デンバー・ナゲッツが、デマー・デローザンとの契約を正式に発表しました。契約は1年390万ドルと報じられており、37歳とはいえ昨季平均18.4得点を記録した6度のオールスターが、まさかのベテラン最低年俸クラスで優勝候補へ加入することになります。
いや、安すぎない?笑
デローザンといえば、NBAを長く見ている人なら説明不要のスター選手です。通算26,711得点はNBA歴代16位で、昨季も77試合に出場して平均18.4得点、4.1アシスト、2.9リバウンド。さすがに全盛期のような平均25点クラスのスコアラーではなくなりましたが、「もう戦力にならないから最低年俸」という成績では全くありません。
ただ今回の移籍、単純に「ナゲッツがめちゃくちゃ得した」で終わらせるには少し面白すぎます。なぜならデローザンは、現代NBAでもかなり珍しいほどミドルレンジを武器にしてきた選手だからです。そんな選手が、ニコラ・ヨキッチを中心としたデンバーのオフェンスに入って本当に噛み合うのか。今回は契約金額だけでなく、デローザンが最低年俸まで市場価値を落とした背景と、ナゲッツでの役割まで考えてみたいと思います。
まず昨季18.4得点の選手が390万ドルは普通におかしい
最初に数字だけ整理してみると、やっぱりこの契約はかなりインパクトがあります。デローザンは昨季キングスで平均18.4得点、FG49.7%を記録。しかも37歳という年齢にもかかわらず77試合に出場しており、過去5シーズンすべてで70試合以上に出場しています。
NBAでベテラン選手の評価が落ちるとき、よく問題になるのが怪我です。能力があってもシーズンの半分しか出られないのであれば、チームが大きな契約を提示しにくくなるのは理解できます。ただデローザンの場合、少なくとも近年の稼働率だけを見ると「年齢的にいつ壊れるか分からないから使えない」というタイプでもありません。
さらに6度のオールスター選出、キャリア平均21.1得点、通算得点は現役選手でもトップクラス。これだけの実績を持つ選手が1年390万ドルです。
もちろん37歳なので将来性を買う契約ではありません。それでも昨季18点取った選手をこの価格でベンチに置けるなら、ナゲッツ側からするとかなりローリスクな補強に見えます。
そもそもなぜデローザンがFAになったのか
今回の流れは、キングスが7月にデローザンをウェイブしたところから始まっています。デローザンは2026-27シーズンに2570万ドルを受け取る予定でしたが、そのうち保証されていたのは1000万ドル。サクラメントはトレード相手を探したものの最終的に成立せず、デローザンを放出しました。
ここが結構興味深いところです。昨季18.4得点のデローザンを「欲しいチームがなかった」というより、37歳のデローザンに2500万ドル級の契約を引き継いでまで獲得したいチームがなかった、と考えた方が近いでしょう。
NBAでは選手の能力と契約価値は別物です。18点取れる選手だから2500万ドルの価値があるとは限りませんし、逆に390万ドルなら話は全く変わります。
これ、個人的にはNBAの契約を見るうえでかなり面白い部分だと思います。同じデマー・デローザンでも、「年2500万ドルのデローザン」と「年390万ドルのデローザン」ではチームにとっての価値が全然違うんですよね。
デローザン自身も「お金」より優勝を選んだ
デローザンにはデンバー以外からも関心があり、報道ではヒート、ウィザーズ、ペリカンズなどが候補に挙がっていました。それでも最終的にナゲッツを選び、契約前にはヨキッチ、ジャマール・マレー、アーロン・ゴードンとも話をしていたと報じられています。
このあたりを見ると、今回の決断は単純に「他に行くところがなかった」という話でもなさそうです。デローザンはNBA17年間で6度のオールスターに選ばれ、個人として十分すぎる実績を積み上げてきましたが、まだNBAチャンピオンにはなっていません。
キャリア終盤に入った37歳。ここから大きな長期契約を狙うより、自分がまだ戦力になるうちに優勝を狙えるチームへ行く。その選択としてヨキッチのいるデンバーを選んだと考えれば、かなり納得できます。
