ユニフォーム1枚に1,400万ドル(約22億円)。
マイケル・ジョーダンが1998年のNBAファイナル第2戦で着た赤いロードユニフォームが、1,400万ドルで売れました。ペンシルベニア州のオークションハウス、ハント・オークションズが現地2026年10月12日(日本時間13日)に発表したもので、バスケットボール関連のコレクターズアイテムとしては史上最高額です。
しかも、わずか2週間前には同じ1998年ファイナルの第3戦ユニフォームが1,226万ドルで最高額を塗り替えたばかり。「ラストダンス」のユニフォームが、短い間に続けて記録を更新しています。この記事では、今回売れたのがどんなユニフォームなのか、なぜここまでの値段がつくのか、そして過去の高額落札とあわせて整理していきます。
まずは要点:何が、いくらで売れたのか
- アイテム:1998年NBAファイナル第2戦(現地1998年6月5日・ユタ・ジャズ戦)でジョーダンが実際に着用した、サイン入りの赤いロードユニフォーム
- 価格:1,400万ドル(約22億1,200万円)
- 販売形式:公開オークションではなく、ハント・オークションズを通じたプライベートセール(相対取引)
- 買い手:マイアミの不動産投資家、ロン・ファーマン氏
- 来歴:2003年に個人コレクターがブルズから購入。その後、持ち主が変わったのは今回までに1度だけ
- 記録:バスケ関連グッズで史上最高額。試合で着用したユニフォームとしては全スポーツで歴代2位
このユニフォームが着られた「第2戦」とはどんな試合だったのか
第1戦を落として迎えた敵地ソルトレイクシティ
1998年のファイナルは、前年と同じシカゴ・ブルズ対ユタ・ジャズ。ブルズにとっては3連覇、つまり2度目の「スリーピート」がかかったシリーズでした。
ところがブルズは敵地デルタ・センターでの第1戦を延長の末に3点差で落とします。2試合続けて敵地で負ければ、一気に苦しくなる状況。そこで迎えたのがこの第2戦でした。
37得点で1勝1敗のタイに
ジョーダンはこの試合、40分14秒の出場で両チーム最多の37得点、5リバウンド、3アシスト。ブルズは93-88でジャズを下し、シリーズを1勝1敗に戻しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日付(現地) | 1998年6月5日 |
| 会場 | デルタ・センター(ユタ州ソルトレイクシティ) |
| スコア | ブルズ 93-88 ジャズ |
| ジョーダンの成績 | 37得点・5リバウンド・3アシスト(40分14秒) |
| シリーズ | 1勝1敗のタイに |
ブルズはその後シリーズを4勝2敗で制し、ジョーダンにとって6度目、そして最後の優勝を手にします。
なぜ「赤のロードユニフォーム」に価値があるのか
ハント・オークションズはこのユニフォームを「聖杯(holy grail)」と表現しています。理由は、ジョーダンのキャリアで最も有名なシーンの一つ、第6戦の「ラストショット」で着ていたのも同じ赤いロードユニフォームだったからです。
ブライオン・ラッセルを振り切って放ったあのジャンパーの写真には、この赤いユニフォームが写っています。今回の第2戦のものはラストショットそのものではありませんが、「ラストダンス」のシリーズで、あの写真と同じ姿のユニフォームだということがコレクターにとって大きな意味を持っています。
1,400万ドルはどれくらいすごいのか
「1得点あたり」で計算してみると
1,400万ドルという金額があまりにも大きいので、少し身近な単位に直してみます。
- 1得点あたり:1,400万ドル ÷ 37得点 = 約37万8,000ドル(約6,000万円)
- 1分あたり:1,400万ドル ÷ 約40.2分 = 約34万8,000ドル(約5,500万円)
- 当時の年俸との比較:1997-98シーズンのジョーダンの年俸は約3,314万ドル。ユニフォーム1枚で、その4割以上の金額になります
当時のジョーダンは、1シーズン82試合+プレーオフで年俸3,300万ドル。その中のたった1試合で着たユニフォームに、年俸の4割以上の値段がついたことになります。
全スポーツでも歴代2位
試合で着用されたユニフォームとして今回を上回るのは、2024年に2,412万ドル(約38億円)で落札されたベーブ・ルースのユニフォームだけです。1932年のワールドシリーズ第3戦、カブス戦で「予告ホームラン」を打ったときに着ていたとされる1着です。
野球の神様に次ぐ2位にバスケの神様、という並びになっているのも面白いところです。
「ラストダンス」ユニフォームの高額落札の歴史
ジョーダンの1998年ファイナルのユニフォームは、この4年ほどで次々と高値を更新してきました。
| 年 | アイテム | 価格 |
|---|---|---|
| 2022年 | 1998年ファイナル 第1戦ユニフォーム | 約1,010万ドル(当時の為替で約14億円) |
| 2023年 | 1998年ファイナル 第2戦着用のエアジョーダン(スニーカー) | 220万ドル(当時のスニーカー最高額) |
| 2024年 | 1996-97シーズン着用ユニフォーム | 約7億円 |
| 2025年 | サイン入りルーキーカード | 約3億6,000万円 |
| 2026年9月29日 | 1998年ファイナル 第3戦ユニフォーム(ホーム) | 1,226万ドル |
| 2026年10月12日 | 1998年ファイナル 第2戦ユニフォーム(ロード) | 1,400万ドル |
つまり、1998年ファイナルのジョーダンのユニフォームで1,000万ドルを超えたものが、これで少なくとも3着。第1戦が2022年に1,000万ドルの壁を超え、第3戦が先月それを更新し、今回の第2戦がさらに上回りました。
