NBAヨーロッパ、ユーロリーグに合併案を拒否されても「前進」へ|NBAとFIBAの共同声明と対立の背景を解説

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NBAが本気で「ヨーロッパに新リーグを作る」計画が、大きな分岐点を迎えています。

2026年10月6日、欧州最高峰リーグであるユーロリーグの株主クラブが、NBAから提示された「合併案」を拒否。その2日後の10月8日(現地)、NBAとFIBA(国際バスケットボール連盟)は共同声明を出し、「ユーロリーグの合意がなくても、NBAヨーロッパ計画は前に進める」という姿勢を明確にしました。

「NBAヨーロッパって何?」「ユーロリーグとは何が違うの?」「なぜ揉めているの?」という方も多いと思います。この記事では、今回のニュースの中身と、ここに至るまでの背景、そして今後どうなりそうかを整理して解説します。

何が起きた?NBAとFIBAが「それでも前進」と共同声明

ESPNによると、NBAとFIBAは10月8日(木)に共同声明を発表しました。ちょうどNBA側がマカオでアジアのパートナーとのイベントや会議を行っているタイミングでしたが、関係者の関心はヨーロッパの動向に向いていたと伝えられています。

声明のポイントは大きく2つです。

  • ユーロリーグとの提携は今も歓迎している:ユーロリーグ・FIBA・NBAの3者が組んで欧州バスケを一本化できれば、クラブ・選手・そして何よりファンにとって大きな可能性が開ける、という立場は変えていません。
  • ただし、提携がなくても新リーグは作る:NBAとFIBAは欧州での新たなプロ男子リーグ設立に引き続きコミットし、「成長」「機会」「欧州型スポーツモデルの原則」という考えを共有するパートナーと一緒に進める、としています。

つまり「ドアは開けておくけど、待つつもりはない」というメッセージです。合併案を断られた直後にこの声明を出したことで、NBA側がユーロリーグに対してプレッシャーをかけている、とも読み取れます。

直前に起きたこと:ユーロリーグが合併案を拒否

今回の声明のきっかけは、10月6日(火)にイタリア・コモ湖畔のチェルノッビオで開かれたユーロリーグ株主クラブの会合です。ここでNBAから提示されていた「ユーロリーグとNBAヨーロッパを統合し、ひとつの組織にする」という正式な提案が拒否されました。

この株主クラブは13チームで、バルセロナ、レアル・マドリード、バイエルン・ミュンヘン、オリンピアコス、ミラノ、トニー・パーカーがオーナーを務めるASVEL(フランス)、イスタンブールの2クラブなどが含まれます。報道では、バルセロナ、フェネルバフチェ、オリンピアコスを含む圧倒的多数が反対に回ったとされています。

拒否の理由として、ESPNのブライアン・ウィンドホースト記者は「NBAとFIBAの提案がユーロリーグの価値を低く見積もっている」と株主側が考えていたことを挙げています。欧州メディアの中には、この提案を事実上の「買収」オファーと表現したところもありました。また、イタリアのガゼッタ・デッロ・スポルト紙は、提案にはユーロリーグが現在の体制を維持し、拡張しないことが条件として含まれていたと報じています。

一方で、完全に決裂したわけではありません。バルセロナはAP通信に対し、「現時点の形の提案は拒否したが、将来修正されればクラブとユーロリーグは再検討する」とコメント。ユーロリーグ側も逆提案(カウンターオファー)を検討していると報じられています。

さらにユーロリーグは同じ会合で、13の株主クラブを「永続フランチャイズ」に転換すること、そしてリーグを現在の20チームから2027-28シーズンに24チームへ拡大するプロセスを進めることも確認しました。NBAに対抗して自分たちも強くなる、という意思表示です。

そもそも「NBAヨーロッパ」とは?

ここで改めて、NBAヨーロッパ構想の中身を整理しておきます。

NBAとFIBAは2025年3月、欧州で新しいプロ男子リーグを作る検討を共同で進めると正式発表しました。発表はNBAのアダム・シルバー・コミッショナーとFIBAのアンドレアス・ザグリス事務総長によるもので、投資家、チーム、アリーナ開発業者、スポンサー候補などとの話し合いはその1年以上前から始まっていたとされています。

現時点で報じられている主な骨格は次のとおりです。

  • チーム数:16チーム(12の常設フランチャイズ+成績で入れ替わる4枠)
  • 開幕目標:2027年10月
  • ターゲット都市:ロンドン、マンチェスター、パリ、リヨン、ローマ、ミラノ、バルセロナ、マドリード、ベルリン、ミュンヘン、アテネ、イスタンブールの12都市
  • 運営形式:各チームは週末に自国の国内リーグを戦い、平日にNBAヨーロッパの試合を行うモデルが検討されている
  • 入れ替え枠:FIBAが運営するバスケットボール・チャンピオンズリーグ(BCL)などの成績をもとに4チームが参加

