カワイ問題、ついに米司法省まで動く。NBAの“裏契約疑惑”はなぜここまで大事になったのか?

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カワイ・レナードとロサンゼルス・クリッパーズを巡る問題が、まさかここまで大きくなるとは思いませんでした。9月2日にNBAが調査結果を発表し、クリッパーズから1巡目指名権を5本剥奪、球団に3,000万ドルの罰金、オーナーのスティーブ・バルマーを1年間活動停止、レナードにも70万ドルの支払いを命じるという異例の処分を下しました。この時点でもNBA史に残りそうな大事件でしたが、話はリーグ内だけでは終わらなかったようです。

9月11日、ReutersがNew York Timesの報道を引用する形で、米司法省がクリッパーズとレナードを巡る取引について刑事捜査を行っていると伝えました。捜査を担当しているのはニューヨーク東部地区の連邦検察で、すでに少なくとも1件の召喚状が出されているとされています。ただし捜査はまだ初期段階で、誰が具体的な捜査対象なのか、どの犯罪の可能性を調べているのか、最終的に起訴へ進むのかは現時点で明らかになっていません。ここはかなり重要で、レナードやバルマーが犯罪を犯したと確定したわけではありません。

それにしても、NBAのサラリーキャップの話だったはずなのに、なんで米司法省まで出てくるんだ。笑

今回は前回の記事の続編として、NBAが認定したクリッパーズの違反を簡単に振り返りながら、今回新しく始まった連邦当局の捜査が何を意味するのかを整理してみます。

まずNBAが認定した内容を振り返る

今回の問題で最初に押さえておきたいのは、単にカワイ・レナードがスポンサー契約を結んでいたこと自体が問題だったわけではないという点です。NBA選手が所属チーム以外の企業とスポンサー契約を結び、NBAから受け取る年俸とは別に収入を得ることは珍しくありません。

問題になったのは、クリッパーズと取引関係にある企業からレナードへ金銭が流れる過程に、球団がどこまで関与していたのかという部分でした。

NBAが公表した調査結果によると、クリッパーズはAspiration Partners、Boingo Wireless、Daktronics、Lockton Insuranceという4社とレナードの間で、コート外の収入機会を積極的に作り、スポンサー契約の成立を手助けしていました。さらにNBAは、クリッパーズがこれらの企業へ球団のビジネスを提供することで契約を促したほか、レナードやその関係者の個人的な費用を負担したと認定しています。

中でも大きく取り上げられたのがAspiration Partnersです。同社はレナードと2,800万ドルのスポンサー契約を結んでいた一方、クリッパーズとも23年間で3億ドルという大型スポンサー契約を結んでいました。NBAの調査では、こうした複数の企業との取引を含めて、通常のスポンサー活動ではなくサラリーキャップを迂回する形でレナードへ利益を提供する仕組みがあったと判断されました。

そもそもサラリーキャップを迂回すると何がまずいのか

NBAを見始めたばかりだと、ここが少し分かりにくいかもしれません。仮にオーナーが自分のお金を使って選手に追加で報酬を払うだけなら、別にいいじゃんと思う人もいるはずです。

でも、それを許したらサラリーキャップそのものが意味を失います。

例えばNBAとの契約上は年俸4,000万ドルにしておいて、別のスポンサー企業から2,000万ドルを払う。実質的には6,000万ドルを提示しているのに、サラリーキャップには4,000万ドルしか計上されない。もしこんな補強方法が認められれば、お金のあるオーナーほどスター選手を集めやすくなります。

NBAは各球団が一定の経済的ルールの中でチームを作ることを前提にしています。セカンドエイプロンまで導入して巨大戦力を作るハードルを上げている現在のNBAで、球団の取引先を経由して実質的な追加報酬を選手へ渡せるのであれば、CBAで細かく決めているルールが全部崩れてしまいます。

だから今回のNBA公式発表でも、アダム・シルバーは選手報酬を決める仕組みがNBAの競争環境を支える根本的な要素だと強調しています。リーグが1巡目指名権5本というとんでもない処分を科したのも、それだけサラリーキャップの迂回を重く見ているからです。

