100日後に戦術マスターになるNBAファンへの道 – 30日目-ゾーンディフェンスの種類を整理する(2-3 / 3-2 / 1-3-1)

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【30th Step】ゾーンディフェンスの種類を整理する(2-3 / 3-2 / 1-3-1)

はじめに

前回はフルコートプレスの種類と、破られたときに何が起きるかを見ました。その中で、ヒートが2-2-1のゾーンプレスから2-3ゾーンへ下がる形を使っていた、という話に少し触れました。今回はその「下がった先」の話です。

ゾーンとマンツーマンの違いは第3回で扱いました。人を守るのか、場所を守るのか、という大きな分け方です。ただ、ゾーンと一口に言っても配置はいくつもあって、形が変わると守りやすい場所も、空きやすい場所もがらりと変わります。今回は代表的な2-3・3-2・1-3-1の3つを並べて、それぞれの得意と弱点を整理していきます。

ゾーンの「数字」の読み方

ゾーンの名前に付いている数字は、コートの外側(ハーフコートライン側)からゴールに向かって、何人ずつ並んでいるかを表しています。2-3なら前に2人、後ろに3人です。1-3-1なら前に1人、真ん中の列に3人、ゴール下に1人という並びになります。

数字を見れば、どこに人が多いかがすぐ分かります。逆に言えば、人が少ない列がそのゾーンの弱いところです。この見方を覚えておくと、試合中に「あ、いまゾーンだ」と気づいたあとに、どこを攻めればいいのかまで考えられるようになります。

NBAのゾーンには「3秒」の縛りがある

NBAのゾーンを考えるうえで外せないのがディフェンシブ・スリーセカンドです。NBAは2001-02シーズンからゾーンを解禁しましたが、そのときに一緒に導入されたのがこのルールでした。守る側の選手が、相手を実際にガードしていない状態で3秒を超えてペイントにとどまると、テクニカルファウルになります。相手にはフリースロー1本が与えられ、ボールもそのまま相手のものです。

つまり、大きなセンターをゴール下に置きっぱなしにして待たせる、という一番分かりやすいゾーンの形は、NBAではそのままでは使えません。後ろの真ん中の選手は、ペイントを出たり入ったりしながら守ることになります。学生バスケのゾーンとNBAのゾーンが少し違って見えるのは、このルールの影響が大きいと思います。

1. 2-3ゾーン

前に2人、後ろに3人を置く、いちばん基本的なゾーンです。後ろの3人がゴール下の左右と真ん中を埋めるので、ペイントとリバウンドに強いのが特徴です。ドライブで中に入ってきても、すぐに2人目、3人目が待っています。

弱点は、前の2人の間にできるフリースローライン付近(ハイポスト)と、外側のウィングです。前列が2人しかいないので、ボールが真ん中に入ると、後ろの選手が前に出るか、前の選手が下がるかを選ばなければいけません。そこでパスをさばかれると、コーナーやウィングのスリーが空きやすくなります。

2. 3-2ゾーン

前に3人、後ろに2人です。2-3とちょうど逆の並びで、トップとウィングの外側を厚く守れるのが強みです。外からのスリーを打たせたくない相手には、こちらの方が合っています。

その代わり、後ろは2人しかいません。ゴール下とベースライン側、特にコーナーとローポストのあたりが薄くなり、リバウンドでも不利になりやすい形です。外を消すかわりに中を少し差し出す、というトレードオフになっています。

3. 1-3-1ゾーン

前に1人、真ん中の列に3人、ゴール下に1人。ひし形を縦に伸ばしたような配置です。真ん中の列の3人がフリースローラインの高さに横並びになるので、ハイポストとウィングがしっかり埋まっているのが特徴です。

この形のいちばんの持ち味は、トラップと相性がいいことです。ボールがウィングへ動くと、前の1人と横の選手でサイドライン際に追い込み、2人で挟みにいけます。第28回で見たトラップの考え方が、そのままハーフコートの中で使えるわけです。

弱点ははっきりしていて、コーナーとベースラインです。ゴール下の1人が左右のコーナーまで走らなければいけないので、ボールを素早く逆サイドのコーナーへ振られると間に合いません。挟みにいったぶん、どこかで1人余るのは前回までと同じ理屈です。

なぜ重要なのか

NBAでは、ゾーンを試合の大半で使い続けるチームはほとんどありません。選手のシュート力が高く、どの形にも空く場所がある以上、ずっと同じゾーンで守るとどこかで必ず崩されます。

