Bリーグの試合を見ていて、ふと思うことがあります。ミドルレンジのシュートってあんまり入らないなーと。単純に実力の差なのか、それともディフェンスの強さの違いなのか。NBAと比べるのはさすがに無理があるにしても、レベル感が近そうなユーロリーグとならどうなんだろう、とずっと気になっていました。ただこれ、完全に自分の体感でしかないので、今回は一度ちゃんと数字で確認してみようと思います。
まずB.LEAGUE公式が出してる数字を見てみる
調べてみたら、ちょうど求めていたようなデータがありました。B.LEAGUE公式の統計分析組織「B.STATS LAB」が2025年10月23日に公開した「2024-25 SEASON REPORT」というレポートで、B1、B2とNBA、ユーロリーグなど海外5リーグのeFG%(実効フィールドゴール成功率、3Pシュートに1.5倍の重みをかけて補正したFG%)を国際比較しているんです。数字はこうでした。B1が51.3%、B2が50.8%に対して、NBAが54.3%、ユーロリーグが55.0%。他にはNBL(オーストラリア)53.0%、KBL(韓国)49.4%、CBA(中国)52.9%となっています。
これを見ると、確かにB1はNBA、ユーロリーグよりeFG%が低いです。自分の体感、あながち間違ってなかったんだなと。ただ注意したいのは、比較対象の5リーグの中で一番低いのはKBLの49.4%で、B1が最下位というわけではないということ。「世界最低水準」みたいな言い方をするのはさすがに言い過ぎで、あくまで「NBA、ユーロリーグよりは低い」くらいの温度感で受け止めておくのが正確だと思います。
B.LEAGUE自身の見立てはこう
このレポート、数字を並べるだけじゃなくて分析コメントもついていました。それによると「B1、B2ともにORB%(オフェンスリバウンド率)が高く、eFG%が低い」傾向があるそうで、つまりシュートを決めきる力よりもセカンドチャンスを取りに行くリバウンド中心型で、全体としてディフェンシブな傾向があるという見立てです。なるほどなと思う一方で、これはあくまで「そういう傾向がある」というリーグ全体の性格づけであって、「なぜeFG%が低いのか」の踏み込んだ原因まで説明しているわけではありません。ディフェンスが強いから決まらないのか、単純にシュート技術の差なのか、そこまでは公式レポートも明言していないんですよね。
肝心の「ミドルが入らない」は確認できるのか
ここで一番確認したかったのが、自分が体感で感じている「ミドルレンジがあんまり入らない」という部分です。でも調べてみて分かったのは、B.LEAGUEにもユーロリーグにも、ミドルレンジ(ペイント外から3P未満のエリア)だけのアテンプト数、成功率を継続的に公表している公式統計は見当たらない、ということでした。公式スタッツページを見てもFG%や3P%、eFG%のような指標はあるものの、シュート距離帯別に区切った集計表はないんです。B.LEAGUE公式のコラム記事で、選手個別の解説として「ミドルレンジは得点期待値が1を下回る」といった言及がされることはあっても、リーグ全体のミドルレンジ試投数、成功率を数字で示した統計ではありません。
これ、正直ちょっと拍子抜けしました。自分が一番気になっていた「ミドルが入らない」という体感を、ズバリ裏付ける数字が探しても出てこないんです。一方でNBAは事情が違っていて、NBA公式のnba.comが定期的にゾーン別データを記事にしています。2025年4月10日付の記事によると、2024-25シーズンのミドルレンジからの試投割合は9.8%で、シュートロケーションデータが存在する過去のシーズンで初めて10%を下回ったそうです。前シーズン(2023-24)は11.2%だったので、1年でさらに減っています。同じ記事ではペイント内からの試投割合が57.1%(過去3シーズン連続で57%超)、3P試投割合が42.1%(3ポイントライン導入から46年間で最高水準)とも紹介されていて、NBAがどれだけミドルレンジを捨ててペイントと3Pに寄せているかがよく分かります。この非対称性、地味に面白いポイントだと思います。NBAだけがここまで細かくゾーン別データを出しているのは、それだけ分析文化が成熟しているということなんでしょうね。裏を返せば、Bリーグやユーロリーグでミドルレンジの体感を数字で語ろうとすると、今の時点では材料が足りないということでもあります。
