「あいつは目を覚ました」ベン・シモンズ、1年間バスケを離れてNBA復帰へ

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ベン・シモンズがNBAに帰ってきます。

2016年ドラフト全体1位。新人王。3年連続All-Star。All-NBA選出。そして2度のAll-Defensive First Team。全盛期には208cmのサイズでポイントガードをこなし、「ジャンプシュートまで身についたらどうなるんだ」と期待された選手でした。

あれから随分いろいろありました。

フィラデルフィアでのプレーオフ。長期離脱。ネッツへのトレード。度重なる背中の問題。クリッパーズ。そして2025-26シーズンは、ついにNBAで1試合もプレーしませんでした。

ところが2026年9月、30歳になったシモンズはサクラメント・キングスと1年350万ドルで契約。約1年半ぶりにNBAのコートへ戻ろうとしています。

キングスのメディアデーで「昔の自分にどれくらい近づいている?」と聞かれたシモンズの答えが印象的でした。

「I’m there. He’s there. He woke up.」

かつての自分は、もうそこにいる。

「あいつは目を覚ました」

もし本当なら、これはかなり面白い。

全体1位から、NBAを代表する若手スターへ

シモンズがNBA入りしたのは2016年。LSUからドラフトへエントリーし、76ersから全体1位指名を受けました。

足の怪我によって最初のシーズンを全休したため、実際のNBAデビューは2017-18シーズン。それでも初年度から平均15.8得点、8.1リバウンド、8.2アシストを記録し、新人王を獲得します。

そして翌シーズンから3年連続でAll-Star。

2019-20シーズンにはAll-NBA Third Team、2020年と2021年には2年連続でAll-Defensive First Teamにも選ばれました。

今のシモンズだけを見ていると忘れそうになりますが、全盛期は本当にすごい選手でした。

208cm、109kgのサイズでポイントガード。

リバウンドを取った瞬間、そのまま自分でボールを運んでトランジションへ入れる。ガードを守れるサイズがありながら、ウイングやビッグマンともマッチアップできる。そしてパスセンスもある。

一方で、ずっと言われ続けた弱点もありました。

シュートです。

「シュートさえ入れば最強」が何年も続いた

シモンズほど「3ポイントが打てるようになれば」という言葉を聞いたNBA選手も珍しいかもしれません。

オフシーズンになる。

ワークアウト動画が出る。

シモンズがジャンプシュートを決める。

SNSがざわつく。

「今年こそベン・シモンズが3Pを打つぞ!」

シーズンが始まる。

打たない。

これ、何年やったんだ。笑

ただ、当時はそれでもAll-Starになれました。

むしろシュートをほとんど打たないままAll-NBAまで行ったことの方が異常です。

サイズ、ハンドリング、トランジション、パス、リバウンド、そして守備。それだけでNBAトップクラスの選手になれるほど、シモンズの身体能力とオールラウンド能力は突出していました。

だからこそ期待も大きかった。

「シュートさえ身につけば」という言葉は、裏を返せば「それ以外はほとんど揃っている」という評価だったわけです。

2021年プレーオフから、すべてが変わった

シモンズのキャリアを語る上で避けられないのが、2021年のプレーオフです。

イースタン・カンファレンス・セミファイナルで76ersはホークスと対戦。第1シードだったフィラデルフィアが第5シードのアトランタに敗れました。

そしてGame 7終盤。

シモンズがゴール下まで侵入しながらシュートを打たず、マティス・サイブルへパスした場面は、その後のキャリアを象徴するプレーのように何度も取り上げられることになります。

もちろん、一つのプレーだけでシリーズ敗退を説明することはできません。

それでもシモンズへの批判は一気に強まりました。

その後76ersとの関係は悪化し、2021-22シーズンはフィラデルフィアで出場なし。2022年2月、ジェームズ・ハーデンを含む大型トレードでブルックリン・ネッツへ移籍します。

