最近、練習が終わったあとに、アルペンで買ったMYTREXの「パワーシート」を貼って電流を流しています。社会人になってもバスケを続けているので、練習後のケアは自分にとって身近なテーマです。使っているうちに、ふと「そもそも練習後のケア用品ってどんな種類があるんだろう」と気になりました。そこで今回は、自分が使っているパワーシートが何者なのかを調べるところから始めて、マッサージガンやリカバリーブーツ、アイシングまで、調べた順番で書いていきます。途中でNBAとの意外な接点も出てきました。
まずは自分のパワーシートの正体から
MYTREX(マイトレックス)は株式会社創通メディカルのブランドで、「POWER SHEET(パワーシート)」は肌に貼るタイプのEMSです。EMSというのは、国民生活センターの説明を借りると「電気刺激により筋肉の収縮運動を行うもの」のことです。調べてみて初めて知ったんですが、このパワーシートには少なくとも2種類ありました。公式オンラインを中心に売られている通常版の「POWER SHEET」と、スポーツ向けの「POWER SHEET S」です。
POWER SHEET Sは、公式ページでは「Power Sheet for SPORTS from MYTREX」という表記になっていて、アルペンとスポーツデポの店頭限定で売られています。公式ページには「全国のAlpen70店舗以上」とありました。自分はアルペンで買ったわけですが、アルペン系の店舗ではこのSが限定で展開されている、というのが今回分かったことです。ちなみにSは2026年7月にみずほPayPayドーム福岡で開かれた「鷹祭 SUMMER BOOST」で先行配布されていて、その時点では「年内発売予定」とされていました。その後、2026年9月7日から順次展開されています。
通常版の仕様も見てみました。重さは公式仕様で約14g、電源は充電不要のリチウム一次電池で、使い切りのタイプです。1枚あたり合計約15時間使えて、30分で自動的にオフになり、強さは10段階で調整できます。価格は2026年10月時点の公式表示で、1枚1,980円、2枚セット3,850円、4枚セット7,524円(いずれも税込)でした。POWER SHEET Sのほうは2枚入りで3,850円(税込、2026年10月時点の公式表示)、強さ10段階・約30分で自動オフ・1枚で約30回使えるとされています。
メーカーの謳い文句も見ておくと、Sの先行配布を告知したプレスリリースでは「今日の疲れ、持ち越さない。」、発売時のリリースでは「運動後の新しいリカバリー習慣"貼るパワーEMS"」と謳っています。ここで1つ気にしておきたいのが、通常版の公式ページに「本製品は、医療機器ではありません。」とはっきり書かれていることです。つまり、治療のための機器ではなく、コンディショニング用のグッズという位置づけです。自分も正直そこまで意識せずに貼っていたので、ここはちゃんと頭に入れておきたいところです。
練習後ケア用品の種類をざっと分けてみる
調べていくと、練習後のケア用品はだいたい次のようなカテゴリに分かれていました。
- EMS(電気刺激):パワーシートのような貼るタイプなど
- マッサージガン(パーカッションマッサージャー)
- フォームローラー
- リカバリーブーツ(空気圧で脚を圧迫するもの)
- コンプレッションウェア
- アイシング・アイスバス(冷水浴)
それぞれ値段も手軽さもかなり違います。パワーシートは数千円で買えるので一番気軽な部類ですが、高いものになるとびっくりするような値段のものもありました。
マッサージガン
一番イメージしやすいのがマッサージガンだと思います。代表的なのがHypericeの「Hypervolt」シリーズで、公式サイトではHypervolt 3について、素早く狙った振動が筋肉の奥まで届いて緊張をほぐし、血流を高め、動きやすくすると謳っています。米国の公式サイトでの価格は、2026年10月時点の表示でセール199ドル(通常249ドル)でした。一方で公式自身も、強く押し当てすぎない、使いすぎない、ケガをしている部位や骨の上には使わない、持病がある人は事前に医療者に相談する、といった注意をしっかり書いています。ちなみにMYTREXにも「REBIVE」というハンディのマッサージガンのシリーズがあって、パワーシートのメーカーが実はこっちも作っていたというのは、ちょっと驚きでした。
リカバリーブーツ
