NBAの10日間契約とは?1月5日に開く「最後の入口」と、3年目以上が全員同じ値段になる仕組み

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シーズン中のロースターを眺めていて、「この選手、いつの間に入ったんだろう?」と思ったことはありませんか。そして数週間後に見たら、もういない。

その正体がたいてい「10日間契約(10-day contract)」です。NBAで唯一、シーズン真っ只中に開く入口であり、Gリーグや海外リーグでプレーする選手にとっては年に一度の勝負どころでもあります。

この記事では、10日間契約が結べる時期、給料の決まり方、同じ選手に何回まで結べるのかといった制度面を整理したうえで、10日間契約からNBA優勝メンバーまで駆け上がった実例まで見ていきます。

10日間契約とは?1月5日に開く「NBAへの最後の入口」

10日間契約は、その名のとおり10日間だけ有効な短期契約です。毎シーズン、1月5日から結べるようになります。

なぜ1月5日なのか。ここにはNBAの契約カレンダーが関係しています。

日付何が起きるか
1月5日10日間契約を結べる窓が開く
1月7日この日までにウェイブしないと、ウェイバー公示が1月10日に間に合わない
1月10日不保証契約の年俸が全額保証に変わる

つまりチームは、1月10日に給料が確定してしまう前に不保証契約の選手を整理し、空いた枠を10日間契約で埋める——という動きをします。1月上旬にロースターの入れ替えが一気に増えるのは、このカレンダーのせいなんですね。ウェイブ制度の記事も合わせて読むと、この時期の動きがより分かりやすいと思います。

「10日間」なのに10日を超えることがある

契約期間は、契約日を含めて10日間です。1月5日に契約すれば1月14日まで。ここまではシンプルです。

ただし例外があります。その10日間にチームの試合が3試合未満しか組まれていない場合、3試合をカバーするまで契約期間が自動的に延長されます。オールスターブレイクを挟むときなどに起こる現象です。

これは選手を守るためのルールでもあります。10日契約の目的は「短期間のお試し」なので、試合に1〜2回しか出られないまま終わってしまっては、選手にとってもチームにとっても判断材料にならないわけです。

同じチームとは2回まで。3回目は「シーズン最後まで」か「終了」

ここが10日間契約の一番シビアなところです。

ひとつのチームが同じ選手に結べる10日間契約は、シーズン中に最大2回までと決まっています。2回を使い切った後、チームに残された選択肢は2つしかありません。

  • シーズン残り全期間の契約を結ぶ(本契約)
  • 手放す

つまり選手からすると、20日間で「このチームに必要な選手だ」と思わせなければならない。これが10日間契約が「オーディション」と呼ばれる理由です。

なお、あるチームで2回使い切っても、別のチームとなら新たに10日間契約を結べます。実際、複数チームを渡り歩きながらNBAに残り続ける選手は毎年何人もいます。

ロースター枠と「ハードシップ例外」

10日間契約は、ロースターの空き状況によって同時に抱えられる人数が変わります。

ロースターの状況同時に保持できる10日間契約の人数
15人で満員最大3人
1枠空いている最大2人
2枠空いている最大1人

「満員のときの方が多く抱えられるの?」と不思議に思うかもしれませんが、これは空き枠がある=そもそも通常契約で埋められるはず、という考え方によるものです。

そしてもうひとつ、怪我人が続出したチームを救う制度がハードシップ例外です。以下の3条件をすべて満たすと、15人が埋まっていても16人目を10日間契約で追加できます。

  • 怪我や病気で4人以上が出場不能
  • その4人全員が3試合以上連続で欠場している
  • その4人全員があと2週間以上は復帰できない見込み

4人ごとに1枠なので、8人が条件を満たせば2枠追加できます。ただし怪我人が予定より早く戻ってくると、チームはロースターを15人に戻さなければなりません。ハードシップで入った選手が、自分のプレーとは無関係に契約を打ち切られるのはこのためです。

給料は「ミニマム÷シーズン日数×10」で決まる

10日間契約の年俸は、経験年数ごとのミニマム契約額を日割りして計算します。2025-26シーズンのレギュラーシーズンは174日間だったので、計算式はこうなります。