当時まだ25歳。

普通なら全盛期へ向かう年齢でした。

ネッツへ行けば復活する……はずだった

ネッツにはケビン・デュラントとカイリー・アービングがいました。

得点する選手はいる。

ならシモンズは得点しなくてもいい。

守備して、リバウンドを取って、ボールを運んで、KDとカイリーへパスすればいい。

「これ、意外とめちゃくちゃ合うんじゃない?」

そう思った人も多かったはずです。

僕も思いました。

ところが、そう簡単にはいきませんでした。

背中の問題などで欠場が増え、以前のような爆発的なトランジションや守備での存在感を継続的に発揮できない。ネッツでの役割も徐々に小さくなり、2024-25シーズン途中にバイアウト。その後クリッパーズへ加入しました。

同シーズンはネッツとクリッパーズを合わせて51試合に出場し、平均5.0得点、4.7リバウンド、5.6アシスト、22.0分。

かつてAll-Starだった選手として見れば、寂しい数字です。

そして翌2025-26シーズン。

シモンズはどのNBAチームでもプレーしませんでした。

そして本当にバスケから離れた

今回の復帰で一番興味深かったのは、シモンズがその1年間をどう過ごしていたのかです。

キングスのメディアデーで本人は、かなり率直に話しました。

「1年間、ボールに触らなかった。バスケットボールも見なかった」

その代わり、自分の身体と向き合い、コンディションを整えることに集中したと説明しています。今では身体の状態を「great」と表現し、トレーニングキャンプにも制限なしで参加しています。

これ、個人的には結構驚きました。

NBA復帰を目指す選手と聞くと、毎日体育館に入り、シュートを何百本も打ち、トレーニングを続ける姿を想像します。

シモンズは逆でした。

一度、本当に離れた。

バスケットボールをしない。

NBAも見ない。

自分の身体と心を戻すことを優先した。

そして準備ができたと感じてから、もう一度NBAへ戻る道を選びました。

「バスケを愛していない」という批判にも反論

シモンズには以前から、「本当にバスケットボールが好きなのか」という批判もありました。

今回も1年間バスケットボールから離れていたことについて、そのような見方をされる可能性があります。

しかし本人はメディアデーで、その批判を明確に否定しています。

自分はこの競技が好きだからこそNBAへ戻ってきた、という趣旨の発言をしており、今回の1年間はバスケットボールへの興味を失った期間ではなく、自分自身を立て直すために必要な時間だったと説明しました。

そしてシモンズ自身も、復帰できる保証があったわけではなかったと認めています。

「NBAに戻る機会があるか分からなかった。でも自分に賭けた。そして今ここにいる」

そう語りました。

全体1位指名だった選手が、30歳で「もう一度NBAに入れるか分からなかった」と話す。

改めて考えると、すごいキャリアです。

キングスとは1年350万ドル

そんなシモンズにチャンスを与えたのがサクラメントです。

キングスは9月8日、シモンズとの契約を正式発表。報道によると契約は1年350万ドルです。

かつて5年1億7700万ドルの大型契約を結んだ選手が、今度は1年契約から再スタートします。

ただ、今のシモンズにとって契約額はそこまで重要ではないでしょう。

まずNBAへ戻る。

健康な状態で試合に出る。

そして「まだNBAで戦える」と証明する。

そこからです。

しかもキングス側からすると、この契約はなかなか面白い賭けです。

全盛期に戻らなくても、使い道はある

ここが今回の記事で一番言いたいところです。

シモンズは、本当に全盛期まで戻らないとNBAで価値がないのでしょうか。

僕はそうは思いません。

キングスが必要としているのは、平均16得点、8リバウンド、8アシストを記録してAll-Starになるシモンズだけではありません。

208cmのサイズ。

複数ポジションを守れる守備力。

リバウンド。

トランジション。

そしてゲームメイク。

この中からいくつかが戻るだけでも、ベンチプレイヤーとしてはかなり面白いです。

キングスのスコット・ペリーGMも、シモンズが過去にAll-StarやAll-Defensiveへ選出された実績に触れながら、攻守両面での万能性を評価しています。ダグ・クリスティHCもキャンプでのシモンズについて「素晴らしく見える」と話しました。

ザック・ラビーンも実際に動いている姿を見て、「また健康に見える」と評価しています。

もちろんメディアデーなので、みんな基本的にはポジティブです。

まだ1試合も始まっていません。

でも少なくとも、身体が動かなくてバスケットボールができない状態ではない。

それだけでもここ数年のシモンズを考えると大きいです。

サボニスとシモンズ、結構面白くない?

