「Gリーグ」という言葉、NBAのニュースでは毎日のように出てきます。河村勇輝選手も渡邊雄太選手も通った場所です。でも、Gリーグって実際どういう組織なんでしょうか。何チームあって、選手はいくらもらって、どうやったらNBAに上がれるのか——意外と説明されないまま使われている言葉だと思います。
そしてあまり知られていませんが、Gリーグは2025年10月に25年の歴史で初めて労働協約(CBA)を結びました。給料も待遇も、ここ1年で明確に変わっています。日本語の記事ではほとんど触れられていないこの変化も含めて、Gリーグの仕組みを数字で整理してみました。
Gリーグとは?2026-27シーズンは31チーム体制
NBA Gリーグは、NBAの公式な育成リーグです。2026-27シーズンは31チームで、NBA全30球団がそれぞれ提携チームを所有または運営しており、それに1チームを加えた31チームでリーグが構成されています。
所有形態には2パターンあります。28チームはNBA球団が完全に所有。残る2チーム(ナゲッツとロケッツの提携先)はハイブリッド型で、バスケットボール部門はNBA球団が運営し、ビジネス部門は現地オーナーが担当します。
2026-27シーズンは移転も2件ありました。レイカーズの提携先がコーチェラ・バレー・レイカーズ、ペリカンズの提携先がレイクタウン・スクアドロンとして新たにスタートしています。NBA本体が30チームになるまでの歴史と比べると、Gリーグはかなり流動的に動いているのが分かります。
シーズンの中身——14試合+36試合の二部構成
Gリーグのシーズン構成は、NBAとはかなり違います。2026-27シーズンは11月6日(金)に開幕し、全チームが少なくとも50試合を戦います。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 開幕 | 2026年11月6日(金) |
| ティップオフ・トーナメント | 14試合。4つの地域ディビジョンに分かれ、同地域のチームとのみ対戦 |
| ウィンターショーケース | 2026年12月19〜22日、オーランド開催。各チーム最低2試合 |
| レギュラーシーズン | 36試合 |
| プレーオフ | 各カンファレンス上位8チーム |
| ファイナル | 2027年4月 |
注目したいのが12月のウィンターショーケースです。全チームがオーランドに集まり、NBA各球団のGMやスカウトが一斉に見にくる場。ここでの数日間が、シーズン中のNBA昇格を左右します。ティップオフ・トーナメントの地域王者と全体上位4チームがここで優勝を争う仕組みになっているので、チームにとっても選手にとっても勝負の場です。
給料はいくら?初のCBAで4万5000ドルへ
ここが一番気になるところだと思います。2025年10月、GリーグとNext Gen Basketball Players Union(選手組合)が初の労働協約を締結しました。期間は2025-26シーズンから2028-29シーズンまでの4年間。2027年10月1日までに通知があれば2027-28シーズン後に早期終了できるオプションも付いています。
| 項目 | 金額・内容 |
|---|---|
| 標準年俸 | 2025-26シーズンから45,000ドル。以降は毎年3%増 |
| 追加最低保障 | NBA契約なしで通年在籍した選手に5,000ドルを別途支給 |
| ツーウェイ契約(NBA側) | 2026-27シーズンは678,882ドル |
| 日当(パーディアム) | 2025-26シーズンに15%増、以降毎年3%増 |
| バイアウト額 | 経験5年以上の選手は50,000ドルから30,000ドルへ引き下げ(2026-27から) |
標準年俸45,000ドルに3%を積み上げると、2026-27シーズンは約46,350ドルという計算になります。日本円で700万円前後。NBAの最低年俸が1,357,763ドル(経験0年)であることを考えると、同じプロバスケ選手でこの差です。ツーウェイ契約の厳しさを書いた記事でも触れましたが、678,882ドルのツーウェイと46,000ドルのGリーグ標準契約の間には、15倍近い落差があります。
