「シュートがうまい選手」を1つの数字で表すとしたら、何を見ますか?3P成功率でしょうか、それとも有効フィールドゴール率でしょうか。
NBAには昔から、シンプルすぎるくらいシンプルな指標があります。フィールドゴール50%、3ポイント40%、フリースロー90%。この3つを同じシーズンに全部クリアすると「50-40-90クラブ」に名前が載ります。リーグの歴史は80年近くありますが、達成者はたった9人。今回はその全記録を整理してみました。
50-40-90クラブとは?意外と知られていない「最低本数」の壁
50-40-90は、1シーズンを通してFG成功率50%以上、3P成功率40%以上、FT成功率90%以上を同時に達成することを指します。攻撃の3つの領域すべてで上位クラスの効率を出さないと届きません。
ここで見落とされがちなのが、率だけでは認められないという点です。NBAが各部門のリーグリーダー資格として設けている最低本数、つまりフィールドゴール300本成功、3ポイント82本成功、フリースロー125本成功をクリアする必要があります(82試合のフルシーズンの場合)。
この条件がなかなか意地悪です。3Pを82本決めるには、それなりに打たないといけない。でも打てば率は落ちる。FTを125本決めるには積極的にドライブしないといけない。でもドライブが増えればFG率は上がっても3Pの機会は減る。役割が偏った選手では成立しない仕組みになっています。
NBA50-40-90クラブ達成者一覧(全14シーズン)
2025-26シーズン終了時点で、達成は9人、のべ14シーズンです。
| シーズン | 選手 | チーム | FG% | 3P% | FT% |
|---|---|---|---|---|---|
| 1986-87 | ラリー バード | セルティックス | 52.5 | 40.0 | 91.0 |
| 1987-88 | ラリー バード | セルティックス | 52.7 | 41.4 | 91.6 |
| 1988-89 | マーク プライス | キャバリアーズ | 52.6 | 44.1 | 90.1 |
| 1993-94 | レジー ミラー | ペイサーズ | 50.3 | 42.1 | 90.8 |
| 2005-06 | スティーブ ナッシュ | サンズ | 51.2 | 43.9 | 92.1 |
| 2006-07 | ダーク ノビツキー | マーベリックス | 50.2 | 41.6 | 90.4 |
| 2007-08 | スティーブ ナッシュ | サンズ | 50.4 | 47.0 | 90.6 |
| 2008-09 | スティーブ ナッシュ | サンズ | 50.3 | 43.9 | 93.3 |
| 2009-10 | スティーブ ナッシュ | サンズ | 50.7 | 42.6 | 93.8 |
| 2012-13 | ケビン デュラント | サンダー | 51.0 | 41.6 | 90.5 |
| 2015-16 | ステフィン カリー | ウォリアーズ | 50.4 | 45.4 | 90.8 |
| 2018-19 | マルコム ブログドン | バックス | 50.5 | 42.6 | 92.8 |
| 2020-21 | カイリー アービング | ネッツ | 50.6 | 40.2 | 92.2 |
| 2022-23 | ケビン デュラント | ネッツ/サンズ | 56.0 | 40.4 | 91.9 |
複数回の達成者はラリー バード(2回)、スティーブ ナッシュ(4回)、ケビン デュラント(2回)の3人だけです。
スティーブ ナッシュの4回が、どれだけ異常か
全14シーズンのうち4シーズンがナッシュ1人のものです。しかも2007-08から2009-10まで3年連続。34歳から36歳にかけての達成で、しかも2007-08の3P成功率47.0%はクラブ内の最高値です。
ポイントガードでこれをやっているというのも重要です。ボールを持つ時間が長く、難しい体勢からのシュートが増えるポジションで、FG率50%を4回も超えている。当時のサンズが標榜した「セブンセカンズ オア レス」がいかに良いシュートを量産していたか、という話でもあります。
効率でこれだけの数字を残しながら、ナッシュはリング獲得には届きませんでした。MVP最多受賞ランキングを見てもらうと、2回のMVPがどれだけの価値なのかが分かると思います。
カリーの2015-16だけが持っている「もうひとつの肩書き」
クラブの中でも特殊なのが、ステフィン カリーの2015-16シーズンです。50.4/45.4/90.8という数字自体も優秀ですが、この年のカリーは平均30.1得点でリーグ得点王でもありました。
効率を追えば本数が減り、本数を追えば効率が落ちる。その両方を同じシーズンでやってのけた上に、MVP投票では史上初の満票受賞。NBAのMVP61年の歴史で初めてのことでした。
一方で数字の質という意味では、2022-23のデュラントも突出しています。FG成功率56.0%はクラブ最高値。長身フォワードだからこその内訳ですが、そこに40.4%と91.9%が乗ってくるのは異様です。通算3ポイント成功数ランキングや歴代得点王ランキングと並べて見ると、この2人の立ち位置がよりはっきりします。
2023年以降、3シーズン連続で達成者ゼロ
直近の達成はデュラントの2022-23です。つまり2023-24、2024-25、2025-26と、3シーズン連続で達成者が出ていません。
3ポイントを打つ本数はリーグ全体で増え続けていますから(3ポイント試投数の推移を見ると一目瞭然です)、40%を超える選手自体は珍しくありません。難しいのはむしろFG率50%の方でしょう。3Pの比率が上がるほど、全体のFG率は構造的に下がっていきます。
加えて2023-24からは、各種表彰の資格に65試合以上の出場という条件が入りました。50-40-90そのものは表彰ではないので直接の関係はありませんが、シーズンを通して同じ役割で走り切ることの重みは以前より増しています。同じ時期にオールディフェンシブチームの選出でも顔ぶれが入れ替わっているのは、偶然ではないのかもしれません。
なお、WNBAでも2019年にエレナ デレ ドン、2025年にナフィーサ コリアーが達成しています。
まとめ
- 50-40-90はFG50%、3P40%、FT90%を同一シーズンで達成することです
- 率だけでなく、FG300本、3P82本、FT125本という最低成功数の条件があります
- 達成者は9人、のべ14シーズン。最多はスティーブ ナッシュの4回です
- カリーの2015-16は得点王と満票MVPを同時に達成した唯一のケースです
- FG成功率の最高値はデュラント2022-23の56.0%です
- 2023-24以降は3シーズン連続で達成者が出ていません
3つの数字を並べるだけの、いたってシンプルな基準です。それでも80年近い歴史で9人しか届いていない。次に誰がこのリストに名前を載せるのか、今シーズンのスタッツを見るときの楽しみがひとつ増えると思います。
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