NBAのマックス契約はキャップの35%まで。怪我のリスクへの備えと限界

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「サラリーキャップの35%も1人でしめてたら他の選手にお金使えないけど、流石に怪我とかもあるし、リスク対策できなくない?笑」

こんなことをつぶやいたのですが、書いたあとで、実際のNBAの制度に怪我への備えはあるのか、自分でも気になってきました。というわけで、調べてみることにしました。

2026-27シーズンのサラリーキャップは1億6,496万1,000ドルで、その35%は5,773万6,350ドル、約5,774万ドルです。この金額を払っている選手が長期離脱したらどうなるのか。先に結論を言うと、備えはいくつかありましたが、「怪我をした選手の給料を消してくれる」ものはほとんどなく、チームが背負う部分がかなり大きい、というのが調べた印象です。選手の状態や数字は、2026年9月22日、開幕前の時点のものです。

そもそも35%をもらえるのはどんな選手?

まず35%の中身から確認します。マックス契約(最大年俸)は、NBAでのキャリア年数によって3段階に分かれていて、0〜6年が25%、7〜9年が30%、10年以上が35%です。2026-27の金額にすると、それぞれ4,124万250ドル、4,948万8,300ドル、5,773万6,350ドルになります。

ちなみにこの割合、契約の初年度だけの上限なんです。2年目以降は、自チームとの再契約なら年8%(最長5年)、他チームとの契約なら年5%(最長4年)ずつ上がっていくので、35%枠で5年再契約すると2年目は6,235万5,258ドル、5年の総額は約3億3,487万ドルになります。

しかも上限は「キャップの35%」と「前年年俸の105%」の大きい方です。ステフィン・カリーの2026-27の年俸は6,258万7,158ドルで、キャップ比にすると約37.9%。前年年俸の105%が上限になる仕組みによるとみられますが(ESPNは「リーグ規則上、チームが提示できる最大額」と伝えています)、35%は天井ですらなかったのか、と少し驚きました。

スーパーマックスと65試合ルール。怪我は次の契約にも響く

7〜9年目の選手でも35%まで出せる枠が、いわゆるスーパーマックス(Designated Veteran契約)です。ルーキー契約後の延長にも似た枠があって、こちらはRose Rule(ローズ・ルール)と呼ばれ、30%まで出せます(条件に届かなければ25%)。条件は、直近のシーズンにオールNBAかDPOY(最優秀守備選手賞)に選ばれた、直近3シーズンで2回選ばれた、または直近3シーズン以内にMVPを獲った、といったものです。スーパーマックスは提示できるのが現所属チームだけで、署名後の1年間はトレードもできません。

ここで怪我が絡んできます。MVPやオールNBAなどの賞は、20分以上出場した試合が65試合ないと資格を失う「65試合ルール」の対象なんです。救済もあって、62試合以上出ていて、負傷するまでの試合の85%以上に出場し、独立した医師がシーズン終了級の怪我と判断すれば資格は残りますし、特別な事情を訴える異議申し立ての手続きもあります。

2025-26は、この運用が目立ったシーズンでした。ESPNによると、ドンチッチ(64試合)とカニングハム(63試合、肺虚脱で12試合欠場)は特別な事情が認められて資格を得た一方、エドワーズは60試合(Yahoo Sportsは61試合出場と表記しています)で、仲裁で却下されました。ESPNのボビー・マークスは2024年1月の試算で、バム・アデバヨとデアーロン・フォックスはオールNBAに入れるかどうかで次の契約が約9,300万ドル変わると出しています。怪我は今の年俸のリスクだけでなく、次の契約の値段にも関わってくるわけで、なかなか厳しい話です。

負傷者例外は、使い勝手がだいぶ悪そう

ここからが本題の「備え」です。まずは、名前からして怪我のための制度である負傷者例外(Disabled Player Exception、DPE)です。NBA指定の医師が、その選手は翌年6月15日までプレーできない可能性が「かなり高い」と判断すると、キャップに空きがなくても代わりの選手を1人獲得できる例外がもらえます。ただし金額は、負傷選手の年俸の50%と、ノンタックスペイヤーMLE(ミッドレベル例外)の小さい方までです。2026-27のMLEは1,504万4,000ドルなので、仮に5,700万ドル級の選手が対象でも、半額の約2,890万ドルではなくこの額が上限になります。