ユーロリーグの55.0%、これ実は誰の数字なのか
もう一つ、書いておきたい注意点があります。さっき紹介したユーロリーグのeFG% 55.0%という数字、これはユーロリーグ公式が発表したものではなく、B.LEAGUE公式(B.STATS LAB)が国際比較用に算出して自分たちのレポートに載せた数字です。ユーロリーグの生のFG%、2P%、3P%についても、今回は信頼できるソースから直接確認することができませんでした。なので「ユーロリーグ公式によると」という書き方はできなくて、正確には「B.LEAGUE公式の国際比較資料によると」という書き方になります。細かいところですが、出典を取り違えるとせっかく調べた意味がなくなるので、ここは丁寧に書いておきたいところです。
NBAとの比較は参考程度に
NBAについてもう一つだけ触れておくと、2024年4月15日付のnba.com記事では2023-24シーズンのリーグ平均FG%が47.4%、3P%が36.6%と紹介されていました。ただしこれは2023-24シーズンのデータで、さっき紹介したミドルレンジ試投割合9.8%などのゾーン別データは2024-25シーズンのものなので、シーズンが1年ずれている点は混同しないように気をつけたいです。ちなみにNBAの2024-25シーズンのraw FG%、3P%そのものの数値は、今回は確認が取れませんでした。もともと筆者本人が「NBAは比較できないにしても」と書いていた通り、レベルもルールも違うリーグを単純に横並びで語るのは難しいので、ここは純粋に参考情報として置いておきます。
じゃあ結局なんで低いのか
一番気になる「なぜ低いのか」の部分ですが、これについては正直、統計的にきっちり要因を切り分けて検証した研究みたいなものは見つかりませんでした。見つかったのはB.LEAGUE公式の「ORB%が高くeFG%が低い」という傾向分析と、あとは個人ブログやコラムレベルの定性的な見解くらいです。ディフェンスの強度が違うんじゃないかとか、接触の激しさが違うんじゃないかとか、判断のスピードが違うんじゃないかとか、そういう見方をする人はいます。でもどれも「〜という見方がある」の域を出ていなくて、どの要因がどれくらい効いているのかを検証したデータには行き着きませんでした。
少し古いですが、2016-17シーズン時点の研究として、立命館大学の研究者らが日米プロバスケの勝敗要因を比較した学会発表があります。それによると、NBA B1どちらも攻撃効率、防御効率、シュート成功率、フリースロー成功数の差が勝敗に関係する共通要因として挙がった一方で、NBAでは3点シュート成功数の差が、B1ではファウル数の差が追加的に重要な要因として特定されたそうです。判別分析でもNBAは3点シュート関連、B1はリバウンド関連の項目が勝敗と強く結びついていたとのこと。ただこれは2016-17シーズン、つまり9年近く前のデータで、3ポイント革命が本格化する前のNBAの話でもあるので、今のトレンドをそのまま反映しているとは言えません。あくまで「当時はこういう傾向があった」という参考情報にとどめておきます。
まとめ
調べてみて、自分の体感が完全に間違っていたわけではないことは分かりました。B1のeFG%はNBA、ユーロリーグよりは確かに低いです。ただし世界最低というわけではなく、KBLよりは高いし、B.LEAGUE自身もその傾向を「リバウンド中心、ディフェンシブなスタイル」として認識しています。一方で、一番気になっていた「ミドルレンジが入らない」という部分をピンポイントで裏付ける公式統計は、B.LEAGUEにもユーロリーグにも今のところ存在しませんでした。これは正直ちょっと意外な発見で、NBAがゾーン別データをここまで細かく公表しているのが、むしろ特殊なんだなと感じました。なぜ低いのかについては、ディフェンスの強さなのか技術の差なのか、はっきり答えが出せる材料はまだ揃っていません。体感で語れることと、実際にデータで確認できることの間には、思ったより大きなギャップがあるんだなというのが、今回一番の収穫だった気がします。
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