ちなみに第3戦は、ブルズがジャズを96-54で下した歴史的な大差の試合。ジャズの54点はファイナル史上最少得点として今も語られています。どの試合のユニフォームにも、それぞれの物語がついているわけです。
おさらい:1998年NBAファイナル全6試合
せっかくなので、ユニフォームが話題になっている1998年ファイナルの全試合も振り返っておきます。どの試合のユニフォームが今後市場に出てくるのか、想像しながら見ると面白いです。
| 試合 | 会場 | スコア | ポイント |
|---|---|---|---|
| 第1戦 | ユタ | ジャズ 88-85 ブルズ(延長) | ブルズが敵地で黒星スタート。このユニは2022年に約1,010万ドル |
| 第2戦 | ユタ | ブルズ 93-88 ジャズ | ジョーダン37得点。今回1,400万ドルで売れたユニ |
| 第3戦 | シカゴ | ブルズ 96-54 ジャズ | ジャズはファイナル史上最少の54点。ユニは先月1,226万ドル |
| 第4戦 | シカゴ | ブルズ 86-82 ジャズ | ブルズが3勝1敗で王手 |
| 第5戦 | シカゴ | ジャズ 83-81 ブルズ | ホームで優勝を決めきれず、再びユタへ |
| 第6戦 | ユタ | ブルズ 87-86 ジャズ | ジョーダン45得点、残り5.2秒の「ラストショット」で6度目の優勝 |
こうして並べると、第2戦は「シリーズの流れを引き戻した試合」、第6戦は「すべてを決めた試合」という位置づけです。第2戦でここまでの値段がついたことを考えると、45得点を挙げてラストショットを決めた第6戦のユニフォームが市場に出た場合は、ベーブ・ルースの2,412万ドルを超えてもおかしくない、と感じてしまいます。
もちろん、どの試合のユニフォームも今どこにあるのか、売りに出されるのかは公表されていません。それでも、1998年ファイナルのアイテムが出るたびに記録が更新される流れは、しばらく続きそうです。
なぜジョーダンのグッズはここまで高くなるのか
①「ラストダンス」で価値が再発見された
1997-98シーズンのブルズを追った全10話のドキュメンタリー『ラストダンス(The Last Dance)』が2020年に配信され、世界中で大ヒットしました。ジョーダンの現役時代を知らない世代にも、あのシーズンの物語が一気に広がりました。
このシーズンのアイテムは「ジョーダンの最後の優勝」というだけでなく、多くの人が映像で見て知っている「物語の中の一着」になりました。これが価格を押し上げている大きな理由だと思います。
②数が限られている
ジョーダンのブルズでのファイナル出場は6回で、試合数も限られています。その中で実際に着用され、出どころがはっきりしているユニフォームとなるとさらに少ない。今回の1着も、2003年にブルズから個人コレクターの手に渡り、その後持ち主が変わったのは1度だけという、来歴が明確なものです。
③「アート作品」と同じ扱いになりつつある
ハント・オークションズのデビッド・ハント社長は、ジョーダンのグッズはもはや名画のような一部の美術品と同じ「エリートな資産クラス」になっていると話しています。
実際、スポーツのコレクターズアイテムは近年、富裕層の投資対象として注目されていて、今回の買い手も不動産投資家です。単なるファングッズではなく「資産」として見られるようになったことが、ここ数年の高騰の背景にあります。
ほかのNBAスターと比べると?
参考までに、NBA選手のユニフォームで話題になった高額落札も並べておきます。
- コービー・ブライアント:2007-08シーズン(MVP受賞シーズン)着用ユニフォームが2024年に約585万ドル
- マイケル・ジョーダン:1998年ファイナル第1戦(約1,010万ドル)、第3戦(1,226万ドル)、第2戦(1,400万ドル)
コービーのユニフォームでも十分すぎる高額ですが、ジョーダンの1998年ファイナルのものはその2倍以上。バスケットボールのコレクター市場では、ジョーダンが別格の存在だということがよくわかります。
個人的な感想:「値段」より「物語」に払っている
22億円と聞くと、正直、現実味がない金額です。ただ、この値段は布そのものではなく、「1998年6月、ソルトレイクシティで、追い込まれたブルズを37得点で救った夜」という物語についている値段なんだと思います。
ラストダンスを見てジョーダンにハマった人も多いはず。自分がNBAを好きになったきっかけを振り返った記事もあるので、よければあわせて読んでみてください。
▶ あなたがNBAを好きになった瞬間は?ジョーダン、スラムダンク、コービー、カリー、八村塁…時代ごとに振り返ってみた
1998年ファイナルのユニフォームは、第1戦・第2戦・第3戦と出そろいました。残る第4〜6戦、特にラストショットの第6戦のユニフォームが市場に出たら、一体いくらになるのか。考えるだけでワクワクします。
まとめ
- ジョーダンが1998年ファイナル第2戦で着た赤いロードユニフォームが、1,400万ドル(約22億円)で売れた
- ハント・オークションズを通じたプライベートセールで、買い手はマイアミの不動産投資家ロン・ファーマン氏
- バスケ関連グッズで史上最高額。試合着用ユニフォームとしてはベーブ・ルース(2,412万ドル)に次ぐ全スポーツ2位
- この試合でジョーダンは37得点。ブルズが93-88で勝ち、シリーズを1勝1敗のタイにした
- 2週間前には第3戦のユニフォームが1,226万ドルで記録を更新したばかり。1998年ファイナルのユニフォームは3着が1,000万ドル超え
参考:The Associated Press(NBA.com)、Basketball Network、バスケットボールキング、ESPNほか


