NBAがまたタンキング対策に動きました。2027年ドラフトから新しい3-2-1 Lotteryという制度が始まります。簡単に言うと、今まで以上にドラフト上位指名権の確率を平らにして、負ければ負けるほど得をする状況をなくそうという制度です。NBAがタンキングを嫌っているのは今に始まった話ではありませんが、今回は結構思い切った変更になっています。
最初にルールを見た時、自分もなるほどね、これなら露骨に負けに行く意味は減るなと思いました。でも数字をちゃんと見ると、ちょっと待ってとなったんですよね。
新制度では、リーグで最も成績が悪い3チームの1位指名権獲得確率が5.4%になります。
一方で、4番目から10番目に成績が悪いチームは8.1%。
え?
最下位のチームより、ちょっと強いチームの方が1位指名権を引きやすいの?
そういう制度です。
タンキングを止めたい気持ちはめちゃくちゃ分かります。でもこれ、本当に一番弱いチームまで罰する必要あるんでしょうか。
まず新しい3-2-1 Lotteryが結構すごい
2026年までのNBAドラフトロッタリーでは、プレイオフを逃した14チームが参加していました。そして最下位3チームはそれぞれ14%で1位指名権を獲得できる仕組み。2019年にすでに一度確率を平らにしていて、それ以前の最下位チーム25%からかなり下げています。
それでもNBAはまだ足りないと判断しました。2027年からロッタリー参加チームは16チームへ拡大され、プレイイン敗退チームまで抽選に参加します。そしてチームの成績に応じて3個、2個、1個のロッタリーボールを持つので3-2-1 Lotteryという名前になっています。
ここまではまあ分かります。
面白いのはここからです。
普通なら一番弱いチームが3個のボールをもらうと思うじゃないですか。でも逆です。最下位3チームはDraft Relegationという扱いになり、本来3個もらえるはずのボールを1個没収されて2個になります。その結果、最下位3チームの1位指名権確率は5.4%。4〜10番目に悪いチームは3個持っているので8.1%です。
負けすぎたらドラフトで不利になります。
いや、NBA本気だな笑。
なんでここまでやるのかは分かる
NBAがここまで強い制度を入れた理由もかなり明確です。
アダム・シルバーは2025-26シーズンについて、多い時には8〜10チームほどがドラフト順位を意識して負ける方向へ動いているように見えたと話しています。リーグ側としては、シーズン後半に勝つことより負けることに価値が出てしまう状況をかなり問題視していたようです。
実際2026年2月にはユタ・ジャズが選手起用をめぐって50万ドル、インディアナ・ペイサーズも10万ドルの罰金を科されています。NBAはドラフト順位を優先して勝つための選手を出さない行為はリーグの競争性を損なうとして、かなり強い声明まで出しました。
ファン側からしても、これは分かります。
シーズン終盤、プレイオフ争いしているチーム同士が必死で戦っている横で、別のチームは今日負けたから順位上がったぞ、みたいになっている。しかもファンはお金を払って会場へ行っているわけです。
シルバーが言うように、ファンが負けた方が将来のためになると理解していても、だからと言って負ける試合にお金を払って見に来てくださいは無理があります。
ここはNBAが制度を変えたくなるのも当然だと思います。
でも本当に弱いチームはどうするの?