脚全体を大きなブーツのようなものに入れて、空気で締め付けるタイプの機械です。Hypericeの「Normatec 3 Legs」は空気圧で脚をマッサージする機械で、圧は7段階、1回20〜60分(通常は20〜30分)が目安とされています。公式は「より早く回復し、トレーニングを向上させ、パフォーマンスを最大化する」と謳っていますが、同時に「迷ったときは医師や専門家の指導を参照してください」とも書いていました。米国公式サイトでの価格は2026年10月時点でセール719ドル(通常899ドル)です。一般プレーヤーがポンと買える値段ではないですね。笑
フォームローラーとコンプレッションウェア
フォームローラーは、体育館の隅に置いてあるのを見たことがある人も多いと思います。電源もいらず、自分の体重をかけて転がすだけというシンプルさが魅力です。コンプレッションウェアも、バスケをやっている人にはおなじみのアイテムですね。ただ、この2つについてはメーカーごとの公式の説明まではちゃんと調べきれなかったので、後半の「実際どうなの?」という話でフォームローラーの研究だけ紹介します。
アイシング・アイスバス
昔から定番なのがアイシングで、氷のうを当てたり、冷水に浸かったりするやつです。一番お金がかからないケアでもありますが、ケガをしたときの対処については、ここ数年で考え方が少し変わってきているようなので、これも後で触れます。
NBAとリカバリー機器の意外な接点
調べていて一番面白かったのがここです。2020年7月30日、HypericeはNBAの「Official Recovery Technology Partner」に選ばれていました。複数年契約で、スタートはオーランドで行われたシーズン再開、いわゆるバブルからです。NBAのリリースによると、選手のベンチ席の下にカスタム設計の「Hyperbox」を置いて、ベンチにいながらHypervoltを使えるようにしたそうです。
バブルといえば無観客の会場の雰囲気ばかりが印象に残っていて、ベンチの下にマッサージガンが仕込まれていたというのは今回調べるまで知りませんでした。試合中のベンチでもケアができるようにしていたというのは、さすがNBAという感じです。ちなみにこのリリースには、当時ピストンズにいたブレイク・グリフィンもコメントを寄せていました。また、HypericeはこのNBAとの提携の少し前、2020年3月にNormaTecを買収しています。さっきのリカバリーブーツ「Normatec」がHypericeの製品になっているのは、この買収があったからなんですね。
さらに2021年2月23日には、レイカーズがHypericeを「Official Recovery Technology Sponsor」に指名しています。Hypericeにとっては、NBAの個別の球団と組むのはこれが初めてで、複数シーズンの契約でした。Hypervolt PlusやVenom(温熱と振動を組み合わせたもの)、トレーニング施設向けのカスタム設備などを提供すると発表されていて、創業者のアンソニー・カッツはレイカーズファンで、製品開発の過程で9年間チームの選手・スタッフと協働してきたとも書かれていました。コービーきっかけでレイカーズを好きになった自分としては、ちょっと嬉しい話です。なお、NBAとの提携が今も続いているのかどうかまでは、今回は確認できませんでした。
で、実際どうなの?メーカーの謳い文句と研究は分けて考える
ここが一番気になるところだと思います。先に言ってしまうと、メーカーは「回復」「血流」「緊張をほぐす」といった言葉で謳っていますが、学術的な研究のほうはかなり慎重な結論が多かったです。
まずマッサージガンについて、2023年に出た系統的レビュー(13研究)では、筋力や柔軟性が一時的に向上したり、痛みの感じ方が軽くなったりする結果が見られたとされています。ただし、参加者の多くが健康な若い成人で、研究のやり方もバラバラ、女性のデータも少ないなど、限界も一緒に挙げられていました。なので「効果が証明された」とまでは言えない、というのが正直なところです。
フォームローラーは、2019年のメタ分析(21研究、そのうち運動後のローリングを扱ったのは7研究)で、運動後にローリングするとスプリントや筋力の落ち込みをわずかに抑え、筋肉痛の感じ方を減らす結果が出ていました。ただ、論文自体が「効果はむしろ小さく、一部は無視できる程度」と書いていて、リカバリーとしてよりもウォームアップとして使うほうが根拠がある、とまとめています。これは個人的にけっこう意外でした。練習後にゴロゴロやるより、練習前にやったほうがいいかもしれない、ということなんですよね。
