クリプトドットコム アリーナ、チェイスセンター、インテュイット ドーム。NBAのアリーナ名を聞くと、スポンサー企業の名前がそのまま入っていることに気づきます。日本であれば武道館や代々木第一体育館のような固有名詞の施設が多いので、この点はアメリカらしい特徴とも言えそうです。これらのネーミングライツは、実際どのくらいの金額で契約されているのでしょうか。今回はNBAのアリーナのネーミングライツ契約を、金額の大きい順に調べてみました。
最高額はLAの2球団、クリプトドットコム アリーナとインテュイット ドーム
現在のNBAで最も高額なネーミングライツ契約は、レイカーズとクリッパーズが本拠地としていたクリプトドットコム アリーナです。暗号資産企業のCrypto.comが2021年に結んだ契約で、金額は20年で7億ドルと報じられています。発表時はスポーツビジネス界全体でも、ネーミングライツとしては破格の金額として大きな話題になりました。
このアリーナは1999年の開業時、オフィス用品会社のStaplesが20年1億ドルでネーミングライツを獲得していました。それが2021年の契約更新で7倍の金額に跳ね上がったことになります。わずか20年あまりで、ネーミングライツの市場価値がどれだけ変わったかがよく分かる例です。
クリッパーズは2024年、インテュイット ドームという新しい専用アリーナを開業しました。会計ソフトウェア会社のIntuitとの契約金額は5億ドルを超えるとされており、クリプトドットコム アリーナに次ぐ規模の契約です。これによってクリッパーズは、レイカーズと共有していたアリーナから独立し、自分たちだけの本拠地を持つことになりました。
キャバリアーズ、ウォリアーズ、ネッツも大型契約
キャバリアーズの本拠地は、金融サービス会社Rocket Mortgageの名前が入ったロケット モーゲージ フィールドハウスです。契約額は3億7,500万ドル以上と報じられています。ウォリアーズの本拠地チェイスセンターは、JPモルガン チェースとの契約で20年3億ドルです。2019年に開業した専用アリーナで、ウォリアーズはこの契約を機にサンフランシスコへ本拠地を移しました。
ネッツの本拠地バークレイズ センターは、イギリスの金融グループBarclaysとの契約で2億ドル以上とされています。サンズの本拠地フットプリント センターも、環境関連企業Footprintとの契約で約2億ドルの規模です。この5つのアリーナだけで、ネーミングライツの契約額は合計20億ドルを超えます。ネーミングライツは放映権やチケット収入と並んで、球団にとって毎年安定して入ってくる重要な収入源の一つです。1年あたりの金額に直すと数百万ドルから数千万ドルの規模になるため、長期的な球団経営を考えるうえでも軽視できない存在だと言えます。
| アリーナ名 | チーム | スポンサー | 契約額 |
|---|---|---|---|
| クリプトドットコム アリーナ | レイカーズ、クリッパーズ | Crypto.com | 20年7億ドル |
| インテュイット ドーム | クリッパーズ | Intuit | 5億ドル超 |
| ロケット モーゲージ フィールドハウス | キャバリアーズ | Rocket Mortgage | 3億7,500万ドル超 |
| チェイスセンター | ウォリアーズ | JPモルガン チェース | 20年3億ドル |
| バークレイズ センター | ネッツ | Barclays | 2億ドル超 |
| フットプリント センター | サンズ | Footprint | 約2億ドル |
2003年時点はどうだったか、桁が1つ違う時代
こうした契約額がどれだけ跳ね上がったのかを知るには、少し昔の数字と比べてみるのが分かりやすいです。2003年時点の記録によると、当時のレイカーズとクリッパーズの本拠地だったステープルズ センターは20年1億ドルでした。マーベリックスの本拠地アメリカン エアラインズ センターは30年1億9,500万ドル、グリズリーズの本拠地フェデックス フォーラムは20年9,000万ドルといった規模です。現在の契約と比べると、ほとんどの球団で1桁違う金額だったことになります。
