ずーっと昔から、バスケをやっていても見ていても引っかかっていることがあります。相手がドライブからレイアップに行くときにボールを下げた瞬間、それを真下にはたき落とす。ボールは相手の足に当たって、そのままエンドラインの外へ転がっていく。この場面、僕の体感では99%くらい相手ボール(はたかれた側のボール)になるんですよね。笑
でも冷静に考えると、最後にボールに触っているのは足に当てた相手のほうです。だったらマイボールじゃないの?とずっと思っていました。自分の勘違いなのか、それとも現場の判定がズレているのか。今回はNBAの公式ルールブックを中心に調べてみたので、分かったことを順番に話していきます。
結論から言うと、ルール上は「足に当てたほう」がボールを出したことになる
まずNBAの公式ルールブック(2026-27版)のRule 8「Out-of-Bounds and Throw-In」を見ると、Section II-3にかなりはっきり書いてあります。ボールは「外に出る前に最後に触れた選手」によってアウトオブバウンズにされた、という扱いで、しかも髪の毛やユニフォームに触れた場合も「触れた」に含むとわざわざ書かれています。足や脚を除外するような文言はどこにもありません。
さらにRule 10「Violations and Penalties」のSection Iには「選手はボールがアウトオブバウンズになる前に最後に触れた選手になってはならない」とあり、罰則は相手ボールです。つまり条文をそのまま読むと、ディフェンスが真下にはたき、ボールがオフェンスの足に当たってから外に出たなら、最後に触れたのはオフェンス。ディフェンス側のボールになるのが正解です。
ここで「でも足に当たったらキックボールじゃないの?」と思う人もいるかもしれません。これはRule 10 Section IV(Strike the Ball)で整理されていて、故意に足で蹴ったり脚で打ったりするのはバイオレーションですが、ボールが偶然足や脚に当たっただけならバイオレーションではない、と書かれています。なので今回のケースはキックボールにはならず、あくまで「最後に触れたのは誰か」の問題になるわけです。
というわけで、昔からの僕の感覚はルール上は合っていました。ちょっと安心しました。笑
ただし「手」の場合は話が別
ひとつ紛らわしいのが、ボールを持っている手を叩かれた場合です。Rule 8 Section II-3には、選手の手がボールに触れている状態で相手がその手を叩いてボールが外に出た場合は、手をボールに置いていた側のボールになる、という規定があります。NBAのビデオルールブックでも「ボールに触れている手の部分はボールの一部とみなす」と解説されていて、叩いた側がボールを出した扱いになります。
現場でなんとなく「はたかれた側のボール」になりがちなイメージの一部は、この「手」の規定とごっちゃになっているのかもしれません。ただ、今回の疑問のように、ボールが手から離れて下にはたかれ、そのあと足に当たったケースは状況が違います。手の規定はあくまで「ボールと手がまだくっついている状態で叩かれた」場合の話なので、足に当たったケースには当てはまりません。
じゃあなぜ現場ではそうならないのか
ルールは僕の味方なのに、なぜ実際には相手ボールになることが多い(と感じる)のか。正直に言うと、「足に当たると見逃されやすい」ことを示す統計や公式資料は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。なのでここから先は、確認できた事実をもとにした僕の推測として読んでください。
ひとつ確認できたのは、アウトオブバウンズの判定が審判にとってもかなり難しい部類だということです。審判専門誌のReferee Magazine(2019年10月31日の記事)では、WNBAやNCAAで笛を吹く審判が、アウトオブバウンズの判定には「レーザーのように集中した視野」が必要で、指先のわずかな接触やボールの方向・回転の変化を手がかりに見極めている、という趣旨の話をしています。別の審判は、良い角度を保つために動き続けることが大事で、動けなかったときにミスをする、とも言っています(いずれもNBAの審判ではない点は注意です)。
レイアップに行く選手の足元でボールがはたかれ、足に一瞬当たって外へ、というのは、まさに「一瞬の接触」かつ「人の体が重なって見えにくい」場面です。審判の位置によっては、はたいた手の動きは見えても、その後に足に当たったところまでは見えない、ということは普通にありそうだなと思います。で、見えたのが「ディフェンスがはたいた→ボールが出た」だけなら、そのままディフェンスが最後に触ったと判断してしまう。僕の「99%」の正体は、たぶんこれなんじゃないかと思っています。
ちなみに、NBAのルールには「審判がどちらが最後に触ったか確信を持てない場合、あるいは審判同士の意見が割れた場合はジャンプボール」という規定もあります(Rule 8 Section II-4)。ルールの上では「迷ったらオフェンスボール」という決まりはありません。つまりルールの建前としては、見えなかったなら「どちらかのボール」に決め打ちするのではなく、ジャンプボールで仕切り直すのが筋ということになります。そう考えると、はたいた手だけを見て即ディフェンスのタッチと判断してしまうのは、ルールの趣旨からもちょっとズレているのかもしれません。
