【25th Step】ポストアップの現在地を知ろう
はじめに
前回はプルアップジャンパーを取り上げました。外から、自分のドリブルで試合を動かす技術です。
では、昔のNBAで試合を動かしていたものは何かというと、ゴールに近い場所でボールを持つプレー、つまりポストアップでした。シャキール・オニールやティム・ダンカンが背中でディフェンダーを押し込んでいた、あの形です。
「ポストアップはもう古い」と言われることがあります。でも実際には消えていません。今日は、減った理由と、それでも残っている理由の両方を見ていきます。
ポストアップとは?
ポストアップは、リングに背を向けた状態でボールを受け、ディフェンダーを押し込みながら攻めるプレーです。
立つ場所によって呼び方が変わります。
- ローポスト:ゴールに近い、フリースローレーンの下の方。フックシュートやドロップステップの距離
- ミドルポスト:その少し上。ターンしてシュートにもパスにも行ける
- ハイポスト:フリースローライン付近。ここは背を向けるというより、受けて周りを見る位置として使われます
ポストアップの強みは単純で、リングに近い=確率が高いということです。そしてもう一つ、ディフェンスが寄ってくればパスで崩せます。
なぜ減ったのか
第4回で学んだ「ペース&スペース」が答えの中心にあります。
- 3ポイントの方が効率が良い場面が増えた:2点のミドルショットより、3点の方が1本あたりの期待値で上回るケースがある。ポストでじっくり攻めるより、外に展開した方が良いという判断が増えました
- 時間がかかる:背を向けてボールを受け、押し込んでから攻めると、それだけでショットクロックを消費します
- ペイントが渋滞する:ビッグマンがゴール下に居座ると、ドライブする選手のスペースが消えます。スペーシングの考え方と相性が悪い
- ダブルチームを呼びやすい:攻め手が1カ所に固定されるので、守る側が的を絞りやすくなります
つまりポストアップは、「悪いプレー」になったのではなく、他の選択肢の方が効率的な場面が増えたということです。
それでも残っている理由
一方で、ポストアップが明確に強い場面もあります。
1. ミスマッチができたとき
第8回で学んだスイッチ戦術の副作用です。スイッチで小さいガードがビッグマンを守ることになった瞬間、そのビッグマンがポストに入れば、サイズの差がそのまま得点になります。現代のポストアップは、スイッチを狩るための道具として使われることが多いです。
2. パスの起点になるとき
ニコラ・ヨキッチのように、ポストで受けてから周りを見る選手がいます。ダブルチームが来れば空いた味方へ、来なければ自分で攻める。守る側からすると、寄っても寄らなくても損をする状態です。これは第10回のパスワークと地続きの話です。
3. 試合を落ち着かせたいとき
相手に流れが傾いた場面や、クラッチタイム(第18回)で、確実に1本欲しいとき。外からの確率に賭けるより、リング近くで確実性を取るという判断があります。
守る側はどう対応するのか
- フロント:ディフェンダーが相手の前に回り込み、そもそもボールを入れさせない
- ダブルチーム:ボールを持った瞬間に2人目が寄る。ただし外の誰かが必ず空きます
- ディグ:完全には寄らず、一瞬だけ手を出して不安にさせてから戻る
- 我慢して1対1で守る:サイズが足りているなら、これがいちばん崩れません
また、攻める側にはオフェンス3秒の制限もあります。ペイント内に3秒以上留まれないので、ポジション争いも時間との勝負です。
今日の宿題
タスク1: ポストアップが「いつ」出るか数える
- 1試合でポストアップが何回出るか、そしてそれがスイッチの直後だったかどうかを見てみてください
- ミスマッチ狙いと、最初から設計されたポストアップは、入り方が違います
タスク2: ダブルチームの判断を見る
- 相手がポストに入ったとき、2人目が寄ったか寄らなかったかを確認してみてください
- 寄った場合、ボールが最終的にどこへ飛んだかまで追うと、パスの設計が見えてきます
次回予告
次回は「クローズアウトの技術!シューターに詰める一歩が、守備の質を決める」を解説します。お楽しみに!
おわりに
ポストアップは減りました。でも、なくなってはいません。むしろ「どの場面で使うか」が洗練された、と言った方が正確だと思います。
次に大きい選手がゴール下で背を向けたら、それが最初から狙っていた形なのか、スイッチで生まれたミスマッチなのかを見てみてください。同じプレーでも、意味がまったく変わって見えるはずです。


