名前を呼ばれなかった選手は、どこへ行くのか
前回は、指名された瞬間に何が起きるかを見ました。1巡目にはルーキースケールという保証があり、2巡目にはそれが無い、という話です。
では、2巡目の選手や、最後まで名前を呼ばれなかった選手はどうなるのでしょうか。
結論から言うと、そこで終わりではありません。むしろNBAには、指名されなかった選手のための入口がいくつも用意されています。今回はその道筋を整理します。
ドラフト外(アンドラフト)とは
ドラフトで指名されなかった選手はアンドラフテッド・フリーエージェントになります。どのチームの交渉権にも縛られていないので、理屈のうえでは全30チームと話ができます。
2巡目で指名されるより自由度が高い、という見方すらあります。指名されてしまうとそのチームとしか交渉できませんが、指名されなければ、自分を一番必要としているチームを選べるからです。実際、ドラフト直後にはアンドラフト選手の争奪戦が起きます。
入口その1:ツーウェイ契約
ツーウェイ契約は、NBAチームとGリーグ(NBAの下部リーグ)を行き来できる契約です。
各チームが持てるツーウェイ契約の枠は3人まで。通常のロスター(最大15人)とは別枠なので、チームからすると「15人の外側で若手を抱えられる」仕組みになっています。
ツーウェイの選手は、普段はGリーグで出場機会を積み、必要に応じてNBAの試合に出ます。ただしNBAの試合に出られる日数には上限があり、プレーオフのロスターには入れません。あくまで「お試し期間つきの席」という位置づけです。
ここからスタンダード契約へ昇格する選手は毎年います。日本の渡邊雄太選手や河村勇輝選手の名前を通じて、この仕組みを知った方も多いのではないでしょうか。
入口その2:エグジビット10契約
もう一つがエグジビット10と呼ばれる契約です。
これは1年の非保証契約で、トレーニングキャンプに参加する権利が得られます。開幕前にカットされた場合でも、そのチームの傘下Gリーグチームに一定期間所属すれば、ボーナスが支払われる仕組みが付いています。
チーム側は「とりあえずキャンプで見てみたい」選手を低リスクで集められ、選手側は「NBAの練習に混ざって評価される機会」を得られる。両者の利害が一致するため、毎年多くの選手がこの形で契約します。
そしてエグジビット10は、開幕前にツーウェイ契約へ転換することができます。キャンプで結果を出せば、席が一つ上がるわけです。
入口その3:Gリーグから、海外から
Gリーグそのものを経由する道もあります。Gリーグには独自のドラフトがあり、そこから這い上がる選手もいます。
また、ヨーロッパやオーストラリア、日本のBリーグなどでキャリアを積んでから、改めてNBAに挑戦する選手もいます。10代で指名されるルートだけがNBAへの道ではない、ということです。
2巡目・アンドラフトから成功した選手は珍しくない
「指名されなかった=実力が足りない」ではありません。ドラフトはあくまで、その時点での評価にすぎないからです。
大学時代にケガをしていた、プレースタイルが当時の流行と合わなかった、チーム事情で出番が少なかった。評価が低かった理由はいくらでもあります。そして入団後に体が出来上がったり、リーグの流行が変わったりすれば、評価はひっくり返ります。
第4回で「スティール」という言葉を紹介しました。低い順位で指名されたのに大成功した選手のことです。アンドラフトからの成功は、その極端な例だと言えます。
重要キーワード
- アンドラフテッド・フリーエージェント:ドラフトで指名されなかった選手。全チームと交渉できる
- ツーウェイ契約:NBAとGリーグを行き来する契約。1チーム3枠まで
- エグジビット10:1年の非保証契約。キャンプ参加権とGリーグ残留ボーナスが付く
- スティール:低い指名順位にもかかわらず大成功した選手
まとめ:ドラフトは「唯一の入口」ではない
60人しか名前を呼ばれないイベントなのに、NBAのロスターは毎年入れ替わります。その差を埋めているのが、ツーウェイ契約であり、エグジビット10であり、Gリーグです。
ドラフト当日に泣いていた選手が、3年後に先発で出ている。NBAではこれが本当に起こります。だからこそ、ドラフトで指名されなかった選手の名前も、少し覚えておく価値があるんだと思います。
次回は、ドラフト指名権そのものがトレードで動く仕組みを解説します。「将来の1巡目指名権」という言葉の意味を整理します。お楽しみに!

