プロテクト付き指名権の読み方【NBAドラフト入門 Day14/100】

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前回は、ドラフト順位ごとの期待値を見ました。2010〜2019年の1位指名は10人中7人がオールスターになり、10位指名でオールスターの常連になったのはポール・ジョージくらいでした。上位の指名権ほど価値が高い、というのは数字の上でもはっきりしています。

そうなると、指名権を手放すチームの側には悩みが出てきます。数年後に自分たちが弱くなっていたら、手放した指名権が1位や2位になってしまうかもしれないからです。そのリスクに備えるための仕組みが、今回のテーマであるプロテクト付き指名権です。トレードのニュースでよく見る「トップ4プロテクト」のような条件をどう読めばいいのか、入門編として整理していきます。

プロテクトとは「この順位なら渡さない」という条件

プロテクトは、指名権を譲るときに付ける保護条件です。たとえば「2027年1巡目指名権(トップ4プロテクト)」と書かれていたら、その年のドラフトで指名順位が1位から4位になった場合は、指名権は元のチームに残ります。5位以下になった場合だけ、相手チームに渡ります。

ここで大事なのは、守られているのは「指名権を出す側」だということです。第10回で見たように、指名権トレードでは数年先の指名権がやり取りされることがよくあります。数年先のチーム状況は誰にも分かりません。主力のケガや移籍で一気に弱くなることもあります。そうなったときに、再建の柱になるはずの上位指名まで失うのは痛すぎる。プロテクトは、その最悪のケースだけを避けるための保険のようなものです。

逆に、何の条件も付いていない指名権は「アンプロテクト(プロテクトなし)」と呼ばれます。何位になっても必ず相手に渡る指名権です。

読むときに見るポイントは4つ

ニュースやトレードの一覧表で指名権を見かけたら、次の4つを順番に確認すると読みやすくなります。

  1. 何年のドラフトか:2027年、2028年など。遠い年ほど結果が読みにくくなります。
  2. どのチームの指名権か:順位を決めるのは、今その指名権を持っているチームではなく、元の持ち主の成績です。
  3. プロテクトの範囲:トップ4、トップ10、ロッタリープロテクト(1〜14位)など。範囲が広いほど、相手に渡る可能性は下がります。
  4. 渡らなかった場合どうなるか:翌年に持ち越すのか、別の指名権に変わるのか。

2つ目のポイントは意外と見落としがちです。指名権はトレードで何度も持ち主が変わることがありますが、順位はあくまで元のチームの成績で決まります。そのため「元はAチームの指名権が、今はCチームの手元にある」という状態はよくあります。

3つ目の範囲についても少し補足しておきます。ロッタリーに入るのは、プレーオフに出られなかった14チームです。なので「ロッタリープロテクト」は、言い換えると「プレーオフに出たチームの指名権なら渡す」という条件になります。トップ4よりずっと守りの固い条件です。

実例:ウォリアーズの2024年1巡目指名権

実際の例を1つ見てみます。2019年の夏、ウォリアーズはアンドレ・イグダーラをグリズリーズへトレードし、その際に2024年の1巡目指名権を手放しました。この指名権にはトップ4プロテクトが付いていました。

この指名権はその後も持ち主が変わり続けます。グリズリーズはマーカス・スマートを獲得するトレードでセルティックスへ渡し、セルティックスはドリュー・ホリデーを獲得するトレードでブレイザーズへ渡しました。最終的に、2024年のドラフトでウォリアーズの指名権は14位となり、ブレイザーズが行使しています。

ポイント2で書いた通り、順位を決めたのは最初から最後までウォリアーズの成績です。そして14位はトップ4の範囲外なので、プロテクトにはかからずにそのまま渡りました。2019年の時点では、数年後のウォリアーズがどうなっているか誰にも読めなかったはずです。だからこそトップ4だけは守っておいた、ということだと思います。

プロテクトにかかった場合はどうなるのか

では、プロテクトの範囲に入ってしまった場合はどうなるのでしょうか。指名権を受け取る約束そのものが消えるわけではありません。多くの場合は、契約で決められた別の形に変わります。

