ディアンジェロ・ラッセル、30歳。2015年NBAドラフト全体2位。22歳でAll-Star選出。キャリア平均17.0得点、5.6アシスト。そして2026年9月25日、メンフィス・グリズリーズからウェイブされました。
いや、まだ30歳なんだけど。
もちろんNBAでは毎年多くの選手がウェイブされます。ただ、DLoほどの実績を持つ選手が30歳で開幕前にロスターを失うとなると、少し話が違います。数年前まで普通にスターターとして平均17〜20得点を狙える選手で、キャリア通算でも1万得点を大きく超えている元All-Star。それが30歳で「次のチームを探す側」になりました。
では、DLoはいつからNBAで居場所を失い始めたのでしょうか。そして今回のウェイブは単純な衰えなのか。それとも、現在のNBAでポイントガードに求められるものが変わった結果なのか。DLoの11年間を振り返ると、なかなか興味深いものが見えてきます。
2015年、レイカーズが全体2位で指名
DLoがNBA入りしたのは2015年。オハイオ州立大学からアーリーエントリーし、ロサンゼルス・レイカーズから全体2位指名を受けました。
ちなみにこのドラフト、1位はカール・アンソニー・タウンズ。3位ジャリル・オカフォー、4位クリスタプス・ポルジンギス、13位デビン・ブッカーなどがいる世代です。
当時のレイカーズはコービー・ブライアントのキャリア最終盤。次の時代を作る若手としてDLoには大きな期待がかかっていました。サイズのある左利きのポイントガードで、シュートを打てて、ピック&ロールからパスも出せる。爆発的な身体能力で相手を抜き去るタイプではありませんが、独特のテンポでディフェンスをずらして得点するスタイルは若い頃から完成度が高かったです。
ただ、レイカーズでの最初の2年間は順風満帆とはいきませんでした。若いチームの中で安定感を欠く時期もあり、コート外でも騒動が起きます。そして2017年、レイカーズはDLoをブルックリン・ネッツへトレードしました。
全体2位指名から、わずか2年でした。
ネッツ移籍で一気に開花。22歳でAll-Starへ
ただ、このトレードがDLoのキャリアを大きく変えます。
ネッツでボールを任されるようになると、持ち味だったピック&ロールからの得点とパスが一気に開花。特に2018-19シーズンは平均21.1得点、7.0アシストを記録し、NBA All-Starにも選出されました。
まだ22歳でした。
この頃のDLoは本当に面白かったです。ものすごく速いわけではないのに、相手との間合いをずらしてミドルレンジを決める。フローターを打つと思ったらロールマンへパスを出し、ディフェンスが下がれば3ポイントを狙う。「速さ」ではなく「タイミング」で守備を攻略するタイプのガードでした。
ネッツも42勝40敗でプレーオフへ進出。DLoはチームの若きエースとして評価を一気に上げます。
全体2位指名という期待にようやく追いついた瞬間でした。
ところがAll-Star翌年にまた移籍
普通なら、ここからネッツの中心として長期間プレーする流れに見えます。
ところが2019年、ネッツはケビン・デュラントとカイリー・アービングを獲得。DLoはKDとのサイン&トレードによってゴールデンステイト・ウォリアーズへ移籍します。
All-Starになった直後なのに、また移籍です。
ウォリアーズではステフィン・カリーやクレイ・トンプソンの怪我もあり、DLoは得点源として平均23.6得点を記録しました。これは現在までキャリア最高です。
しかし、ウォリアーズでの生活も長くは続きませんでした。シーズン途中にアンドリュー・ウィギンズらとのトレードでミネソタ・ティンバーウルブズへ移籍します。
レイカーズ。
ネッツ。
ウォリアーズ。
ウルブズ。
この時点でまだ24歳です。
今振り返ると、DLoのキャリアを象徴している気がします。能力は評価される。でも「絶対にこの選手を中心に残したい」というところまでは行かない。
ウルブズでも数字は残した。でも再びトレード
ミネソタでもDLoは普通に得点しました。2021-22シーズンは平均18.1得点、7.1アシスト。翌シーズンも17.9得点、6.2アシストを記録しています。
数字だけ見れば、十分スターター級のポイントガードです。
それでも2023年2月、3チーム間トレードで古巣レイカーズへ戻ることになります。
そしてレイカーズ復帰後も、レギュラーシーズンでは悪くありませんでした。2023-24シーズンには平均18.0得点、6.3アシスト、3P成功率41.5%を記録。3ポイント成功数では当時のレイカーズのシーズン記録を更新するほどシュートを決めました。
ここまで見ると、「じゃあ何が問題なの?」と思います。
DLoのキャリアを考える上で、ここが一番重要なポイントです。
DLoは「できること」が多い。でも「できないこと」も分かりやすい
DLoはNBAレベルで見ても、かなり多くのことができます。
ピック&ロールを使える。3ポイントを打てる。ミドルレンジもある。フローターもある。パスも出せる。試合によっては30得点近く取ることもできる。
ただし、その長所の多くはボールを持った時に発揮されるものです。
そしてDLoよりボールを持たせたいスーパースターがいるチームでは、少し難しくなります。
レブロン・ジェームズがボールを持つなら、隣のガードには高確率のキャッチ&シュートや守備力が欲しい。アンソニー・エドワーズが中心なら、その横にはエドワーズの負担を減らせるディフェンダーが欲しい。
DLo自身にボールを任せれば得点とアシストを作れる。でも優勝を狙うチームになるほど、DLoより優先してボールを持たせたい選手がいます。
ここが難しい。
プレーオフになると「弱点」が狙われる
さらにDLoの評価を難しくしてきたのがプレーオフです。
