NBAはなぜロスター15人なのに7人から9人で戦うのか?優勝したサンダーの出場時間で考える

NBAはなぜロスター15人なのに7人から9人で戦うのか?優勝したサンダーの出場時間で考える
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NBAのチームには15人の選手がいます。それなのに試合を見ていると、実際にコートに立つのは7人から9人くらいで、残りの選手はほとんどベンチに座ったままです。交代は何回でもできるのだから、全員を少しずつ使った方が疲れも減るし、けがの予防にもなりそうですよね。

自分も同じことを考えていました。全員がいつも元気な状態で走り回れたら、相手はずっと疲れないチームと戦うことになります。それでもNBAのコーチたちは、わざわざ人数を絞って戦っています。そこには何か理由があるはずです。

この記事では、ロスターの仕組みと出場時間の実際の数字を見ながら、NBAのチームが少ない人数で戦う理由を考えていきます。例として取り上げるのは、2024-25シーズンに優勝したオクラホマシティ サンダーです。数字はバスケットボール リファレンスとランド オブ バスケットボールで突き合わせて、一致したものを使っています。

そもそも15人のロスターはどういう枠なのか

まずはロスターの枠から整理します。NBAでは、レギュラーシーズン中に結べる通常の契約は最大15人です。これとは別に、Gリーグと行き来できるツーウェイ契約の選手を最大3人まで持てます。ツーウェイ契約の選手は、レギュラーシーズンで試合に登録できるのが最大50試合までと決まっています。

一方で、試合ができる最低の人数も決まっています。けがなどで人数が減っても、1試合で最低8人がユニフォームを着られる状態でなければなりません。15人という枠は、全員を毎試合使うための数というより、82試合の長いシーズンを最後まで戦い抜くための保険に近いものです。

ロスターの細かいルールは、NBAのロースター枠の仕組みを解説した記事にまとめています。

ここで簡単な計算をしてみます。NBAの試合は12分のクォーターが4つで48分です。コートには常に5人いるので、延長が無ければチームの出場時間の合計は240分になります。これを15人で均等に分けると、1人あたり16分です。

もし本当に全員を同じだけ使ったら、エースも15番目の選手も16分ずつしか出ないことになります。この数字を頭に置いたまま、実際の出場時間を見てみましょう。

優勝したサンダーの出場時間を見てみる

2024-25シーズンのサンダーの1試合平均の出場時間を、レギュラーシーズンとプレーオフで並べました。プレーオフでの出場時間が長い順です。

選手 RSの試合数 RSの平均出場時間 POの試合数 POの平均出場時間
シェイ ギルジャス アレクサンダー 76 34.2 23 37.0
ジェイレン ウィリアムズ 69 32.4 23 34.6
チェット ホルムグレン 32 27.4 23 29.8
ルーゲンツ ドート 71 29.2 23 29.0
アレックス カルーソ 54 19.3 23 24.4
アイザイア ハーテンシュタイン 57 27.9 23 22.4
ケイソン ウォレス 68 27.6 23 22.4
アーロン ウィギンズ 76 22.9 22 13.8
アイザイア ジョー 74 21.7 21 10.0
ケンリッチ ウィリアムズ 69 16.4 16 8.6
ジェイリン ウィリアムズ 47 16.7 17 8.3
エイジェイ ミッチェル 36 16.6 12 7.0

RSはレギュラーシーズン、POはプレーオフです。出場時間は分で、バスケットボール リファレンスとランド オブ バスケットボールの数字が一致しています。

レギュラーシーズンでは、平均20分以上出た選手が8人いました。15分以上まで広げると12人になります。シーズンを通して1試合でも出場した選手は19人もいました。長いシーズンの中では、けがや休養で空いた穴を多くの選手で埋めていたことがわかります。

ところがプレーオフになると様子が変わります。平均20分以上出た選手は7人に減りました。上位7人の出場時間を足すと199.6分です。チームの1試合平均は延長も含めて241.1分なので、その約8割を7人で回していた計算になります。

