バディ・ヒールドがシャーロット・ホーネッツへ移籍しました。
……という記事を書こうと思っていたら、もういません。笑
9月22日、アトランタ・ホークスからシャーロット・ホーネッツへトレードされたヒールド。それからわずか数日後、今度はロブ・ディリンガムとの交換でシカゴ・ブルズへ移籍することが決まりました。NBA.comによると、ブルズはヒールドに加えてキャッシュを獲得。ホーネッツはディリンガムを獲得し、ヒールドの契約を利用して約960万ドルのトレード例外も作ります。
アトランタ。
シャーロット。
シカゴ。
5日間で3都市。2回トレード。
さすがに移動が早すぎる。
シャーロットで家を探していたなら、検索履歴を消して大丈夫です。笑
ただ、このトレードを単なる「バディ・ヒールド、また移籍したの?」で終わらせるのは少しもったいないです。ヒールドは33歳ですが、キャリアを通して3ポイントを39.5%で決めてきたNBA屈指のシューター。それでも今季で11年目にして7チーム目となります。
なぜこれだけシュートを決められる選手が、これほど多くのチームを渡り歩くのでしょうか。
そして今回ホーネッツがヒールドをすぐに手放してまで獲得したロブ・ディリンガムも、実はかなり興味深い選手です。
まず時系列がおかしい。9月22日にホーネッツ入りしたばかり
最初のトレードが成立したのは9月22日です。
ホーネッツはドリアン・フィニー=スミスをホークスへ送り、ヒールド、ライアン・ネムハード、キャッシュを獲得しました。
ヒールドからすれば、昨季途中から所属していたアトランタを離れてシャーロットへ。
新しいチームが決まりました。
さて、トレーニングキャンプに向けて準備するか。
……と思った数日後。
「すみません、次シカゴです」
NBA怖すぎる。笑
ホーネッツはヒールドをブルズへ送り、代わりに21歳のポイントガード、ロブ・ディリンガムを獲得しました。APによればヒールドにとってこれは5日間で2度目のトレードです。
しかもシャーロットで公式戦に出場することはありません。
こういう選手を見ると、NBAの「所属チーム」という概念が分からなくなってきます。
これで11年目にして7チーム目
ヒールドは2016年NBAドラフト全体6位でニューオーリンズ・ペリカンズから指名されました。
その後キングス、ペイサーズ、76ers、ウォリアーズ、ホークス、そして今回のブルズと渡り歩いています。NBA.comによれば、シカゴがヒールドにとってNBA7チーム目。
ここだけ見ると、いわゆるジャーニーマンのようにも見えます。
でもヒールドの場合、少し不思議です。
NBAで765試合に出場し、キャリア平均14.5得点。何より最大の武器である3ポイントは、キャリアを通して1試合7.3本打って39.5%を記録しています。
3ポイント全盛のNBAで、これだけ長期間にわたって大量の3ポイントを高確率で決められる選手。
普通に考えたら、めちゃくちゃ需要がありそうです。
実際、需要はあります。
だから7チームも所属できているとも言えます。
「必要とされないから移籍」ではなく「欲しがられるから動く」
ここがヒールドのキャリアで面白いところだと思います。
トレードが多いと、どうしても「チームから必要とされていない選手」という印象を持ってしまいます。
でもヒールドの場合は少し違います。
NBAで最も分かりやすい武器の一つを持っているから、トレード市場で使いやすい。
これも理由の一つでしょう。
3ポイントが欲しいチームにとって、「ヒールドを入れればシュート力が上がる」という計算が非常に簡単です。
ボールを長時間持たせる必要もありません。オフボールで動き、ディフェンスを引っ張り、キャッチしたら打つ。
スター選手の横にも置きやすい。
一方で、ヒールドを「絶対に手放してはいけないフランチャイズの中心選手」として扱う必要もありません。
ここが少し皮肉です。
どこでも使えるから、どこへでも動かせる。
NBAでは「使いやすい選手」と「動かしやすい選手」が、意外と同じ選手だったりします。
それでも昨季は少し立場を落としていた
もちろん、今回の移籍がすべてポジティブな理由というわけではありません。
ヒールドは昨季ウォリアーズとホークスで合計51試合に出場し、平均7.6得点。ホークス移籍後はレギュラーシーズン7試合の出場にとどまり、大きな役割を得られませんでした。
33歳になり、キャリア序盤のように毎試合30分以上プレーして15〜20得点を狙う立場ではなくなっています。
守備やボールハンドリングまで含めた総合力を考えると、現在のヒールドは明確な役割を与えて使うタイプの選手です。
ただ、その役割が分かりやすい。
3ポイントを打つ。
ものすごくシンプルです。
そしてキャリア39.5%という数字を見る限り、それをNBAレベルで長期間やってきた実績があります。
ブルズ側から見ると、かなり分かりやすい補強
今回のトレードでブルズが獲得するのはヒールドとキャッシュです。
シカゴから出ていくのはロブ・ディリンガム。
ブルズ側の狙いは比較的分かりやすいでしょう。
今使えるシュート力を取った。
ヒールドの2026-27シーズンのサラリーは約966万ドルで、6月末に全額保証されています。