レギュラーシーズンでは、82試合を通して得点やゲームメイクを供給できるガードには大きな価値があります。しかしプレーオフになると、同じ相手と何度も戦います。
そうなると、相手は弱点を徹底的に探してきます。
守備で狙えるならスクリーンに巻き込む。フィジカルにプレッシャーをかければ効率が落ちるなら、そこを狙う。得意なピック&ロールへの対応もシリーズを通して修正してきます。
DLoはプレーオフで爆発した試合もあります。一方でシュートが入らない時、守備面を含めてコートに残すメリットが小さくなってしまう試合もありました。
「シュートが入らなくても絶対に使いたい選手」になれるか。
優勝を狙うチームで考えると、この差はかなり大きいです。
そしてNBAそのものがDLoに厳しい時代になった
個人的には今回のウェイブを、単純に「DLoが衰えた」で終わらせるのは少し違うと思っています。
もちろん30歳になり、若い頃より評価が落ちた部分はあります。昨季も26試合で平均10.2得点、4.0アシスト、3P成功率29.5%と、DLoとしてはかなり厳しい数字でした。
ただ、それと同時にNBAがDLoのようなガードへ求めるハードルが上がりました。
今のNBAには得点できるガードが本当に多いです。毎年ドラフトからボールハンドリングができて3ポイントを打てる若手が入ってきます。その中でロスターに残るには、「得点できます」「パスできます」だけでは差別化が難しくなっています。
守備で複数ポジションを守れるのか。ボールを持たなくても価値を作れるのか。高確率で3ポイントを決められるのか。トランジションで走れるのか。サラリーはいくらなのか。
NBAのロールプレイヤーには、どんどん多くのことが求められています。
「平均17点取れる」は昔ほど万能な評価ではない
ここが今のNBAの怖いところです。
DLoのキャリア平均は17.0得点です。数字だけ聞けば、「それなら普通に欲しいチームあるでしょ」と思います。
でもチーム作りは単純な足し算ではありません。
平均17点取れる選手を5人並べても平均85点取れるわけではない。全員がボールを必要とするなら、誰かの長所は消えてしまいます。
だから現在のNBAでは、「何点取れるか」だけでなく、スター選手の隣で何ができるかがものすごく重要になっています。
例えばアレックス・カルーソのような選手は、毎試合20得点を取らなくても守備、スクリーン、カッティング、ボールムーブメントでスターの隣に置きやすい。デリック・ホワイトも自分がずっとボールを持たなくても試合へ影響を与えられます。
DLoは逆です。
ある程度ボールを持たせれば強い。でも、ボールを持たせないならDLoである必要性が少しずつ薄くなる。
これがキャリア平均17得点の元All-Starが30歳でウェイブされる理由の一つだと思います。
じゃあDLoはもうNBAで通用しないのか?
とはいえ、ここで「DLoのNBAキャリア終了」と考えるのも早いでしょう。
まだ30歳です。
NBAで11年間プレーしてきた経験があり、ピック&ロールを操れて、自分でシュートを作れて、ゲームメイクもできる。ベンチからオフェンスを作るガードを必要としているチームなら、戦力になる可能性はあります。
そしてシーズンが始まれば状況は変わります。
怪我人が出るチームもあります。若手PGだけではオフェンスが安定しないチームも出てくるでしょう。プレーオフ争いの途中で、ベンチから得点を作れるベテランを探すチームもあるかもしれません。
その時、「元All-Starの30歳を安い契約で獲れる」と考えれば話は変わります。
DLoの価値がゼロになったわけではありません。
問題は、どの役割ならDLoの長所を最大化できるのかです。
全体2位、All-Star、そして30歳でウェイブ
DLoのキャリアを並べてみると、改めてNBAの厳しさを感じます。
2015年に全体2位でレイカーズ入り。ネッツへ移籍して22歳でAll-Star。ウォリアーズでは平均23.6得点。その後ウルブズ、再びレイカーズなど複数チームを渡り歩き、キャリア平均17.0得点を記録してきました。
そして2026年、30歳でウェイブ。
決して失敗したNBAキャリアではありません。むしろ全体2位指名選手の中でも、11年間NBAでプレーしてAll-Starまで到達した時点で十分な実績があります。
ただ、ずっとDLoについて回ったのが、「良い選手なのは間違いない。でも、この選手を中心にどこまで勝てる?」という問いだったように思います。
ネッツ時代には、その答えが一度「All-Star」まで行きました。
その後はチームを移るたびに役割が変わり、スターからスターター、スターターからロールプレイヤーへと立場も変わっていきました。
DLoが急に下手になったわけではない
今回のウェイブを見て、一番面白いと思ったのはここです。
DLoが突然バスケットボールを下手になったわけではありません。
むしろNBAで11年間生き残れるだけのスキルがあります。
ただ、その11年間でNBA側が変わりました。
ガードの得点力は当たり前になり、3ポイントの重要性はさらに高まり、プレーオフでは守備の弱点を徹底的に狙われる。スターの横には「ボールを持たなくても価値を出せる選手」が求められるようになりました。
その変化によって、以前なら大きな価値だったDLoの強みが、今では「それに加えて何ができる?」と問われるようになった。
NBA、厳しすぎる。笑
でもだからこそ、次の契約が面白いです。
30歳の元All-StarがこのままNBAから姿を消すのか。それとも「その値段ならDLo欲しい」というチームが現れるのか。
ディアンジェロ・ラッセルの次の契約は、現在のNBAが“得点できるポイントガード”をどのように評価しているのかを見る、一つの答えになるかもしれません。

