ドラフト順位ごとの期待値。1位と10位で何が違うか【NBAドラフト入門 Day13/100】

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前回は、ドラフト・ロッタリーの確率がどう変わってきたかを、コイントスの時代から2027年の3-2-1ロッタリーまでたどりました。NBAが何度も確率をいじってきたのは、それだけ「上位の指名権」に価値があるからです。では、その価値は具体的にどれくらいなのでしょうか。

今回のテーマはドラフト順位ごとの期待値です。1位指名と10位指名では、手に入る選手にどれくらいの差があるのか。実際の指名結果を並べながら、順位の重みを考えてみます。

「期待値」で考えるとはどういうことか

ドラフトの話をすると、どうしても「この年の1位は当たりだった」「あの10位は外れだった」という個別の結果に目が行きます。第4回で見たスティールとバストの話も、まさにその当たり外れの物語でした。ただ、チームが指名権の価値を考えるときに見ているのは、1人の結果ではなく「その順位で指名したら平均してどれくらいの選手が取れるか」という見込みです。これが期待値の考え方です。

10位で指名して大当たりを引くこともあれば、1位で外すこともあります。それでも何年分も並べてみると、上の順位ほど良い選手が取れる傾向ははっきり出てきます。過去のドラフトを順位ごとに集計した分析では、価値は1位から10位あたりまでで急に下がり、それ以降はなだらかになる、という形がよく示されています。つまり、ロッタリーの内側での1つ2つの順位差は、20位台の順位差よりずっと重いわけです。

2010〜2019年の1位と10位を並べてみる

実際に比べてみましょう。2010年から2019年までの10年分、1位指名と10位指名の選手を並べると次のようになります。

  • 1位:ジョン・ウォール、カイリー・アービング、アンソニー・デイビス、アンソニー・ベネット、アンドリュー・ウィギンズ、カール・アンソニー・タウンズ、ベン・シモンズ、マーケル・フルツ、ディアンドレ・エイトン、ザイオン・ウィリアムソン
  • 10位:ポール・ジョージ、ジマー・フレデット、オースティン・リバース、CJ・マッカラム、エルフリッド・ペイトン、ジャスティス・ウィンズロー、ソン・メイカー、ザック・コリンズ、ミカル・ブリッジズ、キャム・レディッシュ

1位の10人のうち、オールスターに選ばれたことがあるのはウォール、アービング、デイビス、ウィギンズ、タウンズ、シモンズ、ザイオンの7人です。ベネットやフルツのように期待を大きく下回った例もありますが、10人中7人がオールスターというのはかなりの確率です。

一方の10位は、オールスターの常連と呼べるのはポール・ジョージくらいです。マッカラムは長くチームの主力得点源として活躍し、ブリッジズはリーグ有数の2ウェイのウイングに育ちました。ただ、ジマー・フレデットやソン・メイカーのように、ローテーションに定着しきれなかった選手も並んでいます。並べてみると、10位は「主力級が取れれば上出来、スターは数年に1人」というくらいの感覚に近いと思います。

なぜ1位と10位でここまで差がつくのか

理由のひとつは単純で、10位の時点では、すでに9人の有力候補が指名されているからです。第6回で見たように、各チームはスカウティングに大きな労力をかけています。誰が見ても抜けている選手は、ほぼ間違いなく上位で消えていきます。10位まで残っている選手は、どこかに「まだ分からない部分」を抱えていることが多いわけです。

もうひとつは、才能の分布が均等ではないことです。どのドラフトでも、将来のスター候補は多くて数人です。その数人を取り合う争いに参加できるのは、事実上トップ数位のチームだけになります。10位のチームが同じ年の1位と同じクラスの選手を取るには、スカウトが他の9チームより正しく見抜くか、運が味方するか、そのどちらかが必要になります。

2018年のドラフトはそのいい例です。この年はルカ・ドンチッチが3位で指名されましたが、10位のブリッジズも結果的に大きな当たりでした。ちなみにブリッジズを10位で指名したのは76ersで、ドラフト当日にサンズへトレードされています。第8回で触れた「指名した選手ではなく交渉権を渡す」形の、代表的な例です。

見落としがちな「コスト」の差

期待値を考えるうえで、もうひとつ大事なのがお金の話です。第8回で見たように、1巡目指名の選手にはルーキースケールが適用され、指名順位ごとに契約の基準額が決まっています。2026年のドラフトでは、1位の初年度年俸は10位のおよそ2倍強の水準です。

つまり、1位指名は「良い選手が取れる見込みが高い」代わりに、それなりの人件費もかかります。逆に10位で主力級を引き当てれば、その選手を数年間かなり安い契約で使えます。ブリッジズやマッカラムがルーキー契約の期間中に見せた働きは、まさにこの「割安さ」の典型でした。チームの立場からすると、期待値は選手の実力だけでなく、その選手にいくら払うかとセットで見る必要があるわけです。

調べてみて思ったのは、この割安さがあるからこそ、ロッタリー下位や10位前後の指名権もトレード市場で十分な価値を持つということです。1位ほどの夢はなくても、当たったときの見返りが大きい。第10回で見た指名権トレードの裏側には、こういう計算が働いています。

期待値はあくまで「平均」

ここまで書いておいてなんですが、期待値はあくまで平均の話です。同じ順位でも、ドラフトクラスの層の厚さによって中身はかなり変わります。上位に有力候補が集中している年の1位と、抜けた選手がいない年の1位では、価値がまったく違います。

また、指名後の育成環境も結果を大きく左右します。同じ選手でも、出場時間をもらえるチームか、主力の陰に隠れてしまうチームかで、伸び方は変わってくるはずです。期待値は「指名した時点での見込み」であって、その選手の未来をそのまま決めるものではありません。数字で整理しつつも、そこから外れていく選手がいるのがドラフトの面白いところだと思います。

重要キーワード

  • 期待値:その順位で指名した場合に、平均してどれくらいの選手が取れるかという見込み
  • トップ10の重み:価値は1位から10位あたりまでで急に下がり、それ以降はなだらかになる傾向
  • ルーキースケール:1巡目指名選手の順位ごとの契約基準額。1位と10位では初年度で2倍以上の差がある
  • ルーキー契約の割安さ:下位で主力級を引き当てると、数年間を安いコストで使えるというメリット

まとめ:1位は「高い確率」、10位は「割安な可能性」

2010〜2019年の1位指名は10人中7人がオールスターになり、10位指名でオールスターの常連になったのはポール・ジョージくらいでした。順位の差、とくにロッタリー上位の数位の差は、選手の質にはっきり表れます。NBAがロッタリーの確率を何度も見直してきたのも、この差の大きさを考えると納得がいきます。

ただ、上位指名にはそれだけのコストがかかり、10位前後で当たりを引けば大きな得をします。指名順位は「どれだけ良い選手が取れるか」と「いくらで抱えられるか」の両方で見ると、ニュースで指名権のトレードを見たときの印象もだいぶ変わってくると思います。

次回は、プロテクト付き指名権の読み方を取り上げます。トレードのニュースでよく見る「トップ4プロテクト」のような条件が、何を守っていて、指名権の価値をどう変えるのか。今回の期待値の話を土台に、入門編として整理していきます。

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