以前、NBA選手の引退後の年金制度について取り上げましたが、実はNBPAの労使協定にはそれ以外にも手厚い福利厚生がいくつも用意されています。401kへのチームの上乗せや医療費の積立制度、引退後の医療保険まで、見落とされがちな仕組みを整理してみます。学費支援についても合わせて取り上げます。年俸の額面だけでは見えてこない、選手の生活を支えるもう一つの土台と言えそうです。
年金以外にも手厚い福利厚生が用意されている
NBPAの労使協定にもとづく福利厚生は、引退後にまとまった額を受け取れる年金制度だけではありません。現役中から積み立てが始まる401kへのチームマッチングや、医療費を税優遇付きでカバーするヘルスリインバースメントアカウントが用意されています。それに加えて、引退後も続く医療保険や学費支援制度まで整っています。これらはあまり話題にならないものの、選手の生活を支える土台として地味に大きな役割を果たしているようです。
いずれの制度も対象になるには一定のNBA在籍年数が条件になっており、特に3年という年数が一つの節目になっているケースが多いそうです。短期間でキャリアを終えた選手と長く活躍した選手では、受けられる福利厚生の範囲にも差が出てくる仕組みになっています。契約がかかっている一軍半のような立場の選手にとっては、この在籍年数の壁が意外と大きな意味を持つ場面もあるのかもしれません。
401kは自動加入でチームが140パーセント上乗せ
NBA選手は401kへ自動的に加入する仕組みになっており、特に何も手続きをしなければ税制上の上限額まで自動的に拠出される設定になっているそうです。2024年の上限額は2万3000ドルで、これを拠出した場合、チーム側がその140パーセントにあたる金額を上乗せしてくれる計算になります。
単純計算すると、上限いっぱいの2万3000ドルを拠出した選手は、チームからさらに3万2200ドルほどが上乗せされる形になります。拠出した分はすべて即時に本人の権利として確定するため、途中でチームを離れても没収されるようなことはないそうです。希望すれば税引き後の資金での追加拠出もできる仕組みになっています。
一般的な米国企業の401kマッチングは拠出額の50パーセント前後にとどまることが多いとされています。それと比べると、NBAの140パーセントという還付率はかなり破格な数字だと言えそうです。現役期間が限られるプロスポーツ選手だからこそ、短期間で資産を積み上げられるように設計された制度なのかもしれません。
HRAという医療費専用の積立制度
ヘルスリインバースメントアカウント、通称HRAはチームが毎シーズン積み立ててくれる医療費専用の資金です。NBA在籍1年につき3万ドルが積み立てられ、生涯の上限は15万ドルに設定されているそうです。積み立て自体は在籍初年度から始まりますが、実際に資金を使えるようになるのはNBA在籍3年を経てからという条件があります。
対象になる費用は幅広く、診察時の自己負担分や保険の免責額、処方薬や市販薬の購入費まで税優遇付きで精算できる仕組みになっています。引退後にかかる一部の医療保険関連費用にも使えるとされており、現役中だけでなく引退後の生活にもつながる制度という点が特徴的だと自分は感じます。
実際の利用方法としては、医療費を立て替えたうえで請求書を提出し、後からHRAの資金で精算してもらう形が中心のようです。家族の医療費に充てられる場合もあるとされており、現役時代だけでなく引退してからも長く使い続けられる口座という位置づけになっています。資金が余れば翌年以降に持ち越せる仕組みになっているとも言われており、計画的に使えば長期的な医療費対策にもなりそうです。
引退後も続く医療保険と学費支援
NBA在籍3年を超え、アメリカに居住している選手は引退後の医療保険についても手厚い扱いを受けられるそうです。医療保険についてはユナイテッドヘルスケアのプランが本人負担なしで提供され、場合によっては家族も対象になるとされています。歯科と視力についても保険が用意されていますが、こちらは全額自己負担という違いがあります。
