ラッセル・ウェストブルックが現役を引退して、「ああ、これからは解説者とかコーチとかになるのかな」と思っていたら、そんな普通のセカンドキャリアではありませんでした。
2026年9月2日、新しいバスケットボールリーグ「Project B」は、ウェストブルックが共同創業者(Co-Founder)兼Chief Strategy Officerに就任したことを発表しました。しかも名前だけ貸すアンバサダー的な立場ではなく、Project Bの株式を持ち、取締役会にも参加し、リーグの戦略や長期的な方向性にも関わっていくそうです。
現役引退を発表したのはまだ先月です。
引退したと思ったら、もうリーグを作る側にいる。
現役時代から何かと普通ではなかったウェストブルックですが、引退後まで普通じゃないですね。笑
ただ、このProject B。調べてみると「元NBAスターが新リーグの経営陣に入りました」で終わる話でもなさそうです。
選手を単なる「雇われる側」として扱うのではなく、選手自身がリーグの株主になるという、なかなか面白い仕組みを掲げています。今回はウェストブルックが何をするのか、そもそもProject Bとは何なのか、そしてこのリーグがバスケットボール界でどんな存在になり得るのかを見ていきたいと思います。
ウェストブルック、引退直後にいきなり経営側へ
まず今回の発表で驚いたのが、ウェストブルックの肩書きの多さです。
共同創業者、Chief Strategy Officer、株主、そして取締役。
いや、思っていたよりガッツリ働くじゃん。笑
Project Bの発表によれば、ウェストブルックはバスケットボール戦略や長期的なビジョンの策定に加えて、戦略的パートナーシップなどにも関わっていく予定です。つまり「ラッセル・ウェストブルックという有名人の名前を借りました」というだけではなく、少なくとも発表されている役割を見る限り、運営側としてかなり深く入ることになります。
ウェストブルックは2017年のMVP、9度のオールスター選出、2度の得点王などを経験し、通算209回のトリプルダブルというNBA記録を残して現役を引退しました。あれだけ全力でバスケットボールをやり続けた選手なので、しばらくゆっくりするのかなとも思っていました。
全然そんなことなかったですね。
そもそも「Project B」って何?
では、ウェストブルックが参加するProject Bとは何なのか。
Project Bは2027年に本格始動を予定している新しいグローバルバスケットボールプロジェクトです。一般的なプロリーグのように特定の都市にチームを置いてホーム&アウェーで長いレギュラーシーズンを戦うというより、世界各地の都市を巡回して試合を開催していく構想になっています。
報道ではアジア、ヨーロッパ、南米などでの開催が予定されており、Project B自身も「Coming in 2027」として世界規模のサーキットを打ち出しています。
女子部門ではすでにネカ・オグウミケ、ジョンケル・ジョーンズ、アリッサ・トーマス、ジュエル・ロイド、ケルシー・ミッチェルら実績のある選手たちの参加が報じられています。
そしてProject Bは女子だけで終わる予定ではありません。
男子部門の設立も進めていて、元NBA選手でホークスGMも務めたランドリー・フィールズが男子部門を担当しています。ウェストブルック自身が選手としてProject Bでプレーするという情報は現時点ではありませんが、男子バスケまで本格的に展開するのであれば、NBAファンにとっても無関係なリーグではなくなってきそうです。
一番面白いのは「選手もオーナー側」という仕組み
個人的にProject Bを調べていて一番面白いと思ったのが、ここです。
Project Bの公式サイトには、かなりシンプルにこう書かれています。
「Players are owners.」
参加する選手には株式を持たせ、リーグが将来的に生み出す価値にも参加してもらうという考え方です。
これ、NBAとは結構違います。
もちろんNBA選手はとんでもない年俸をもらっています。スーパースターになれば年間5000万ドル、6000万ドルという世界なので、「選手が搾取されている」なんて単純な話ではありません。
ただ、NBAというリーグや各フランチャイズそのものの資産価値が上がったとき、その恩恵を直接受けるのは基本的にはチームオーナーです。
選手は契約によって報酬をもらう側。
Project Bは、そこを少し変えようとしているわけです。
ウェストブルック自身も今回の発表で、選手を価値を生み出す中心的な存在としてだけでなく、株主や意思決定者として扱うという考え方を示しています。
バスケットボールの主役は選手なのだから、リーグが大きくなったとき、その価値そのものを選手にも持たせよう。
考え方としてはかなり分かりやすいです。
試合数を増やしまくる現在のスポーツとは逆方向?
