「身長低い選手はやっぱりダンクくらいできるジャンプ力ないと活躍できないんかな。平均身長高すぎるよなー」。先日、こんなことをつぶやきました。NBAの試合を見ていると、平均で2メートル近い選手たちの中に小柄な選手が食い込むなら、せめてダンクで会場を沸かせるくらいのジャンプ力が要るんじゃないか、という感覚がずっとあったんです。
ただ、ダンクをしない(と言われる)小柄な選手が結果を出している例もすぐ思い浮かびます。バスケが上手くても大きくならないと活躍できないなんて運ゲーやわ、とぼやいたものの、感覚だけで決めつけるのも違うなと思い、数字と実例を調べてみました。先に言っておくと、すっきりした結論にはなりませんでした。
そもそも平均身長ってどれくらい?
NBA公式の2024-25シーズンのロスター調査(2024年10月25日公開)によると、平均身長は78.54インチでした。NBA.comの本文は「6-foot-7」と書いていますが、78.54インチは6フィート6.54インチ、つまり約199.5cmなので、6-7というのは丸めた表記です。私が確認できた最新の公式調査は2024-25のもので、2025-26の調査は見つけられなかったため、この数字はあくまでその時点のものとして読んでください。
平均が約199.5cmというのは、数字で見るとやっぱりとんでもない世界です。同じ調査で、6フィート(約183cm)以下の選手は開幕時に10人だけでした。ただ、集計する時点や対象によって変わる数字なので、ここは公式調査の開幕時の数字に限ります。
その中で最も背が低かったのが河村勇輝選手で、この調査の表記は5フィート8インチです。ただ河村選手の身長はNBA.comのプロフィールでは5フィート7インチ、Bリーグ公式では172cmと出典によって揺れがあるので、170cm台前半くらいと考えておくのがよさそうです。
ダンクしない(と言われる)小柄な成功例
まず思い浮かんだのがフレッド・ヴァンブリートです。登録は6フィート(ESPNの2016年の記事では5フィート11インチ)で、2016年はドラフト外、ドラフトコンバインにも呼ばれなかったと伝えられています。それが2019年にラプターズで優勝し、2022年にはオールスターに選ばれました。ESPNの2016年の記事では、スカウトのチャド・フォードが「サイズとエリート級の運動能力の欠如がスカウトを躊躇させている」と評していて、当時の見られ方がよく分かります。
ダンクについては、2019年12月の試合後に本人が「まだやってないのはダンクだけ。夏にはたまにするけど」と、気温と湿度が揃えば、という冗談まじりに話していた、とClutchPointsが伝えています。つまりその時点では試合でのダンクがなかったわけですが、それ以降どうなったかは私の調べた範囲では確認できませんでした。スカウトの「運動能力の欠如」も当時の見立てにすぎないので、「跳べない選手だった」と決めつけるつもりはありません。
トレイ・ヤング(登録6フィート2インチ、約188cm)は、ClutchPointsの2024年3月の記事の時点でキャリアのダンクが0本と報じられていました。その一方でフローターは1,021本決めていて、本人は「ゴールはゴール。忘れるなよ、子どもたち」と話しています。2025年4月にダンクを決めたとする投稿がSNSにはあるものの、大手メディアでは確認できなかったので、「今もゼロ」とは書けません。ちなみにESPN(2020年)は、ヤングはダンクできる身体能力はあるものの自分から狙うことはめったにないと書いていて、「跳べないからダンクしない」とは限らないんですよね。
スティーブ・ナッシュも、theScoreが「18年のキャリアでダンクなし」と書いた選手のひとりです。ただ、NBA公式の記録などで裏付けが取れたわけではないので、ここは「ダンクをしなかったと言われている」という書き方にとどめます。それでも2004-05と2005-06に2度MVPを獲っていて、登録身長は6フィート3インチ(約191cm)。CBS Sportsの記事によると、本人は実際にはそれより1.5インチほど低いと話していたそうです。
跳べる選手ももちろんいる
