タウンズの延長交渉はなぜ止まった?53年ぶり優勝のニックスを縛るセカンドエプロン

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ニックスとカール=アンソニー・タウンズの延長交渉が止まっています。10月3日(日本時間)の時点で、合意の報道はまだありません。背景にあるのは、セカンドエプロンという年俸の壁です。オーナーが「セカンドエプロンには入れない」と明言しているため、タウンズに満額を出すのは難しい状況です。報道を追う限り、焦点はこの一点にあるようです。

優勝からまだ4か月

まずは前提をおさらいします。ニックスは6月13日(現地時間)、ファイナル第5戦でスパーズに94-90で勝ちました。シリーズ4勝1敗で、1973年以来53年ぶりの優勝です。ファイナルMVPは、第5戦で45得点を挙げたジェイレン・ブランソンでした。

プレーオフ全体の成績は16勝3敗でした。タウンズもプレーオフ平均15.9点・10.6リバウンド・4.9アシストを残しています。オールスター6回の30歳で、11月中旬に31歳になります。優勝メンバーの柱なのに延長が決まらない、というのが今回の話です。

ESPNは「停滞」と報道

最初に大きく報じたのはESPNです。シャムズ・シャラニア記者とヴィンセント・グッドウィル記者が9月23日、交渉の停滞を伝えました。関係者によると、オフの間に長く話し合ったものの最近は進展がないそうです。キャンプ開始までの合意は見込み薄で、シーズン中の合意はありうるとしています。

9月29日には、ESPNのマリカ・アンドリュース記者が『NBA Today』で続報を伝えました。タウンズ自身は、減額を受け入れるつもりはあるそうです。ただし、ニックスが求める減額幅を「不当(unreasonable)」と見ているといいます。アンドリュース記者が関係者から聞いた話で、あくまでタウンズ側の見方です。

本人の言葉も出ています。9月28日、ニューヨーク州タリータウンでのメディアデーで、タウンズはこう話しました。

“I’ve made it known I want to play here. I’ve been a fan since I was a kid. I’d like to get it done and step on the floor and feel as comfortable as possible.”

ここでプレーしたいとはっきり伝えていて、子どもの頃からのファンだとも言っています。シーズン中は交渉を棚上げするのかと聞かれると、”In this situation, there’s no comfortability to be had.” と答えました。今の状況では落ち着けるはずがない、という意味です。

上限額は2億7,200万ドル?2億7,600万ドル?

ここからはお金の話です。タウンズの今季年俸は約5,700万ドルです。2027-28シーズンは約6,100万ドルのプレイヤーオプションになっています。プレイヤーオプションは、その年に残るか破棄するかを選手が選べる契約年のことです。

延長の上限額は、報道の時期によって数字が違います。7月の報道や9月18日のESPN記事では、4年約2億7,200万ドルとされていました。9月23日以降のESPNでは、ボビー・マークス記者の試算で最大4年2億7,600万ドルです。この間に、2027-28のキャップ予測が1億7,400万ドルから1億7,600万ドルに上がりました(The Athletic報道、9月12日)。最大額はキャップに連動するので、この更新が差の背景とみられます。

延長の期限も確認しておきます。ベテランの延長には10月19日の期限がありますが、これは契約最終年でない選手向けです。Hoops Rumorsの解説によると、タウンズは2027-28のオプションを延長の一部として破棄する形なら、シーズン開幕後も延長できます。期限は2027年6月30日です。そのためニックスは急いでいない、とNY Postのボンディ記者は伝えています(Hoops Rumors経由)。

ニックスが考えている金額は

では、ニックスはいくらを想定しているのか。SNYのイアン・ベグリー記者とNY Postのステファン・ボンディ記者は、年4,500万〜5,000万ドル開始の延長と伝えています。今の2027-28オプション額は約6,100万ドルです。初年度だけで1,000万ドル以上低い計算になります。

Bleacher Reportのジェイク・フィッシャー記者は、ニックスが4年2億ドル前後の延長に「はるかに関心がある」と報じました。これは関心の話で、正式に提示したとまでは書かれていません。とはいえ上限の2億7,600万ドルと比べると、差は約7,600万ドルあります。The Athleticも、ニックスはかなり低い額を払いたがっており、両者の隔たりは大きいと伝えています。