よくあるのは、翌年の同じチームの1巡目指名権に持ち越されるパターンです。持ち越し後はプロテクトの範囲が変わることも多く、年を追うごとに条件が緩くなっていく形がよく使われます。それでも何年か渡らなかった場合に、最後は2巡目指名権に変わる、という取り決めもあります。プロテクトの条件は、1年分だけでなく、その後の流れまで含めて読む必要があるわけです。

ここで少し気になったのが、ステピアン・ルールとの関係です。ステピアン・ルールは、1巡目指名権を2年続けて手元に持たない状態を作ってはいけないルールです。プロテクト付きの指名権が翌年へ持ち越されると、どの年の指名権がいつ動くかが変わってくるので、チームは他の指名権トレードとの組み合わせまで考えて条件を決めています。このあたりの細かい種類や組み合わせは、当ブログの別記事「NBAのプロテクト付き指名権とは?」でもう少し詳しくまとめているので、気になった方はそちらもどうぞ。

プロテクトなしの怖さ:ネッツとセルティックス

プロテクトの意味がよく分かるのは、むしろ付けなかった例かもしれません。2013年、ネッツはポール・ピアースとケビン・ガーネットらを獲得するトレードで、セルティックスに2014年・2016年・2018年の1巡目指名権と、2017年の指名権スワップ権を渡しました。2016年と2018年の指名権はアンプロテクトでした。

その後ネッツは低迷し、2016年の指名権は3位になってセルティックスはジェイレン・ブラウンを指名します。2017年はスワップ権でネッツの1位指名権を手にし、76ersとのトレードで3位に下がりながらジェイソン・テイタムを指名しました。2018年の指名権も、カイリー・アービング獲得のトレードでキャバリアーズへ渡しています。

ネッツから見れば、もしトップ数位のプロテクトを付けていれば、少なくとも上位指名の一部は手元に残せた可能性があります。調べてみて思ったのは、プロテクトなしの指名権は「渡す側がどこまで自分たちの将来を信じているか」の表れでもある、ということです。そして受け取る側にとっては、それが一番夢のある指名権になります。

プロテクトは指名権の価値をどう変えるか

前回の期待値の話とつなげると、プロテクトの意味がもう少し見えてきます。価値は1位から10位あたりまでで急に下がる、という話をしました。トップ4やトップ10のプロテクトは、まさにその一番価値の高い部分を受け取る側から取り上げる条件です。

つまり、同じ「1巡目指名権」でも、プロテクトの範囲が広いほど受け取る側にとっての価値は下がります。逆に、出す側はプロテクトを付けることで、指名権を手放しやすくなります。トレード交渉では、どの年の指名権を出すか、どこまで守るかが、選手の名前と同じくらい重要な材料になるわけです。

重要キーワード

  • プロテクト:指名権を譲るときに付ける保護条件。指定した順位の範囲に入ったら、指名権は元のチームに残る
  • トップ4プロテクト:1位〜4位になった場合は渡さない、という条件
  • ロッタリープロテクト:1位〜14位、つまりプレーオフに出られなかった場合は渡さない、という条件
  • アンプロテクト:何位になっても必ず相手に渡る指名権
  • 持ち越し:プロテクトにかかった指名権が翌年以降の指名権に変わること。最後は2巡目指名権に変わる取り決めもある

まとめ:指名権は「年・持ち主・範囲・その後」で読む

プロテクト付き指名権は、指名権を出す側が「最悪のケースだけは避けたい」という目的で付ける条件です。読むときは、何年のドラフトか、元はどのチームの指名権か、プロテクトの範囲はどこまでか、渡らなかった場合どうなるか、の4つを押さえれば、だいたいの意味はつかめます。

ウォリアーズの指名権は何度も持ち主を変えながらもトップ4にはかからずに渡り、ネッツのアンプロテクトの指名権はセルティックスの中心選手につながりました。同じ「1巡目指名権」という言葉でも、付いている条件によって中身はまったく違います。トレードのニュースで指名権の条件を見かけたら、ぜひカッコの中まで読んでみてください。

次回は、今回のネッツとセルティックスの例にも出てきたスワップ権を取り上げます。2チームの指名権のうち有利な方をもらえる権利とはどういうものなのか、プロテクトとの違いも含めて整理していきます。

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