CBAで変わったのは金額だけじゃない
この初のCBAで個人的に一番驚いたのは、生活面の条項です。これまで当たり前ではなかったことが、ようやく権利として明記されました。
- ホームでは個室の住居、ロードでは個室のホテル(相部屋からの改善)
- 全ホームゲームの前後に食事(トレーニングテーブル)を用意
- 移動の改善。座席が広く、フルサイズのチャーターバスを使用
- ベテラン選手への健康保険の全額償還
- 全選手のメンタルヘルス支援へのアクセス拡大
- ケガをした際の給与継続の増額
- 練習施設の利用時間の拡大
「相部屋だった」「試合後の食事がなかった」というのが直前までの実態だったわけです。NBAの下部組織という響きから想像するより、ずっと厳しい環境だったことが分かります。制度面では、アフィリエイト選手の枠が1チーム4人から5人に拡大し、リターニング・プレーヤー・ライツ(保有権)が2年から1年に短縮されました(2026-27から)。選手が動きやすくなる方向の変更です。
NBAに上がるルートは9つある
Gリーグのロースターは、9つの経路から構成されます。NBAからのアサインメント、ツーウェイ契約(1球団3人まで)、Gリーグドラフト指名、指定アフィリエイト選手、地元トライアウト、前年からの継続、ウェイバー獲得、高校卒・国際選手の加入など。Gリーグドラフトは4巡・150人規模で、18歳以上であれば対象になります。
そしてNBAへの道が「ゲータレード・コールアップ」です。Gリーグ選手がNBA契約を結ぶことを指し、過去14シーズン連続で毎年30人以上が昇格しています。31チーム×十数人という母数を考えると狭い門ですが、毎年確実に開いている門でもあります。
逆方向のアサインメント(NBAからGリーグへの派遣)にもルールがあります。経験3年以下の選手は回数無制限で送れて、NBA球団はいつでも呼び戻せます。若手が1シーズンに何度も行き来するのは、このルールがあるからです。
Gリーグに残るべきか、海外に出るべきか
46,000ドルの年俸を知ると、当然こう思うはずです。ヨーロッパに行った方が稼げるんじゃないか、と。実際、ユーロリーグの中堅チームなら数十万ドル規模の契約も珍しくありません。
この問いについては、平均在籍年数と実例から調べた記事で詳しく検証しました。結論だけ言えば、「NBAの目に触れ続けられる」というGリーグの価値は金額に換算しづらい、という話になります。エグジビット10契約の60日ボーナス制度も、選手をGリーグに引き留めるために設計されたものです。リーグ側もこの流出を気にしている、ということの証拠だと思います。
日本人選手で言えば、河村勇輝選手は2024-25シーズンにツーウェイ契約でメンフィス・ハッスルとグリズリーズを行き来しました(当時の記事)。ロースター枠の仕組みと合わせて読むと、なぜツーウェイ選手がGリーグに「置かれる」のかが見えてきます。
まとめ
Gリーグの現在地を数字でまとめます。
- 2026-27シーズンは31チーム。NBA全30球団が提携先を持つ
- 11月6日開幕。ティップオフ・トーナメント14試合+レギュラーシーズン36試合で最低50試合
- 標準年俸は45,000ドル(2025-26)から毎年3%増。2026-27は約46,350ドル
- 2025年10月に25年目で初のCBA締結。個室住居や試合前後の食事もここで明記された
- ゲータレード・コールアップは14シーズン連続で年30人以上
- 経験3年以下の選手はアサインメント回数無制限
「Gリーグ行き」という言葉には、どこかネガティブな響きがあります。でも実態を調べてみると、31チームの受け皿があり、毎年30人以上がそこからNBAへ上がり、2025年にはようやく選手の権利が協約として形になった場所でした。年俸46,000ドルで個室のホテルに泊まれるようになったことを「前進」と呼ぶしかない世界ですが、それでもNBAまであと一歩の選手たちが毎晩戦っている場所です。今シーズン、ショーケースの結果くらいは追ってみようかなと思っています。

