たまにNBAの試合で「スペインピック&ロール」という言葉を耳にします。名前は知っていても、具体的にどんな戦術で、なぜ相手に分かっていても止められないのか、ちゃんと説明できなかったので調べてみました。
3人で作る「実質3対2」の状況
スペインピック&ロールは、通常のピック&ロール(ボールハンドラーとスクリーナーの2人)に、3人目の選手が加わる形のアクションです。まずビッグマンがフロア中央でボールハンドラーにオンボールスクリーンを設定します。同時に、シューター役の選手がそのビッグマンのディフェンダーに対してバックスクリーンを仕掛け、スクリーンを終えるとトップ オブ ザ キーにポップアウトします。ボールハンドラーはこの状況で、ドライブ ロールマンへのパス ポップした選手へのパスという3択を持つことになります。残り2人はコーナーに開いてスペーシングを確保します。
通常のピック&ロールが2対1の状況を作るのに対し、3人目のバックスクリーンを加えることで実質3対2の状況を作り出す、という説明がしっくりきました。バックスクリーンはバスケットボールの中でも「最も守りにくいスクリーンの一つ」とされていて、ミスマッチが生じても多くのチームは単純にスイッチで妥協せざるを得ない傾向があるようです。
なぜ「分かっていても」止められないのか
このアクションの厄介なところは、スクリーナー側のディフェンダーが強くヘッジ(プレッシャーをかける)と、バックスクリーンを受けたシューター側のディフェンダーが同時にロールマンのケアも強いられてしまう点です。1人のディフェンダーの判断ミスが、連鎖的に別のディフェンダーの負担を増やしてしまう。通常のピック&ロール対応(ヘッジ ドロップ スイッチ)がそのままでは機能しにくくなる構造的なジレンマがある、ということのようです。
実際、あるフランス語メディアの記事では、ニックスがこのスキームに3度連続で読み間違えた場面や、ホークスのトレイ ヤングがプレーオフの重要な場面で3度連続で成功させた場面が紹介されていました。分かっていても、瞬間的な判断のズレが積み重なって失点につながってしまう、というのがこの戦術の怖さなんだと思います。
ディフェンス側の対応策
もちろんディフェンス側も無策ではありません。バックスクリーンが着地する前に「スペインが来る」と早期に声を掛け合う認知の速さがまず重要とされています。具体的な対応策としては、スクリーンにスイッチする方法(ただしオフェンス側はゴーストスクリーンやショートロールで対抗してくる)、ボールハンドラーに強くプレッシャーをかけるICEカバレッジ、ガード同士でスイッチする方法などが紹介されていました。2017年以降は、守備面で先進的とされるウォリアーズのようなチームが、スクリーナー側のディフェンダーが即座にボールキャリアーへスイッチする方式でこのアクションを未然に断ち切ることに成功した、という指摘もあります。
NBAでの実例
フェニックス サンズは、このアクションをよく使うチームとして知られています。NBA公式のフィルムスタディ記事によると、デアンドレ エイトンがクリス ポールへオンボールスクリーンを設定し、デビン ブッカーがバックスクリーンを設定するパターンが多いそうです。2022年のプレーオフでは、マイク コンリーがエイトンのスクリーンに引っかかり、ルディ ゴベアもブッカーのスクリーンで弾かれてしまい、急遽ロイス オニールがポールを見る形になったところで、ポールがロールしたエイトンへパスを通した場面が紹介されています。より一般的な結末としては、ブッカーがオープンな3ポイントを得るケースが多いとのことです。
他にも、シャーロット ホーネッツがラメロ ボール、PJ、ワシントン、マリク モンクの組み合わせで使った場面や、ゴールデンステート ウォリアーズが社内で「Stack」「Fist」と呼ぶ独自の名称でこのセットを使い、バックスクリーナー役をステフィン カリーやクレイ トンプソンが務めることが多い、という記述も見つかりました。
起源については諸説あり、はっきりしなかった
この戦術の起源、命名の経緯についても調べてみましたが、正直なところ確定的な答えは見つかりませんでした。スペイン代表のヘッドコーチだったセルジオ スカリオロが考案し2016年リオ五輪で広めたという説と、ゼリコ オブラドヴィッチが2009年に欧州で導入し、さらに遡ると2002年のトレヴィーゾに萌芽があったという説の両方が見つかり、どちらか一方に絞り込むだけの裏付けは今回確認できませんでした。NBAへの普及時期についても「2012年頃から戦術担当者が採用し始めた」という説と「2016年リオ五輪以降に広まった」という説が併存しています。起源については、はっきりした答えを出せなかったというのが正直なところです。
まとめ
スペインピック&ロールは、シンプルなピック&ロールに3人目のバックスクリーンを加えるだけで、ディフェンス側の判断を連鎖的に狂わせてしまう、よくできた戦術なんだということが分かりました。分かっていても止められないのは、1人のミスが別のディフェンダーの負担に直結してしまう構造そのものに理由があるようです。次にNBAの試合でこのアクションを見かけたら、どのディフェンダーが最初に判断を誤らされるか、注目してみようと思います。
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