ブラウンを出して36歳のPGって、普通に考えたら逆じゃない?笑
セルティックスの今オフは、正直かなりクセが強いです。
2024年の優勝メンバーで、チームの顔の一人だったジェイレン・ブラウンを76ersへ放出。見返りはポール・ジョージ(PG)と複数の指名権。さらにフリーエージェントでは38歳のマイク・コンリーJr.、ニックスで優勝したばかりのミッチェル・ロビンソンを獲得しました。
若返ったわけでも、スターを増やしたわけでもない。この再編でセルティックスは本当に強くなったのか。新ロスターと役割を整理していきます。
PGとコンリーがついにお披露目
現地9月15日、セルティックスは練習施設のオーバックセンターで新加入選手の入団会見を開きました。ブラッド・スティーブンス球団社長とジョー・マズーラHCも同席。本来はロビンソンも出席予定でしたが、私用のため欠席となり、PGとコンリーの2人が登壇しています。
トレード成立から2か月以上たっての「お披露目」。一番注目されたのは、やはりPGの体の状態でした。
PGは会見で、ここ2シーズンはケガに悩まされたものの、今は再び体調が最高で、ケガの問題はもう乗り越えたと感じている、という趣旨のコメント。セルティックスが公開したワークアウト映像でも、動きは軽快に見えました。今季の新生セルティックスにとって、ここが一番の期待材料です。
ブラウン放出、ファンの反応は「なんで?」
まず、今回出ていった選手の大きさを確認しておきます。
– 2024年ファイナルMVP
– オールスター選出5回
– 昨季はMVP投票6位、リーグ得点4位
– まだ29歳で、キャリアのピーク
そんな選手を出して、返ってきたのは36歳のPGと、1巡目指名権2つ(2028年、2031年)、2巡目指名権2つ。ボストンのファンが困惑したのも当然で、米メディアのトレード評価も「76ersの勝ち」という見方が多数派でした。
発端は、セルティックスがヤニス・アデトクンボ獲得の交渉でブラウンを交換要員にしていたことが表に出たこと。結局ヤニスはヒートへ行き、ブラウンとチームの関係にはひびが入りました。ちなみにブラウン本人はトレードを要求していなかったと報じられています。
なぜセルティックスはこのトレードを決断したのか
スティーブンス社長が7月の会見で何度も繰り返したキーワードが「optionality(選択肢の多さ)」です。
ポイントはお金と契約年数。スーパーマックス級の契約は1人でサラリーキャップの約35%を占めます。テイタムとブラウンの2人で約70%。これでは周りの補強がどうしても難しくなります。しかもブラウンの契約は2028-29シーズンまで、残り3年約1億8300万ドルという巨額でした。
一方のPGは今季5410万ドルで、来季は5660万ドルのプレーヤーオプション(選手側が契約を続けるか選べる権利)。つまり実質的に「あと1〜2年で切れる大型契約」で、シーズン途中のトレード材料にもなります。そこに指名権も加わって、将来の動き方が広がった、というのが球団の説明です。
オーナーのビル・チザム氏は「お金が目的ではない」と強調。一方でスティーブンス社長も、同じ条件なら西のチームに出したかったと本音を漏らしていて、ベストの取引ではなかったことは認めています。
PGは健康なら、まだ何ができるのか
PGの実績は言うまでもありません。オールスター9回、オールNBA6回、オールディフェンシブ4回。
昨季は出場停止処分(25試合)もあって37試合の出場にとどまりましたが、平均17.3点・5.3リバウンド。特に注目したいのがキャッチ&シュートの3Pで、1試合4.5本を41.7%で決めています。
テイタムがドライブして外へ出す、そこにPGが待っている。マズーラHCの5アウト(5人全員が外に広がる)の攻撃とは、かなり相性がいいはずです。キャリアで初めて「エースではなく役割を担う選手」として求められる、というのも新しいポイントです。
昨季プレーオフ、セルティックス相手に見せた復活
セルティックスファンにとって、PGの実力は一番よく分かっているはずです。
昨季のプレーオフ1回戦、第7シードの76ersは、56勝で第2シードだったセルティックスを1勝3敗から逆転。その中心にいたのがPGでした。
– シリーズ通算の3Pは40本中22本成功(55%)
– 実質的なシュート効率(eFG%)は61.4%で、自身のプレーオフのシリーズ史上ベスト
– 第6戦は23点、3Pは9本中5本成功
守備でもブラウンやテイタムのマッチアップで存在感を発揮。「脚さえ元気なら、まだこれだけやれる」を、セルティックス自身が一番痛い形で見せつけられたわけです。
コンリーの役割は、戦力以上にリーダーシップ