使えるのは1人だけで、申請は1月15日まで、使用は3月10日までです。負傷した選手の給料は、そのままキャップに残ります。2025-26にはハリバートン(ペイサーズ)に1,410万4,000ドルが付与されましたが、Hoops Rumorsは期限直前の3月9日付の記事で、このまま期限を迎えれば今季使われたDPEはゼロになると書いています。付与された球団は8つあったのに、です。枠が小さくて、期限もあって、1人分にしかならないとなると、使いづらいのも分かる気がします。

キャリアを終わらせる怪我なら、キャップから外せることもある

もうひとつが、キャリアを終わらせるほどの怪我の場合に、その給料をキャップの計算から外せる制度です。CBA Guideの解説とCBA条文の引用によれば、対象の選手をウェイブ(戦力外に)したうえで、直近シーズンに10試合以上出ていれば最後の試合から1年後に申請でき、医師にキャリアを終わらせる怪我と認められれば、給料は直ちにチームのキャップ計算から除外されます。除外後にその選手が25試合以上プレーすると再計上されます。なお、CBA Guideによると、DPEを申請済みの場合は申請できません。

ただ、これは「キャップに空きを作る制度」であって、お金が消える話ではなさそうです。2017年のクリス・ボッシュ(ヒート)の例では、ESPNによると残り約5,200万ドルのうち約2,900万ドルを保険が負担し、残りはヒートの負担で、キャップの空きは約3,700万ドルでした。しかもこれは2つのCBAの狭間だったため、ヒート・選手会・NBAの「1回限りの特別な取り決め」だったとも伝えられていて、標準的な手続きの見本とは言いにくい例です。2020年にはレイカーズのルオル・デンの申請が却下されていて(CBS Sportsによると、その後ティンバーウルブズで22試合に出ていたため)、近年の適用例までは調べきれていませんが、気軽に頼れる制度ではなさそうだと感じました。

保険は、報道ベースで見るしかなかった

保険については、Sportico(Yahoo Sportsが転載)が2025年7月に報じた内容が一番具体的でした。以下は「報道によると」の話ですが、NBAが運営する一括のプログラムがあり、各球団は年俸(または残りの保証額)が高い上位4選手以上に保険をかけます。支払いは連続41試合欠場したあとから、補償は年俸の50%か80%の2段階で、最大支払額は1試合約49万2,000ドル、保険料はチームが払い、保険金を超える分の給料は球団の負担とされています。

例として挙がっていたのが、年俸4,560万ドルのハリバートンで最大1,820万ドル、年俸5,410万ドルのテイタム(セルティックス)で最大補償ベースなら2,000万ドル強です。どちらも最大で年俸の4割前後にとどまる計算で、しかも2025年7月時点の、開幕前の「最大でこのくらい」という見込みです。テイタムは2026年3月6日に復帰していて、実際にどうなったのかは、私が確認できた範囲では分かりませんでした。ちなみに2015年にはESPNが、エンビードの右足が既往症として76ersの保険から除外されたと伝えていて(当時の仕組みは今と違うようですが)、保険にも穴があるんだなと思いました。

契約に最初から条件をつけておく手もある

契約そのものに条件をつける例もあります。ザイオン・ウィリアムソン(ペリカンズ)の延長契約は、体重の条件と、前年の出場試合数(41試合、51試合、61試合)に応じて、保証される額が段階的に増える作りだとHoops Rumorsが伝えています。2024-25は30試合の出場でしたが、2025-26は4月4日のキングス戦で61試合目に届き、2026-27の保証額は2,530万ドルから3,370万ドルに増えたとClutchPointsが報じています(年俸は4,216万6,510ドルで、残り840万ドルは体重の条件)。

エンビードの2017年の契約(5年1億4,650万ドル)にも、ESPNの報道によると、足と背中の怪我に限った保護条項がありました。その怪我で25試合以上欠場し、かつ出場が1,650分未満なら、76ersは減額のためにウェイブできる、という内容で、膝や手首は対象外だったそうです。ここまで細かく条件をつけるのかと驚きました笑。ただ、こうした条項がマックス級の契約でどのくらい一般的なのかは、今回は確認できませんでした。

