手を獲得したのか」を最初に考えます。

でも今回、本当に重要なのはマサリンとの契約を成立させ、その後も動けるサラリーの余裕を作ることでした。マサリンはグリズリーズへ行ったわけでもなければ、今回のトレード対象になったわけでもありません。それでも、このトレードを発生させた最大の理由の一つになっています。

トレードに入っていない選手が、実はトレードの主役。

NBAのサラリーキャップを追っていると、こういう一見意味不明な取引が急に面白くなります。

選手だけ見たら「何これ?」。数字を見るとちゃんと意味がある

ホーキンス、ピービー、2巡目指名権、指名権スワップを出して、AJ・ジョンソンと41歳のギブソンを獲得。交換された名前と資産だけを並べれば、最初に「このトレード何!?」と思うのは普通だと思います。

でもサラリーまで入れて見ると、両チームの狙いはかなり分かりやすい。ペリカンズはマサリンを加えるためにロスターとサラリーを整理し、グリズリーズは余っていたキャップスペースを利用して若手とドラフト資産を増やしました。

どちらが勝ったかは数年後にならないと分かりません。ただ、こういうトレードを理解できるようになると、スター選手の大型トレードだけではなく、NBAの地味な取引までめちゃくちゃ面白くなってきます。

そして何より、

41歳のタージ・ギブソンをどうしても欲しくて、ホーキンスと指名権まで出したわけじゃなくて安心しました。笑

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