「あの選手は殿堂入りできるのか」という話題、NBAを見ていると毎年どこかで出てきますよね。ただ、その殿堂がどこにあって、誰が、どういう手順で決めているのかまで知っている人は意外と少ないと思います。
しかも調べてみると、これがかなり独特な制度でした。投票するのは匿名の24人。必要なのは18票。そして票数は公表されません。この記事では殿堂入りの条件と選考の流れを、2026年のクラスを例に整理してみます。
そもそも「NBAの殿堂」ではありません
まず大前提から。日本語で「NBA殿堂入り」と言われることが多いのですが、正式にはネイスミス記念バスケットボール殿堂(Naismith Memorial Basketball Hall of Fame)という独立した組織です。NBAが運営しているわけではありません。
- 所在地:マサチューセッツ州スプリングフィールド(1000 Hall of Fame Avenue)
- 設立:1959年(当初は建物を持たず、最初の施設は1968年2月17日オープン)
- 名前の由来:バスケットボールの考案者ジェームズ ネイスミス
- 対象:選手、コーチ、審判、貢献者、チーム
ここが重要なポイントで、対象はNBAだけではありません。WNBA、大学バスケ、国際バスケ、女子バスケ、審判、さらには「チーム」そのものまで殿堂に入ります。「NBAで活躍した人が入る場所」ではなく「バスケットボールに大きく貢献した人が入る場所」なんです。
資格条件は「完全引退から3シーズン」
候補になるための最低条件はシンプルです。
| 区分 | 資格条件 |
|---|---|
| 選手、審判 | 完全に引退してから3シーズン経過 |
| 現役コーチ | 高校以上のレベルでフルタイム25年以上、かつ60歳以上 |
| 引退したコーチ | 引退から3シーズン経過 |
この「3シーズン」、実は昔はもっと長くて5年でした。2015年に4年へ短縮され、2017年に現在の3シーズンになっています。野球殿堂(MLB)が引退5年後からなのと比べると、バスケットボールの殿堂はかなり早く門が開くわけです。
そして現役コーチにも資格があるのが面白いところ。25年やって60歳を超えれば、まだ指揮を執っていても殿堂入りできます。歴代優勝監督ランキングに並ぶ名前の多くが現役中に殿堂入りしているのは、この規定があるからです。
選考は2段階。最後は匿名24人のうち18票
ここが殿堂入りのいちばん独特な部分です。流れは大きく2段階に分かれます。
第1段階:スクリーニング委員会が候補を絞る
候補者はまず、カテゴリー別のスクリーニング委員会にかけられます。委員会は北米(9人)、女子(7人)、国際(7人)、ベテランズ(7人)といった構成です。たとえば北米委員会は毎年40〜50人のノミネートを審査し、そこから最大10人のファイナリストへ絞り込みます。ファイナリストになるには9人中7人以上の支持が必要です。
第2段階:Honors Committeeで18票を集める
ファイナリストは、最終投票を行うHonors Committeeに進みます。この委員会は24人の匿名メンバーで構成され、殿堂入り者、球団経営者、メディア関係者などが含まれます。そして殿堂入りが決まるのは、24票中18票(75%)以上を得た場合のみ。投票は郵送で行われます。
つまり「候補者の中で上位◯人が入る」という相対評価ではなく、75%という絶対ラインを超えるかどうか。だからある年は9人入り、別の年は数人しか入らない、ということが起こります。
票数が公表されない、という他競技にはない特徴
個人的にいちばん驚いたのがここです。バスケットボール殿堂は、投票した24人の名前も、各候補が何票取ったかも公表しません。
これは他競技と比べると異例です。野球殿堂は各記者の投票内容が追跡され、「得票率74.8%で落選」といった数字が毎年ニュースになります。アメフトも選考会議の議論内容がある程度伝わってきます。ところがバスケットボール殿堂では、落選した選手が17票だったのか、8票だったのかすら分からない。
この不透明さは、毎年の発表シーズンになるとアメリカのメディアでも繰り返し議論されています。「なぜあの選手が入って、この選手が入らないのか」を検証する材料が、そもそも公開されていないわけです。無冠の名選手まとめで取り上げたようなキャリア評価の議論と同じで、結論だけが降ってくる構造になっています。
2026年のクラスを見ると「NBAだけの殿堂ではない」が分かる
2026年のクラスは9人(および1チーム)。2026年8月15日にスプリングフィールドで殿堂入り式典が行われました。顔ぶれを見ると、この殿堂の性格がよく表れています。
| 推薦委員会 | 殿堂入り者 | 区分 |
|---|---|---|
| 北米委員会 | アマレ スタウドマイアー | 選手 |
| 北米委員会 | ドック リバース | コーチ |
| 北米委員会 | マーク フュー | コーチ(大学) |
| 北米委員会 | ジョーイ クロフォード | 審判 |
| 女子委員会 | カンディス パーカー | 選手 |
| 女子委員会 | エレナ デレ ドン | 選手 |
| 女子委員会 | シャミーク ホールズクロー | 選手 |
| 女子委員会 | 1996年アメリカ女子代表チーム | チーム |
| 貢献者委員会 | マイク ダントーニ | 貢献者 |
NBA選手として入ったのはアマレ スタウドマイアー1人だけ。残りはコーチ、審判、女子選手、そしてチームです。NBAファンの感覚だと「殿堂入り=NBAのレジェンド」になりがちですが、実際の構成はかなり違うことがよく分かります。
また、ドック リバースとマイク ダントーニが同じ年に入っているのも象徴的です。ダントーニは優勝経験がありません。それでも「ペース&スペース」でリーグの戦い方そのものを変えた貢献者として評価されました。優勝の数だけが評価軸ではない、という殿堂の考え方がここに出ています(ダントーニが広めた考え方はペース&スペースの解説記事で詳しく書いています)。
まとめ
- 正式名称はネイスミス記念バスケットボール殿堂。1959年設立、マサチューセッツ州スプリングフィールドにありNBAの組織ではない
- 選手、審判の資格は完全引退から3シーズン(かつては5年、2015年に4年、2017年に3シーズンへ短縮)
- 現役コーチも25年以上かつ60歳以上で資格を得られる
- 選考は2段階。スクリーニング委員会がファイナリストを絞り、匿名24人のHonors Committeeで18票(75%)以上を集めれば殿堂入り
- 投票者名も票数も非公表という、他競技と比べて極端に不透明な制度
- 2026年クラス9人のうちNBA選手はアマレ スタウドマイアーのみ。コーチ、審判、女子選手、チームまで含む
シーズン中の各賞が「100人のメディアの投票」で決まるのに対して、殿堂入りは「匿名24人の75%」で決まる。同じバスケットボールの評価なのに、仕組みがまったく違うのが面白いところです。レギュラーシーズンの賞の決め方についてはNBAの各賞は誰が決めている?投票の仕組みまとめで整理しているので、あわせて読んでみてください。
楽天でチェック


