2026年9月4日、ベン・シモンズがサクラメント・キングスと1年契約を結んだと報じられました。金額は3.5M、いわゆるベテランミニマム契約です。ESPNのシャムズ・シャラニアとマーク・J・スピアーズが最初に報じたもので、まだ「合意」段階の速報ではありますが、複数のメディアが同じ内容を伝えているので契約自体はほぼ確定と見ていいと思います。それにしても、2016年の全体1位指名選手がベテランミニマムでロースター入りするというのは、なかなか重い響きがあるニュースだなと感じました。
直近1年半、実はコートにほぼ立っていない
まずシモンズの直近の状況を整理しておきます。2025-26シーズンはまるまる欠場していて、背中と脚のリハビリに専念していたとのことです。直近で実際に試合に出たのは2024-25シーズンのプレーオフ、LAクリッパーズ所属時のデンバー・ナゲッツ戦(1回戦)第5戦までさかのぼるので、単純計算でもう1年以上まともに試合勘がない状態からの契約になります。もともと怪我の多い選手ではありましたが、ここまで間が空くと「動けるのか」という不安の方が先に来るのが正直なところです。
そのクリッパーズ移籍の経緯も一応触れておきたいのですが、シモンズは2025年のトレード期限のタイミングでブルックリン・ネッツからウェイブ(バイアウト)されていて、その後フリーエージェントとしてクリッパーズと契約し、そのままシーズン残りとプレーオフを過ごしています。トレードで移動したわけではなく、いったん契約を切られてから拾われた形です。ネッツでは2シーズンで90試合ほどの出場にとどまっていたので、正直あの時点でキャリアの雲行きはかなり怪しくなっていたと思います。
オーストラリア代表、そしてキングスとのワークアウト
今回のキングス入りに至る流れも報道からある程度追えます。2026年8月にオーストラリア代表のミニキャンプに参加し、状態が良かったと伝えられているのがまず大きなポイントです。その後8月下旬にはマイアミでキングスのGMスコット・ペリーとワークアウトを行い、1時間ほどの面談もあったとのこと。さらにサクラメントの練習施設で入念なメディカルチェックとオンコートワークアウトをこなし、ヘッドコーチのダグ・クリスティー含むスタッフからの評価も良かったそうです。ここまで段階を踏んでの契約なので、キングス側も「様子見」ではなく、それなりに納得した上で獲得を決めたのだろうなという印象を受けます。
キングス側の事情も見ておくと、前シーズンは22勝60敗と苦しく、得点面で頼っていたデマー・デローザンをウェイブし、ラッセル・ウェストブルックとも再契約しませんでした。かなり本格的な再建モードに入っているチームです。今回のドラフトで全体7位指名したダリアス・アカフJr.をスターティングPGとして起用する方針で、シモンズはそのバックアップとして迎えられる形になります。ポジション1から5までカバーできる守備の駒として、ルーキーのアカフJr.を隣で指導できるベテランという役割を期待されているようです。
「もう1球団」の正体がはっきりしない
面白いのが、キングス以外にも興味を示した球団があったという報道です。ウォリアーズがキャンプ招待などで関心を示していたことはどの報道でも共通しているので、これは確定情報として扱っていいと思います。ただ、もう1球団については報道によって食い違いがあって、ミネソタ・ティンバーウルブズが挙がっている報道もあれば、ディフェンディングチャンピオンのニックスが挙がっている報道もあります。どちらも複数のメディアが伝えている内容なので、今の時点でどちらが正しいと断定するのはやめておきます。いずれにせよ、実際に契約オファーを出したのはキングスだけだったというのが結論のようです。
なお契約が保証(ギャランティ)されているかどうかは、複数の報道でも「不明」とされたままです。ベテランミニマム契約でもチームのキャップヒットは実際の年俸より圧縮される仕組みがあるらしく、今回はキングス側の負担が2.4M程度になるとも報じられています。この契約でキングスは契約選手14人体制になり、ラグジュアリータックスラインまで3M弱の余裕を残す位置になったそうです。保証がないタイプの契約だとすると、キャンプでのパフォーマンス次第では開幕前にロースターから外れるリスクも普通にあるわけで、シモンズにとっても正念場のキャンプになりそうです。
全体1位、新人王からここまでの道のり
改めてシモンズの経歴を振り返ると、やっぱり落差が大きいなと思わされます。2016年ドラフト全体1位でフィラデルフィア・76ersに入り、2018年には新人王を獲得。オールスターにも3回、オールディフェンシブ1stチームにも2回選ばれたと複数の報道で伝えられています。パスセンスと守備の広さは本物で、あの体格でポイントガードをやれてしまうこと自体がずっと異質でした。ただシュートに関しては本当に最後まで苦しんでいて、2021年のプレーオフではフリースロー成功率が34%まで落ち込み、いわゆる「イップス」として大きく報じられた過去もあります。
2021-22シーズンは開幕から欠場し、当初は怪我を理由にしていたものの、後にメンタルヘルスの問題を理由として挙げるようになった経緯も過去の報道にはあります。2022年にジェームス・ハーデンとのトレードで76ersからネッツへ移り、そこからは前述の通り出場機会も減り、怪我も重なって静かにキャリアが下降していった印象です。全体1位指名で新人王まで獲った選手が、10年経たないうちにベテランミニマムでロースターに滑り込む立場になる。NBAというリーグの厳しさを改めて感じさせられる話だと思います。
シュート力さえもう少し形になっていたら、と今でも思ってしまう選手ではあります。ただキングスが求めているのは得点力ではなく、アカフJr.を支えられる守備とベテランとしての存在感の方でしょうから、役割さえ噛み合えばまだ十分にNBAで意味のある1年を過ごせる可能性はあると思っています。まずはキャンプで実際にどれだけ動けているのか、そこを見てから判断したい選手です。