一方で、2003年時点でもすでにネーミングライツをつけていなかったアリーナがいくつかありました。ニックスのマディソン スクエア ガーデンは当時も今もスポンサー名を一切つけていません。1879年の初代から数えて4代目にあたり、ニックス自身の歴史と一体化した名前です。だからこそ企業名をつける対象にはならなかったのだと考えられます。ちなみに2代目は建築家のスタンフォード ホワイトが設計し、3代目は8番街にあって1968年まで使われていました。現在の4代目は、ペンシルベニア駅の真上に建つという独特な立地のアリーナです。
ネーミングライツの契約は、一般的に10年から20年単位で結ばれ、金額は1億ドルから7億ドル程度まで幅があるとされています。契約を結ぶ企業の顔ぶれにも、時代の流れがよく表れています。かつては航空会社や銀行、通信会社が中心でした。近年は暗号資産やソフトウェア、保険テック企業が名乗りを上げるようになっています。インテュイットやKaseya、Gainbridgeといった社名が並ぶ今のNBAは、10年前とはかなり違う顔ぶれです。新しいアリーナが続けて建設されたことも、契約額が跳ね上がった理由の一つだと考えられます。
FTXの破綻で、ヒートのアリーナも名称変更を迫られた
ネーミングライツには、企業側の事情で契約が途中で終わってしまう例もあります。分かりやすいのがヒートの本拠地です。1999年の開業時はアメリカン航空との契約でアメリカン エアラインズ アリーナという名前でしたが、2019年に航空会社側が契約を更新しませんでした。その後2021年、暗号資産取引所のFTXが19年1億3,500万ドルでネーミングライツを取得し、FTXアリーナという名前になります。
ところがFTXは2022年に経営破綻し、破産手続きの一環として2023年1月付でこの契約も終了してしまいました。アリーナはしばらくマイアミデイド アリーナという暫定名称で呼ばれ、同年4月からはソフトウェア企業Kaseyaとの新しい契約で、現在のKaseya Centerという名前になっています。この契約は17年1億1,740万ドルで、郡が収入の大部分を受け取り、ヒート側には年間200万ドルが入る仕組みです。わずか2年ほどの間に3回も名前が変わったことになります。ファンにとっても、観戦に行くたびにアリーナの呼び方を変えなければならないのは地味に厄介だったはずです。ネーミングライツが必ずしも安定した収入源とは限らないことがよく分かる例だと思います。
アリーナ自体の特徴は、建物ごとにかなり違う
ネーミングライツの金額だけでなく、アリーナ自体の規模や設備も球団によってかなり違います。全30チームの本拠地アリーナを比較した記事では、収容人数や音響の評判、立地なども含めて整理しています。ネーミングライツと合わせて読むと、それぞれのアリーナの個性がより見えてくると思います。現地観戦を考えている方は日本からのアクセスを比較した記事も参考にしてみてください。球団の資産価値そのものにも興味がある方は歴代球団売却額ランキングの記事もあわせてどうぞ。
まとめ
- 最高額はレイカーズとクリッパーズのクリプトドットコム アリーナで20年7億ドル
- クリッパーズの新本拠地インテュイット ドームは5億ドル超の契約
- キャバリアーズやウォリアーズ、ネッツ、サンズも2億ドルを超える大型契約を結んでいる
- ヒートの本拠地はFTXの経営破綻で契約が途中終了し、現在はKaseya Centerとなっている
アリーナの名前が変わるたびに、最初は違和感を覚えるファンも多いはずです。それでも背景にある契約額や企業側の事情を知ると、単なる呼び名の変化ではなく、球団の経営戦略の一部としてネーミングライツを見られるようになる気がします。契約の更新時期が近づいている球団も今後出てくるはずなので、次にどこがどんな企業と手を組むのか、引き続き注目していきたいです。
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