100日後に戦術マスターになるNBAファンへの道 – 32日目-ICE(ダウン)ディフェンス!サイドへ押し込む守り方

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【32th Step】ICE(ダウン)ディフェンス!サイドへ押し込む守り方

はじめに

前回はマッチアップゾーンを取り上げて、「人」を守るのか「場所」を守るのか、その中間の守り方を見ました。最後に予告したとおり、今回はコート全体の話から少し視野を絞って、ピック&ロールへの対応を見ていきます。テーマはICE(アイス)と呼ばれる守り方です。

ピック&ロールの守り方には、第8回で学んだスイッチのほかにも、いくつもの種類があります。その中でもICEは「スクリーンを使わせない」という少し変わった発想の守り方です。調べてみると呼び名がチームや指導者によってバラバラで、それだけ広く使われてきた守り方なんだなと感じました。

ICEディフェンスとは

ICEは、コートの端(サイド)で行われるピック&ロールに対して、ボールマンをスクリーンの方へ行かせず、サイドライン・ベースライン側へ押し込む守り方です。英語圏では「Blue」「Down」「Push」など、別の名前で呼ばれることもあります。日本語では「ダウン」と呼ばれる場面も多いので、どちらも覚えておくと試合解説が聞き取りやすくなると思います。

動きはシンプルです。サイドでスクリーナーがコート中央側からスクリーンをセットしに来たとき、ボールマンのディフェンスはスクリーンのある側(中央側)へ先回りして立ちます。こうなるとボールマンはスクリーンを使えないので、逆方向、つまりサイドライン側へドリブルするしかありません。

そこで待っているのが、スクリーナーのディフェンス(多くの場合ビッグマン)です。ビッグマンはボールマンが逃げてくる側の少し下がった位置に構えて、ドライブを止めます。ボールマンのディフェンスは後ろから追いかけ、2人でボールマンを外側に閉じ込める形になります。

なぜ「サイドへ」押し込むのか

ピック&ロールが怖いのは、ボールマンがスクリーンを使ってコートの真ん中へ入ってくることです。真ん中に入られると、ゴールへのドライブ、ロールするビッグマンへのパス、逆サイドのシューターへのキックアウトと、選択肢が一気に増えます。第6回で見たヘルプも、真ん中に入られるほど遠くまで動かなければいけなくなります。

逆に、サイドライン側へ追い出された選手は、ラインそのものが「もう1人のディフェンス」のような役割を果たすので、行ける方向が限られます。パスの角度も狭くなり、逆サイドへ通すには長いパスが必要です。ICEは、オフェンスが一番やりたいことを最初に取り上げて、選択肢の少ない場所で勝負させる守り方だと言えます。

また、ボールマンのディフェンスがスクリーンに引っかからないので、スピードで劣る選手でも置いていかれにくいというメリットもあります。第28回のトラップのように2人で挟みに行く守り方と組み合わせやすいのも特徴で、サイドに追い込んだところでトラップをかける、という使い方もできます。

ICEを見つけるポイント

試合中にICEかどうかを見分けるのは、慣れると難しくありません。注目するのはスクリーンがセットされる直前の、ボールマンのディフェンスの立ち位置です。

  • ボールマンのディフェンスの体の向き:ボールマンとスクリーンの間に体を入れ、サイドライン側へ向かせるように立っていればICEの可能性が高いです
  • ビッグマンの位置:スクリーナーの横ではなく、ボールマンが逃げてくる側の低い位置に構えています
  • ボールの行き先:ピック&ロールが始まったのに、ボールマンがスクリーンと反対方向(コーナー側)へドリブルしていたら、守備側がそう仕向けていると考えてよいと思います

ICEは、ボールハンドラーへの守備を徹底してきたトム・シボドーHCの守備と結びつけて語られることが多い守り方です。ただ、今ではリーグ全体に広がっていて、特定のチームだけの守り方ではなくなっています。どのチームが使っているかよりも、「この場面で中に入れていないな」と気づけるかどうかの方が観戦では大事だと思います。

守る側の注意点

ICEは安定した守り方と言われますが、弱点もあります。一番は、ボールマンのディフェンスが一瞬でも遅れて真ん中へ行かれると、守備全体が崩れることです。ビッグマンはサイド側で待っているので、真ん中を突破されるとゴール前に誰もいない状態になりかねません。

もう1つは、ビッグマンが下がり気味に構える分、スクリーナーが外に開いたときに距離ができることです。スリーポイントを打てるビッグマンが相手だと、ここが大きな穴になります。だからこそICEは5人の約束事が揃って初めて機能する守り方で、第26回のクローズアウトのように、離れた選手へ詰める技術も同時に求められます。

攻める側の対応

攻める側にも、ICEを崩すための定番の対応があります。代表的なものを挙げておきます。

  • スクリーンの向きを変える(フリップ):ディフェンスが中央側に先回りしたら、スクリーナーがすばやく反対側に回って、サイドライン側からスクリーンをかけ直します。今度はディフェンスが「中に入れない」ための位置にいるので、スクリーンをまともに受けることになります
  • もう一度スクリーンをかける(リスクリーン):1回目を外されても、角度を変えて2回目をかけることで、ディフェンスの準備が間に合わない状況を作ります
  • ピック&ポップ:スクリーナーがゴールへ向かわず、スリーポイントラインへ開きます。ビッグマンが外へ出ればゴール下が空き、出なければフリーのスリーになります
  • ショートロール:スクリーナーがフリースローライン付近で一度ボールを受け、そこからパスやミドルシュートを狙います。2人がサイドのボールマンに寄っている分、真ん中は手薄になりがちです

こうして見ると、ICEの攻防は「真ん中を取るか、取らせないか」の綱引きです。ピック&ロールは同じ形に見えても、守り方によって攻める側の次の一手が変わる。そこが見えてくると、1回のポゼッションの見え方がかなり変わってきます。

今日の宿題

タスク1: ピック&ロールが「どっちへ」行ったかを見る

  • 試合中、サイドでピック&ロールが始まったら、ボールマンがスクリーンを使って真ん中へ入ったのか、スクリーンと反対のサイドライン側へ行ったのかを見てみてください
  • サイドライン側へ行かされていて、ビッグマンが低い位置で待っていれば、それがICEです

タスク2: オフェンスの「かけ直し」を探す

  • ICEを使われたときに、スクリーナーがすぐに反対側へ回ってスクリーンをかけ直す場面があるかを探してみてください
  • かけ直しで真ん中に入れたなら、オフェンスがICEを崩した場面です。その後にどこでシュートが生まれたかまで追えると完璧です

次回予告

次回は「ブリッツとハードショー――2人で挟みに行く判断」をお届けします。今回のICEは「スクリーンを使わせない」守り方でしたが、次回はスクリーンを使ったボールマンに2人で積極的に襲いかかる守り方です。どこまで前に出るのか、その判断の違いを見ていきます。お楽しみに!

おわりに

ICEは、スイッチやトラップに比べると目立たない守り方ですが、ピック&ロールを守るうえでの考え方がよく詰まっています。相手の一番やりたいことを先に消して、選択肢の少ない場所へ連れていく。その発想は、ほかの守り方を理解するうえでも土台になると思います。

次に試合を見るときは、サイドのピック&ロールでボールマンのディフェンスがどこに立っているかを、ぜひ一度だけでも意識してみてください。それだけで、守備側が何を嫌がっているのかが少し見えてくるはずです。

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