NBAはシアトルとラスベガスへの拡張を検討していて、実現すれば2028から29シーズンが想定時期になっていると報じられています。チームが増えるとなると気になるのが、新チームがどうやって選手を集めるのかという点です。その仕組みが拡張ドラフトです。今回はこの拡張ドラフトがどういうルールで行われるのか、過去の例も交えて整理してみます。
拡張ドラフトとは何か
拡張ドラフトとは、NBAに新しいチームが加わるときに、既存チームの選手の一部を新チームが指名できる制度です。新チームは当然ロスターが空っぽの状態からシーズンを迎えるため、通常のドラフトやフリーエージェント契約だけでは選手を揃えきれません。そこで既存チームから選手を指名できる特別な機会が設けられているというわけです。
既存チームは最大8人まで保護できる
拡張ドラフトの基本的な仕組みとして、既存の各チームは契約中または制限付きフリーエージェントの選手のうち、最大8人を保護できます。保護された8人は新チームから指名されることはありません。逆に保護されなかった選手は、新チームの指名対象として提示されることになります。無制限フリーエージェントはそもそも保護も指名の対象にもなりません。
新チームの側は、保護されていない選手の中から指名していきます。ルールの枠組みとしては、各既存チームから指名できるのは1人までで、新チームは最低でも14人を指名できるとされています。NBAのロースター枠についてまとめた記事で紹介したとおり、通常のロースターは15人とツーウェイ3人という構成です。新チームはまずこの拡張ドラフトで土台となる選手を揃え、そこにドラフトやフリーエージェント契約を組み合わせてロースターを完成させていく流れになります。
拡張チームが欲しいのは、単にロースターを埋めるだけの選手ではありません。ベテランの経験値と、将来的にトレードの材料にもなりやすい若手を組み合わせて指名するのが一般的な考え方です。既存チームにとっても、どの8人を保護するかという判断は、チームの将来設計そのものに関わる重要な決断になります。
チームが新しいシーズンに向けて選手を保護するリストを作る作業は、拡張の年ならではの特別な仕事です。保護する8人の中には、当然チームの主力選手が入ってきます。一方で、ベテランで実績はあるものの出場機会が減っている選手は、保護のリストから外れやすい立場になります。怪我のリスクを抱える選手も同じ扱いを受けることが多いです。新チームからすれば、そうした選手の中にも掘り出し物が混じっている可能性があり、拡張ドラフトは意外な巡り合わせが生まれる場でもあります。出場機会を求めている選手にとっては、拡張ドラフトで指名されることが新しいキャリアの転機になる場合もあります。
1995年の拡張ドラフトではどうだったか
直近でNBAが拡張ドラフトを実施したのは1995年6月24日です。このときはトロント ラプターズとバンクーバー グリズリーズという2つの新チームが誕生し、それぞれ27の既存チームから選手を指名しました。各既存チームが8人まで選手を保護できるという枠組みは、この当時からすでに採用されています。
| チーム | 指名人数 | 全体1位指名選手 |
|---|---|---|
| トロント ラプターズ | 14人 | B.J. アームストロング |
| バンクーバー グリズリーズ | 13人 | グレッグ アンソニー |
全体1位で指名されたB.J. アームストロングは、結局ラプターズへの加入を拒否し、ゴールデンステート ウォリアーズへトレードされています。新チームが指名できる選手の中には、必ずしも新天地でプレーしたいと思っていない選手も含まれているというのが、拡張ドラフトの難しさの一つです。
グリズリーズ側の全体2位指名はグレッグ アンソニーで、ほかにもバイロン スコットやベノワ ベンジャミンといったベテラン勢が名を連ねました。ラプターズとグリズリーズは、同じ1995年のNBAドラフトでもコミッショナーの判断により全体6位と7位の指名権を与えられています。拡張ドラフトだけでなく通常のドラフトでも優先的な指名順位が用意されていたわけで、新チームが戦力を整えるまでの間、特別な配慮がされていたことが分かります。
新チームにはサラリーキャップの優遇もある
拡張ドラフトで選手を集めた新チームは、最初の数シーズンはサラリーキャップの上限が通常より低く設定される仕組みもあります。2004年に加わったニューオーリンズ ホーネッツの例では、初年度がキャップの66%、2年目が75%という優遇を受けていました。NBAのサラリーキャップについてまとめた記事で紹介したとおり、通常のチームはキャップの範囲内で補強を行う必要がありますが、新チームにはこうした特別な調整が加えられるのが一般的です。
新チームの優遇はサラリーキャップだけではありません。拡張ドラフト自体の指名人数が最低14人までとされているのも、新チームがいきなり戦力不足で開幕を迎えないようにするための配慮です。既存チームからすると、保護できる8人の枠をどう使うかという判断が、拡張の年だけ特別に重くなるということになります。
シアトルとラスベガスの拡張は実現するのか
現在話が進んでいるのはシアトルとラスベガスへの拡張です。ラスベガス拡張チームの最終候補を取り上げた記事でも紹介したとおり、ラスベガスにはゴールデンナイツのオーナーであるビル フォーリー氏が入札を進めていると発表しています。コミッショナーのアダム シルバー氏は、拡張する場合は2チームか1チームか見送りのいずれもあり得るとしています。実現すれば2028から29シーズンを想定しているとも話しています。拡張自体はまだ決定していませんが、2026年中に方向性を決める考えがあるとも述べています。1チームだけの拡張や見送りという可能性も残されているため、最終的な形がどうなるかはまだ読めない状況です。
30チームから32チームに増える場合、ラスベガスとシアトルが同時に加わる可能性が最も高いと見られています。もしそうなれば、1995年以来となる拡張ドラフトが2つのチーム分、同時に行われることになります。NBAが30チームになった経緯をまとめた記事で振り返った歴史に、新しい1章が加わる日が来るのかもしれません。
拡張ドラフトというと選手の移動ばかりに注目が集まりますが、実際には新規参入にかかる費用や既存オーナーたちの承認といった、お金と手続きの面でも大きな話題がついてまわります。NBAが30チームになった経緯をまとめた記事で触れたとおり、リーグの拡張には選手集めのルールだけでなく、リーグ全体の合意形成という側面も関わってきます。
ビル フォーリー氏はNHLのゴールデンナイツを立ち上げた実績を持つオーナーです。ゴールデンナイツはNHL参入初年度にいきなりファイナルまで駆け上がった実績があり、新規参入チームの成功例として語られることが多い存在です。もしラスベガスにNBAチームが誕生するなら、同じオーナーのもとでどんなチーム作りが行われるのか、自分としては単純に興味があります。
まとめ
- 拡張ドラフトは新チームが既存チームの選手を指名できる制度
- 既存チームは最大8人まで選手を保護できる
- 新チームは各既存チームから1人まで、最低14人を指名
- 1995年はラプターズとグリズリーズがそれぞれ14人と13人を指名
- シアトルとラスベガスの拡張は2028から29シーズンを想定した議論が進行中
自分としては、もし本当に新チームが2つ誕生するなら、相当見応えがある展開になると思っています。どの選手を守り、どの選手を新天地に送り出すのかという駆け引きだけでも見ものです。1995年のときのように、指名された選手が移籍を拒否するような騒動が起きるのかも気になるところです。決定にはまだ時間がかかりそうですが、続報が出るたびに追いかけていきたいテーマです。
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