ジェイレン・ブラウン、ボストンとの本当の別れ。「741 Frequency Fest」で見えたものと、まだ引っかかっているトレードの理由

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2026年8月30日、ボストン・コモンでジェイレン・ブラウンの送別イベント「741 Frequency Fest」が開かれました。トレード自体は7月に成立していたので今さら感もあるんですが、こうして改めて街全体でお別れの場が設けられると、やっぱり「ああ、本当に終わったんだな」という実感が湧いてきますね。10年間セルティックスでプレーして、2024年にはファイナルMVPまで獲った選手が、優勝の翌シーズンでチームを去ることになった。この一連の流れ、正直まだしっくり来ていない部分があります。

741 Frequency Festはどんなイベントだったのか

イベント名の「741」はブラウンが立ち上げたブランド「741 Performance」から来ていて、当日はボストン市や地元の黒人経営レストラン「Hue Boston」なども関わって開催されたそうです。入場無料でチケットも不要、時間は現地時間の14時から19時までとかなり長丁場でした。出演者にはLil JonやA$AP Ferg、Lil Baby、Veeze、Smino、Joyner Lucasといった名前が並んでいて、ボストン・パブリック・スクールズのマーチングバンドや地元アーティストのYanna Gも登場したとのことです。ブラウンのファン感謝イベントというより、ちょっとしたフェスに近い規模感だったんじゃないでしょうか。

参加人数については報道によってかなり差があって、「数百人」としているところもあれば、「1万人前後」「1万4千人超」という数字を出しているメディアもあります。正確な公式発表の人数は見当たらなかったので、ここは無理に断定しません。ただどの数字を採用するにしても、ボストン・コモンという街の中心部にこれだけの人を集めたこと自体、ブラウンがこの街でどれだけ愛されていたかを物語っていると思います。

「市の鍵」と「Jaylen Brown Way」

イベント中、ブラウンには鍵のようなものが授与されたと各メディアが報じていて、見出しだけ見ると「ボストン市から鍵を贈られた」というふうに読めてしまいます。ただ実際に登壇して授与したのは、マサチューセッツ州下院議員のクリストファー・ウォレル氏(第5サフォーク選挙区選出)でした。報道によって「市の鍵」「州の鍵」「第5選挙区の鍵」と表現が割れていて、どれが正式な呼び方なのかはっきりしないので、ここは「ウォレル州下院議員から鍵が贈られた」という事実だけ押さえておきたいと思います。ボストン市長本人からの授与ではなかった、というのは案外知られていないポイントかもしれません。

一方で、ミシェル・ウー市長本人が登場して贈ったのが「Jaylen Brown Way」と書かれた通り標識です。「This is so you’ll never forget this city.」というコメントも添えられていて、これは普通にいいエピソードだなと思いました。ただしこれはあくまでイベント上の記念品としての標識で、ボストン市が正式にその通りの名前を道路名に変更したというわけではなさそうです。駐車禁止の優遇があるわけでもない、という趣旨の話も出ていたので、そこは冗談交じりのプレゼントとして受け取るのが正解でしょう。

ブラウン本人のスピーチも各社が報じていて、「I’m at a loss for words.」「When I got to this city, I said I’m gonna go to war for this city.」「I just want to say thank you to Boston. Thank you to the city, and I love you.」といった言葉を残していました。X(旧Twitter)には「God is crazy」とだけ投稿していたそうで、この短さがかえって本人の複雑な心境を表しているような気がします。10年もいた街を去るときの気持ちなんて、本人にしかわからないですよね。

そもそもなぜトレードされたのか、という話に戻る

ここからが今回一番書きたかったところなんですが、ブラウンがなぜ76ers行きになったのか、正直まだ完全には納得できていません。トレード自体は2026年7月1日に報じられ、7月6日に正式成立。見返りはポール・ジョージと2028年・2031年の1巡目指名権、2028年・2030年の2巡目指名権でした。優勝の中心選手をポール・ジョージと複数の指名権に変換する、というトレードの形自体、当時もかなり驚いた記憶があります。

