日本でのバスケコートの無さってなんでだろう。最近ふとそんなことを考えます。ちょっと時間が空いたからシュートでも打ちに行こうかなと思っても、近所で思い浮かぶ無料の屋外コートってあんまりないんですよね。社会人になった今もバスケを続けている身としては、地味にずっと引っかかっていたテーマなので、今回は自分の疑問をそのまま出発点にして、調べながら考えたことを書いてみようと思います。
そもそも公園自体が狭いらしい
まず単純に、日本の都市公園って海外に比べて狭いんじゃないかという話があります。国土交通省の平成19年度末(2008年3月末時点)のデータをもとにした記事によると、東京都23区の1人あたり都市公園面積は3.0㎡。これがニューヨークだと29.3㎡、ウィーンだと57.9㎡だそうで、単純比較で東京はニューヨークの約10分の1、ウィーンの約20分の1しかない計算になります。
さすがにこれは2008年時点のかなり古いデータなので、今の東京の数字がそのまま同じとは言い切れません。もっと新しい年度の公式データで裏を取りたいところですが、今回はそこまで確認できませんでした。とはいえ、東京は土地の使い方自体が住宅・商業優先で、公園に割ける余地がそもそも少ないというのは、体感としてもそんなに外れていない気がします。バスケコートを何面も作るには、まずそのための「余っている土地」がないと始まらないので、これはかなり根っこの部分の問題だなと感じます。
学校の施設も16年で2割以上減っている
コートというと公園を思い浮かべがちですが、実は学校の体育・スポーツ施設も減っています。スポーツ庁の「体育・スポーツ施設現況調査」(平成30年度中間報告)によると、平成14年度から平成30年度までの16年間で、学校体育・スポーツ施設と大学・高専体育施設が合計3万6,648カ所、率にして23.2%減少したそうです。この記事の中ではバスケットコート単体の増減数までは触れられていなかったので、バスケコートがどれくらい減ったのかは正直分かりません。ただ、体育館や多目的運動場を含めた「運動できる場所」全体がこれだけ減っているとなると、その中にバスケができる場所も当然含まれているはずで、無関係な話ではないだろうと思います。
公園でボールを使うこと自体が禁止されがち
そしてもう一つ大きいのが、公園でのボール遊びそのものへの規制です。TOKYO PLAYが2023年に発表した政策提言(内閣官房「こどもまんなかフォーラム」提出資料等)によると、都市公園でのボール遊びについて、調査に回答した自治体全体の約6割が何らかの規制(時間帯・区域を限定した部分的な禁止も含む)をかけているそうです。しかもその中で、細かい条件をつけずに一律で禁止している自治体の割合を見ると、東京都は6割近くにのぼり、他の自治体(1〜2割程度)と比べて突出して高いことも分かっています。これはサッカーや野球なども含めた「ボール遊び全般」の話であって、バスケットボールだけを禁止しているという統計ではない点は誤解のないように書いておきたいのですが、それでも約6割が何らかの規制をかけていて、しかも東京はその中でも一律禁止の割合が突出しているというのは、かなりのインパクトがある数字です。
背景には、自治体職員の話として「市民からのご意見のほとんどは苦情」というものがあるらしく、実際に長野市では2023年4月、「子どもの声がうるさい」というクレームを理由に「青木島遊園地」が廃止された事例もあります。子育て世代の割合自体が1986年の46.2%から2022年には18.3%まで下がっているという指摘もあって、地域の中で子どもの声やボール遊びの音を「うるさい」と感じる人の割合が相対的に増えている、という構造もあるようです。正直、これは誰か一人が悪いという単純な話ではなく、街の中で子どもの遊び場をどう位置づけるかという、もっと大きな問題な気がします。
バスケのゴールって「的」だから狙われやすいのでは
ここからは完全に自分の推測なんですが、バスケットゴールって公園の中にある他のスポーツ設備と比べても、ちょっと特殊な立ち位置な気がしています。サッカーゴールみたいに使う時だけ人が集まるのと違って、バスケのゴールは常設の「的」としてそこにずっと立っている。誰でもいつでもボールを持って行けば使えてしまうし、ドリブルの音やボードに当たる音も出るので、近隣トラブルの火種になりやすい構造なんじゃないかなと。これは今回のリサーチでもはっきり裏付ける一次資料までは見つかっていない、あくまで自分の予想の域は出ない話なんですが、個別の苦情事例を見ていると、あながち的外れでもない気がしています。