一方で、跳べる小柄な選手もいます。アイザイア・トーマスは5フィート9インチ(約175cm)で、Andscape(2017年)によるとコンバインの垂直跳びは40インチ(約102cm)、ドリブルからのウィンドミルダンクの動画も投稿しています。オールNBAに入った選手として最も背が低く(Wikipedia)、2016-17シーズンはMVP投票5位(HoopsHype)。ダンクコンテストで3度優勝したネイト・ロビンソンのように、ジャンプ力そのものが武器だった選手もいました。
ただ、跳べれば安泰というわけでもなさそうです。ケイ・フェルダーは5フィート9インチで、2016年のコンバインで垂直跳び44インチを記録しています。NBA.comによると歴代最高は2021年のキオン・ジョンソンの48インチなので、かなり上位の数字です。それでも2016年のドラフトは2巡目54位で、NBA通算は58試合、平均3.9得点でした。ここから「跳べるのに成功しなかった」と結論づけたいわけではなく、ケガやスキルといった他の要因は今回調べていません。「跳べる」だけでは何も保証されない、という事実を置いておきたいだけです。
NBA.comによると、過去25年のコンバインで測定された1,795人のうち、垂直跳びが40インチ以上だったのは129人(7.19%)でした。これはコンバインに参加した選手の中での割合で、NBA選手全体の数字ではありません。そもそもコンバインの垂直跳びは「ダンクできるか」を直接測るテストではないので、「ダンクできるだけのジャンプ力」に数字で線を引くこと自体が難しそうです。
もうひとつ、学術論文(Frontiers in Psychology、2019年)を見つけました。2000〜2018年のコンバイン3,610人を分析したもので、ドラフトされたポイントガードの最大垂直跳び(max vertical)の平均は91.9cm(約36.2インチ)、ドラフトされなかった選手は86.6cmです。論文は、ポイントガードとシューティングガードについて、指名されるかどうかに脚の瞬発力(leg power)が関わると結論づけています。つまり跳べることは、少なくとも入口の段階では武器になっているようです。
一方、2025年のコンバインでライアン・ネムバードの最大垂直跳びは32.5インチ(約82.6cm)でした。論文の平均とは年代が違うので単純には比べられませんが、少なくともその平均よりは控えめな数字です。HoopsHypeのスカウティングレポート(2025年6月)も「垂直方向の運動能力が限られている」と指摘する一方、強みにはエリート級のビジョンとペース、大学での9.8アシスト、3ポイント成功率40.4%を挙げています。結果的にドラフト外で入ったマーベリックスで、2025-26シーズンは60試合(先発27)に出て、6.6得点、5.3アシストを記録しました。
平均の話と個人の話は別物なので、この2つは矛盾しません。ジャンプ力は指名されるかどうかの分かれ目のひとつになりうるけれど、平均を下回っても別の武器で結果を出す人がいる、ということだと私は受け取りました。
小柄な選手は減っているらしい
そもそもNBAにいる小柄な選手の数自体が減っているようです。Sporticoによると、6フィート3インチ(約191cm)以下の選手が全出場時間に占める割合は、2019-20シーズンの22%から2024-25シーズンの16%に下がったと報じられています。有料記事のため私は本文を読めておらず、検索結果の要約で確認した数字なので、参考程度に見てください。2019-20は身長を靴なしで測るようになった年で、その計測方式のもとでの5年間の比較になります。
Neil Paineの分析(2023年11月)はもっと極端です。2023-24シーズンの開幕時点で、468人のうち6フィート未満はわずか2人でした。リーグ全体のWAR(控えレベルの選手と比べて何勝分上積みしたかを示す指標)に6フィート未満の選手が占める割合は、1994-95に約5%、2013-14に約2%、2023-24に0.5%まで下がっています。ただこの比較は靴なし計測の導入をまたいでいる点に注意が必要です。
理由について、当時グリズリーズにいた5フィート8インチのジェイコブ・ギラードは、大きくて運動能力の高いウィングやフォワードが増えたこと、そして大型の選手がシュートやプレーメイクもできるようになって、小柄なガードの相対的な優位が消えたことを挙げています。当事者の言葉だけに重みがあります。小柄な選手の売りだった部分を大きな選手が持ち始めたら、そりゃ居場所は狭くなるよな、というのがプレーヤーとしての正直な納得感でした。
