ラプターズが、ジャマール・シードと3年2,400万ドルの延長契約を結びました。期間は2027-28から2029-30シーズンまでで、平均すると年約800万ドルです。2024年ドラフト2巡目45位の選手が、ここまでたどり着きました。結論から言うと、今のシードの役割を考えれば、年800万ドルは妥当な金額だと思います。
延長契約の中身
まずは基本情報から整理します。2026年10月1日(現地時間)、代理人のKJ・スミス氏がESPNのシャムズ・シャラニア記者に合意を伝えました。同じ日に、ラプターズも球団として正式に発表しています。契約は3年2,400万ドルで、2029-30シーズンまでです。
ここで「延長契約」について少し補足しておきます。延長契約は、今の契約が終わる前に、その先の契約を結んでおくものです。シードの今季(2026-27)の年俸は約230万ドルで、今季が新人契約の最終年です。今回の3年2,400万ドルは、その次の2027-28シーズンから始まります。報道によると、延長しなければ今季終了後に制限付きFAになる予定でした。
なお、3年目の2029-30シーズンについては、HoopsHypeのマイケル・スコット記者によるとチームオプションだそうです。ただ、ESPNやNBA.comの記事にはオプションの記載がありません。年度ごとの年俸や保証額も、現時点では報じられていません。このあたりは続報を待ちたいところです。
2巡目45位、しかも指名したのはキングス
シードのドラフトの経緯も少し変わっています。2024年ドラフトの2巡目45位で、実際に指名したのはサクラメント・キングスでした。その後のトレードでラプターズへ移っています。ジェイレン・マクダニエルズを放出し、デイビオン・ミッチェルやサシャ・ベゼンコフと一緒に獲得した形です。
2巡目指名の選手には1巡目のようなルーキースケール契約が無く、保証付きの契約をもらえるとは限りません。2ウェイ契約から始まる選手も多いです。The Athleticのシャラニア記者(当時)の報道によると、シードには2ウェイ契約を望む球団が10以上ありました。それでもラプターズは保証付きの契約を約束し、3年611万ドルで契約しています。これは2巡目指名例外で3年契約を結ぶ場合の上限額でした。
SIは「多くの2巡目指名選手は、指名球団から2つ目の契約を得られない」と書いています。そう考えると、45位から延長を勝ち取ったのは十分な成功例です。
2025-26シーズンの数字
では、延長の決め手になった昨季を見てみます。シードは2025-26シーズン、82試合すべてに出場しました。先発は12試合で、ほとんどがベンチからの出場です。平均22.6分で6.6得点・5.4アシスト・1.7リバウンドを記録しています。
目立つのはやはりアシストです。ベンチからのアシスト数は、控え選手としてリーグ最多でした。ESPNによると、その数は354本で、ラプターズの控え選手としては球団史上最多だそうです。アシスト/ターンオーバー比もリーグ5位で、パスを配るだけでなくミスも少ないPGです。
一方で、シュートは課題です。FG36.7%、3P32.1%と、確率はどちらも高くありません。ちなみにキャリア2シーズンの通算は、平均6.9得点・4.8アシストです。記事によってはこの通算の数字が紹介されているので、昨季単年の数字と違って見えるのはそのためです。
ディフェンスとプレーオフでの存在感
シードの持ち味はディフェンスです。ヒューストン大学時代の2024年には、Big 12の年間最優秀選手と最優秀守備選手を同時に受賞しました。同時受賞はカンファレンス史上初です。ネイスミス賞の年間最優秀守備選手にも選ばれ、コンセンサス・オールアメリカン1stチームにも入っています。NBAでも、Raptors Republicによると2025-26シーズンは相手のオフェンシブファウルを66回誘い、リーグ2位でした。
昨季のラプターズは46勝36敗で東5位でした。2022年以来のプレーオフでは、1回戦でキャバリアーズに3勝4敗で敗れています。このシリーズは、先発PGのイマニュエル・クイックリーが右ハムストリングの負傷で全休しました。その穴を埋めたのがシードです。
プレーオフ7試合で、平均9.0得点・5.0アシスト・1.4スティールを記録しました。第1戦では3Pを5本沈めて17得点を挙げています。大事な場面で数字を伸ばせたのは、延長の判断に大きかったはずです。
ウェブスターGMとシード本人のコメント
ボビー・ウェブスターGMは、球団の発表で次のようにコメントしています。
"From the 45th pick in the draft to the integral role he has carved out with our team, Jamal’s leadership, hard work, and tenacity earned this."
「ドラフト45位からチームに欠かせない役割を築いた。リーダーシップと努力、粘り強さで勝ち取った契約だ」という内容です。45位という数字をあえて出しているところに、球団の評価が表れています。
シード本人も記者団に対して、こう話しています。
"I thought the offer they gave me was really fair. Honestly, above fair."
「本当にフェアだと思った。正直、フェア以上だった」という意味です。交渉がすぐにまとまったことにも満足しているようでした。
年800万ドルは妥当なのか
ここからが本題です。年約800万ドルという金額は高いのか、安いのか。NBC Sportsは、ミッドレベル例外の金額を下回る額で確保したと評価しています。ミッドレベル例外(MLE)は、サラリーキャップを超えたチームがFA選手と契約するときに使う枠です。NBC Sportsは、ラプターズが今後サラリー面で苦しくなることにも触れています。そのうえで、24歳のシードがまだ伸びることに賭けた契約だと見ています。
比較材料として、ペイサーズのアンドリュー・ネムハードがいます。ネムハードは2022年ドラフト2巡目31位の選手です。2024年7月に、3年5,900万ドルの契約で合意しました。ただしネムハードは、チームオプションを破棄して新契約に移る形でした。オプションを行使したうえで延長したシードとは、契約の形が違います。それでも、同じ2巡目出身のガードで、年2,000万ドル近くです。シードの年約800万ドルは、かなり抑えた金額です。
チーム事情も見ておきます。ラプターズは9月にカワイ・レナードの獲得を正式に完了しました。クイックリーの今季年俸は3,250万ドルです。Hoops Rumorsの試算では、今回の延長で2027-28の保証額は1億8,500万ドルを超えます。これはコリン・マレー=ボイルズとジャコビー・ウォルターのチームオプション行使を前提にした、7選手分の金額です。しかも、今季が契約最終年のRJ・バレットとの新契約は、この金額にまだ含まれていません。サラリーが膨らむなかで、計算できる控えPGを年800万ドルで押さえられたのは大きいです。
個人的には、妥当というより「ラプターズにとってお得な契約」だと感じています。シュートの確率には不安が残りますが、ディフェンスとゲームメイクはプレーオフでも通用しました。本人が「フェア以上」と言っている点も含めて、双方が納得した契約に見えます。
まとめ
ラプターズは、ジャマール・シードと3年2,400万ドル(2027-28〜2029-30)の延長契約を結びました。2024年ドラフトでキングスが45位で指名し、トレードでラプターズに来た選手です。昨季は82試合に出場し、控え選手としてリーグ最多のアシストを記録しました。プレーオフでもクイックリー不在の穴を埋めています。
年約800万ドルという金額は、ネムハードの契約と比べても抑えめです。サラリーが膨らむラプターズにとって、うまくまとめた延長だと思います。あとは3Pの確率がもう少し上がってくれれば、45位の成功例としてさらに語られる選手になりそうです。


