【33th Step】ブリッツとハードショー――2人で挟みに行く判断
はじめに
前回はICE(ダウン)を取り上げて、サイドのピック&ロールで「スクリーンを使わせない」守り方を見ました。予告したとおり、今回はその反対側にある考え方です。スクリーンを使ってきたボールマンに対して、ディフェンス2人が前へ出て、積極的にプレッシャーをかけにいく守り方を見ていきます。
テーマはブリッツとハードショーです。どちらも「スクリーナーのディフェンスが前に出る」という点では似ていますが、出たあとにどうするかがまったく違います。調べてみて、この「出たあと」の違いこそが今回の一番のポイントだと感じました。
ブリッツとは
ブリッツは、ピック&ロールでボールマンのディフェンスとスクリーナーのディフェンスの2人が、そのままボールマンを挟みに行く守り方です。つまり、ピック&ロールの瞬間にダブルチームをかけるイメージです。英語圏では「トラップ」と呼ばれることもあり、第28回で見たトラップの考え方を、ピック&ロールの場面に持ち込んだものと考えると分かりやすいと思います。
狙いははっきりしていて、ボールをその選手の手から離させることです。どんなに上手いボールハンドラーでも、2人に囲まれた状態でシュートを打つのは簡単ではありません。スクリーンを使ってフリーになるはずの瞬間に、逆に2人が目の前に来るので、ボールマンはパスを出すしかなくなります。
ハードショーとは
ハードショーは、スクリーナーのディフェンスがスクリーンの外側へ大きく飛び出して、ボールマンの進路をふさぎ、その間にボールマンのディフェンスが戻ってくるのを待つ守り方です。「ハードヘッジ」と呼ばれることもあります。
ブリッツとの違いは、飛び出したビッグマンがボールマンのディフェンスが追いついたら、すぐに自分のマーク(スクリーナー)へ戻ることです。ずっと2人で挟み続けるのではなく、一瞬だけボールマンの足を止めて、時間を稼ぐのが目的です。ボールマンを後ろへ下がらせたり、横へ大きく膨らませたりできれば成功です。
整理すると、ブリッツは「2人でボールを奪いに行く」、ハードショーは「2人目が一瞬だけ見せて元に戻る」です。見た目は最初の1歩がよく似ているので、試合中はビッグマンが戻るのか、残るのかを見ると区別しやすくなります。
なぜ2人で前に出るのか
前回のICEや、ビッグマンがゴール近くに下がって構える守り方は、「ボールマンに多少シュートを打たれても、ゴール下は守る」という考え方でした。ところが、相手がスリーポイントもプルアップジャンパーも決められるボールハンドラーだと、下がって構えている間にスクリーンの裏から簡単にシュートを打たれてしまいます。第24回で見たプルアップジャンパーが上手い選手ほど、この下がる守り方は通用しにくくなります。
そこで、「この選手にだけはシュートを打たせない」と割り切って、2人で前に出るわけです。ステフィン・カリーやデイミアン・リラードのように、スクリーンを使った瞬間にどこからでも打てる選手は、ブリッツを受けることが多い選手としてよく名前が挙がります。相手のエースからボールを取り上げて、ほかの4人に勝負させる。そういう判断です。
守る側の注意点
2人で前に出れば、当然どこかに人数の足りない場所が生まれます。ボールマンに2人が付いている間、コート上ではオフェンス4人に対してディフェンス3人という状況になっています。これがブリッツの一番のリスクです。
- ローテーションの速さ:ボールが外に出された瞬間、残りの3人が第6回で見たヘルプの動きで次々に詰めなければいけません。1人でも遅れると、フリーのシュートを与えます
- クローズアウトの質:詰める距離が長くなる分、第26回のクローズアウトの技術がそのまま問われます。勢いよく飛び込みすぎると、ドライブで抜かれます
- ハードショーの戻り:ハードショーでは、ビッグマンが戻るまでの間、スクリーナーがフリーになりやすいです。戻りが遅れると、ロールしたスクリーナーへのパスで簡単に崩されます
つまりブリッツもハードショーも、前に出る2人だけの守り方ではなく、後ろの3人の準備まで含めた「5人の守り方」です。ここが噛み合わないと、前に出た分だけ穴が大きくなります。
攻める側の対応
攻める側から見ると、ブリッツは「2人を引きつけてくれた」とも言えます。崩し方の基本は、素早くボールを離して、4対3を作ることです。
- スクリーナーへの早いパス:挟まれる前に、ロールまたは少しだけ下がったスクリーナーへパスを出します。受けたスクリーナーが真ん中で前を向けば、4対3の状況からパスやドライブを選べます
- ショートロール:前回のICEでも出てきた動きです。フリースローライン付近でボールを受けたスクリーナーが、空いたゴール下やコーナーへ配球します。ブリッツを受けるチームでは、この位置でパスをさばけるビッグマンの価値がかなり上がります
- ブリッツの前にスリーを打つ/スプリット:2人が寄ってくる前に打つ、あるいは2人の間をドリブルで割って抜ける(スプリット)という対応もあります。ただ、これは上手い選手でなければ難しいです
- ボールマンが逆に離れる:ボールを離したあと、エース自身がオフボールでもう一度動き直して、別の場所でボールを受け直す形もあります
こうして見ると、ブリッツを使う側と崩す側の駆け引きは「エースから取り上げたボールを、残りの4人がどう生かすか」に集約されます。ブリッツを受けたあとのチームの動きを見ると、そのチームがどれだけ準備しているかがよく分かります。
今日の宿題
タスク1: 飛び出したビッグマンが「戻るか、残るか」を見る
- ピック&ロールでスクリーナーのディフェンスが大きく前へ出てきたら、その選手がすぐに自分のマークへ戻るのか、そのままボールマンを挟み続けるのかを見てみてください
- すぐ戻ればハードショー、残って2人で挟んでいればブリッツです
タスク2: 挟まれたあとのボールの行き先を追う
- ブリッツを受けたボールマンが、誰にパスを出したかを見てみてください
- そこから何本パスがつながって、最終的に誰がシュートを打ったかまで追えると、4対3の崩し方が見えてきます
次回予告
次回も引き続き、ディフェンスの体系を見ていきます。今回は「前に出る」守り方でしたが、守り方を選ぶ判断は相手の選手や場面によって変わります。テーマはまた次回に発表しますので、お楽しみに!
おわりに
ブリッツとハードショーは、どちらも「2人で前に出る」守り方ですが、その後に残るか戻るかで意味がまったく変わります。ブリッツはエースからボールを取り上げるための思い切った判断で、ハードショーは一瞬だけ時間を稼ぐための判断です。どちらも、後ろの3人が準備できていて初めて成立します。
前回のICEと今回のブリッツを並べてみると、ピック&ロールの守り方は「下がる」「押し込む」「前に出る」と、本当に幅が広いことが分かります。次に試合を見るときは、スクリーンがかかった瞬間にビッグマンがどこにいるかを、ぜひ意識してみてください。

