NBAの個人賞といえば、MVPや新人王、最優秀守備選手賞あたりがすぐに思い浮かぶと思います。では「シックスマン賞」は、誰が一番多く獲っているかご存じでしょうか。
ベンチから出てチームの流れを変える。地味なようで、現代NBAではロスター編成の生命線になっている役割です。そしてこの賞の歴史を追っていくと、「勝利への貢献」と「個人の栄光」がきれいに一致しないNBAらしさが見えてきます。
この記事では、シックスマン賞の歴代受賞者と最多受賞記録を、2026年のケルドン ジョンソンまで整理します。
シックスマン賞とは?受賞の条件と歴史
シックスマン賞(Sixth Man of the Year Award)は、1982-83シーズンに創設された個人賞です。初代受賞者は76ersのボビー ジョーンズでした。
受賞の条件はシンプルで、先発した試合数よりもベンチから出場した試合数のほうが多いこと。これを満たさないと、どれだけ活躍しても候補になりません。投票は全米とカナダのスポーツ記者、放送関係者によって行われます。
そして2022-23シーズンからは、この賞は「ジョン ハブリチェック トロフィー」という正式名称になりました。8度の優勝を経験した名シックスマンにちなんだものです。ちなみにハブリチェックはファイナル最多出場回数ランキングでも8回出場8勝0敗という完璧な成績で名前が挙がる選手で、まさにこの賞の名前にふさわしい人物だと思います。
シックスマン賞の最多受賞ランキング
では本題です。歴代で複数回受賞している選手は、意外なほど少数に限られます。
| 順位 | 選手 | 受賞回数 | 受賞年 |
|---|---|---|---|
| 1 | ジャマール クロフォード | 3回 | 2010、2014、2016 |
| 1 | ルー ウィリアムズ | 3回 | 2015、2018、2019 |
| 3 | ケビン マクヘイル | 2回 | 1984、1985 |
| 3 | リッキー ピアース | 2回 | 1987、1990 |
| 3 | デトレフ シュレンプ | 2回 | 1991、1992 |
3回受賞はジャマール クロフォードとルー ウィリアムズの2人だけ。40年以上の歴史の中で、たった2人しかこの領域に到達していません。クロフォードが史上初の3回受賞者となり、その後ルー ウィリアムズが2019年に並びました。
3回受賞の2人に共通する「無冠」という事実
ここが個人的に一番引っかかるところなのですが、クロフォードとルー ウィリアムズには、もう一つ大きな共通点があります。どちらも優勝経験がないまま現役を終えたということです。
シックスマンという役割は、本来であれば優勝候補のチームでこそ価値が高まるポジションのはずです。実際、マヌ ジノビリ(2008年受賞)のように、強豪の第6の男として何度も優勝した選手もいます。こうした複数のリングを持つ選手は最多チャンピオンリングのランキングにも名前が並びます。
それでも、歴代最多タイの2人はどちらも指輪を持っていません。得点力のあるベンチプレーヤーは評価されやすい一方で、チームの勝利に直結するとは限らない。この賞の性格がよく表れている気がします。無冠の名選手まとめでも触れていますが、個人賞とリングの関係は本当に一筋縄ではいきません。
シックスマン賞からMVPへ:ハーデンとウォルトンという2つの例外
この賞の面白いところは、キャリアの通過点として受賞する選手がいることです。
ジェームズ ハーデン:シックスマン賞からMVPへ
2012年、サンダーのベンチから出ていたジェームズ ハーデンがこの賞を受賞しました。そしてロケッツへ移籍後、2018年にはリーグMVPまで駆け上がります。ベンチ出場の評価から最優秀選手まで登り詰めた、かなり珍しいキャリアパスです。
ビル ウォルトン:MVPを獲った8年後にシックスマン賞
逆のパターンがビル ウォルトンです。1978年にMVPを受賞した彼は、度重なる故障を経て、1986年にセルティックスのベンチから出場しシックスマン賞を受賞しました。この年、セルティックスは優勝しています。
MVPを獲った選手が後年シックスマン賞を受賞するというのは、他にほとんど例がありません。全盛期を怪我で失いながら、役割を変えて価値を証明し直したキャリアだと言えます。
近年のシックスマン賞受賞者一覧(2010〜2026年)
ここ15年ほどの受賞者を並べてみます。
| シーズン | 選手 | 所属 |
|---|---|---|
| 2009-10 | ジャマール クロフォード | ホークス |
| 2010-11 | ラマー オドム | レイカーズ |
| 2011-12 | ジェームズ ハーデン | サンダー |
| 2012-13 | J.R.スミス | ニックス |
| 2013-14 | ジャマール クロフォード | クリッパーズ |
| 2014-15 | ルー ウィリアムズ | ラプターズ |
| 2015-16 | ジャマール クロフォード | クリッパーズ |
| 2016-17 | エリック ゴードン | ロケッツ |
| 2017-18 | ルー ウィリアムズ | クリッパーズ |
| 2018-19 | ルー ウィリアムズ | クリッパーズ |
| 2019-20 | モントレズル ハレル | クリッパーズ |
| 2020-21 | ジョーダン クラークソン | ジャズ |
| 2021-22 | タイラー ヒーロー | ヒート |
| 2022-23 | マルコム ブログドン | セルティックス |
| 2023-24 | ナズ リード | ティンバーウルブズ |
| 2024-25 | ペイトン プリチャード | セルティックス |
| 2025-26 | ケルドン ジョンソン | スパーズ |
クリッパーズの名前が何度も出てくるのが目を引きます。2014年から2020年にかけて、クロフォード、ルー ウィリアムズ、ハレルと立て続けに受賞者を出しました。ベンチの得点力でチームを作るという明確な方針があった時期ですね。
2026年:ケルドン ジョンソンがスパーズから受賞
2025-26シーズンの受賞者は、スパーズのケルドン ジョンソンでした。スパーズからの受賞は2008年のマヌ ジノビリ以来2人目になります。
この年のスパーズは7回目のファイナル進出を果たし、ニックスに1勝4敗で敗れました。ウェンバンヤマを中心に組み上がったチームの中で、ベンチから流れを変える役割が機能していたということでしょう。優勝には届かなかったものの、ジノビリの系譜がスパーズに戻ってきたと見ることもできます。
まとめ
シックスマン賞の歴史を整理すると、次の通りです。
- 1982-83シーズン創設、初代受賞者は76ersのボビー ジョーンズ
- 条件は「先発よりベンチ出場の試合数が多いこと」
- 2022-23シーズンから正式名称は「ジョン ハブリチェック トロフィー」
- 最多受賞は3回のジャマール クロフォードとルー ウィリアムズ。ただし2人とも無冠
- ハーデンは受賞6年後にMVP、ウォルトンはMVPの8年後に受賞という逆パターン
- 2025-26シーズンの受賞者はスパーズのケルドン ジョンソン
スタメンの5人だけでは1シーズンを戦い抜けないのが今のNBAです。サラリーキャップの仕組みを踏まえると、限られた予算でベンチをどう組むかがそのまま順位に響くことも分かります。シックスマン賞は、その現実を映し出している賞なのかもしれません。
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