NBAでは実際に「カリーの左脚」で誤審が認められている
調べていて「まさにこれ!」となったのが、2023年12月17日のウォリアーズ対トレイルブレイザーズ(ポートランド開催)の試合です。Sports Illustrated(SI)が報じたラスト2ミニッツ・レポート(L2M)によると、試合終盤の残り約10秒、SIによれば1点差という場面でこのプレーが起きています。
SIが報じたL2Mの中身は2つの判定に分かれています。ひとつは、ブレイザーズのジェラミ・グラントがステフィン・カリーからボールをはたいたプレーで、こちらはグラントがクリーンにボールに触れていて、腕の接触は偶発的なもの(インシデンタルコンタクト)なのでファウルなしで正しい、という評価。もうひとつがポゼッションの判定で、現場ではウォリアーズボールとされたけれど、ボールは外に出る前に最後にカリーの左脚に当たっていたので、本来はポートランドボールであるべきだった、と誤りが認められています。
形としては、僕が昔から引っかかっていた場面とかなり近いです。ディフェンスがきれいにはたいて、最後はオフェンスの脚に当たって出た。それなのに現場ではオフェンスのボールになった。リーグ側も後から「それは間違い」と認めているわけで、僕の感覚がNBAでも裏付けられた形になりました。ちなみに試合はウォリアーズが118-114で勝っています。1点差の終盤でこれは、ブレイザーズ側からしたらかなり痛いですよね…。
映像で見直せるのはコーチズチャレンジだけ
じゃあNBAなら映像で確認すればいいじゃん、と思いますよね。ここも調べてみると、現行の2026-27版ルールブックのRule 14「Coach’s Challenge」には、アウトオブバウンズのバイオレーションを試合中に映像で見直す唯一の手段はコーチズチャレンジだ、とはっきり書かれています。
以前は、第4クォーターの残り2分と各延長の残り2分には、審判側が主導してアウトオブバウンズの最後の接触をリプレイで確認する仕組みがありました。それが2021-22シーズンに変わり(発表は2021年9月29日、当初は1年間の試験導入という扱い)、審判主導のレビューはなくなって、代わりにコーチズチャレンジで試合全体を通してアウトオブバウンズを対象にできるようになりました。現行のルールブックでもこの形が続いています。
ただ、このチャレンジがなかなか重いんです。アウトオブバウンズで使えるのは自分のチームがボールをもらえなかった判定だけで、しかも判定の直後にタイムアウトを取る必要があります。回数は1試合1回で、成功したときだけ2回目がもらえる。しかも判定を覆すには「明白で決定的な映像の証拠」が必要です。足にかすっただけのような微妙なケースで、タイムアウトと貴重なチャレンジを賭けるかどうかは、コーチとしてもかなり悩むところだと思います。先ほどのブレイザーズの場面でチャレンジが残っていたのかどうかまでは、今回は確認できませんでした。
審判の仕組みやチャレンジ制度については、以前書いた「NBAの審判の仕組み」や「NBAの審判問題とチャレンジ」でも触れているので、気になる方はそちらもどうぞ。
日本の試合だとどうなの?
僕が普段プレーしているのは日本の試合なので、本当はこっちのルールも条文できっちり確認したかったんですが、今回は日本の競技規則やFIBAルールの原本にうまくたどり着けませんでした。日本の競技規則はFIBAルールがベースになっている、というところまでは言えますが、細かい条文については推測で書きたくないので、今回はNBAルールの話にとどめておきます。
とはいえ、NBAのように映像で見直す仕組みがない試合のほうが圧倒的に多いのは間違いないです。そうなると結局、審判がその瞬間に見えたかどうかがすべてになります。プレーヤーとしては「足に当たってたよ!」とアピールしたくなる気持ちも分かりますが、見えていないものは吹けないので、審判を責めるだけの話でもないのかなとも思います。
まとめ
ずっとモヤモヤしていた「真下にはたいたボールが相手の足に当たって出たらどっちのボールか」問題は、少なくともNBAのルール上は、最後に触れた選手(足に当てたオフェンス側)がボールを出した扱いになり、ディフェンス側のボールが正解でした。偶然足に当たっただけならキックボールにもならず、審判が判断できない場合はジャンプボールという規定まであります。
それでも現場で相手ボールになりやすいと感じるのは、ルールのせいではなく、一瞬の接触が見えにくいことや、映像で見直す手段が限られていることが大きいのだと僕は考えています。実際、NBAでもカリーの左脚に最後に当たったボールがウォリアーズボールにされ、L2Mで誤りと認められた例があるくらいなので、トップレベルの審判でも見落とす難しいプレーなんですよね。
なので、次に同じ場面に出くわしたら「ルール上は合ってるはず」と心の中で思いつつ、審判には落ち着いてアピールしようと思います。笑 みなさんの周りでも、この判定でモヤっとした経験があったらぜひ教えてください。