エースのギルジャス アレクサンダーは34.2分から37.0分へと約3分増えました。逆にレギュラーシーズンで20分以上出ていたウィギンズとジョーは、プレーオフでは10分台前半まで減っています。優勝チームでさえ、大事な試合ほど人数を絞っていたわけです。

全員を均等に使わない一番の理由は実力差

では、なぜ人数を絞るのでしょうか。一番大きな理由はとてもシンプルで、選手の実力に差があるからです。

先ほどの計算を思い出してください。チームの出場時間は合計240分しかありません。誰かが1分多く出れば、ほかの誰かが1分少なくなります。15番目の選手に16分を渡すということは、MVP級のエースから同じだけの時間を取り上げることと同じです。

NBAの選手は全員がとんでもなく上手な選手です。それでもチームの中では、スター選手とベンチの端にいる選手のあいだに大きな差があります。ベンチの端の選手は、若手の育成枠だったり、けが人が出たときの控えだったりすることが多いからです。

体力が十分に残っているなら、うまい選手が長く出る方が勝つ確率は上がります。疲れていないことの利点よりも、うまい選手がコートにいることの利点の方がずっと大きいのです。全員がいつも元気でも、全員が少しずつ下手になってしまっては意味がありません。

もうひとつ、5人の組み合わせの問題もあります。バスケットボールはスペースの取り方や守備の受け渡しなど、5人の連携で成り立つスポーツです。いつも同じメンバーで出ていれば、声をかけなくても動きがそろってきます。毎回違う顔ぶれになると、こうした息の合い方を作るのが難しくなります。

選手の役割もはっきりします。何番目に呼ばれて、どの時間帯に、何を求められるのか。それが決まっている方が、選手は準備をしやすくなります。出番がいつ来るかわからない状態は、選手にとっても負担が大きいものです。

交代は無制限でも、自由に入れ替えられるわけではない

疑問の中にあった、交代は無制限なのだから、という点も見ておきます。たしかにNBAでは交代の回数に上限がありません。一度ベンチに下がった選手が、また試合に戻ることもできます。

ただし、いつでも好きなときに替えられるわけではありません。NBAの公式ルールでは、交代する選手はまずオフィシャル席に申し出て、審判にコートへ呼ばれるまで待つ決まりです。ボールが生きている間に入ることはできません。

つまり交代できるのは、ファウルやボールがコートの外に出たときなど、プレーが止まった場面に限られます。プレーが続いているあいだは、どんなに疲れていても5人のまま走り続けるしかありません。

ここでアイスホッケーと比べてみると違いがよくわかります。NHLでは、1回の出場時間はおよそ30秒から45秒ほどだと言われています。プレーが続いていてもベンチ前で次々に入れ替わる、いわゆるラインチェンジができるので、全員が全力で動ける短い時間で回すのが当たり前です。

バスケットボールはそうはいきません。プレーの切れ目でしか替えられないうえに、一人ひとりが攻めも守りもこなす必要があります。ホッケーのように4組のセットを短い時間で回す戦い方は、ルールの面からも組み立てにくいのです。

それに、試合の中には休む時間がすでにたくさん用意されています。クォーターの間やハーフタイム、タイムアウトやフリースローの時間などです。実際の試合時間は48分でも、止まっている時間を含めるとずっと長くなります。この点は1試合平均のチームスタッツを調べた記事でも、タイムアウトや交代の回数を数えて紹介しています。

スター選手でも35分前後なら、残りの10分ちょっとは休めます。その休みをどこで取らせるかを考えるのが、コーチの腕の見せどころです。

それでも疲労とけがの管理はしている

人数を絞るといっても、疲れやけがを気にしていないわけではありません。むしろ今のNBAは、昔よりずっと細かく選手の体を管理しています。

サンダーの例を思い出してください。レギュラーシーズンには19人が出場し、15分以上出た選手が12人いました。82試合の長丁場では、出場時間を分け合ったり、試合ごと休ませたりして負担を散らしています。ホルムグレンのように出場が32試合にとどまった選手もいて、そうした穴も控えの選手たちが埋めていました。

