スペーシングを知らない、できない人があまりにも多すぎる。だからNBAのスペーシングをちゃんと調べてみた

スペーシングを知らない、できない人があまりにも多すぎる。だからNBAのスペーシングをちゃんと調べてみた
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草バスケをやっていると、スペーシングを理解できていない人があまりにも多いと感じることがあります。自分はコーナーに開いてスペースを作っているのに、反対側の混んでいるエリアで無理やり打とうとする人とか。せっかくなので、自分の苛立ちはいったん置いておいて、NBAで「スペーシング」がどういう概念として語られてきたのか、ちゃんと調べてみることにしました。

スペーシングとは何か

スペーシングとは、複数のシューターをコートに配置することでオフェンスがディフェンスに与える効果を指す概念です。意図的にオフェンス選手を散らして配置し、ディフェンダーに広い範囲をカバーさせる。3ポイントライン付近に立つ選手はそれ自体が「得点の脅威」になるので、ヘルプディフェンダーはその選手から離れられなくなります。離れればオープン3を献上してしまうからです。良いスペーシングは、ディフェンスを薄く伸ばし、ドライブ カット オープンショットのためのギャップを作り出します。

面白いのは、NBA公式が「スペーシング」を単独の統計用語として明確に定義しているわけではなさそうだ、という点です。今回調べた範囲では、NBA.comのスタッツ用語集に独立した「Spacing」の項目は見当たりませんでした。むしろ専門メディアやコーチング解説の中で使われてきた、実践的な戦術用語という位置づけのようです。

3ポイントがここまで増えた歴史

スペーシングが重視されるようになった背景には、3ポイントシュートの試投数の劇的な増加があります。NBA全体の1試合平均3ポイント試投数は、1980年代でわずか3.5本ほどでした。それが1990年代に11.4本、2000年代に15.7本、2010年代に23.1本と、一貫して右肩上がりに増え続け、2024-25シーズンには平均約37.2本まで達しています。1980年代から比べると10倍以上という、かなり劇的な変化です。

この流れを象徴するのが、ヒューストン ロケッツの「モレーボール」です。当時GMだったダリル モレーは、リング下シュート フリースロー、3ポイントを重視し、ミッドレンジシュートを避けるアナリティクス重視のオフェンス哲学を推進しました。実際にNBA公式の記事で、モレー本人がライアン アンダーソンについて「リーグ最高のスペーシングの効くビッグマン」と評したと明記されています。ロケッツは当時1試合平均114.6得点を記録し、自チームの3ポイント試投記録を更新するペースだったそうです。ミッドレンジシュートの割合自体も、2000年前後の3割前後から2020年代には1割強程度まで大きく減ったとする分析が複数見られました(具体的な数字は記事によって多少ばらつきがあるため、あくまで大まかな傾向として捉えるのが正確だと思います)。

サンズの「セブンセカンズ オア レス」とウォリアーズの「デス ラインナップ」

歴史を遡ると、2000年代半ばのフェニックス サンズでマイク ダントーニが率いた「セブンセカンズ オア レス」も、広いスペーシングを活かした速いペースのオフェンスとして位置づけられています。当時は「3ポイントを多く打つとプレーオフで苦戦する」という通説があった中で、それに反する先駆的なスタイルだったようです。

もう一つ象徴的なのが、2014-15シーズンのゴールデンステート ウォリアーズです。センターのアンドリュー ボーガットに代えてドレイモンド グリーンをセンターに置き、カリー クレイ トンプソン アンドレ イグダーラ ハリソン バーンズを並べた「デス ラインナップ」を採用しました。相手のビッグマンをペイントから引き離す効果があり、カリーとのピック&ロールを機能させやすくしたとされています。このシーズン、ウォリアーズは1975年以来のチャンピオンを獲得しています。

ステフィン カリーに関連してよく語られるのが「グラビティ」という言葉です。ボールを持たない選手がそのシュート能力への脅威によってディフェンダーを引きつけ、味方によりオープンなシュート機会を作る状況を指す用語で、カリーの台頭が普及のきっかけの一つとされています。ただしこれがNBA公式の算出指標なのか、メディア アナリスト独自の分析概念にとどまるのかは、今回の調査でもはっきり切り分けられませんでした。トラッキングデータを基にした分析寄りの概念、くらいに理解しておくのが無難そうです。

コーナー3が優遇される理由

スペーシングの効果を裏付けるデータとして、コーナー3が上部(アークの上)の3ポイントより成功率、期待値ともに高い傾向にあることも挙げられます。距離が近い分だけ入りやすいというシンプルな理由が大きく、上部3ポイントの精度トレンドをコーナー3と同じ距離まで延長すると、実際のコーナー3の成功率とほぼ一致するという分析もありました。コーナー3は味方のパスから生まれることが多いとも言われていて、良いスペーシングがチームプレーとしての得点機会を増やす、という理屈にもつながってきます。

まとめ

自分がコート上で感じていた「スペーシングを理解できていない人が多い」という苛立ちは、あくまで草バスケでの個人的な体験です。ただ、NBAの歴史を振り返ると、スペーシングという概念自体はここ数十年で戦術の中心に据えられるようになった、かなり大きな流れの一部なんだということが分かりました。モレーボール、セブンセカンズ オア レス、デス ラインナップ、そしてカリーのグラビティ。それぞれ時代もチームも違いますが、根っこにあるのは「ディフェンダーを広げて、ギャップを作る」という同じ発想です。次にコートに立つときは、自分がどこに立つかがチームの得点機会にどう影響するか、もう少し意識してプレーしてみようと思います。

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