審判の判定が正しいか間違っているかという話はよく議論になりますが、自分がもっと気になるのは別の軸です。審判が試合の中で目立ってしまう時点で、その試合はコントロールできていないんじゃないか、という話です。今回は判定の正誤ではなく、審判の立ち振る舞い、ゲームマネジメント能力という切り口で調べてみました。
NBA自身も「審判は主役になるな」と言っている
NBA副社長で審判育成研修責任者のモンティ マッカッチェンは、2019年のインタビューで「審判はゲームに奉仕する存在であり、ゲームの焦点になるべきではない(Referees serve the game. They should not be the focus of the game.)」と発言しています。同時に「状況がどうであれ、守るべき基準がある」とも語っていて、審判は状況に応じて基準を変えるのではなく一貫性を保つべきだという考えが示されています。
2025年のインタビューでは、マッカッチェンは「公平性とは均等な扱いであって、均等な結果ではない(fairness does not necessarily mean equitableness)」とも語っています。選手のスキルレベルが違っても、1対1の局面では平等に扱われるべきだという判定哲学のようです。一方で2023年のインタビューでは「タンティングを放置すると身体的接触の増加につながる」として、乱闘を防ぐための早めの介入の必要性にも触れています。これは「審判は目立つべきではない」というテーマとは表面的に矛盾するようにも見えますが、大きな騒動を防ぐための必要悪という位置づけなんだと思います。
2025-26シーズン、審判が話題の中心になった試合が相次いだ
実際、2025-26シーズンは審判が試合の話題を独占するケースがいくつも起きました。
3月には、ティンバーウルブズのナズ リードが、ロケッツ戦のオーバータイム中にチャージの判定を巡ってクルーチーフのスコット フォスターに抗議した直後に即退場となりました。NBAはリードに「審判団の公正性を疑問視した」ことを理由に5万ドルの罰金を科しています。4月には、サンズのデビン ブッカーがプレーオフで「11年間のキャリアで審判を名指しで批判したことはなかったが、今夜のジェームス ウィリアムスはひどかった」と実名で批判し、3万5千ドルの罰金を受けました。5月には西カンファレンス準決勝で、ティンバーウルブズのヘッドコーチ、クリス フィンチが審判トニー ブラザーズのタイムアウト対応を巡って激しく口論し、選手が仲裁に入るほどの事態になっています。
ちなみにこのトニー ブラザーズ、2016年にもカルメロ アンソニーに連続テクニカルファウルを宣告して退場させ、アンソニーの妻が「個人的な問題があるのでは」とSNSで発言する騒動になったことがありました。10年の時を経て似たような対立の中心になっているあたり、審判にも「揉め事を起こしやすい人」というパターンがあるのかもしれません。
テクニカルファウルは実は減少傾向にある
意外だったのが、NBA全体のテクニカルファウル件数は近年むしろ減少傾向にあるというデータです。ある集計によると、2021-22シーズンの1,136件から2024-25シーズンには889件まで減少。別の集計(1試合あたりのレート換算)でも、2021-22シーズンの0.92件/試合から2025-26シーズン序盤には0.63件/試合まで下がり、4年間で約31.5%の減少とされています。分析では「審判と選手間のコミュニケーション改善が、感情の爆発を抑えるのに役立っている」という見方が示されていました。個別の事件は目立つものの、リーグ全体としては審判と選手の関係は改善に向かっている、という側面もあるようです。
選手側も「一貫性」を求めている
選手側の声を見ても、求めているのは「目立たなさ」そのものというより「一貫性」のようです。NBPA第一副会長のグラント ウィリアムズは、2025-26シーズンの審判アンケート(411選手、全30チーム対象)について「選手たちは審判がミスをすることは理解しているが、一貫性、コミュニケーション、説明責任、敬意を重視している」と発言しています。このアンケートで全審判中1位に評価されたのがザック ザルバで、全30チームすべてからトップ12入りの評価を受けた唯一の審判だったそうです。逆に選手のトム コンリーは「テクニカルファウルの基準がシーズンごとに違う」ことを問題視する発言をしています。
「賛否両論の名物審判」として名前が挙がることが多いスコット フォスターについても触れておきたいと思います。ファンの間では「フォスターが担当すると劣勢チームが敗退を免れる」という噂から「ジ エクステンダー」と呼ばれていますが、2025年の統計検証記事によると、2020〜2025年プレーオフでフォスターが担当した接戦54試合のうち、劣勢チームの勝率は50%(27勝)で、統計的に「延命」を裏付ける根拠は乏しいという結論が出ています。噂と実際のデータは別物だという、良い教訓だと思います。
まとめ
改めて調べてみて、「審判が目立つ試合はコントロールできていない試合」という自分の感覚は、NBA自身の公式な立場(審判は主役になるべきではない)や、選手側が求める「一貫性」という価値観とも重なる部分が大きいと感じました。一方で、テクニカルファウル自体はリーグ全体で減少傾向にあり、個別の炎上事件が目立つ一方で、審判と選手の関係は少しずつ改善しているという側面もある。判定の正誤だけでなく、こういうゲームマネジメントの巧拙という視点で試合を見ると、また違った面白さがあるなと思いました。
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