NBA選手のジョックタックスとは、遠征先の州でも課税される税金の仕組み

NBA選手のジョックタックスとは、遠征先の州でも課税される税金の仕組み
記事内に広告が含まれています。
スポンサーリンク

NBA選手の年俸ランキングやサラリーキャップの話題はよく見かけますが、実際に選手の手元にいくら残るのかという話はあまり取り上げられません。そのカギになるのが、アウェー遠征のたびにかかる州税、通称ジョックタックスです。今回はこの仕組みを整理してみます。日本に住んでいるとあまり実感しにくい制度ですが、アメリカでは州ごとに税率も仕組みも異なるため、こうした複雑さが生まれるようです。

ジョックタックスとは何か

ジョックタックスとは、その州や都市で収入を得た非居住者に課される所得税の通称です。NBA選手の場合、ホームの州だけでなく、アウェー遠征で訪れた州ごとにその地での稼ぎに対して税金がかかる仕組みになっています。試合日程と年俸という二つの情報がどちらも公開されているため、税務当局にとっては追跡しやすい対象になっていると言われています。一般的な会社員の出張者であれば訪問先の州で課税されることはほとんどありませんが、年俸も日程も公開されているプロ選手は格好の対象になってしまうというわけです。

この制度自体は1960年代から存在していましたが、各州が非居住選手に積極的に課税し始めたのは1991年のことです。カリフォルニア州が、NBAファイナルでロサンゼルスを訪れたシカゴ ブルズの選手たちに課税したのがきっかけでした。これに対してイリノイ州が報復するように独自のジョックタックスを導入し、同様の税を自州の選手に課す州の選手を対象にする仕組みを作ります。ここから各州が次々と同様の制度を整え、今のような形に広がっていきました。

こうした税負担の差はチーム編成にも影響すると言われています。所得税がない州のチームはフリーエージェントに対して実質的な手取り額で優位に立てるため、契約交渉の場面で地味に効いてくる要素だそうです。もちろん移籍先を決める理由は環境や起用法など他にも色々ありますが、税金の話も意外と無視できないポイントかもしれません。

所得税のない州はNBA選手に有利

個人の所得税がない州にホームを置く選手は、ホームゲームに関してはこの税負担がありません。主要プロチームのある地域でジョックタックスの対象外になっているのはフロリダ州とテキサス州とワシントン州です。加えてワシントンD.C.もその対象外に当たります。D.C.については、連邦議会が非居住者への課税を禁じているという特殊な事情があります。これらの地域にホームを置くチームの選手は、少なくともホームゲームの分に関しては税負担を抑えられる計算になります。

個人所得税がない地域備考
フロリダ州州の個人所得税なし
テキサス州州の個人所得税なし
ワシントン州州の個人所得税なし
ワシントンD.C.連邦議会が非居住者への課税を禁止

ただし、これらの地域の選手も遠征先では通常どおり課税されます。免除されるのはあくまでホームゲームの分だけなので、年間のスケジュールを考えるとアウェー遠征のほうが圧倒的に多く、完全に税負担から逃げられるわけではありません。

具体的な例で見ると、マイアミ ヒートやオーランド マジックはフロリダ州をホームにしているチームです。ダラス マーベリックス、ヒューストン ロケッツ、サンアントニオ スパーズはテキサス州に本拠を置いています。ワシントン ウィザーズも先述の連邦議会の規定によって対象外になっている球団のひとつです。こうしたチームでプレーする選手は、少なくともホームゲームの分の州税を気にせずに済むという計算になります。

テネシー州の特権税という特殊な例

ジョックタックスの中でも特殊だったのが、テネシー州の特権税です。テネシー州は個人所得税がない州ですが、2009年にアスリート向けの特権税を導入しました。これは収入に対する課税ではなく、1試合につき2,500ドルという定額の課税で、1暦年につき最大3試合までという仕組みでした。対象はNBAとNHLの選手に限られ、NFLの選手は免除されていたそうです。徴収された税収は州の国庫ではなく、メンフィスのアリーナ運営に関わる団体などへ渡っていたとされています。

