【24th Step】プルアップジャンパーを覚えよう
はじめに
前回はオフボールスクリーンを取り上げました。ボールを持っていない選手が、スクリーンを使って自由になる動きです。
ただ、NBAを見ていると、スクリーンで振り切るどころか、ディフェンダーが目の前にいる状態で平然とシュートを沈める選手がいます。しかもドリブルからそのまま、ほとんど助走も準備もなしに。
それが今日のテーマ、プルアップジャンパーです。現代NBAで「この選手は止められない」と言われる選手のほとんどが、この武器を持っています。
プルアップジャンパーとは?
プルアップジャンパーは、ドリブルから自分で止まって打つジャンプシュートのことです。「プルアップ(pull up)」は「急に止まる」という意味で、走っている状態から減速して、その勢いを上方向へ変えてシュートに入ります。
対になる概念が「キャッチ&シュート」です。
- キャッチ&シュート:味方のパスを受けて、そのまま打つ。準備する時間があり、成功率も比較的高い
- プルアップ:自分のドリブルから打つ。誰のお膳立ても要らないが、体勢を自分で作らないといけない
難易度は明らかにプルアップの方が上です。それでもトップ選手がこれを多用するのは、相手の守り方を無効化できるからです。
なぜ現代NBAで重要なのか
ここで、これまで学んできたピック&ロールの話とつながります。
ピック&ロールを守るとき、ディフェンスには選択肢がありました。スクリーンの上を通る(オーバー)か、下をくぐる(アンダー)か。相手がシュートの苦手な選手なら、下をくぐって「打てるものなら打ってみろ」と距離を空けるのが定石です。ビッグマンが低めの位置で待つ「ドロップ」も同じ発想です。
プルアップジャンパーを持っている選手は、この守り方をそのまま罰します。スペースを空けられた瞬間に打てるからです。
つまりプルアップは、単なるシュートスキルではなく、ディフェンスの選択肢を1つ奪う戦術的な武器なんです。くぐられたら打つ、距離を詰められたら抜く。この二択を相手に突きつけられると、守る側は急に苦しくなります。
プルアップの名手たち
名前を挙げると分かりやすいと思います。
- ステフィン・カリー:スクリーンを使った直後、ディープスリーの距離からでも止まって打てる
- デイミアン・リラード:ロゴ付近からのプルアップが代名詞。間合いの概念を壊した選手の一人
- ケビン・デュラント:身長があるため、距離を詰められてもシュートの軌道が落ちない
- ルカ・ドンチッチ:ステップバックと組み合わせ、わざと距離を作ってから打つ
- シェイ・ギルジャス=アレクサンダー:ミドルレンジで止まる技術が高く、ペイント手前の嫌な位置から打つ
共通しているのは、止まるのがうまいことです。シュートフォームそのものより、減速して体を真上に跳ばせる状態を作る技術が効いています。
守る側はどう対応するのか
プルアップを持つ選手に対して、ディフェンスも手を打ちます。
- スクリーンの上を通る(オーバー):くぐると打たれるので、無理にでも上を通って距離を詰める
- ドロップの位置を上げる:ビッグマンが低く構えず、高い位置で迎え撃つ。ただしリング下が薄くなる
- ブリッツ(ダブルチーム):シュートを打たせる前に2人で寄せ、ボールを手放させる
- ピックアップを早くする:ハーフラインを越えた時点でプレッシャーをかけ、楽な間合いで来させない
どれも一長一短です。上を通ればドライブの道が開き、ドロップを上げればゴール下が空き、ブリッツをかければ4対3の数的不利が生まれます。プルアップがうまい選手は、相手に「どれを選んでも損をする」状況を作り出しているわけです。
今日の宿題
タスク1: ディフェンスの立ち位置を見る
- ピック&ロールのとき、ディフェンダーがスクリーンの上を通ったか下をくぐったかを確認してみてください
- くぐられた選手がそのまま打ったかどうか、そして入ったかどうかまで見ると、なぜその守り方を選んだのかが見えてきます
タスク2: 止まり方に注目する
- プルアップを打つ瞬間、どの足で止まっているか、何歩で減速しているかを見てみてください
- 同じ選手でも、右と左で止まり方が違うことがあります
次回予告
次回は「ポストアップの現在地!減ったと言われる戦術が、それでも残り続ける理由」を解説します。お楽しみに!
おわりに
プルアップジャンパーは、見た目には「ただのジャンプシュート」です。でも、そのシュートが入るかどうかで、ディフェンスの設計そのものが変わります。
次の試合では、ガードがドリブルを止めた瞬間に、ディフェンダーがどこにいたかをぜひ見てみてください。「空いていたから打った」のか「打てるから空けてもらえなかった」のか。そこまで見えると、ピック&ロールの攻防がもう一段おもしろくなります。


