先日、「バスケに新しいルール化したら何が面白くなるかなー?オンザコートの合計身長が10mまでとか?笑」とつぶやきました。半分は冗談です。ただ、つぶやいたあとで「10mって、実際のNBAのスタメンに当てはめたらどうなるんだろう」と気になってしまい、電卓を叩いてみることにしました。
先に断っておくと、これはNBAが提案しているルールでも、検討されているルールでもありません。少なくとも私が調べた範囲では、NBAがコート上の合計身長を制限しようとした公式な動きは見つかりませんでした。あくまで私の思いつきから始めた思考実験として、気楽に読んでください。
10mは「リーグ平均の5人」ぎりぎりの線
10mを5人で割ると、1人あたり200cmです。NBA公式の開幕時ロスター調査(NBA Roster Survey)によると、2022-23シーズンの平均身長は6フィート6.74インチで、これがちょうど200.0cm、つまり5人並べるとぴったり10.00mになります。2023-24は6フィート6.5インチ、2024-25は78.54インチ(約199.5cm)で、NBA.comの本文は「6-foot-7」と丸めた書き方をしています。私が確認できた公式集計は2024-25までで、2025-26のものは見つけられなかったので、最新シーズンについては「200cm前後」としか言えません。
ということは、10mというのは平均的な5人がぎりぎり収まる線です。平均より少し大きい5人を並べただけで違反になるわけで、何も考えずに書いた数字の割には絶妙な設定でした。笑
もうひとつ気になったのが、身長をどう測るかです。NBAの登録身長は、2019-20シーズンから裸足か靴下だけの状態で測る決まりになっています。NBC Newsの報道によると、各チームが医師の計測した身長と生年月日をキャンプ初週に提出する形で、それ以前は各チームの申告に頼っていて不正確な数字も多かったとされます。ただ、実際のコートでは全員が靴を履いているので、ルールにするなら「靴なしの登録身長で数えるのか」は最初に決めておかないといけません。
ファイナルのスタメンで計算してみた
前提を書いておきます。各選手のNBA.com登録身長(2026年9月時点)をインチにして足し、1インチ=2.54cmでcmに直した私の計算です。10mは393.70インチ(32フィート9.7インチ)にあたります。NBA.comの選手ページにあるメートル表記を足したものではないので、小数第2位あたりで数字がずれることがあります。
対象は、2026年NBAファイナル第1戦(6月3日、ニックスが105-95で勝利)の両チームのスタメンと、ウェスタン・カンファレンス・ファイナル第7戦(5月30日、スパーズが111-103で勝利)のサンダーのスタメンです。
| ラインナップ | 5人の登録身長 | 合計 | 10mとの差 |
|---|---|---|---|
| ニックス(ファイナル第1戦) | ブランソン6’2"、ブリッジズ6’6"、ハート6’5"、アヌノビー6’7"、タウンズ7’0" | 392インチ(約9.96m) | 約4.3cm下 |
| スパーズ(ファイナル第1戦) | フォックス6’3"、キャッスル6’6"、ヴァッセル6’5"、シャンパニー6’7"、ウェンバンヤマ7’4" | 397インチ(約10.08m) | 約8.4cm超過 |
| サンダー(WCF第7戦) | ギルジャス=アレクサンダー6’6"、ウォレス6’3"、ドート6’4"、ホルムグレン7’1"、ハーテンスタイン7’0" | 398インチ(約10.11m) | 約10.9cm超過 |
10m以内に収まったのはニックスだけでした。7フィートのタウンズ以外は全員6フィート台という構成で、10mまで約4.3cmの余裕があります。ジョシュ・ハートの登録はNBA.comもESPNも6フィート5インチですが、Yahoo Sportsのファイナル第1戦の予想スタメン表だけは6フィート4インチと書いていて、こちらなら391インチ(約9.93m)です。なのでニックスは約9.93〜9.96mの幅になりますが、どちらでも10m以内です。ルールを先取りしていたわけではないでしょうけど(笑)、結果的に「10m以内」のスタメンでファイナルの舞台に立っていたことになります。
スパーズはウェンバンヤマ次第です。NBA.com登録の7フィート4インチ(約224cm)で計算すると397インチ、約8.4cmの超過でした。ただ、この数字自体が揺れています。2023年にスパーズが発表した公式計測は靴なしで7フィート3.5インチでしたし、2025年10月ごろには7フィート5インチと書く報道もありました(SIはNBA公式プロフィール、Yahoo SportsはSpursのロスターの表記としていて、どちらなのかも食い違っています)。2026年6月時点のNBA.comは7フィート4インチで、これが靴なしの実測値なのかは確認できませんでした。それでも7フィート3.5インチなら396.5インチ、7フィート5インチなら398インチなので、どの数字を採ってもスパーズは10mを超えます。
サンダーはビッグマンを2枚並べる形でした。ホルムグレンとハーテンスタインだけで169インチになるので、残り3人の平均を約6フィート2.9インチ(約190cm)まで下げないと10mに収まりません。この5人は5月時点のもので、ドートは7月19日にホークスへトレードされています。
このルールだと、何が面白くなるのか
合計で縛るというのがミソだと思います。1人ごとの上限ではないので、大きい選手を1人置いたら、その分を誰かで埋め合わせる形になるんですよね。7フィート4インチ(88インチ)の選手が1人いると、残り4人の平均は76.4インチ(約6フィート4.4インチ、約194cm)までです。7フィート(84インチ)なら、残り4人の平均は約6フィート5.4インチ(約197cm)まで許されます。