そもそもセカンドエプロンとは

ここで、壁になっているセカンドエプロンを簡単に説明します。ニックスの年俸総額は、すでにサラリーキャップを大きく超えています。NBAでは、総額が上がるほど段階的に制限が重くなります。2026-27の各ラインは、NBA.comの発表で次の通りです。

  • サラリーキャップ: 1億6,496万1,000ドル
  • ラグジュアリータックス(贅沢税)ライン: 2億42万8,000ドル
  • ファーストエプロン: 2億901万5,000ドル
  • セカンドエプロン: 2億2,168万6,000ドル

セカンドエプロンを超えると、補強の手段がかなり減ります。現行のCBA(労使協定)が合意された当時の報道によると、タックスペイヤー用のミッドレベル例外(MLE)が使えなくなります。MLEは、キャップを超えているチームでも外部の選手と契約できる枠のことです。複数選手の年俸を合算したトレードもできません。送り出す額より多い年俸を受け取るトレードも不可です。

今のニックスは、すでにファーストエプロンを超えています。セカンドエプロンまでは、数百万ドルしか残っていないとみられます(年俸データサイト等の集計で、正確な額は未確定)。

ドーランの「We cannot go into the second apron.」

この壁を決定的にしたのが、オーナーのジェームズ・ドーランの発言です。優勝直後の6月17日、ラジオ局WFANの番組でこう話しました。

“We cannot go into the second apron.”

さらに “I’ll write as big of a check as possible, but I can’t write a check into the second apron.” とも語っています。できるだけ大きな小切手は書くが、セカンドエプロンに入る小切手は書けない、という意味です。当時のニックスは、セカンドエプロンまで約1,300万ドルだったとESPNは伝えています。

この方針の影響はすでに出ています。ミッチェル・ロビンソンは7月1日、セルティックスと3年4,740万ドルで合意しました(ESPNシャラニア記者の報道、3年目はプレイヤーオプション)。ESPNはその後の記事で、ドーランのエプロン回避方針が流出の要因になったと書いています。ロビンソンは年1,500万ドル超のオファーを受けていたそうです。ただし、球団が公式に理由を説明したわけではありません。

ESPNのブライアン・ウィンドホースト記者も9月、こう分析しています。セカンドエプロンを避けつつこのチームを保つには、タウンズが来季6,100万ドルをもらうわけにはいかない。オプションの6,100万ドルを下げる新契約が必要だ、という見立てです。

ブランソンとブリッジズの前例

ここで思い出すのが、ほかの主力の契約です。ブランソンは2024年7月、4年1億5,650万ドルの延長にサインしました。ESPNによると、最大額より1億1,300万ドル少ない額です。ミカル・ブリッジズも2025年7月31日、4年1億5,000万ドルの延長で合意しています。

チームの顔が大きく譲って残った前例がある以上、球団がタウンズにも同じ流れを期待するのは自然だと思います。ただ、話はタウンズ1人では終わりません。ブランソンとOG・アヌノビーは、来オフに延長資格を得ます(ESPN)。タウンズにいくら払うかで、その先の2人の話まで変わってくるわけです。

まとめ

整理すると、タウンズは延長の上限で最大4年2億7,600万ドル(以前の報道では約2億7,200万ドル)を受け取れる立場です。一方のニックスは、年4,500万〜5,000万ドル開始や4年2億ドル前後が想定額として報じられています。タウンズ側は減額そのものは受け入れるが、求められている幅は不当と見ている、というのがESPNの続報です。その間に立っているのが、ドーランの「セカンドエプロンには入れない」という方針です。

延長は2027年6月30日まで可能なので、シーズン中に急に決まることも十分ありえます。53年待った優勝の翌シーズンに、主力が「落ち着かない」と話している状態はやっぱりもったいないです。お互いが納得できる数字に落ち着いて、タウンズが気持ちよくコートに立てる形になってほしいと思います。

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