ただ、自分が一番引っかかるのはここです。
タンキングして最下位になったチームと、普通に弱くて最下位になったチームをどうやって区別するのか。
区別できないですよね。
NBAには本当に弱いチームも存在します。スターが怪我をした。FAで主力が抜けた。若手中心でまだ勝てない。トレードで再建を始めた。こういう理由で普通に20勝前後になるチームは毎年あります。
そのチームに対して、お前ら負けすぎだから1位指名権の確率下げるね、というのはちょっとかわいそうじゃない?と思うんですよね。
2026年で言えばワシントンは17勝65敗でした。従来制度では14%の確率を持ち、実際に1位指名権を獲得しています。新制度なら同じような成績でも5.4%です。
もちろんワシントンがどういう意図でその成績になったかという話とは別です。
ただ制度として、リーグで最も弱いチームがスター候補を獲得して再建するというドラフト本来の役割は確実に弱くなります。
NBAドラフトって、そもそも弱いチームに良い新人を与えて戦力差を縮めるための仕組みでもありますよね。
タンキング対策を強くしすぎて、その部分まで壊して大丈夫なんでしょうか。
しかも4〜10番目が8.1%って結構高い
ここが一番面白いところかもしれません。
新制度では最下位3チームが5.4%なのに対して、4〜10番目に悪いチームは全部8.1%です。さらにトップ3指名権の確率では、最下位3チームが16%、4〜10番目が24%。トップ5なら28%と39%です。普通に4〜10番目の方がかなり良い。
つまりシーズン終盤、最下位争いしているチームにとっては勝った方がドラフト確率まで上がる可能性があります。
これはNBAの狙い通りです。
今までなら20勝のチームと22勝のチームが残り5試合を迎えた時、どっちも勝ちたくないみたいな変な状況が起こり得た。でもこれからは最下位3チームを抜けたいので、むしろ勝ちにいくインセンティブが生まれます。
考え方としてはかなり面白い。
でも今度は別の境目ができますよね。
10番目と11番目。
プレイイン9位と10位。
7-8プレイイン敗退。
制度にラインを引く以上、どこかには必ず差ができます。
結局、タンキングの場所が移動するだけにならない?という疑問も少しあります。
プレイイン敗退チームまで1位を取れるのもすごい
今回からロッタリーは16チームになります。
プレイインの9位、10位シードには2個のボールが与えられ、1位指名権の確率は5.4%。7位対8位のプレイインで負けたチームにも1個のボールがあり、2.7%で1位指名権を引けます。
これ結構すごくないですか?
82試合戦ってプレイインに出る。
下手したら勝率5割近い。
プレイオフまであと1勝だった。
でもドラフト1位を引く可能性もある。
一方で15勝とか20勝しかできなかったチームは5.4%。
場合によっては、そこそこ強いチームにウェンバンヤマ級の選手が入る可能性があります。
それはそれでNBA的には面白いかもしれません笑。
プレイオフぎりぎりの若いチームが翌年ドラフト1位を引いて一気にコンテンダーになる。それならリーグ全体の競争力は上がるでしょう。
ただ弱小チームのファンからしたらたまらないですよね。
1年間20勝しかできませんでした。
ロッタリーでも外れました。
その横で40勝近いチームが1位指名権を取ります。
いや俺らどうやって強くなるん?ってなる笑。
連続で上位指名できないルールまで入った
今回の改革はロッタリー確率だけじゃありません。
同じチームが2年連続で1位指名権を持つことは禁止。さらに3年連続でトップ5指名権を持つこともできなくなります。これはそのチーム自身の指名権に適用され、すでに他チームへトレードしている場合でも元のチームを基準に判断されます。
これもタンキング抑止としてはかなり強烈です。
毎年上位指名を集めて若手を揃える、いわゆる長期再建をしづらくなる。
昔のシクサーズのProcessみたいな再建は、今後ほぼ不可能になるでしょう。
個人的にはそこまで悪いことだとは思いません。何年も勝つ気がないチームが存在するのはNBA全体の商品価値として良くないですし、ファンもきつい。
ただ、本当にドラフトで外し続けて弱いチームはどうなるんでしょう。
1位で取った選手が期待外れ。
翌年も弱い。
もう一度良い選手を取りたい。
