カール=アンソニー・タウンズ、母を亡くした悲しみと向き合ってきた6年間。世界メンタルヘルスデーに明かした本音

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世界メンタルヘルスデーだった10月10日(現地時間)、ニューヨークで開かれたProject Healthy Mindsのイベントで、カール=アンソニー・タウンズが自身の悲しみについて率直に語りました。この様子はAP通信が10月11日付で報じたもので、ニックスの優勝旗掲揚式を10日後に控えたタイミングでの発言です。タウンズは6年前に母親をCOVID-19の合併症で亡くしていて、そこからずっと向き合い続けてきた悲しみについて明かしています。

バスケットボールが「空虚」に感じられた時期

タウンズは、母親を亡くした直後、バスケットボールが「空虚に感じられた」と振り返っています。「もうバスケを続けたいかどうかわからなかった」というのが、当時の本音だったそうです。長年コートに立ってきた選手が、競技そのものへの意欲を失うほどの悲しみだったというのは、改めて重く響く言葉だと思います。

ファイナル第1戦前に訪れた「とても大きな静けさ」

一方で、タウンズはNBAファイナル第1戦を前にした瞬間について、印象的な語り方をしています。「とても大きな静けさ」に包まれたと振り返り、観客が少なかった若い頃の試合で、スタンドの中から母親の姿をいつも見つけられたことを思い出したそうです。「母と自分とバスケットボールだけだった」と感じたという言葉からは、コートが単なる競技の場ではなく、母への愛を表現する場として捉え直されていったことがうかがえます。

専門家との対話が、悲しみとの向き合い方を変えた

タウンズは、ストレングス&ウェルネスコーチのアーニー・カンダー氏との対話に支えられたとも語っています。信頼できる相手に痛みを吐き出し、感情を言葉にできるようになったことで「人生がずっと軽くなる」と感じ、話を重ねるたびに気持ちが軽くなっていったそうです。悲しみを一人で抱え込まず、誰かに話すという当たり前のようで難しい一歩が、彼にとって大きな転機になったということなんだと思います。

広がりつつあるアスリートのメンタルヘルス発信

このイベントを主催するProject Healthy Mindsは、セラピーや精神科医療、支援グループなどを無料で探せるオンラインサービスを運営する非営利団体です。理事を務めるリッチ・クレイマン氏(Boardroom CEO、ケビン・デュラントの元マネージャー)は、アスリートの間でメンタルヘルスの話題は増えており、タウンズが開幕直前というタイミングで率直に語ったことには大きな意味があると評価しています。デマー・デローザンとケビン・ラブが約8年前にこの話題を広げたことにも触れていました。

イベントには元NFL選手のブランドン・マーシャル氏も参加していました。2011年に境界性パーソナリティ障害を公表した経験を持つ同氏は、セラピーで「自分の脳と向き合う」ことを学んだと話し、セラピーの予約をわざとチームの食堂で行うことで、周囲にとって当たり前のことだと感じてもらえるようにしていたそうです。サッカーのGotham FCでプレーするミッジ・パース選手も、「涙を見せないことが強さだ」と思っていたけれど、仲間から「悲しくても大丈夫」だと教わったと語っていました。

ニックスでの優勝と、53年ぶりのタイトルが持つ重み

タウンズは、ミネソタからトレードで加入し、カンファレンス決勝で一度敗れたのち、子どもの頃から応援してきたニックスでNBAタイトルを獲得しました。Project Healthy Minds CEOのフィル・シェルマー氏は、ニックスの優勝が一種の「共通の文化体験」になったと見ていて、タウンズが優勝の立役者の一人として見せる「輝く笑顔」がチームの象徴になったと話しています。タウンズの契約交渉自体はセカンドエプロンという制約もあって停滞気味だと報じられていますが、コート外でのこうした発信を見ると、彼がすでにニックスという街となじんでいるのがよく分かります。

Z世代の調査会社The Up and Upを創業したレイチェル・ヤンファザ氏は、ニックスの優勝やワールドカップといった出来事が、パンデミック中に失われた対面での交流を若者に取り戻させたと指摘しています。優勝という喜びの裏側に、こうした心の結びつきの話があるというのは、スポーツの持つ力を改めて感じさせるエピソードです。

Project Healthy Mindsは今後、スポーツを通じてより多くの人に心のケアを呼びかける取り組みを計画しているそうです。2026年夏にはブロードウェイの一人芝居「Every Brilliant Thing」とも提携していて、エンターテインメントの力を使ってメンタルヘルスの話題に触れてもらう工夫を続けています。NBAのスター選手がこうした活動の顔になることで、普段スポーツニュースだけを追っているファンにも、メンタルヘルスという話題が自然に届くようになるのは良いことだと思います。

個人的には、こうした話を優勝直後、しかも開幕を控えた忙しい時期に、わざわざ時間を作って語ってくれたことに意味があると感じます。シーズン中は結果や数字の話にどうしても注目が集まりますが、その裏にそれぞれの選手が抱えている背景があるということを、このタイミングで思い出させてくれました。

日本でもここ数年、アスリートがメンタルヘルスについて語る場面が増えてきたように感じます。海外のスター選手が率先してこうした話題をオープンにしてくれることで、スポーツ界全体で「弱さを見せてもいい」という空気が少しずつ広がっていくといいなと思います。

まとめ

  • タウンズは6年前にCOVID-19の合併症で母を亡くし、長く悲しみと向き合ってきた
  • 母を亡くした直後は、バスケが「空虚に感じられた」時期もあった
  • ファイナル第1戦前の静けさの中で、母との記憶とともにコートの意味を見つめ直した
  • 専門家との対話を重ねることで、悲しみを言葉にできるようになっていった
  • 世界メンタルヘルスデーに合わせたこの発言は、アスリート全体の発信の広がりの一部でもある

優勝という最高の結果を手にした直後のタイミングで、こういう内面の話を率直にしてくれるのは、個人的にはすごく価値のあることだと思います。強さばかりが求められがちなプロスポーツの世界で、悲しみを抱えたまま戦ってきた選手の言葉だからこそ、説得力があるんじゃないでしょうか。タウンズのコートでの笑顔の裏にあるものを知ったうえで、今シーズンの彼のプレーをまた見てみたいと思います。

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