これは「運ゲー」なのか
MedlinePlus Genetics(米国国立医学図書館)によると、個人の身長の約80%は、受け継いだDNA配列の違いで決まると科学者は推定しています(最終レビュー2022年7月)。残りは妊娠中や幼少期の栄養といった環境の影響です。自分の努力や意思で選べる部分がかなり小さいわけで、「運ゲー」と言いたくなる気持ちには根拠がありました。ただこの80%は身長という数字の話であって、NBAで活躍できるかどうかまで80%が生まれで決まる、という意味ではありません。
ダンクの話に戻ると、私が調べた範囲では、「ダンクできるジャンプ力があれば成功する」「なければ成功できない」のどちらを裏付ける資料も見つかりませんでした。コンバインの成績と将来の成功の関係を示すデータも、今回は確認できていません。ダンクをしないとされるヴァンブリートやヤング、ナッシュ、ジャンプ力が売りとは評されなかったネムバードがいて、跳べるトーマスもいる。最初に思っていた「ダンクくらいできるジャンプ力が必要」は、少なくとも必須条件ではなさそうです。調べる前の自分は、わりと決めつけていました。
代わりに見えてきたのは、ジャンプ力以外の武器がはっきりしていることです。ヴァンブリートはESPNの2016年の記事で「ロングレンジから打てるシューター」で「安定したポイントガード」と評され、ヤングはフローターを千本以上決め、ネムバードはビジョンとペースを評価されていました。ヴァンブリート本人も2026年4月の発言(Basketball Network)で、3ポイントを本当に打てること、ディフェンスで相手を邪魔できることが必要だと話し、攻撃はコートに残してくれるが、守備が試合に出してくれる、と言っています。「どれだけ上手くなきゃいけないか、みんな分かってない」という言葉には、思わず唸りました。
ちなみに2026年のファイナルMVPは、6フィート2インチ(約188cm、NBA.comのプロフィール)のジェイレン・ブランソンでした。ニックスがスパーズを4-1で下したシリーズで平均32.6得点です。6フィート2インチは平均の78.54インチ(約199.5cm)より4インチ以上低いわけで、小柄な選手が最高の舞台で中心になれること自体は、今も起きています。ジャンプ力については今回確認していないので、ここでは触れません。
とはいえ、「運ゲー」の感覚は消えないんですよね。ヴァンブリートの言葉どおりなら、小柄な選手は大きな選手より一段上のレベルでシュートと守備をこなさないと生き残れないことになりますし、ナッシュもCBS Sports(2025年12月)で「今の時代、小柄なガードは厳しい」と話しています。同じ技術を持っていても大きいほうが有利に働く場面は多いはずで、スタートラインは選べません。小さいガードとして外国人選手とコートに立った経験がある身としては、そのレベルで点を取るだけでも本当に難しいので、NBAで小柄なまま結果を出している人たちは、とんでもないことをやっていると思います。
まとめ
調べる前は、ダンクできるくらいのジャンプ力がないと小柄な選手はNBAで活躍できないと思っていました。でも、ダンクをしないとされるヴァンブリートやトレイ・ヤング、ナッシュ、ジャンプ力が売りとは評されなかったネムバードのような選手がいて、ジャンプ力が必須条件とは言い切れない、というのが今の私の結論です。ただ、ドラフトされたポイントガードの垂直跳びの平均が約36.2インチという論文もあるので、跳べることが有利に働く場面はあるのだと思います。
運ゲーという感覚については、否定はできませんでした。身長のばらつきの約80%は遺伝要因と推定されていること、小柄な選手の出場時間やWAR比率が下がっていること、ヴァンブリートやナッシュの言葉を並べると、大きい選手より小柄な選手のほうが厳しい条件でやっているのは間違いなさそうです。それでも、シュートやビジョンといった別の武器で道を切り開いた選手がいるのも事実です。これからは、ダンクをするかどうかより、その選手が何を武器にしているのかを見るようにして、河村勇輝選手を含めた小柄な選手たちの挑戦を応援していきたいです。