1巡目指名権5本剥奪はやっぱり異常に重い

前回の記事でも触れましたが、今回の処分は改めて見てもすごいです。クリッパーズは2029年から2033年まで、5年連続で1巡目指名権を失いました。それに加えて球団へ3,000万ドルの罰金、バルマーには1年間の活動停止、球団幹部にも活動停止処分が科されています。

さらにレナード自身も70万ドルの支払いを命じられ、当時ビジネスマネージャーを務めていた叔父のデニス・ロバートソンは5年間NBAチームとのビジネスを禁止されました。球団には今後5年間、リーグによるコンプライアンス監視も入ります。

Basketball Freakでも以前、NBAにおける1巡目指名権の価値について調べましたが、現代NBAでは指名権は新人を取るためだけのものではありません。スター選手をトレードで獲得するときにも使えますし、若くて安い戦力を確保する手段にもなります。その1巡目を5年分まとめて失うわけですから、単純な罰金とは比較にならないほど長期的なダメージがあります。

これだけ見れば、NBAからの処分だけで十分すぎるほど重いですよね。

ところが今回、その外側から米司法省が入ってきました。

NBAの調査と司法省の捜査はまったく別の話

ここは今回の記事で一番重要なところだと思います。

NBAが調べていたのは、クリッパーズやレナード側がNBAと選手会との間で定められたCBAに違反したのかという問題です。簡単に言えば、NBAというリーグのルールを破ったかどうかを調べていたわけです。

一方で司法省が扱うのは、当然ながらNBAのルールブックではありません。連邦法に違反する行為があったのかを調べます。

現時点では捜査の具体的な対象や想定されている犯罪について公表されていないため、何の容疑を調べているのかをこちらで決めつけることはできません。Reutersによれば捜査は初期段階で、少なくとも1件の召喚状が出されているものの、刑事訴追につながるかどうかも分かっていません。

つまりNBAから重い処分を受けたから、そのまま自動的に犯罪になるわけではありません。

逆も同じです。NBAのルールに違反したかどうかと、米国の法律に違反したかどうかは別々の問題です。

ここを一緒にすると、今回のニュースを必要以上に大きく見せてしまいます。

それでも司法省が出てきたインパクトは大きい

とはいえ、連邦検察が実際に動いているという事実は無視できません。Reutersによると、捜査はNBAが9月2日に処分を発表する前から始まっていたとされています。NBAの発表を見て司法省が突然興味を持ったわけではなく、すでに独自に調べ始めていたことになります。

しかも今回の問題に登場する企業はAspirationだけではありません。NBAはBoingo Wireless、Daktronics、Lockton Insuranceについてもレナードとの契約にクリッパーズが関与していたと認定しました。さらにDaktronicsは9月2日、レナードとの取引についてSECから資料提出を求められており、調査に協力していることを明らかにしています。

NBA、司法省、SEC。

最初はサラリーキャップ違反疑惑として始まった話が、気付けば複数の組織が関わるかなり大きな問題になっています。

Aspirationという会社もかなりややこしい

今回の話をさらに複雑にしているのがAspiration Partnersです。同社は環境に配慮した金融サービスなどを展開していましたが、その後経営破綻しています。クリッパーズとは23年間で3億ドルという大型スポンサー契約を結び、レナードとは2,800万ドルのスポンサー契約を結んでいました。

さらにAspirationの共同創業者ジョー・サンバーグは、投資家から約2億4,800万ドルをだまし取った事件に関連して連邦犯罪を認め、2026年6月に14年の禁錮刑を言い渡されています。バルマー自身もAspirationへ5,000万ドルを投資していました。

ただし、ここも切り分ける必要があります。Aspirationの創業者が別件の詐欺事件で有罪になったからといって、バルマーやレナードがその犯罪に関与していたという意味ではありません。

この事件、登場人物と金額が大きすぎて全部つながって見えるんですよね。

だからこそ、誰が何について調査され、何がすでに認定され、何がまだ疑惑なのかを分けて見る必要があります。

カワイ本人は何と言っているのか

NBAはレナード側についても、当時ビジネスマネージャーだったロバートソンがクリッパーズへコート外の収入機会を求め、実際にそれを得たことなどがCBAの迂回規定に違反したと判断しています。レナードには70万ドルの支払いが命じられました。

