【27th Step】スローインの戦術を知ろう
はじめに
試合の残り2秒、1点差。タイムアウト明けで、コート外からボールを入れる場面。
ここで決まるシュートは、たいてい偶然ではありません。あらかじめ用意された形です。今日はこの、コート外からのプレー=スローインの戦術を見ていきます。
第18回でクラッチタイムを扱いましたが、その「最後の1本」を実際に作っているのが、今日の話です。
BLOBとSLOB
スローインのプレーは、ボールを入れる位置で2つに分かれます。
- BLOB(ベースライン・アウト・オブ・バウンズ):エンドライン側から入れる。リングに近いので、そのまま得点につながる形を作りやすい
- SLOB(サイドライン・アウト・オブ・バウンズ):サイドライン側から入れる。角度がつく分、BLOBより仕掛けづらい
どちらも、ボールを持ってから5秒以内に入れなければなりません。この5秒という制限が、戦術を成立させる前提になっています。守る側は「5秒を使い切らせる」ことも狙いの一つになるからです。
ATO――タイムアウト明けの設計
スローインとセットで語られるのがATO(アフター・タイムアウト)です。タイムアウト直後に実行される、用意されたプレーを指します。
ヘッドコーチの評価軸の一つに「ATOがうまいかどうか」があるくらい、ここは腕の見せどころです。タイムアウトで相手の守り方を確認し、空いている場所を突く形を選んで、ホワイトボードで共有してから送り出す。第12回で学んだセットプレイの、最も凝縮された形だと考えると分かりやすいと思います。
よく使われる形
細かい名前は無数にありますが、考え方はいくつかに整理できます。
- スタック/ボックス:4人が縦1列、または四角形に固まってから、同時に散る。守る側はマークの受け渡しが難しくなります
- スクリーン・ザ・スクリーナー:スクリーンをかけた選手に、別の選手がすぐスクリーンをかける。第23回のオフボールスクリーンの応用で、二段構えにすることで守備の受け渡しを間に合わなくさせます
- 囮を主役に見せる:エースを最初に目立つ動きで走らせ、守備を引きつけてから、別の選手を空ける
- インバウンダーを使う:ボールを入れた選手がそのままコートに入って受け直す。入れた瞬間は守備の意識が切れやすい場所です
どれも共通しているのは、一瞬だけ守備の目線を一方向に集めるという発想です。
守る側はどう対応するのか
- フェイスガード:最も危険な選手にぴったり張り付き、そもそもパスを受けさせない
- すべてスイッチ:スクリーンの受け渡しで遅れるくらいなら、全部交換してしまう。第8回のスイッチ戦術です
- ボールマンにプレッシャー:インバウンダーの視界を手で遮り、判断を遅らせる。5秒に追い込めれば、それだけで相手の攻撃は終わります
- ファウルで止める:ボーナス状況でなければ、意図的なファウルで時間を進めない選択もあります
今日の宿題
タスク1: タイムアウト明けを1回だけ集中して見る
- 誰が最初に動いたか、そして実際にシュートを打ったのは誰かを確認してみてください
- 多くの場合、最初に派手に動いた選手は囮です
タスク2: 5秒を意識して見る
- スローインで時間がかかった場面があれば、守備が何をしていたかを見てみてください
- フェイスガードとスイッチ、どちらで止めにきたかが分かります
次回予告
次回は「トラップとプレスディフェンス!あえてボールを追い込む守り方」を解説します。お楽しみに!
おわりに
スローインは、1試合で何十回も起きます。そのほとんどは何事もなく流れていきますが、勝負どころで出てくる1回だけは、明確に設計されたプレーです。
次に接戦の終盤でタイムアウトが入ったら、ぜひコート上の5人の立ち位置を見てから再開を待ってみてください。何が起きるか、少しだけ予想できるようになります。