コンリーは38歳で、今季がNBA20シーズン目。ベテランミニマムの1年契約です。
役割はデリック・ホワイト、ペイトン・プリチャードに次ぐ控えPG。出場時間は限られるでしょうが、ミスが少なく落ち着いたゲームメイクで、ベンチの時間帯を安定させる役割が期待されます。
むしろ大きいのはロッカールームでの存在。コンリーはスポーツマンシップ賞をNBA史上最多の4回受賞している人格者です。スティーブンス社長は、コンリーが高校生だった頃から評価していて、当時コーチをしていたバトラー大に勧誘したこともある間柄。会見でも本人は優勝への強い意欲を語っていました。
ミッチェル・ロビンソンでインサイド補強
昨季のプレーオフで露呈したのが、センターの層の薄さでした。ケイタとガーザはファウルトラブル、ブーチェビッチも機能せず、そのブーチェビッチはマジックへ移籍しています。
そこで獲得したのがロビンソン。3年4740万ドル(3年目はプレーヤーオプション)で、昨季はニックスで60試合に出場し、平均5.7点・8.8リバウンド・1.2ブロック、FG成功率72.3%。優勝メンバーとして、リムプロテクトとオフェンスリバウンドが最大の武器です。
先発は4年5600万ドルで延長したネミアス・ケイタが有力で、ロビンソンは控えの柱という形になりそうです。
なお、この契約で「ミッドレベル例外(MLE)」という補強枠を使い切ったため、セルティックスは「ファーストエプロン」というラインを超えられない状態になりました。簡単に言うと、今季はこれ以上大きくお金を使った補強はしにくい、ということです。
テイタム中心の新しい序列
今季の最大のテーマは、アキレス腱断裂から戻るテイタムにとって、復帰後初のフルシーズンだということ。
ブラウンがいなくなったことで、チームは完全に「テイタムのチーム」になりました。過去のプレーオフ敗退では、2人のエースの噛み合わなさが指摘されることもありました。攻撃の主導権がはっきりする分、役割は分かりやすくなります。
ただし、2024年ファイナルでテイタムのシュートが入らなかった時に、チームを救ったのはブラウンでした。その「保険」がなくなったのも事実です。
ホワイト、プリチャードとの役割分担
新しい役割分担をざっくり整理するとこんなイメージです。
– テイタム:絶対的エース。攻撃の起点
– ホワイト:守備の要、ハンドリングとシュートの両立
– プリチャード:ボールを持つ時間が増え、得点役としての比重アップ
– PG:キャッチ&シュート、2番手のクリエイター、ウイングの守備
– コンリー:控えPGとしてベンチを安定させる
さらにウーゴ・ゴンザレスら若手ウイングに出場時間が回ることで、PGの負担をコントロールしやすくなるのも狙いの一つです。
年齢と怪我のリスク
ここは避けて通れません。
PGは過去7シーズン中6シーズンで出場57試合未満。過去2シーズンのレギュラーシーズン出場は合計78試合です。ロビンソンもこれまでケガの多い選手で、ニックスでも出場管理をされていました。コンリーは38歳。
レギュラーシーズンはうまく休ませながら戦えても、一番大事なプレーオフで誰かが欠ければ、一気に計算が狂う。このロスターの最大の弱点はそこです。
それでも優勝を狙える理由
それでも、セルティックスを優勝候補から外すのはまだ早いと思います。
1つ目は、昨季テイタムがほとんどいない中で56勝していること。チームの土台はリーグでもトップクラスです。
2つ目は、テイタムの復帰。エースが戻るだけで、昨季とは別のチームになります。
3つ目は、補強の弾が残っていること。PGの大型契約と複数の指名権は、シーズン途中に勝負をかける材料になります。
東はヤニスを獲ったヒート、カワイを獲ったラプターズ、王者ニックス、ブラウンが加わった76ersと強豪ぞろい。トレード直後、ブックメーカーのセルティックスの優勝オッズは下がりましたが、それでも上位グループには残っています。
結論:「強くなった」ではなく「別のチームになった」
正直に言うと、純粋なタレントだけ見れば、ブラウン放出で戦力は落ちた可能性が高いです。
ただ、今回の再編は「今季だけ」ではなく「数年単位で戦い続ける」ための形。テイタムを中心に役割をはっきりさせ、インサイドを補強し、将来のカードも手元に残しました。
カギを握るのは、やはり2つ。
1. PGが健康なままプレーオフまでたどり着けるか
2. テイタムが復帰1年目から本来の姿に戻れるか
この2つがそろえば、「ブラウンを出して36歳のPG」という一見逆に見える決断が、実は正解だったと言われる日が来るかもしれません。
開幕は現地10月20日のピストンズ戦。新生セルティックスの答え合わせは、そこから始まります🏀


