NBAのステピアン・ルールとは?1巡目を2年連続で手放せない理由と、史上最悪と呼ばれたオーナーの話

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各チームの将来指名権の一覧を眺めていると、あることに気づきませんか。放出済みの1巡目が、なぜか1年おきに並んでいるチームが多いんです。2027年は他所、2028年は自前、2029年はまた他所、みたいに。

偶然ではありません。「ステピアン・ルール」というNBA独特の決まりがそうさせています。そしてこのルール、ある実在のオーナーの名前が付いています。

ステピアン・ルールとは?2年連続で「将来の1巡目ゼロ」は作れない

ステピアン・ルール(Ted Stepien Rule)とは、将来のドラフトにおいて、1巡目指名権を2年連続で持たない状態を作ってはいけないというルールです。

言い換えると、「2028年と2029年の1巡目を両方トレードで出す」ということができません。どちらか一方は必ず手元に残す必要があります。

ここで大事なのが「将来の」という部分です。その年に開催されるドラフトの指名権は対象外なので、毎年その年の1巡目をトレードすること自体は可能です。ドラフトが終われば「将来」ではなくなるので、翌年分の縛りも解けます。

だから将来指名権のリストは、多くのチームで1年おきのパターンになるわけです。全30チームの将来指名権まとめを見てもらうと、この規則性が本当に至るところに出ています。

名前の由来は、史上最悪と言われたオーナー

ルール名になっているテッド・ステピアンは、1980年から1983年までキャバリアーズのオーナーを務めた人物です。

在任中の成績が、まず壮絶です。

項目内容
オーナー在任1980年〜1983年
チーム成績66勝180敗
ヘッドコーチ3年間で5人
累計赤字約1,500万ドル
放出した1巡目1982年から1986年までの5年分
出典: Wikipedia「Ted Stepien」

特に問題視されたのが、1980年11月に新規参入したばかりのエクスパンションチーム、マーベリックスに対して行った一連のトレードでした。将来の1巡目指名権を次々と手放し、結果として1982年から1986年まで5年連続で1巡目指名権を失っています。

NBAはこれを見過ごせず、1980年11月の時点でキャバリアーズのトレード権限そのものを凍結。さらに1981-82シーズン終了後、2年連続で将来の1巡目を手放すことを禁じる現在のルールを導入しました。

後日談もなかなかです。1983年にガンド兄弟がチームを買収した際、リーグは救済措置として、その後4回のドラフトでそれぞれ1巡目指名権を現金で購入できるよう手配しました。つまりリーグが「ステピアンが壊したものを弁償した」わけです。1つの球団のために制度と補償の両方が動いたケースは、そうそうありません。

抜け道は2つある

ただし、このルールは「2年連続で1巡目がゼロになること」を防ぐものなので、そうならなければ問題ありません。実務では主に2つの方法が使われます。

1. 他チームの指名権で穴を埋める

過去のトレードで他チームの1巡目を持っていれば、自前の1巡目を出してもその年はゼロになりません。だから指名権を大量に貯め込んでいるチームほど、次のトレードで自由に動けるという構図になります。

2. スワップ権を渡す

指名権そのものではなく、交換する権利(スワップ権)だけを渡す方法です。指名権は手元に残るのでルールに抵触せず、それでいて相手には価値を渡せます。近年のトレードで1巡目とスワップ権が交互に並ぶのは、ほぼこの理由です。

なお、ここにプロテクトが絡むとさらに厄介になります。プロテクト付きの指名権は「渡るかもしれないし渡らないかもしれない」状態なので、渡ってしまう可能性が少しでもあるなら、その年は1巡目を持っていない前提で判定されるという扱いになります。フロントが条件の書き方に神経を使うのは、このためです。

クリッパーズは5年連続で没収された。矛盾しないのか

ここで引っかかる人もいると思います。2026年9月、クリッパーズはサラリーキャップ回避の制裁として1巡目指名権5本を没収されました。対象は2029年、2030年、2031年、2032年、2033年です。

見事に5年連続ですよね。2年連続すら禁止されているはずなのに、なぜこれが成立するのか。

答えは単純で、ステピアン・ルールはあくまでトレードを縛るルールだからです。チームが自分の意思で資産を放出する行為に制限をかけているのであって、リーグが制裁として取り上げる行為はその枠の外にあります。ルールの趣旨も「球団が自らの将来を売り払って自滅するのを防ぐ」ことなので、罰則に適用されないのは筋が通っています。

逆に言えば、40年以上前にステピアンがやったことをリーグが本気で問題視した結果が今のルールで、その同じリーグが罰として同じ状態をクリッパーズに強制した、ということになります。制裁の重さがよく分かる話です。詳しい経緯はクリッパーズへの処分をまとめた記事や八村塁への影響を考えた記事で書いています。

まとめ

  • ステピアン・ルール=将来の1巡目指名権を2年連続で手放せないという決まり
  • 対象は「将来の」指名権。その年のドラフトの指名権は毎年トレード可能
  • 由来は1980-83年にキャバリアーズを壊したオーナー、テッド・ステピアン
  • 抜け道は「他チームの指名権で埋める」「スワップ権を渡す」の2つ
  • 将来指名権が1年おきに並ぶのは、ほぼこのルールのせい
  • トレードを縛るルールなので、リーグによる没収(2026年のクリッパーズ5年分)には適用されない

ここまで読んでから全30チームの将来指名権まとめを見ると、あの複雑な表が「なぜこうなっているのか」まで見えてくると思います。そもそもなぜ指名権がここまで重視されるのかという話もあわせてどうぞ。

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