小柄な選手の価値も変わりそうです。河村勇輝選手の現在のNBA.com登録は5フィート7インチ(約170cm)で、SIによると2025-26シーズンに5フィート9インチ未満だったのは河村選手ひとりでした。ウェンバンヤマと河村選手を同時に置くと、残り3人の平均は約6フィート7.6インチ(約202cm)まで許されるので、アヌノビーやシャンパニーと同じ6フィート7インチの選手3人を並べても392インチで収まります。身長が「持ち点」のように計算に入る世界なら、小柄な選手が「合計に余裕をくれる存在」として重宝されるかもしれません。小柄な選手を応援したくなるファンとしては、ちょっと嬉しい想像です。もちろん、小さいだけで使ってもらえるほど甘くないのは変わらないはずですが。
スパーズも、たとえばシャンパニー(6フィート7インチ)の枠を6フィート3インチの選手に替えれば393インチ(約9.98m)で収まります。ここからは完全に私の想像ですが、選手の身長が、サラリーキャップのように「使える枠」として見えてくるのが一番の変化な気がします。ロスターの組み方も、ローテーションの作り方も、交代のたびに合計を気にするベンチの光景も、想像すると笑ってしまいます。
「合計で縛る」ルールは、車いすバスケにある
実は、5人の合計に上限を設けるルールは、すでにバスケの世界に存在します。車いすバスケットボールの持ち点制度です。選手は障がいの程度に応じて1.0〜4.5点(0.5点刻み)の持ち点を与えられ、コート上の5人の合計が14.0点を超えてはいけません(日本パラスポーツ協会の表記は「14点以内」)。IWBF(国際車いすバスケットボール連盟)によると、超えるとベンチにテクニカルファウルが科されます。
日本パラスポーツ協会は、障がいの軽い選手だけでなく重い選手にも出場機会が与えられることを目的に挙げています。5人の平均にすると2.8点なので、身体的な属性を数値にして合計で縛るという構造は、今回の身長10mの案とよく似ています。ただ、車いすバスケは選手ごとのクラス分けがあって成り立つ制度です。身長の場合は測った数字がそのまま点数になるので仕組みはシンプルですが、そのぶん、測り方ひとつで結果が変わってしまうのが難しいところだと思います。
身長を直接縛った韓国KBLは、なぜやめたのか
身長そのものを制限した例もあります。韓国のKBLは2018-19シーズン、外国人選手の身長を「1人は200cm以下、もう1人は186cm以下」としました。SIによると、試合を速くするのが導入の理由のひとつでした。この200cm/186cmという形は2018-19の1シーズンだけで、その前にも外国人2人のうち1人は193cm以下という制限があったので、「身長制限が1シーズンだけ」というわけではありません。
2019-20から撤廃された理由として、Korea JoongAng Dailyは、新しい外国人選手を測るために定規を持ち歩く必要があること、人気選手が去って観客が減ったこと、韓国人センターの出場時間を増やすという狙いが達成されなかったことなどを挙げています。「測るのが大変」「スター選手がいなくなると観客が減る」という2つは、今回の思考実験にもそのまま当てはまりそうです。ウェンバンヤマのような選手のプレーを見に来るファンがいる以上、大きい選手を組み込みにくくするルールは、リーグの魅力そのものを削るリスクもあるはずです。
昔から「大きい選手対策」のルールはあった
NBAは、大きい選手を意識したルール変更を何度もしています。1951-52シーズンにはフリースローレーンが6フィートから12フィートに広がり(通称「ミカン・ルール」)、1964-65シーズンには12フィートから16フィートに広がりました。Sports Referenceは、いずれもジョージ・ミカンやウィルト・チェンバレンのような支配的なポストプレーヤーをゴールから遠ざけるためだと説明しています。
ゴールテンディングは、1944〜45年頃にNCAAで禁止されたとされていて、きっかけとして大型センターのボブ・カーランドやミカンの存在が挙げられます(諸説あります)。NCAAは1967-68シーズンからダンクも禁止しました。主な理由として挙げられたのはゴール周辺の負傷や用具の損壊で、当時の大スターだったルー・アルシンダーを狙ったものだという見方もあった、というのがNCAAのアーカイブの書き方です。
ただ、これらは「大きい選手ができること」を縛るルールで、今回の「コートに立てる組み合わせ」を縛る発想とは少し違います。ちなみに、The Ringerが2026年9月2日に公開したNBAの変更案コラムには、すべてのものを8インチ縮める(リムも含めて)という案があったそうです。これもメディアのコラム上のアイデアで、NBAの提案ではありません。全部縮めたら結局同じでは、と思ってしまいましたが。笑
まとめ
「コート上の合計身長10mまで」という思いつきを、実際のスタメンで計算してみました。10mはリーグ平均の5人がぎりぎり収まる線で、ファイナル第1戦のニックスは約4.3cmの余裕で収まり、スパーズとサンダーのスタメンは10mを超えました。ウェンバンヤマやハートの身長には揺れがあるものの、どの数字を採っても結論は変わりませんでした。
車いすバスケの持ち点制度が示すように、5人の合計で縛る設計そのものは現実に成立しています。一方でKBLの例を見ると、身長を測る手間や、人気選手が去ることによる観客減といった現実的な問題も見えてきます。実際に導入したら面白いかというと、正直に言えば分かりません。ただ、大きい選手と小さい選手を組み合わせるパズルとして考えると、スタメンを決めるだけで一晩語れそうな気がします。みなさんなら、10mの中でどの5人を選びますか?