それでもゾーンを知っておく価値があるのは、ゾーンが相手のリズムを変えるための道具として使われるからです。マンツーマンで慣れてきた相手のオフェンスに、急にゾーンを見せる。すると、それまで通っていたピック&ロールやアイソが同じようには機能しなくなります。数ポゼッションでも相手が戸惑えば、それだけで流れが変わることがあります。

実例:2020年東カンファレンス決勝のヒート

分かりやすい例が、2020年の東カンファレンス決勝、ヒート対セルティックスです。Defectorの記事によると、ヒートはこのシリーズでゾーンを使い、第1戦で14ポゼッション、第2戦では32ポゼッションを守りました。第2戦の32回のうち29回は後半で、セルティックスはその32回で25点、1ポゼッションあたり0.78点に抑えられています。ヒートは第2戦を106-101で勝ちました。

配置は2-3がベースで、前の2人にジミー・バトラーとジェイ・クラウダー、後ろの真ん中にバム・アデバヨが入っていたと紹介されています。面白いのは、Boston GlobeではESPNのティム・レグラーがこの守りを「3-2と2-1-2のハイブリッド」と表現していたことです。

調べてみて思ったのは、NBAのゾーンは数字どおりにきれいに並ぶわけではないということです。ボールの位置に合わせて形が動くので、見る場面によって2-3にも3-2にも見えます。名前は「出発点」くらいに考えておく方が、実際の試合は見やすいと思います。

攻める側の対応

  • 真ん中(ハイポスト)にボールを入れる:どのゾーンも、守る選手と守る選手の間が弱点です。フリースローライン付近でボールを受けると、ゾーンは誰かが出てこざるを得なくなります。Boston Globeの記事でも、セルティックスがゾーンの真ん中を使えなかったことが指摘されていました
  • ボールを逆サイドへ振る:ゾーンは全員がボールに合わせてスライドして守ります。素早く逆サイドへ回すと、移動が間に合わずにクローズアウトが遅れます。第26回で見たクローズアウトが崩れる場面です
  • 人が少ない列を狙う:2-3ならウィングとハイポスト、3-2ならコーナーとゴール下、1-3-1ならコーナーとベースライン。数字を見れば攻める場所が決まります
  • オフェンスリバウンドに飛び込む:ゾーンは誰が誰をボックスアウトするかが曖昧になりやすく、特に3-2や1-3-1ではゴール下が手薄になります

守る側が気をつけること

  • 3秒を意識して動き続ける:後ろの真ん中の選手がペイントで待ちすぎると、ディフェンシブ・スリーセカンドを取られます。NBAのゾーンではここが学生バスケとの大きな違いです
  • 声で受け渡す:ゾーンは「自分の場所に来た選手を守る」ので、担当が切り替わる瞬間に声がないと、2人が同じ選手に行ったり、誰も行かなかったりします
  • リバウンドの担当を決めておく:シュートが上がった瞬間に近くの相手をつかまえる約束がないと、守り切ったのにセカンドチャンスを取られてしまいます

今日の宿題

タスク1: ゾーンの「数字」を当ててみる

  • 試合中に守る側が立ち止まったまま横並びになっている場面を見つけたら、前から何人ずつ並んでいるかを数えてみてください
  • 2-3、3-2、1-3-1のどれに近いかを決めたら、次にボールが動いたときに形がどう崩れるかも見てみると面白いです

タスク2: ゾーンを崩した1本を探す

  • ゾーンを相手にきれいにシュートまで行った場面があれば、その直前にボールがどこを通ったかを巻き戻して見てみてください
  • 真ん中に入ったのか、逆サイドに振ったのか。今回の「攻める側の対応」のどれに当てはまるかを確認してみましょう

次回予告

次回は「マッチアップゾーン――マンツーマンとゾーンの中間」を扱います。今回のヒートの例で見たように、NBAのゾーンは数字どおりに並ぶだけではありません。ゾーンの形を保ちながら人にもついていく、少しややこしい守り方を整理します。お楽しみに!

おわりに

2-3、3-2、1-3-1は、どれも「どこを固めて、どこを差し出すか」の選び方の違いです。中を固めれば外が空き、外を固めれば中が空く。トラップを仕掛ければ、どこかで1人余る。完璧なゾーンはないので、相手の苦手なところに合わせて形を選ぶことになります。

NBAでは数ポゼッションだけ見せて消える守り方なので、気づかないまま流してしまうことも多いと思います。守る側が急に横並びになったら、ぜひ前から人数を数えてみてください。それだけで、その数ポゼッションの攻防がかなり違って見えてくるはずです。

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