決して格安というわけではありませんが、NBAで実績のあるシューターとしては扱いやすい金額です。
ブルズはこのオフにもロスターをかなり動かしており、ニック・クラクストンやノーマン・パウエルらも加入。そこへヒールドのシュート力を追加しました。
33歳なので長期的なコアではありません。
でも必要な時にベンチから出てきて3ポイントを数本沈める。
相手がペイントを固めればスペーシングを広げる。
ヒールドに求められる仕事は非常に明確です。
そしてホーネッツが獲得したディリンガムが面白い
個人的には今回のトレード、ヒールド以上にロブ・ディリンガム側も気になります。
ディリンガムは2024年NBAドラフト全体8位。
まだ21歳です。
NBAではここまでウルブズとブルズで114試合に出場し、平均13.0分、5.5得点、2.1アシスト。ドラフト8位という期待値を考えると、まだNBAでポジションを確立できたとは言えません。
しかも今回のシャーロットが、2月のトレード期限以降だけで3チーム目になります。
ヒールドだけじゃなくてディリンガムも移動しまくってるんかい。笑
ただし、ディリンガムの場合はまだ21歳。
だからホーネッツとしては「完成されたヒールド」より「まだ化ける可能性があるディリンガム」を選んだと考えることができます。
2年前、ウルブズはディリンガムをかなり高く評価していた
ここで少し時間を戻すと、このトレードがさらに面白くなります。
2024年のドラフト当日、ディリンガムを8位で指名したのはスパーズでした。
しかし、その直後にウルブズへトレードされます。
ミネソタが支払ったのは、2031年の無保護1巡目指名権と2030年の1巡目指名権スワップ権。
かなり大きな投資です。
当時のウルブズは、ディリンガムを将来のバックコートを担う選手として評価していました。
ところがNBA入りから約2年。
ミネソタからシカゴへ移り、今度はヒールドとの交換でシャーロットへ。
NBAの選手価値、
株価より動くの早くない?笑
ドラフト直後には将来の無保護1巡目まで出して獲得された選手が、数年後にはまったく違う評価になっている。
NBAのドラフトが難しい理由がよく分かります。
ホーネッツは「ヒールド」より柔軟性を選んだ
今回ホーネッツが得たものは、ディリンガムだけではありません。
NBA.comによると、シャーロットはヒールドを出すことで約300万ドルのサラリーを削減し、さらに約960万ドルのトレード例外を作ります。
つまり今回の取引を整理すると、
ブルズは今すぐ使える33歳のシューター。
ホーネッツは21歳の元ドラフト8位+サラリー削減+今後使えるトレード例外。
かなり方向性の違うトレードです。
現在のホーネッツはコン・クニッペルやブランドン・ミラーなど若い選手を軸にしているため、33歳のヒールドを長く抱えるより、ディリンガムの可能性に賭けながら財務的な柔軟性を確保する方がチームの時間軸には合います。
しかもヒールドは、そもそもシャーロットが長期的に欲しくて獲得した選手ではなかった可能性があります。
9月22日のトレードから、さらに別の取引へつなげた。
要するにヒールドを一度経由したとも言えます。
本人からしたらたまったもんじゃないですが。笑
NBAでは「選手=戦力」だけではない
今回の2つのトレードを見ていると、NBAのロスター構築の面白さがよく分かります。
ファンからすると選手は、
「何点取れるのか」
「3ポイントが入るのか」
「守備できるのか」
という目線で見ることが多いです。
もちろんフロントもそこを見ています。
ただNBAでは、それと同時に契約金額、契約年数、年齢、トレード例外、指名権、タックスなども全部含めて選手の価値が決まります。
だから「良い選手なのにトレードされる」ということが普通に起こる。
ヒールドはその典型かもしれません。
キャリア39.5%の3ポイントシューター。
NBAで明確に使える武器がある。
でも33歳で約966万ドルの契約を持つベテランでもある。
あるチームにとっては必要なシューター。
別のチームにとっては、若い選手や財務的な柔軟性へ変換できるトレード資産。
同じ選手なのに、チームによって価値が全然違います。
4日で2回トレード。それでもヒールドには仕事がある
バディ・ヒールドは今季でNBA11年目。
これで7チーム目になります。
ペリカンズ、キングス、ペイサーズ、76ers、ウォリアーズ、ホークス、そしてブルズ。
シャーロットも含めれば、今回ほんの数日だけ所属したチームまであります。
一つのチームで長く愛されるフランチャイズプレイヤーとは正反対のキャリアかもしれません。
でも、それもNBAで10年以上生き残る一つの形です。
必要とされる場所が変われば移動する。
役割が小さくなれば、別の役割を受け入れる。
そしてどのチームへ行っても、自分の最大の武器である3ポイントを打ち続ける。
33歳になってもトレード市場で名前が出るのは、裏を返せばまだ欲しいチームがあるということでもあります。
まずはシカゴでどんな役割を与えられるのか。
そして今度こそ、少しは同じ街にいられるのか。
とりあえずバディ。
引っ越し業者を呼ぶのは、もう少し待った方がいいかもしれません。笑

