「ホーンズ」セットは、バスケットボールのオフェンスにおける多用途なフォーメーションで、質の高いシュートや多様な得点機会を生み出すための定番の戦術です。
プレイヤーが形成する形が牛の角のように見えることから「ホーンズ」と呼ばれています。
一般的には、2人のビッグマンがハイポスト(フリースローラインの少し上)に配置され、ガードやウィングが外周に広がる形でスタートします。このセットアップは、ピック&ロールやアイソレーションプレーなど、チームの選手に応じて多様なプレーが可能であり、非常に効果的です。
ホーンズセットの主な構成と特徴
- フォーメーション:ホーンズの基本的な形は、2人のビッグマン(またはフォワード)がエルボー(フリースローラインの端)に配置され、ポイントガードがキーの頂点でボールを運びます。他の2人(通常はシューティングガードとスモールフォワード)はコーナーに広がってディフェンスを引き付けます。
- オプション:ホーンズの強みはその柔軟性にあり、同じセットアップから様々なプレーが展開できる点です。ボールハンドラーはどちらかのビッグマンにパスし、ハンドオフやドリブルハンドオフ(DHO)、または即座のピック&ロールなど、複数のプレーオプションが生まれます。コーナーのシューターたちはディフェンスを外に引き付け、スクリーンアクション周りでの密集を防ぎます。
ホーンズでの一般的なプレー
- ピック&ロールまたはピック&ポップ:ホーンズの最も基本的なアクションは、ポイントガードとビッグマンによるピック&ロールです。もう一人のビッグマンはエルボーに残り、セカンダリースクリーンや安全策として機能します。ビッグマンがシュートできるスキルを持つ場合は、ロールではなく「ピック&ポップ」でオープンシュートを狙うこともできます。
- ドリブルハンドオフ(DHO):ガードがエルボーのビッグマンにパスをした場合、そのビッグマンがすぐにドリブルハンドオフを行い、ウィングがカットしてくる動きが発生します。このアクションにより、ドライブやミドルレンジのシュート、ディフェンスが回り切れなかった場合はゴールへのアプローチが可能になります。
- ハイ・ローアクション:強力なポストプレーヤーがいるチームでは、ハイ・ローアクションを使用します。1人のビッグマンがエルボーでボールを持ち、もう1人のビッグマンがバスケットに向かってカットしていく動きです。ディフェンスが過剰に反応した場合、ペイント内での簡単な得点機会が生まれます。
- バックドアカットやオフボールスクリーン:ホーンズセットは、バックドアカットやオフボールスクリーンのスペーシングに優れています。ガードやウィングがスクリーンをかけるフェイントをし、素早くバスケットに向かうカットをします。このようなカットはディフェンスを不意打ちし、高確率のシュートチャンスを生みます。
チームがホーンズを使用する理由
ホーンズは、適応力が高く守りづらいフォーメーションであるため、多くのチームに好まれます。
同じ形から複数のプレーが展開できるため、ディフェンスに対応を迫り、迅速な判断が求められます。また、このフォーメーションはリバウンドやスペーシングの配置が自然と良好になるため、ハーフコートでもトランジションオフェンスでも効果的です。
現代バスケットボールにおけるホーンズの変化
近年のNBAではスペーシングやスリーポイントシュートの重要性が増しているため、従来のホーンズを現代の選手のスキルに合わせて調整した形が見られます:
- ストレッチビッグの活用:多くのチームがシュートが得意なビッグマンを使い、スクリーンをかけた後すぐにスリーポイントラインに展開することでスペースを広げます。
- ダブルドラッグスクリーン:2人のビッグマンが連続してスクリーンをかける「ダブルドラッグ」も、トランジションでよく使用される現代的なアレンジです。
デンバー・ナゲッツ(ニコラ・ヨキッチの優れたプレーメイク)やダラス・マーベリックス(ルカ・ドンチッチが主に使用)といったチームは、選手の多様なスキルを活かすためにホーンズセットを利用しています。
ホーンズの主なメリットとデメリット
- メリット:
- 多様で予測が難しく、同じセットアップから複数のプレーを展開できる
- パスやシュートが得意なビッグマンを効果的に活用できる
- ディフェンスを広げ、シューターやカッターのスペースを確保できる
- デメリット:
- ビッグマンやガードの熟練したパスと判断力が必要
- チームがこのフォーメーションに依存しすぎると、予測されやすくなる
このように、ホーンズセットはその柔軟性と適応力から、現代のNBAでも非常に効果的であり、多くのチームのオフェンスに欠かせない重要な戦術として採用されています。