個人的にも、デローザンには一度リングを取ってほしいんですよね。これだけ長くNBAの第一線で活躍してきた選手なので、最後に優勝候補で重要な役割を担う姿は普通に見たいです。
ただし「ヨキッチの横にデローザン」は本当に合うのか
ここからが今回一番気になるところです。選手の格と契約金額だけなら、デローザン獲得はほぼ文句なしだと思います。ただバスケットボールとして考えると、「ヨキッチ+デローザン」が完璧な組み合わせかと言われると少し疑問があります。
デローザン最大の特徴は、言うまでもなくミドルレンジです。3Pラインの外から大量にシュートを撃つのではなく、ドライブからストップしてミドル、ポストアップからフェイダウェイ、ピック&ロールからディフェンダーとの間合いを作ってジャンパー。今のNBAではかなり珍しくなった得点方法を、ずっと高いレベルで続けてきました。
一方のヨキッチは、周囲にスペースがあるほど恐ろしい選手です。ポストからダブルチームを引きつければ外へパスを出せるし、ハンドオフからシューターを使うこともできる。だから基本的には、ヨキッチの周りには3Pを決められる選手を置きたい。
そこへ、キャリアを通して3Pを最大の武器としてこなかったデローザンを入れる。この部分だけを見ると、確かに少し不思議な補強です。
でも「ヨキッチと一緒に使う」と考えすぎなくてもいい
ただ、ここで重要なのがデローザンの役割だと思います。ナゲッツがデローザンを獲得したからといって、必ずしもヨキッチ、マレー、ゴードンと毎分一緒にプレーさせる必要はありません。
むしろデローザンの価値が最も出るのは、ヨキッチやマレーがベンチにいる時間帯かもしれません。NBAのプレーオフでは、スターターが休んでいる数分間にオフェンスが止まり、その時間だけで試合の流れを失うことがよくあります。
そこでボールを渡せば、自分でシュートまで持っていけるデローザンがいる。これはかなり大きいです。
セットプレーが崩れた。
ショットクロックが残り8秒。
とりあえずデローザンに渡す。
ミドルから2点。
こういう「雑に2点を作れる選手」は、プレーオフになるほど価値が上がると思います。
セカンドユニットの得点源なら反則級では?
もしデローザンがベンチスタートを受け入れるのであれば、個人的にはかなり面白いと思っています。昨季平均18.4得点の選手がセカンドユニットの中心として出てくるわけです。
相手からしたら普通に嫌ですよね。笑
ヨキッチが下がって「やっと休める」と思ったら、次はデローザンが出てきてミドルを打ち続ける。しかもマレーと出場時間をずらせば、48分間の大部分で自分で点を作れる選手をコートに置くこともできます。
ナゲッツはヨキッチがコートにいる時間のオフェンスについて、そこまで心配する必要がありません。問題になるのはむしろヨキッチがいない時間です。
だから「デローザンはヨキッチに合うか?」という問いより、**「ヨキッチがいない時間をデローザンに任せられるか?」**と考えた方が、この補強の意味は分かりやすい気がします。
そしてプレーオフではミドルレンジが必要になる
もう一つ、個人的にデローザンを面白いと思う理由があります。それがプレーオフでのミドルレンジです。
レギュラーシーズンでは効率を考えて、リング周辺と3Pを中心に攻めるのが現代NBAの基本になっています。ただプレーオフになると、相手もスカウティングを徹底してきます。リングへの侵入を消され、3Pラインにもプレッシャーをかけられ、普段簡単に取れていたシュートがなくなる。
そこで最後に空くことがあるのがミドルです。
もちろんデローザンが効率を無視してミドルを20本打てばいいという話ではありません。ただ「そこからでも点を取れる」という選択肢があるだけで、オフェンスの幅は変わります。
ヨキッチ。
マレー。
そしてデローザン。
ハーフコートでオフェンスが完全に止まったときでも、自分でシュートを作れる選手が複数いる。プレーオフではかなり嫌なチームになる可能性があります。