キングスにはドマンタス・サボニスがいます。

サボニスはビッグマンでありながらパス能力が高く、ハンドオフやエルボーからオフェンスを作れる選手です。

そこへシモンズ。

さらにマリーク・モンク、ザック・ラビーンらボールを扱える選手もいます。

メディアデーではモンクも、シモンズとサボニスという優秀なパサーがいることで自分たちの負担が減ると話していました。キングス側も今季はペースを上げ、ボールを動かすオフェンスを目指しています。

ただし、シモンズとサボニスを同時に使えば当然スペーシングの問題も出てきます。

シモンズが外から無視されれば、ペイントが狭くなる。

ここは昔から変わらない問題です。

だからこそ起用法が面白い。

センター的に使うのか。

ボールハンドラーとして使うのか。

トランジション中心にするのか。

守備要員として特定のマッチアップに当てるのか。

「元All-Starだからスターター」という扱いではなく、現在のシモンズができることから逆算して役割を作れるかが重要になります。

もう「3ポイントが入れば」は言わなくていい

そして僕は今回、これが一番楽しみです。

もうシモンズに、

「今年こそ3ポイントを打つのか?」

「ジャンプシュートが改善したのか?」

という期待をしなくてもいいんじゃないでしょうか。

あれから何年経ったんだ。笑

シモンズはもう30歳です。

今からステフィン・カリーになる必要はありません。

むしろシュートがない状態でも3年連続All-Starになった選手です。

だったら、残っている武器を最大限使えばいい。

守る。

走る。

リバウンドを取る。

パスを出す。

サイズでミスマッチを作る。

それだけでも十分NBAで生き残れる可能性があります。

問題は、それを身体が許してくれるか。

そして本人がその役割を受け入れられるかです。

「昔のベン・シモンズ」ではなく、新しいシモンズへ

メディアデーで「全盛期の自分にどれくらい近い?」と聞かれたシモンズは答えました。

「I’m there. He’s there. He woke up.」 

自信満々です。

さらに今季については、コートへ出るたびに「dominate」したいとも話しています。

正直、全盛期そのままのシモンズが帰ってくるとはまだ思わない方がいいでしょう。

実戦から1年以上離れています。

30歳になりました。

ここ数年間、身体の問題にも悩まされてきました。

メディアデーで健康だからといって、82試合を通して健康でいられる保証もありません。

でも、それでいいと思います。

今回の復帰で面白いのは、2019年のベン・シモンズを完全再現できるかではありません。

30歳になったベン・シモンズが、今の自分でNBAにどんな居場所を作れるのか。

そこです。

ベン・シモンズは、まだ30歳

シモンズのキャリアを振り返ると、妙な感覚になります。

全体1位で指名され、新人王を取り、3年連続All-Starになった。

All-NBAにも選ばれた。

All-Defensive First Teamにも2度選ばれた。

その後キャリアが急降下し、30歳になる前にNBAから1年間離れた。

いろいろありすぎて、もうベテランのキャリア終盤のように感じます。

でも、まだ30歳です。

今回の契約が成功すれば、ここから数年間NBAでプレーする可能性だってあります。

逆にキングスで結果を残せなければ、これが最後のNBA契約になる可能性もある。

だから今季は、シモンズにとってかなり重要です。

もう「未来のスーパースター」ではありません。

「シュートさえ身につけば」と言われる若手でもありません。

NBAで一度ほぼすべてを手に入れ、その後すべてを失いかけた選手が、1年間バスケットボールそのものから離れて帰ってきた。

そして本人は言います。

「あいつは目を覚ました」

だったら見てみたい。

もう3ポイントは打たなくてもいいです。笑

全盛期のベン・シモンズではなく、30歳になった今だから作れる“新しいベン・シモンズ”が本当にいるのか。

今季のキングスで、それを確かめたいと思います。

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