冷水浴については、2012年のコクランレビュー(17の小規模な試験・366人、15℃未満の冷水)で、何もしない場合や安静にしている場合と比べて、1〜4日後の筋肉痛を減らす「いくらかの根拠」はあるとされていました。ただ、試験がどれも小規模で、冷たい水に浸かっていることは本人に分かってしまうので、プラセボ効果の可能性も否定できないそうです。
そして自分が使っているEMSです。2014年の系統的レビュー(13研究)では、低強度の電気刺激を運動後の回復に使った場合、軽く体を動かすアクティブリカバリーより優れているという根拠は示されなかった、という結論でした。ただし、これは2012年までの研究を対象にしたもので、パワーシートのような市販の貼るEMSそのものを評価したものではありません。「EMSは効果がない」という話ではなく、「軽く体を動かすアクティブリカバリーより良いとは言えなかった」という話なので、そこは分けて受け取ったほうがいいと思います。練習後に貼っている身としては少し複雑ですが、これはこれで知っておいてよかったです。笑
あと、ケガのケアについては、2019年にBJSM(British Journal of Sports Medicine)のブログで「PEACE & LOVE」という考え方が発表されていて、従来のRICEなどは急性期の管理に偏っていて、その後の治っていく段階を無視している、と指摘されていました。RICEは自分がバスケを始めた頃から当たり前のように言われてきたので、そこに注文がついているのには驚きました。ただ、これはあくまでケガをしたときの話で、ケガのない練習後の疲労ケアとしてのアイシングとは別の話なので、混同しないように気をつけたいところです。
EMSを使うなら知っておきたいこと
EMSについては、公的機関からの注意喚起もいくつか見つけました。国民生活センターは2017年、コイン電池式でゲルパッドを貼るタイプのEMS機器を使ったあとに、お腹に水膨れができたという相談事例を公表しています。制御部のコーティングが傷ついて導電体がむき出しになり、そこに触れたことで局所的に強い電気刺激がかかった可能性がある、という内容でした。これはパワーシートとは関係のない他社の製品の話ですが、本体に傷や破損がないかは使う前に確認したほうがよさそうです。
東京都中央区も2024年に、家庭用EMS美顔器を首の近くで使うと、めまいや失神、吐き気などが起きるおそれがあると注意を呼びかけています。首には当てない、寝不足や飲酒のあとは控える、取扱説明書を確認する、具合が悪くなったら中止して横になる、といった内容です。対象は美顔器なのでそのまま当てはめることはできませんが、EMSを使うときの心構えとしては参考になります。
もう1つ、消費者庁は2020年3月31日に、EMS機器のお腹の痩身効果などの表示に合理的な根拠がないとして、販売会社4社に措置命令を出しています。これもパワーシートとは無関係の話ですが、EMSの効果をうたう広告に国が厳しい目を向けた例として覚えておいていいと思います。結局のところ、パワーシートでもほかの製品でも、使う前に取扱説明書の注意事項はちゃんと読んでおくのが一番ですね。
まとめ
「練習後のケア用品ってどんなのがあるんだろう」という疑問から調べてみましたが、EMS、マッサージガン、フォームローラー、リカバリーブーツ、コンプレッションウェア、アイシングと、思っていた以上に選択肢がありました。値段も、数千円で買えるパワーシートから、米国で数百ドルするリカバリーブーツまでかなり幅があります。そして2020年のバブルでは、NBA選手のベンチの下にまでマッサージガンが置かれていたというのは、今回一番の発見でした。
一方で、研究のほうを見てみると、どのケア用品も「効果は小さい」「研究に限界がある」という慎重な結論が多く、メーカーの謳い文句をそのまま信じるのは違うなと感じました。自分が使っているEMSも、アクティブリカバリーより優れているという根拠は今のところ示されていません。なので、ケア用品はあくまで練習後のルーティンの1つとして付き合いつつ、研究で比較対象になっていた、軽く体を動かすクールダウンのような基本もおろそかにしないようにしたいと思います。皆さんが練習後にどんなケアをしているのかも、ぜひ聞いてみたいです。