でもルール上1位は無理。
これも結構厳しい。
NBAは再建に失敗したフロントへかなり厳しいリーグになりそうです。
まあそこはちゃんとドラフト当てろよと言われたらその通りなんですけど笑。
自分はタンキングそのものより、タンキングしたくなる仕組みが問題だと思う
そもそもタンキングって、チーム側からするとかなり合理的な行動なんですよね。
30勝してプレイオフに行けない。
ドラフトは中途半端。
スターFAも来ない。
だったら一回全部壊して上位指名権を狙った方が早い。
NBAファンなら何度も見てきた流れです。
だからチームに負けるなと言うだけでは解決しません。
負けることにメリットがある制度なら、合理的なフロントほどその制度を利用します。
今回の3-2-1 Lotteryは、そのメリットをかなり減らそうとしている。
ここ自体は良いと思います。
でも今度は逆に、最下位になることにデメリットまで作った。
自分はそこまで必要だったのかなと思っています。
一番弱いチームに14%与える必要はないかもしれない。
でも4〜10番目より低い5.4%まで落とす必要はあったのか。
例えば最下位10チーム全部同じ8%前後でも良かった気がします。
そうすれば最下位争いの意味はかなり薄くなるし、本当に弱いチームだけ極端に罰することもありません。
とはいえ今年みたいな状況を見たらNBAの気持ちも分かる
一方で、リーグ側がかなり強い改革をした理由も分かります。
NBAは2019年にもロッタリー確率を平らにしています。それでもタンキングはなくならなかった。
むしろ分析が進んだ結果、各チームがより合理的にドラフト順位を計算するようになったとも言えます。
あと10試合。
プレイインは無理。
この選手を出したら2勝くらい増える可能性がある。
その2勝でロッタリー確率が落ちる。
じゃあ休ませよう。
こうなる。
GMとしては理屈が通っています。
でもファンからしたら知らんがなですよね笑。
今日チケット買ったんだから、今日勝ちにいってくれよと。
そういう意味では、勝った方がドラフトでも得になる可能性を作る今回の制度はかなり面白い実験だと思います。
結局これ、2027年がめちゃくちゃ楽しみ
この3-2-1 Lotteryは2027年、2028年、2029年ドラフトで実施され、その後2030年以降の制度については改めてオーナーたちが投票する予定です。つまりNBA自身も、とりあえずこの形で試してみようという制度なんですよね。
これは良いと思います。
もしタンキングが本当に減って、シーズン終盤まで下位チームが普通に勝ちに行くようになれば大成功。
逆に弱小チームが全然再建できなくなったり、10番目前後で新しいドラフト順位争いが始まったりしたらまた変えればいい。
個人的にはタンキング対策をすること自体は賛成です。
82試合あるのに、残り30試合くらいから負けることがチームにとって正解になるリーグはやっぱりおかしい。
ただ、負けるなと弱いチームを罰することは別だと思っています。
本当に弱いチームには、強くなるためのルートも残してあげないといけない。
そこが今回の制度で一番気になります。
最下位の方がドラフトで不利。これ本当に正解?
NBAがやりたいことは分かります。
タンキングをなくしたい。
全82試合で勝つことに意味を持たせたい。
ファンがチケットを買った試合で、チームにはちゃんと勝利を目指してほしい。
全部その通りです。
でも新制度では最下位3チームの1位指名権確率は5.4%。4〜10番目は8.1%。
この数字を見ると、やっぱり少し引っかかります。
負ければ得をするNBAから、負けすぎると損をするNBAへ。
方向性は面白い。
でもその間に、本当にただ弱いだけのチームが挟まれてしまわないか。
2027年ドラフトが始まったら、ロッタリー当日の緊張感は今まで以上にすごそうです。
20勝しかできなかったチームのファンが、40勝近いチームに1位指名権を持っていかれる未来。
普通にあり得ます。
もしそれが起きたらSNSめちゃくちゃ荒れるだろうな笑。
皆さんはこの新しいドラフトロッタリー、どう思いますか?
タンキングをなくすためなら最下位チームの確率を下げるのもアリでしょうか。それとも、弱いチームを助けるというドラフト本来の役割を優先するべきでしょうか。