フルシーズンのミニマム年俸 ÷ 174 × 10

実際の金額(2025-26シーズン実績)を並べると、こうなります。

NBA経験年数10日間契約の金額
0年(ルーキー)73,153ドル
1年117,730ドル
2年131,970ドル
3年136,717ドル
4年141,463ドル
5年153,330ドル
6年165,197ドル
7年177,064ドル
8年188,932ドル
9年189,872ドル
10年以上208,859ドル

実は「3年目以上のベテランは、チームにとって全員同じ値段」

ここがあまり知られていないポイントです。

上の表を見ると、経験10年以上の選手はルーキーの約2.9倍の給料をもらいます。だったらチームは若い選手を選ぶのが得——と思いきや、そうではありません。

NBAは経験3年以上の選手について、実際のミニマム額と「2年目相当のミニマム(131,970ドル)」との差額をリーグがチームに補填します。つまりチームの負担は、3年目の選手を獲ろうが12年目のベテランを獲ろうが同じ。差額はリーグが持ってくれるわけです。

この仕組みがあるからこそ、シーズン終盤に経験豊富なベテランが10日間契約で拾われる現象が起きます。チームからすれば、同じコストなら経験のある選手を選ばない理由がないんですよね。NBA選手の年収がどう決まるかという大枠を押さえたうえでこの補填制度を知ると、ミニマム契約の見え方がかなり変わると思います。

3月1日を過ぎても使える、唯一の抜け道

10日間契約には、もうひとつ地味に重要な役割があります。

NBAには「3月1日までにウェイブされていない選手は、そのシーズンのプレーオフで新チームに出場できない」というルールがあります。ところが10日間契約の選手は、3月1日より後に契約しても、その後ウェイブされない限りプレーオフ出場資格を失いません。

つまりトレード期限もバイアウト期限も過ぎた3月以降、優勝候補が戦力を足せる数少ない手段が10日間契約なんです。このあたりの事情はNBAのバイアウトとは?で詳しく書いているので、セットで読むとシーズン終盤のロースター運用が立体的に見えてくるはずです。

10日間契約から優勝メンバーへ:ゲイリー・ペイトン2世の例

制度の話が続いたので、最後に実例をひとつ。

ゲイリー・ペイトン2世は、10日間契約を3回経験しています。2019年1月21日にウィザーズと1回、2021年4月8日と4月19日にウォリアーズと2回。ウォリアーズでの2回を使い切った後、5月16日に「シーズン残りと翌シーズン」の契約を勝ち取りました。

そこからの展開はご存知のとおりです。2022年、ウォリアーズで優勝。ファイナル第5戦ではセルティックス相手に15得点5リバウンド3スティールを記録し、父ゲイリー・ペイトンと並んで史上5組目の「親子でNBA優勝」を達成しました。その年のオフには、ブレイザーズと3年2,800万ドルの契約を結んでいます。

10日間で13万ドル前後だった選手が、数年で3年2,800万ドルに到達する。もちろん例外的な成功例ですが、この入口が本物のキャリアにつながることを示す一例です。Gリーグに残るかヨーロッパ経由かという選択の話とも、地続きのテーマだと思います。

2025-26シーズンには40件の10日間契約が結ばれた

ちなみに2025-26シーズンには、シーズン終盤までで合計40件の10日間契約が結ばれています。30球団で40件ですから、1チームあたり1.3件ほど。決して珍しい制度ではなく、毎年コンスタントに使われている入口だということが分かります。

なお、10日間契約と混同されやすいのがTwo-Way契約やエグジビット10契約です。どれも「NBAの入口」ではありますが、結べる時期も期間も待遇もまったく違うので、あわせて押さえておくと理解が深まります。

まとめ

10日間契約のポイントを整理します。

  • 毎シーズン1月5日から結べる。1月10日の年俸保証デーとセットで理解すると流れが見える
  • 契約日を含めて10日間。ただし3試合に満たない場合は3試合分まで延長される
  • 同じチームとは2回まで。3回目は本契約か、さよならか
  • 給料はミニマムの日割り。ただし3年目以上はリーグが差額を補填するので、チームの負担は同額
  • 3月1日以降でもプレーオフ出場資格を保てる、シーズン終盤の貴重な補強手段

年俸数千万ドルの契約が飛び交うNBAで、13万ドルの10日間を必死に戦っている選手がいる。そう思って見ると、シーズン終盤のロースター表もちょっと違って見えてくるのではないでしょうか。

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