一方、レナード本人は新しい代理人を通じて声明を発表し、サラリーキャップを迂回しようとする意図について自分は知らなかったと主張しています。自身の周囲で判断を誤った部分について責任を感じているとしながらも、本人が意図的にルールを回避したという見方は否定しています。

クリッパーズ側もNBAの調査結果に強く反発しており、球団とバルマーは不正行為を否定しています。Reutersによれば、NBAを相手に訴訟を起こし、処分の差し止めを求めることまで検討していると報じられています。

なので現状は、NBAが違反を認定して処分を確定させた一方、クリッパーズ側はその認定自体を受け入れていない状態です。そのうえで別ルートから連邦当局の捜査まで進んでいる。かなり複雑です。

そして地味に気になるラプターズへのトレード

この問題には、もう一つNBA的にかなり大きな話があります。

レナードは今年6月、トロント・ラプターズへ戻るトレードで基本合意していました。報道された内容では、ラプターズがレナードを獲得し、クリッパーズはブランドン・イングラム、グレイディ・ディック、2031年と2033年の1巡目指名権などを受け取る大型トレードです。

ところがこの取引は、NBAによるサラリーキャップ問題の調査が終わるまで保留されていました。NBA公式の6月時点の報道では、レナードはトロントへ移籍後に契約延長する意向とも伝えられていました。

リーグ側の調査結果は出ましたが、今度は連邦当局の捜査が表面化しました。

この状況でレナードの移籍がどう扱われるのかも、今後かなり気になります。

クリッパーズにとって本当に痛いのはこれからかもしれない

3,000万ドルの罰金だけを見れば、超富豪のバルマーにとって経済的に致命傷になる金額ではないでしょう。でも1巡目指名権5本は違います。

2029年、2030年、2031年、2032年、2033年。

5年連続で自前の1巡目指名権を使えないということは、数年後にチームを作り直したくなっても、ドラフトから若い選手を補充する基本的なルートが大きく制限されるということです。スターをトレードで獲ろうとしても、その交渉材料になる1巡目がありません。

しかもレナードは35歳。現在のクリッパーズがどれだけ強いかとは別に、2030年代まで今のコアが続くわけではありません。

そう考えると、今回の処分は現在のクリッパーズよりも、むしろ数年後のクリッパーズに効いてくる可能性があります。

NBAって、こういうところが怖いです。

今回の捜査で何が起きるのか

現時点では分からない、というのが一番正確な答えです。

司法省の捜査が始まったからといって、起訴されることが決まったわけではありません。捜査の範囲や対象も明らかになっておらず、証拠が大陪審へ提示されるかどうかも分かっていません。今の段階でレナードやバルマーに具体的な犯罪名を当てはめるのは早すぎます。

ただ、少なくともNBAの処分だけで完全に終わる問題ではなくなりました。

個人的にはそこが今回のニュースで一番驚いたところです。前回の記事を書いた時点では、1巡目5本剥奪という処分だけでも相当なインパクトだと思っていました。

まさかその次に司法省が出てくるとは思わなかった。笑

NBA史でもかなり珍しい事件になってきた

NBAでは過去にもサラリーキャップの迂回で球団が処分されたケースはあります。ただ今回のクリッパーズは、5本の1巡目指名権剥奪、3,000万ドルの罰金、オーナーと複数の幹部の活動停止、スター選手への支払い命令、元ビジネスマネージャーの5年間追放、そして5年間の球団監視という規模です。

そこに今度は連邦当局の捜査まで加わりました。

最初はスポンサー契約を使ったサラリーキャップ迂回疑惑だったはずなのに、調べれば調べるほど話が大きくなっています。

それでも今は、NBAが認定した事実と司法省がこれから調べる内容を混同しないことが大切です。新しい事実が出てくれば評価は変わるでしょうし、反対に刑事事件として何も立証されない可能性もあります。

ただ一つだけ確かなのは、カワイ・レナードとクリッパーズを巡る問題はまだ終わっていないということです。

むしろ第2ラウンドが始まったばかりなのかもしれません。

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