JBAも動いてはいた、けど
実はJBA(日本バスケットボール協会)自身、この問題を放置していたわけではありません。2018年3月、JBAは「バスケットゴール増設プロジェクト」を立ち上げていて、2030年のJBA創設100周年までに全国100カ所へバスケットゴールを新規設置するという目標を掲げていました。中間目標は2020年までに10カ所。企業の商品・サービス売上の一部を基金にして、自治体などに無償でゴールを寄贈するという仕組みだったそうです。こういう動きがちゃんとあったこと自体、個人的には結構好印象でした。
ただ、あるnoteの個人ブログの分析では、2021年改定の「JBS2021」以降、この「100カ所」という具体的な数値目標が明示されなくなり、2025年改定の「JBS2025」でも定量的な目標より方向性重視の内容に変わっていった、という指摘がされています。この記事の筆者は、設置後の管理責任の所在が曖昧なまま計画が進んだことが停滞の一因ではないか、とも分析しています。ただこれはあくまで個人ブロガーによる分析・評価であって、JBA公式の計画書原文でこの数値目標の変遷を直接確認できたわけではありません。プロジェクトが立ち上がったこと自体は公式発表として確認できる事実ですが、「頓挫した」かどうかまでは、今の段階では一つの見方として受け止めておくのが正しいと思います。
アメリカのストリートボール文化との違い
アメリカに関しては、統計的な人口あたりコート数の比較データまでは今回見つけられませんでした。ただ、体験談ベースの情報を見ていると、アメリカの近隣公園にはバスケコートが2〜3面あるのが割と普通で、地元の子どもや若者が日常的に使っていて、たまたま居合わせた人同士でピックアップゲームが自然に成立する文化があるらしいです。日本のストリートバスケが3on3・ハーフコート中心なのに対して、アメリカにはオールコート(5対5)のストリートリーグまであるという違いもあるようで、そもそもコートが確保できているかどうかで文化の育ち方自体が変わってくるんだろうなと感じます。統計で殴れるほどの根拠ではないですが、それでも「気軽にコートに行けば誰かがいてゲームができる」という前提が成立するかどうかは、バスケがどれだけ生活に馴染むかに直結する気がしています。
明るい動きもある
ここまで割と暗い話が続きましたが、悪いことばかりでもありません。「ストリートバスケの聖地」として知られる代々木公園のコートは、老朽化を受けて2022年にクラウドファンディングで改修費用を集め、2023年3月にリニューアルが完了しています。2005年にナイキジャパンがCSR活動として渋谷区に寄贈したものが、こうして形を変えて残っているのは素直に嬉しいです。
自治体レベルでも動きはあって、2024年3月には愛知県安城市の総合運動公園に3×3コート(メイン1面・サブ3面)が、同じく2024年3月には山口県光市の新町公園にも公式3×3規格の屋外コートが完成しています。B.LEAGUEも日本財団の助成を受けた「まちづくり」事業として、仙台89ERSなどが自治体・地域企業と連携してゴール設置を進めていて、宮城県利府町や南三陸町でも新しいコートが完成しているようです。一つひとつの規模はまだ小さいかもしれませんが、こういう積み重ねが増えていくこと自体は素直に良い流れだと思います。
まとめ
調べてみて分かったのは、「日本にバスケコートが少ない」ことをズバリ示す全国統計みたいなものは、実は見つからなかったということです。公園の狭さ、学校施設の減少、ボール遊びへの規制、そしてバスケゴール特有の構造的な事情。どれも単独では決め手にならないけど、いくつも重なった結果として「あれ、コート少なくない?」という肌感覚につながっているんだろうな、というのが今回たどり着いた個人的な結論です。JBAの取り組みやB.LEAGUEのまちづくり事業、自治体の新設コートみたいな動きも実際にあるので、この先少しずつでも増えていってほしいなと思っています。とりあえず自分は、次の休みにでも近所でシュートが打てる場所を改めて探してみようと思います。