注目すべきはお金の規模です。フランチャイズ権の入札では、12都市すべてで有力な入札があり、最低ラインとされた5億ドル(約750億円)前後から、10億ドル(約1500億円)を超える入札も複数あったと報じられています。入札したのは20以上のグループで、既存のバスケクラブやサッカークラブ、そして現役のユーロリーグ所属クラブも含まれていました。

NBAのマーク・テイタム副コミッショナーは「欧州バスケットボールがこれまでに経験したことのない最大の資本流入になる」と語っており、ESPNによればNBA側の試算では、最初の10年で欧州バスケ界全体に100億ドル以上が分配される見込みだといいます。NBA本体の拡張フランチャイズ(シアトルやラスベガス)と比べると桁は違いますが、欧州バスケの規模感からすれば破格の金額です。

ユーロリーグってどんなリーグ?

NBAファンでもユーロリーグはあまり見ない、という方もいるかもしれません。ユーロリーグは、レアル・マドリードやバイエルン・ミュンヘンといったクラブを擁する、NBAを除けば世界最高峰と言われる男子プロリーグです。サッカーでいう「UEFAチャンピオンズリーグ」に近いイメージで、各国リーグのトップクラブが国内リーグと並行して戦っています。

現在は20チーム制で、そのうち13チームが降格のない株主クラブ。残りは国内リーグの成績や招待によって出場権を得ています。NBAを経験した選手や、将来のNBA選手が多数プレーしており、ドラフト候補の「欧州での成長の場」としても重要な役割を担ってきました。

注目したいのは、NBAが狙う16チーム構想とユーロリーグの20チーム(13株主)体制がうまく噛み合わない点です。NBAとしては、知名度とファンベースのある名門クラブを取り込みたい。一方ユーロリーグ側は、自分たちが25年以上かけて築いてきたブランドと構造を手放す理由がない。ここに根本的なズレがあります。

対立の背景:実は「2回目」の拒否

今回の合併案拒否は、実は初めてのことではありません。The Athleticの報道によると、NBAは2025年1月の時点でもユーロリーグに欧州リーグの共同運営を持ちかけており、このときもユーロリーグが断っています。あるユーロリーグ幹部は当時、NBAの姿勢を「心臓も頭も(つまり主導権すべてを)欲しがっていた」と表現していました。NBA側も、ガバナンスの権限がない、単なる商業部門としての提携には興味がなかったとされています。

その後、ユーロリーグはNBAに対し、株主クラブとの直接交渉を続けるなら法的措置も辞さないという書簡を送るなど、関係は緊張していきました。報道では、ユーロリーグ所属クラブには約1000万ユーロの離脱条項があるとされ、NBAヨーロッパに関心を持つクラブ(レアル・マドリードなど)も、この離脱条項付きでユーロリーグとのライセンス契約を更新していると伝えられています。

欧州バスケには「分裂」の前例もあります。2000-01シーズン、ユーロリーグが誕生した最初の年には、FIBAが対抗リーグ「スプロリーグ」を1年だけ運営し、欧州のトップクラブが2つの大会に分かれてしまいました。今回の構図を「新たな分裂」と表現する欧州メディアがあるのは、この歴史があるからです。今回は「NBA+FIBA」対「ユーロリーグ」という、当時よりはるかに大きな資本がぶつかる構図になりつつあります。

ユーロリーグ内部も一枚岩ではない

今回の拒否で「ユーロリーグ vs NBA」の構図がはっきりしたように見えますが、実際はもう少し複雑です。

ESPNは、複数のユーロリーグ所属クラブがNBAと踏み込んだ話し合いを重ねており、NBAヨーロッパへの参加に真剣な関心を持っていると報じています。The Athleticのジョー・バードン記者も、少なくとも6つのユーロリーグクラブがNBAヨーロッパへの移籍を検討していると伝えました。前述のとおり、入札にも現役ユーロリーグクラブが参加しています。

つまりリーグとしての総意は「拒否」でも、個々のクラブを見れば「条件次第ではNBAヨーロッパに行きたい」というところが少なくないわけです。ユーロリーグのチュス・ブエノCEOは、合意できなければNBAヨーロッパと「競争する」と語っていましたが、主要クラブが抜けてしまえば、その競争力は大きく揺らぎます。NBAとFIBAの共同声明は、こうしたクラブに向けたメッセージという側面もありそうです。

