審判に食ってかかった選手がテクニカルファウルを吹かれたとき、「これで罰金いくらなんだろう」と思ったことはありませんか。NBAの罰金は意外と細かく金額が決まっていて、しかも何回目かによって値段が上がっていく仕組みになっています。
この記事では、テクニカルファウル1回2,000ドルという入口から、2026年にクリッパーズが科された3,000万ドルという史上最高額まで、NBAの罰金制度を金額ベースで整理します。最後に「集めた罰金はどこへ行くのか」という、あまり語られない話も。
テクニカルファウルの罰金は2,000ドルから。回数で上がる
レギュラーシーズンのテクニカルファウルは、累計本数に応じて1本あたりの罰金が段階的に上がります。
| シーズン通算のテクニカル | 1本あたりの罰金 | 追加処分 |
|---|---|---|
| 1〜5本目 | 2,000ドル | なし |
| 6〜10本目 | 3,000ドル | なし |
| 11〜15本目 | 4,000ドル | 警告 |
| 16本目 | 5,000ドル | 1試合出場停止(無給) |
| 18本目以降(2本ごと) | 5,000ドル | さらに1試合出場停止 |
1本2,000ドル(約30万円)と聞くと高そうですが、年俸3,000万ドルの選手にとっては0.007%。金額そのものより、16本目で訪れる出場停止のほうが実質的な罰になっています。16本に達した後は2本増えるごとに1試合ずつ止められるので、口の悪い選手は終盤戦でカウントを気にしながらプレーすることになります。
なお、後からリーグに取り消された(rescinded)テクニカルはカウントされません。誤審が翌日に認められるケースと同じで、判定が覆れば罰金も戻ります。
プレーオフはカウントがリセット、そして7本で出場停止
ここが見落とされがちなポイントです。レギュラーシーズンのテクニカル本数はプレーオフに持ち越されません。ゼロから数え直しになる代わりに、出場停止までの本数は16本から7本へと一気に厳しくなります。
| プレーオフ通算 | 1本あたりの罰金 | 追加処分 |
|---|---|---|
| 1〜2本目 | 2,000ドル | なし |
| 3〜4本目 | 3,000ドル | なし |
| 5〜6本目 | 4,000ドル | 5本目で警告 |
| 7本目 | 5,000ドル | 1試合出場停止 |
| 9本目以降(2本ごと) | 5,000ドル | さらに1試合出場停止 |
しかもプレーオフ中のカウントはラウンドごとにリセットされず、ポストシーズン全体で積み上がります。ファイナルまで勝ち上がるチームほど、エースが1本の感情的なテクニカルで次戦を失うリスクを抱えることになるわけです。
フレグラントファウルは「点数制」で管理される
荒いファウルのほうは、本数ではなくポイント制で管理されています。
- フレグラント1:1ポイント
- フレグラント2:2ポイント(即退場)
レギュラーシーズンは通算5ポイントを超えた時点で自動的に出場停止。2026年にはルディ・ゴベアが6ポイント目で1試合の出場停止を受けています。7ポイント以降はフレグラントを1つ取られるごとに2試合の出場停止になるため、ペイント内で体を張るビッグマンにとっては見過ごせない数字です。
プレーオフではこの基準も厳しくなり、4ポイントで1試合出場停止。2016年ファイナルでドレイモンド・グリーンが第5戦を欠場したのは、まさにこの累積によるものでした。テイクファウルのようにルール改正で重くなった反則もありますが、フレグラントの点数制は長く形を変えずに機能しています。
桁が違うのは球団への罰金。2026年に記録が塗り替わった
選手個人の罰金が数千ドル単位なのに対し、球団への罰金は桁がいくつも変わります。代表的なのがスター選手の休養に関するPlayer Participation Policy(2023-24シーズン導入)です。
| 違反回数 | 球団への罰金 |
|---|---|
| 1回目 | 10万ドル |
| 2回目 | 25万ドル |
| 3回目以降 | 前回より100万ドル増 |
対象になるのは過去3シーズン以内にオールNBAまたはオールスターに選ばれた選手。実際にキャバリアーズがミッチェルとモブリーを同時に休ませて10万ドルを科されるなど、運用は形だけではありません。ジャズが10万ドルの罰金を受けた一件やロードマネジメントの功罪も、この制度を知っていると見え方が変わります。
そして2026年9月、歴代最高額が一気に更新されました。カワイ・レナードを巡るサラリーキャップ迂回疑惑で、クリッパーズに3,000万ドルの罰金。従来の球団最高額は2000年のティンバーウルブズの350万ドルでしたから、約8.6倍です。あわせてオーナーのスティーブ・バルマーが1年間の資格停止、レナード本人にも70万ドルの罰金、さらに1巡目指名権5本の剥奪という処分が下されました。
罰金がサラリーキャップの抜け道を塞ぐための武器として使われている、という点では、テクニカルファウルの2,000ドルとはまったく別の制度だと考えたほうが分かりやすいかもしれません。詳しい経緯はクリッパーズへの処分をまとめた記事でも触れています。
集めた罰金はどこへ行くのか
意外と知られていないのが、罰金の行き先です。労使協定では、選手から徴収した罰金はリーグ(NBA)と選手会(NBPA)で半分ずつ分け合い、それぞれが選んだ慈善団体に寄付すると定められています。
つまり罰金はリーグの収入になるわけではなく、半分は選手側の手に戻って社会貢献に回る建て付けです。近年は「どの団体に寄付するかを選手自身が決めたい」という声も出ていて、罰金の使い道そのものが交渉のテーマになりつつあります。
ちなみに個人として最も多額の罰金を失ったのは、2021-22シーズンに出場を拒否して1,900万ドル以上を差し引かれたベン・シモンズ。これは制裁というより給与の没収に近い性質のものですが、「罰金」としてはNBA史上最大級の金額です。
まとめ
- テクニカルファウルの罰金は1〜5本目が2,000ドル、以降3,000ドル・4,000ドル・5,000ドルと段階的に上がる
- レギュラーシーズンは16本目で1試合出場停止、以降は2本ごとに追加
- プレーオフはカウントがリセットされるが、7本目で出場停止と基準が厳しくなる
- フレグラントは点数制。レギュラーシーズンは5ポイント超、プレーオフは4ポイントで出場停止
- 球団への罰金は桁が違い、2026年のクリッパーズ3,000万ドルが史上最高額
- 選手から集めた罰金はNBAとNBPAで折半され、双方が慈善団体へ寄付する
テクニカル1本の2,000ドルは、トップ選手にとっては痛くも痒くもない金額です。それでも制度が機能しているのは、お金ではなく出場停止という時間を取り上げる設計になっているから。優勝すればボーナスプールから数十万ドルが入ることを考えると、春先に無駄なテクニカルを溜め込むのは、実はそれなりに高くつく選択なのかもしれません。