セルティックスPOBOのブラッド・スティーブンスは会見で、テイタムとブラウンの2人でキャップの70%とユーセージの大部分を占める構造について「the path looked a little bit more challenging to me」と語り、いわゆるセカンドエプロン下での編成の難しさを示唆しました。要はこれ以上2人に依存した編成を続けるのが、制度的に厳しくなってきたというニュアンスです。セカンドエプロンというのは、ラグジュアリータックスを超えて一定額以上のチーム年俸を組んでしまうと、トレードやフリーエージェント補強の選択肢が大幅に制限されるという新CBAの仕組みで、優勝チームであっても翌年以降の編成の自由度が一気に狭まるリスクがあります。細かい罰則の金額や指名権凍結の年度まではこの記事では踏み込みませんが、少なくとも「勝てば勝つほど身動きが取りにくくなる」制度になっているのは間違いなさそうです。

ところが同じ会見で、オーナーのビル・チザム氏はこれがキャップ絡みの決断なのかと聞かれて「No, absolutely not. This was all about, basically, trying to win, and really trusting in our process.」ときっぱり否定しています。つまりPOBOは制度的な要因を匂わせ、オーナーは純粋にバスケットボールの判断だと言い切っている。同じチームの会見でここまで温度差のあるコメントが出てくるのは正直珍しくて、どちらが本音なのか外から見ている自分たちには判断がつきません。両方の言い分がある、としか今は言えないですね。

ブラウン本人はTwitchの配信で「Brad is probably getting a lot of the criticism. I wasn’t thrilled the way he facilitated some of the conversations, but I definitely think there’s more to it.」とコメントしていて、スティーブンスへの不満とともに「もっと裏がある」というニュアンスもにじませています。さらに「I thought I earned respect enough to get that explanation, but hey, obviously I was wrong.」とも言っていて、これは結構重い言葉だなと感じました。ファイナルMVPまで獲った選手が、トレードの理由をきちんと説明してもらえなかったと感じているとしたら、球団側のコミュニケーションのやり方には疑問符が付きます。

あと一部メディアでは、テイタムが欠場した2025-26シーズンにブラウンが「自分がメインスコアラーだったこのシーズンがキャリアで一番好きだった」という趣旨の発言をしたことが、トレードの伏線になったのではという見方も出ています。ただこれはあくまで一部の分析であって、球団側がそれを理由として認めたわけではありません。個人的には、この手の後付けの物語化は話としては面白いけど、実際の意思決定プロセスとは別物として扱ったほうがいいと思っています。

テイタムの反応と、これからのこと

ジェイソン・テイタムは自著のプロモイベントでこの件について聞かれ、「To be honest, it’s weird.」と率直に語っていました。「You play on a team with a guy for nine years, who I was fortunate enough to go to the Finals with twice, and win a championship, and push each other to be the players that we are today.」というコメントからは、単なるチームメイト以上の関係性が伝わってきます。「新しいチームメイトを受け入れながら前に進む」というバランスの話もしていて、この辺りは選手としてもプロとして割り切らざるを得ない部分なんでしょうね。

ブラウンは76ers所属として、プレシーズンでは10月10日、レギュラーシーズンでは2027年1月21日にTDガーデンへ戻ってくる予定です。この2つの日程はNBA公式スケジュール発表に基づいて複数の情報源で一致しているので、ここは確定情報として書いておきます。ファイナルMVPのバナーが掲げられたあの会場に、今度は敵として帰ってくるわけです。その日、ボストンのファンがどんな反応を見せるのか、今から気になって仕方ありません。

おわりに

セカンドエプロンという制度がリーグ全体の編成に与える影響は、今回のブラウンのケースに限らず今後もいろんなチームで議論になっていくと思います。優勝したチームがその翌年に主力を手放さざるを得なくなる、というのは今までのNBAではあまり見なかった構図です。今回に関しては、スティーブンスが語る「制度的な事情」とチザムが語る「純粋なバスケの判断」、どちらが本当の理由なのか自分にもわかりません。ただ、10年間ボストンのために戦ってきた選手が、これだけ多くのファンに見送られてイベントまで開かれるという事実だけは、はっきり伝わってきました。ブラウンには76ersでもまた新しいキャリアを積み重ねていってほしいですし、1月にTDガーデンでどんな迎えられ方をするのか、個人的には一番楽しみにしています。

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