Project Bの公式サイトを見ていると、もう一つ気になった言葉があります。
「Impact over Inventory」
つまり、とにかく大量の試合を供給するのではなく、一つ一つのイベントの価値を高めようという考え方です。
さらに選手の健康面についても、バック・トゥ・バックを減らし、移動を少なくし、より賢いスケジュールを組むことを掲げています。
これ、今のNBAを見ていると結構面白いですよね。
NBAでは82試合制の是非がずっと議論され、ロードマネジメントも問題になっています。それでもリーグとしては試合数を大幅に減らす方向にはなかなか動きません。
一方のProject Bは最初から、
「試合を大量にやることを前提にしない」
という方向から設計している。
もちろんNBAとProject Bでは規模も歴史もビジネスモデルも全然違うので単純比較はできません。ただ、新しくゼロからリーグを作れるからこそ、既存リーグでは難しいことを試せるのは面白いと思います。
そう考えるとウェストブルックなのも妙に納得する
そして、このリーグの共同創業者としてウェストブルックが入ったことも、考えてみると意外としっくりきます。
ウェストブルックって、現役時代からかなり「自分のスタイル」を持っていた選手でした。
プレースタイルもそうですし、ファッションもそう。周囲から何を言われても、自分のやり方を簡単には変えない選手という印象がかなり強いです。
もちろん、それが良い方向に出たときもあれば、「そこはもう少し変えてくれよ」と思ったこともありましたが。笑
そんな選手が引退して、既存のNBAの中でコーチになるでもなく、テレビ局で解説者になるでもなく、
「じゃあ新しいリーグを作る側に行きます」
というのは、なんとなくウェストブルックらしい気もします。
しかもProject Bが掲げているのは、選手自身がオーナー側にも入るという考え方です。
自分のキャリアや価値を自分でコントロールすることを大事にしてきたウェストブルックとの相性は良さそうです。
Project BはNBAのライバルになるのか?
ここまで聞くと、「じゃあProject BはNBAのライバルになるの?」と思うかもしれません。
現時点では、さすがにそこまで考えるのは早いと思います。
NBAは世界最高峰の選手が集まり、巨大な放映権契約を持ち、何十年も積み上げてきたブランドがあります。新しいリーグが突然そこに並ぶなんて簡単な話ではありません。
ただ、個人的にはProject Bが成功するためにNBAを倒す必要もないと思っています。
むしろ面白いのは、
「NBA以外でもトップレベルのバスケットボール選手が大きく稼げる場所を作れるか」
というところです。
Project Bは世界各地を巡り、デジタルやソーシャルを重視し、選手にも株式を持たせるという、既存リーグとは違う方向からスポーツビジネスを作ろうとしています。公式サイトでも「Players are owners」「Built for every screen」と明確に打ち出しています。
もしこれが成功すれば、将来の選手にとって選択肢が一つ増えるかもしれません。
NBAに入る。
海外リーグへ行く。
そして、Project Bのような新しいリーグに参加する。
そういう世界になれば、バスケットボール全体としては結構面白いですよね。

まとめ
ウェストブルックのProject B加入というニュースを最初に見たときは、「引退したばっかりなのに、もう次の仕事決まったのか」くらいに思っていました。
でも調べてみると、想像していたより面白い話でした。
ウェストブルックは単なる広告塔ではなく、共同創業者兼Chief Strategy Officerとして株式を持ち、取締役にも入り、リーグの戦略に関わっていきます。そしてProject B自体も、世界巡回型の開催、選手へのエクイティ、試合数よりイベント価値を重視する考え方など、既存のプロリーグとは少し違うことをやろうとしています。
もちろん、本当に成功するかはまだ分かりません。
新しいスポーツリーグを立ち上げて、何年も継続させるのは簡単ではないでしょう。
それでも、現役時代は誰よりも勢いよくリングへ突っ込んでいったウェストブルックが、引退した途端に今度は新しいリーグへ突っ込んでいく。
最後まで普通のキャリアでは終わらない人ですね。笑