医療保険が本人負担なしで続くというのは、現役を退いた選手にとって大きな安心材料になっているようです。長年厳しいコンタクトを受け続けてきたプロ選手にとって、引退後の健康管理にかかる費用は見過ごせない負担になりかねません。関節や腰への負担は現役中だけでなく引退後にも長く残ることがあるそうです。歯科や視力は自己負担とはいえ、まとまった医療費の部分がカバーされているのは心強い制度だと感じます。
学費支援制度も見逃せません。年間の精算上限は4万1667ドルで、生涯の上限は12万5000ドル、さらに年間の利用上限が6万2500ドルという枠も設定されているそうです。対象になるのは学費や教科書代に加えて、一部の家庭教師代や試験対策の費用まで含まれるとされています。
利用できる時期には在籍年数による違いがあります。NBA在籍3年以上の選手は現役中でも引退後でもこの制度を利用できますが、在籍1年から2年の選手は現役でプレーしている間に使い切る必要があるそうです。長く在籍した選手ほど柔軟に使える制度になっているという点は、401kやHRAの条件とも似た構造だと感じます。
学費支援というと大学進学を思い浮かべがちですが、対象になる使い道は幅広いようです。語学やビジネス関連の講座など、実務的な学び直しに使う選手もいると言われています。現役中に学び直しをしたい選手や、引退後に新しい分野へ進みたい選手にとっては、まとまった資金的な後押しになる制度だと言えそうです。バスケットボール以外の分野で第二のキャリアを考える選手にとっても、実用的な選択肢になっているのではないかと思います。
| 福利厚生 | 内容 |
|---|---|
| 401k | 上限拠出額に対しチームが140パーセントを上乗せ |
| HRA | 在籍1年につき3万ドル積み立て、生涯上限15万ドル |
| 引退後医療保険 | 医療は本人負担なし、歯科と視力は自己負担 |
| 学費支援 | 年間上限4万1667ドル、生涯上限12万5000ドル |
ツーウェイ契約やGリーグ選手との差
ここまで紹介した福利厚生は、基本的にはNBAの本契約を結んだ選手が対象になっている制度です。ツーウェイ契約の選手は適用のされ方が本契約の選手と異なる部分があり、Gリーグの年俸制度で紹介したとおり、そもそもの年俸規模自体もNBA本契約とは大きく違います。積み立て型の制度は在籍年数が重要な条件になっているため、NBAとGリーグを往復するような選手ほど恩恵を受けにくい構造になっているとも言えそうです。昇格と降格を繰り返す選手にとっては、この在籍年数の積み上げがなかなか安定しないという事情もあるようです。
こうした積み立て型の制度があるとはいえ、現役中の生活水準をそのまま引退後も維持できるとは限りません。以前取り上げた記事でも触れたとおり、引退後に経済的に苦しくなる選手が一定数いるのは事実のようです。401kやHRA、学費支援といった制度をどれだけ活用できるかは、引退後の生活を大きく左右する要素になっているのかもしれません。
こうした福利厚生の条件は労使協定の改定ごとに細かく見直されており、年俸の仕組みと同様に数字だけを追いかけるとすぐに情報が古くなってしまう分野でもあります。エージェントや専門のアドバイザーがこうした制度の活用方法を助言することも多いようですが、選手自身がどの制度にどんな条件があるかを把握しておくことも大切だと自分は思います。
まとめ
- NBPAの福利厚生には年金以外にも401kやHRA、医療保険、学費支援がある
- 401kはチームが拠出額の140パーセントを上乗せしてくれる
- HRAは在籍1年につき3万ドル、生涯上限は15万ドル
- 学費支援は年間上限4万1667ドル、生涯上限12万5000ドル
年俸ランキングや契約額だけを見ていると気づきにくい話ですが、NBA選手にはこうした多層的な福利厚生が用意されています。在籍年数が条件になっている制度が多いという点は、長く現役を続けることの価値を改めて感じさせる部分でもあります。次に大型契約のニュースを見るときは、金額の裏にあるこうした仕組みにも目を向けてみると、違った見方ができるかもしれません。地味な制度ではありますが、知っておいて損はない内容だと自分は思います。
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