この試合ごと休ませるやり方は、ロードマネジメントと呼ばれています。良い面と悪い面の両方があり、ロードマネジメントの功罪をまとめた記事でくわしく取り上げました。

ただ、休ませすぎるとファンが困ります。楽しみにしていたスター選手が出ない試合が増えたため、NBAは2023-24シーズンから選手の出場に関する方針を導入しました。

この方針では、過去3シーズンの間にオールスターかオールNBAに選ばれた選手をスター選手と呼びます。健康なスター選手を2人同時に休ませることはできず、全国中継の試合などでも休ませられません。違反すると、1回目は10万ドル、2回目は25万ドルの罰金です。

あわせて、MVPやオールNBAなどの主な個人賞には、65試合以上の出場が必要になりました。しかも出場として数えるのは、基本的に20分以上プレーした試合です。スター選手にとっては、休みすぎると賞を逃すことになります。

つまり今のNBAは、試合ごとの休養でシーズン全体の負担を減らします。そのうえで出た試合では、うまい選手に長く出てもらうという考え方です。全員を少しずつ使うのではなく、休ませる日と使う日を分けて体を守っているわけです。

プレーオフで7人前後に絞られる理由

最後に、プレーオフで人数がさらに減る理由を考えます。サンダーでも、20分以上出た選手は8人から7人になり、上位7人で出場時間の約8割を占めていました。

一番の理由は、1試合の重みがまったく違うことです。レギュラーシーズンは82試合あるので、1つ負けても取り返せます。プレーオフは4勝した方が勝ち上がる短い勝負で、1つの負けが重くのしかかります。そうなると、先のことよりも目の前の試合で一番強いメンバーを長く出したくなります。

相手が同じチームに続けて当たるのも大きな点です。プレーオフでは同じ相手と何試合も戦うので、相手は弱いところを徹底的に突いてきます。守備で狙われやすい選手や、相手の作戦に合わない選手は、少しずつ出番を減らされていきます。

一方で、カルーソのように役割がはまった選手の出番は増えました。レギュラーシーズンの19.3分から、プレーオフでは24.4分になっています。人数を絞るといっても、単純に上から順番に選ぶのではありません。相手との相性も見て、その時に一番合う7人から8人を選んでいるのです。

プレーオフで点の取り方や試合の流れがどう変わるかは、先ほどの平均スタッツの記事でも数字で比べています。人数が絞られることも、プレーオフらしい戦い方のひとつと言えそうです。

まとめ

NBAのチームが15人のロスターを持ちながら7人から9人で戦うのは、選手の実力に差があり、うまい選手に長く出てもらう方が勝ちやすいからです。チームの出場時間は合計240分しかなく、誰かに時間を渡せば誰かの時間が減ります。

交代の回数は無制限でも、交代できるのはプレーが止まった場面だけです。アイスホッケーのように短い時間で全員を回す戦い方は、バスケットボールのルールでは組みにくくなっています。5人の連携や役割をはっきりさせるという面でも、決まったメンバーで戦う方が有利です。

そのうえで、疲れやけがの管理もしっかり行われています。レギュラーシーズンでは試合ごとに休ませたり、多くの選手で出場時間を分け合ったりしています。サンダーも19人を使ってシーズンを乗り切りました。そしてプレーオフでは、一番強い7人前後に時間を集めて勝負をかけます。

15人の枠は、全員を毎試合使うためではなく、長いシーズンを戦い抜くための備えです。ベンチの端にいる選手も、けが人が出たときや若手が育ったときに出番が回ってきます。試合を見るときは、誰が何番目に呼ばれるかに注目してみると、コーチの考えが見えてきて面白いと思います。

 

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コメント

  1. […] サンダーといえば前シーズンに優勝を果たしたチームです。優勝したあのシーズンも主力中心の短いローテーションで駆け抜けたことを思い出す人も多いはずです。連覇を狙う今シーズンの開幕早々にこれだけ故障者が重なるのは正直かなりの誤算だったと思います。それでも勝ち切ってしまうあたりに、今のサンダーの地力の高さが表れていました。優勝チームがここまで苦しい状況に立たされるのは、見ている側としても新鮮な光景です。 […]

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