37歳という年齢はやっぱり無視できない
もちろん不安要素もあります。一番分かりやすいのは年齢です。
デローザンは8月に37歳になりました。NBAで17シーズンを戦い、キャリア通算1,264試合に出場しています。
これだけ長くプレーしていれば、いつ急激にパフォーマンスが落ちても不思議ではありません。昨季まで健康だったからといって、今季も同じように77試合出られる保証はありません。
特にディフェンスでは、若いウイングやガードを相手にする場面で狙われる可能性があります。プレーオフでは相手が弱点を徹底的に探してくるので、デローザンをどのラインナップで使うかはかなり重要になるでしょう。
ただ、それでも390万ドルです。
ここに戻ってきます。
仮に期待したほど機能しなかったとしても、ナゲッツが負うダメージはかなり限定的です。一方でデローザンが昨季に近いパフォーマンスを維持できれば、契約額に対するリターンはとんでもなく大きくなります。
ペイトン・ワトソンを失ったことも忘れてはいけない
ナゲッツはこのオフ、ペイトン・ワトソンをキャバリアーズへ放出しています。ワトソンは昨季平均14.6得点まで成長しましたが、デンバーは新契約で合意できず、サイン&トレードでクリーブランドへ送りました。その対価として2031年の無保護1巡目指名権などを獲得しています。
つまりデローザン加入だけを切り取って「昨季のチームに平均18点の選手がそのまま追加された」と考えるのは少し違います。ワトソンという若くてディフェンスもできるウイングを失っているので、ロスター全体としては得点力を増やす代わりに別の部分で弱くなっている可能性があります。
ただ、ワトソンには4年8800万ドルの契約が必要だった一方、デローザンは1年390万ドル。さらにナゲッツはワトソンの取引で将来の無保護1巡目まで獲得しました。
そう考えるとフロントとしては、かなり大胆に「高額になる若手を資産へ変えて、その穴を安いベテランで埋める」という動きをしたことになります。この判断が正しかったかは、今季のプレーオフでかなり評価が分かれそうです。
これでデローザンが優勝したらかなり熱い
そして最後はここです。
デローザンは2009年ドラフト9位でNBA入りしてから17年間、ラプターズ、スパーズ、ブルズ、キングスでプレーしてきました。オールスター6回、通算26,711得点。個人としては十分すぎるキャリアです。
でも、まだNBAチャンピオンにはなっていません。
2016年にはトロントでカンファレンスファイナルまで進みましたが、ファイナルには届かず。その後トロントを離れた翌シーズンに、ラプターズがカワイ・レナードを中心に優勝したのはあまりにも有名です。
だからこそ、キャリア終盤で優勝候補のナゲッツへ行くという今回の移籍は、個人的にはかなり応援したくなります。
37歳。
17年目。
最低年俸。
そして隣にはヨキッチ。
これでデローザンがプレーオフの大事な場面でミドルを沈めて、最後にリングまで取ったら普通にめちゃくちゃ熱いです。
「最低年俸なら取らない理由がない」が今のところの結論
結局、僕はこの補強をかなり高く評価しています。
デローザンとヨキッチのフィットだけを考えれば、完璧ではないかもしれません。3Pを大量に撃つ選手ではありませんし、37歳という年齢も無視できない。守備面で狙われる可能性もあります。
ただし、契約は1年390万ドル。
昨季平均18.4得点。
自分でシュートを作れる。
ヨキッチが休んでいる時間のオフェンスを任せられる。
プレーオフでミドルから点を取れる。
これだけ揃って390万ドルなら、個人的には「合うかどうか試さない理由がない」と思います。
そして何より、ヨキッチの横でデローザンがどんなバスケットをするのか単純に見てみたい。
3P全盛時代のNBAで、リーグ最高峰のパサーと最後のミドル職人のような選手が組む。
これ、意外とめちゃくちゃ面白いコンビになるんじゃないでしょうか。
最低年俸で取った37歳のデローザンが、ナゲッツを優勝させる最後の1ピースだった。
シーズン終了後にそんな記事を書けたら最高ですね。笑