この制度はNBA選手にとってかなり不公平なものでした。グリズリーズ戦で8試合しか出場しなかった遠征選手が、シーズンを通してプレーした選手と同じ最大7,500ドルの税を課される例もあったそうです。出場試合で得た収入そのものより税額のほうが大きくなってしまう選手もいたと当時報じられています。この特権税は、NHL選手については2014年4月24日以降のテネシー州でのレギュラーシーズンの試合から、NBA選手については2016年6月1日以降の試合からそれぞれ廃止されました。

NFL選手だけが免除されていた理由としては、試合数の違いが挙げられることが多いようです。NFLはレギュラーシーズンの試合数がNBAやNHLよりずっと少なく、1試合あたりの負担を同じ基準で課すとバランスが取れないと判断されたのではないかとも言われています。真相がどこにあるのかは自分も断定はできませんが、スポーツごとの事情を踏まえて作られた制度だったことは間違いなさそうです。

計算方法とチームへの影響

ジョックタックスの計算は、おおまかにいうとその州に滞在した日数に応じて年俸を割り振る方式で行われます。練習や移動も含めた仕事上の滞在日数をベースに、その州での滞在日数が年間の総稼働日数のうち何パーセントを占めるかを計算し、年俸にその割合を掛けて課税対象額を算出するという考え方です。州ごとに細かいルールの違いがあり、同じ遠征でも州によって計算結果が変わることもあるそうです。

この仕組みは選手だけが対象ではありません。帯同するトレーナーやスカウト、チーム関係者も同様に課税対象になる場合があり、必ずしも高給取りだけが負担する税ではないという指摘もあります。2003年には米国のシンクタンクが、ジョックタックスについて狙いの精度や執行の公平性に疑問があると指摘したこともあるそうです。

こうした複雑な税務処理のため、NBA選手の多くは専門の会計士やファイナンシャルアドバイザーを雇っているそうです。州ごとに提出書類も異なり、個人で管理するのはかなり大変な作業になるとも言われています。契約規模が大きくなるほど、こうした専門家に支払うコストも同時に増えていくという現実もあるようです。

ちなみにGリーグに所属する選手は年俸そのものが大きく異なり、Gリーグの年俸制度を見ると分かるとおり標準契約は数万ドル規模にとどまります。それでも遠征先によっては同じようにジョックタックスの対象になる場合があり、収入の規模に関わらず制度自体は等しく適用される点は意外と知られていないかもしれません。

年俸の高さだけでは測れない負担

年俸の大きさだけを見てお金に困らないだろうと思われがちですが、実際には引退後に経済的に苦しくなる選手も一定数いると言われています。以前、NBA選手の6割が引退後に破産するという話が広く知られていました。調べてみると元の出典がはっきりせず、実際の研究では6.1パーセントだったという記事を自分のブログで取り上げたことがあります。数字が誇張されて伝わってしまう例ではありますが、手取り額の管理が難しいという大枠の指摘自体は的外れではないのかもしれません。

NBA選手の年俸がどのように決まるかはよく話題になりますが、実際の手取り額を考えるときはこうした税金の仕組みも無視できません。引退後の年金制度と合わせて考えると、現役中にどれだけ手元に残せるかという視点でNBA選手のお金の話を見るのも面白いと思います。

まとめ

  • ジョックタックスはアウェー遠征先の州でも課税される仕組み
  • 1991年のブルズへの課税がきっかけで各州に広がった
  • フロリダ州やテキサス州など所得税のない地域は一部有利
  • テネシー州の特権税は2016年にNBA選手への適用が廃止

年俸ランキングだけを見ていると気づきにくい話ですが、実際の手取りはこうした税制の積み重ねで大きく変わってきます。移動の多いシーズンだからこそ、こうした裏側の仕組みも知っておくと、ニュースの見方が少し変わってくるかもしれません。次に大型契約のニュースを見るときは、額面だけでなくホームの州や遠征先についても少し気にしてみると、新しい視点で楽しめるのではないかと思います。

楽天でチェック

Amazonのアソシエイトとして、Basketball Freakは適格販売により収入を得ています。

当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。
タイトルとURLをコピーしました