今後どうなる?考えられる3つのシナリオ

ここからは、今後の展開として考えられるパターンを整理してみます(※報道をもとにした筆者の整理です)。

シナリオ1:修正案で合流する

バルセロナが「修正されれば再検討する」と明言している以上、NBA側が評価額や条件を見直し、ユーロリーグが逆提案を出して落としどころを探る可能性は十分あります。欧州バスケが一本化されるため、ファンにとってはもっとも分かりやすい形です。ただし「誰が主導権を握るのか」という根本の対立は2025年から変わっておらず、簡単にはまとまらないでしょう。

シナリオ2:完全に分裂し、2つのリーグが競争する

NBAヨーロッパが新規の投資家やサッカークラブ系のチームで立ち上がり、ユーロリーグは24チームへの拡張で対抗する形です。ただ、同じ都市に2つのリーグのチームが並び立つと、ファン・放映権・スポンサーの奪い合いになり、どちらのチーム価値も下がりかねないという指摘があります。選手の獲得競争で年俸が高騰する可能性もあります。

シナリオ3:一部の名門クラブがNBAヨーロッパへ移る

個人的にはこれがもっとも現実味がありそうだと感じています。リーグ全体の合併はまとまらなくても、離脱条項を使って一部の有力クラブがNBAヨーロッパへ移るパターンです。どのクラブが動くかによって、欧州バスケの勢力図は大きく変わるでしょう。

2027年10月の開幕は間に合うのか

NBAは2027年秋の開幕を目標にしていますが、ここにも不透明感が出ています。ウィンドホースト記者は、ユーロリーグの協力なしでこの目標が達成できるかは不確かだと指摘。The Athleticには、NBAヨーロッパ入りが見込まれるチームの関係者が「ユーロリーグとの合併なしに2027年10月開幕は不可能」と語ったとも報じられており、2028年秋への延期を予想する声も出ています。

アリーナの確保、選手の契約、試合日程の調整、国内リーグとの関係整理など、ゼロからリーグを立ち上げるのは簡単ではありません。シルバー・コミッショナー自身も以前、この計画は「数か月ではなく数年単位」の話だと語っていました。NBAオーナーの中にも「20年がかりのプロジェクト」と捉える声があり、短期的な損得よりも長期戦の構えであることがうかがえます。

NBAファンにとっての意味

「ヨーロッパの話でしょ?」と思うかもしれませんが、NBAファンにとっても無関係ではありません。

まず、選手の流れが変わる可能性があります。ヨキッチ、ドンチッチ、ヤニスなど、今のNBAを支えるスター選手の多くは欧州出身です。欧州リーグにNBAの資本とノウハウが入れば、育成環境やスカウティングの仕組みが変わり、NBAに来る選手の「通り道」も変わっていくはずです。NBAとFIBAはクラブのアカデミーや選手・コーチ・審判の育成にも資金を投じる方針を示しています。

次に、NBAの「グローバル戦略」の本気度が見えてきます。NBAは2026年以降もベルリン、ロンドン、パリ、マンチェスターでのレギュラーシーズン開催を発表しており、欧州市場の開拓を着々と進めています。NBAヨーロッパはその延長線上にある、より大きな一手です。

そして日本のファンとしては、「NBAがリーグを作る」というモデルがアジアなど他地域にも広がるのか、という点も気になるところです。今回の共同声明がマカオでのアジア向けイベント中に出たのも、偶然とはいえ象徴的に感じました。

まとめ

  • 10月6日、ユーロリーグの13株主クラブがNBAの合併案を拒否(理由は評価額が低すぎるため)
  • 10月8日、NBAとFIBAは共同声明で「ユーロリーグがいなくても新リーグは進める」と表明
  • ただしバルセロナは「修正案なら再検討」と話しており、交渉の余地は残っている
  • 複数のユーロリーグクラブがNBAヨーロッパに関心を持っており、リーグ内部は一枚岩ではない
  • 2027年10月の開幕目標には延期の可能性も

欧州バスケの勢力図が数十年ぶりに塗り替わるかもしれない、大きな局面です。ユーロリーグの逆提案、どのクラブが動くのか、そして開幕時期——次の動きが出たら、また追いかけていきます。

みなさんは、NBAヨーロッパとユーロリーグは「合流すべき」だと思いますか?それとも2つのリーグが競い合うほうが面白いと思いますか?ぜひX(@bballfreak2324)で意見を聞かせてください。

参考

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