前回は、チームがあえて負けを重ねる「タンキング」と、それに対するリーグの対策を見ました。その中で2019年のロッタリー改革に少し触れましたが、実はロッタリーの方式はそれより前から何度も変わっています。今回はその移り変わりを、最初のコイントスの時代から順番にたどっていきます。
第3回でロッタリーの基本的な仕組みは説明したので、今回は「最下位のチームが1位指名権を引ける確率がどう動いてきたか」に絞ります。並べてみると、NBAが同じ悩みを抱えたまま、何度も答えを出し直してきたことが見えてきます。
ロッタリー以前:1966〜1984年のコイントス
NBAは1966年から、東西それぞれの最下位チーム同士のコイントスで1位指名権を決めていました。最初の1966年はニックスがコイントスに勝ち、キャジー・ラッセルを1位で指名しています。
この方式はとても分かりやすい反面、最下位になれば50%で1位指名権が手に入るという形でもあります。逆に言えば、最下位から少しでも上にいるチームには1位のチャンスがありません。シーズン終盤に「最下位争い」が起きやすい仕組みだったわけです。
1985年:最初のロッタリーは「全チーム同じ確率」
1985年、NBAは初めてドラフト・ロッタリーを導入しました。プレーオフに出られなかった7チームの封筒から1つを引く方式で、どのチームも確率は同じ約14.3%でした。この最初のロッタリーを当てたのがニックスで、パトリック・ユーイングを1位で指名しています。
成績に関係なく確率が同じなら、わざと負けても得はしません。タンキング対策としてはかなり思い切った形です。ただ、最初は抽選で1位から7位までを決めていたので、最下位のチームが7位まで落ちることもありえました。そこで1987年のドラフトからは抽選で決めるのを上位3つだけにして、残りは成績の逆順にしています。1989年にはヒートとホーネッツが加わり、対象は9チームになりました。
1990年:初めて「成績で確率に差」がつく
均等な確率のままだと、本当に弱いチームが報われにくくなります。そこで1990年から、成績に応じて確率に差をつける方式に変わりました。対象は11チームで、抽選の当たりは全部で66通りです。最下位のチームは11通り、その次は10通り、と1つずつ減っていき、ロッタリー対象の中で成績が一番良いチームは1通りでした。最下位チームの1位指名の確率は約16.7%です。
1993年、66分の1が当たった
この方式で大きな話題になったのが1993年です。66通りのうち1通りしか持っていなかったマジックが、約1.5%の確率で1位指名権を引き当てました。マジックは前年の1992年にも1位指名権を得ていたので、2年連続です。マジックはクリス・ウェバーを指名し、すぐにウォリアーズへトレードして、3位指名のペニー・ハーダウェイと将来の1巡目指名権3つを手に入れています。
調べてみて思ったのは、確率としてはありえることでも、リーグにとってはかなり都合の悪い結果だったということです。「弱いチームを助ける」ための制度で、プレーオフにあと一歩だったチームが1位を持っていく。この結果を受けて、NBAはすぐに方式を見直しました。
1994年:1,000通りの組み合わせと「最下位25%」
1993年10月に新しい方式が決まり、1994年のロッタリーから使われました。14個のボールから4つを引き、その組み合わせで当選チームを決める方式で、組み合わせは1,000通りあります。最下位のチームにはそのうち250通りが割り当てられ、1位指名の確率は16.7%から25%に上がりました。成績下位5チームを合わせると、1位指名の確率は83.5%になります。
抽選で決めるのは引き続き上位3つだけだったので、最下位のチームは最悪でも4位にとどまります。その後、リーグのチーム数が増えるのに合わせて対象は13チーム、2004年からは14チームに広がりましたが、「最下位は25%」という骨格は2018年のドラフトまで続きました。
ただし25%でも、外れるときは外れます。2006年のブレイザーズ、2007年のグリズリーズ、2009年のキングスは、いずれも一番高い確率を持ちながら4位まで下がりました。それでも「最下位なら4位以内が保証され、4回に1回は1位」という形は、第11回で見たように、負けることの見返りがはっきりしすぎていました。
2019年:下位3チームを14%に平らにする
タンキングへの批判が強まった流れの中で、2019年のドラフトから方式が変わりました。成績下位3チームの1位指名の確率をそろって14%にし、抽選で決める順位を上位4つに増やしています。最下位のチームは最悪5位まで落ちる可能性があり、「とにかく最下位を目指す」意味は薄くなりました。
2027年:最下位付近の方が不利になる「3-2-1ロッタリー」
そして第11回で取り上げたとおり、2027年のドラフトからは3-2-1ロッタリーが始まります。対象は16チームに広がり、成績下位3チームの1位指名の確率は5.4%、4番目から10番目に成績の悪いチームは8.1%です。これまでの歴史では、最下位のチームが一番当たりやすいか、少なくとも同じ確率でした。最下位付近の方がはっきり当たりにくくなるのは、ロッタリーの歴史で初めてのことになります。
最下位チームの確率を並べてみる
- 1966〜1984年:東西の最下位同士のコイントス(50%)
- 1985〜1989年:全チーム均等(1985年は7チームで約14.3%)
- 1990〜1993年:成績で差をつける方式(約16.7%)
- 1994〜2018年:1,000通りの組み合わせ(25%)
- 2019〜2026年:下位3チームを平らにする(14%)
- 2027年〜:3-2-1ロッタリー(5.4%)
こうして見ると、確率は上がったり下がったりを繰り返しています。均等にすれば本当に弱いチームが報われず、差をつければ負けることに意味が出てしまう。NBAはこの2つの間を、振り子のように行き来してきたのだと思います。
重要キーワード
- コイントス方式:1966〜1984年に使われた、東西の最下位チーム同士で1位指名権を決める方式
- 封筒方式(1985年):最初のロッタリー。対象の全チームが同じ確率で抽選された
- 加重ロッタリー:成績が悪いチームほど確率を高くする方式。1990年に始まった
- 1,000通りの組み合わせ:1994年から使われている、14個のボールから4つを引く抽選方式
- 3-2-1ロッタリー:2027年ドラフトから適用される新方式。最下位付近の確率を初めて下げた
まとめ:ロッタリーの歴史は「誰を助けるか」の調整の歴史
ロッタリーは1985年に始まってから、確率の決め方を何度も変えてきました。均等な確率から始まり、成績で差をつけ、1993年のマジックの件で差を大きくし、タンキングが目立つと今度は差を小さくする。2027年からは、最下位付近をあえて不利にするところまで来ました。
どの方式にも理由があり、どの方式にも弱点があります。弱いチームを助けたいけれど、負けることにご褒美を与えたくはない。この矛盾がある限り、ロッタリーはこれからも見直され続けるはずです。3-2-1ロッタリーも2029年のドラフトまでの予定なので、その後どうなるのかは今から気になるところです。
次回は、ドラフト順位ごとの期待値。1位と10位で何が違うかを取り上げます。ここまで確率の話をしてきましたが、そもそも1位指名と10位指名では、手に入る選手にどれくらいの差があるのか。過去のドラフトをもとに考えていきます。