ウェイブ&ストレッチとバイアウト。リラードとビールの場合

支払いの時期を組み替える手もあります。ダミアン・リラードは2025年4月下旬、プレーオフ1回戦の第4戦で左アキレス腱を断裂しました。バックスは7月1日にリラードをウェイブし、残り約1億1,300万ドルを2年から5年に引き延ばして(ストレッチ・プロビジョン)、キャップ上の負担は年約2,250万ドルになっています。ESPNによると、リラードは1億1,300万ドルを全額受け取ります。同じ日にバックスはマイルズ・ターナーとの契約で合意し、リラード自身もその後ブレイザーズと3年4,200万ドルで契約しました。

ブラッドリー・ビール(サンズ)は、2022年にウィザーズと結んだ5年2億5,100万ドルの契約について、2025年7月16日にバイアウトで合意しました。Front Office Sportsによると、残り2年約1億1,080万ドルのうち約1,380万ドルを放棄し、サンズは残りをストレッチする形です。ノートレード条項があってトレードでの放出が難しかったとも報じられていて、その後はクリッパーズと2年1,100万ドルで契約しました。ビールは怪我というより高額契約の出口の例ですが、選手側が一部を諦めて折り合うこともあるんですね。

どちらの例も基本は、支払いの時期とキャップの重さを動かす話でした。総額が減ったのは、ビールが自分から一部を手放したときだけです。

結局、リスクはチームが背負う。だから残りのロスターが肝になる

並べてみると、DPEは1人分の小さな枠、保険は報道ベースで最大でも年俸の4割前後、キャップ除外はキャリアを終わらせる怪我に限られて1年待つ必要があり、契約の条件は個別の交渉で保証の範囲を絞る工夫、ストレッチは支払いの時期を動かすだけ、という感じでした。「リスク対策できなくない?」と書きましたが、答えは「できなくはないけど、思ったより小さい」です。基本的には、チームが背負うと考えた方がよさそうです。

そうなると効いてくるのがロスター全体の組み方です。サラリーキャップはソフトキャップなので、バード権や例外を使えばキャップを超えて補強できますが、NBA.comによる2026-27のファーストエプロンは2億901万5,000ドル、セカンドエプロンは2億2,168万6,000ドルです。5,773万6,350ドルは、計算するとファーストエプロンの約27.6%、セカンドエプロンの約26.0%にあたります。Hoops Rumorsの用語集などによると、ファーストエプロンを超えるとサイン&トレードで選手を獲得できず、セカンドエプロンを超えるとMLEが使えず、給料を合算したトレードもできなくなります。

実例も見てみます。エンビードの2026-27年俸は5,773万6,350ドルで、ちょうど35%です(Sporting Newsは5,798万5,752ドルとしていますが、キャップ確定前の見通しに基づく数字とみられるため、確定後の額を使っています)。3年の総額は署名当初の約1億9,300万ドル規模から、キャップ確定で約1億8,700万ドルになり、Sporting Newsによると全額保証です。そして2025-26は38試合の出場でした。

ハリバートンは2025年のファイナルGame 7で右アキレス腱を断裂し、2025-26を全休しました。年俸4,560万ドルを払いながら、付与されたDPEも使われないままでした。2026-27の開幕に間に合う見通しとの報道もありますが、まだキャンプ前で、確定した話ではありません。テイタムも2025年5月12日に右アキレス腱を断裂し、2026年3月6日に復帰しましたが、その時点でセルティックスは41勝21敗でした。

個人的には、テイタム不在でこの成績だったのは、残りのロスターが機能していたからだと思います(内訳までは調べていないので、あくまで私の見方です)。マックスの選手にキャップの35%を割くというのは、その選手が抜けたときにどれだけ残りで戦えるかまで含めた設計なんだろうな、と。制度上の保険よりも、ロスターの厚みの方がずっと大きなリスク対策になっているように見えました。

まとめ

サラリーキャップの35%を占めるマックス契約の怪我への備えは、思ったよりいくつもありました。ただ、給料そのものを消してくれるものはほとんどなく、キャップの余裕や支払いの時期を調整して、チームの負担を一部軽くするものが中心でした。

だからこそ、怪我を織り込んで残りのロスターをどう組むかが、チームの腕の見せどころになるんだと思います。エンビードもハリバートンもテイタムも、2026-27はシーズンを通してコートに立ってくれるのが、何よりのリスク対策ですね。

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