NBAのMVPはそのシーズンに優勝している?71シーズン中24回だった

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「MVPを獲るような選手って、そのシーズンは全員優勝してるんだっけ?」

ふとそんな疑問が浮かびました。少なくともプレーオフには進んでいるはず、くらいには思っていたものの、よく考えると確かめたことは一度もありません。だったら全部並べて数えてみよう、ということで、1955-56シーズンから2025-26シーズンまでの71シーズン分を調べました。

先に答えを書いておくと、全員ではありません。MVPの所属チームがそのシーズンに優勝したのは71回中24回で、割合にすると33.8%、だいたい3分の1です。残りの47回は優勝を逃していて、その中にはプレーオフにすら進めなかったMVPも1人だけいます。この記事では、その47回がどこで終わったのかを順番に見ていきます。

71シーズンの内訳。優勝できたのは3回に1回

まず数え方を決めておきます。ここでいう「優勝」は、MVPが所属していたチームがそのシーズンのNBA優勝チームになったことを指します。個人の出場状況ではなくチーム単位で見ていて、「どこまで勝ち上がったか」も所属チームが最終的に敗れたラウンドで数えました。なお、キャリア全体を通してリングに届かなかったMVPの話は別のテーマなので、今回は触れません。

結果 回数 割合
優勝 24 33.8%
ファイナル敗退 9 12.7%
カンファレンスファイナル敗退 20 28.2%
カンファレンス準決勝(2回戦相当)敗退 11 15.5%
1回戦敗退 6 8.5%
プレーオフ未進出 1 1.4%
合計 71 100%(四捨五入のため各項目の合計は前後します)

ファイナルまで進めたのは、優勝24回とファイナル敗退9回を合わせた33回で、割合にして約46.5%です。半分にも届いていません。カンファレンスファイナル以上まで広げても53回(約74.6%)なので、約4分の1にあたる18回は、それより手前で終わっていることになります。プレーオフに進めたのは71回中70回でした。

ラウンド名について一点だけ補足しておきます。1969-70シーズンまでは「カンファレンス」ではなく「ディビジョン」という呼び方でしたし、その後も1回戦がベスト・オブ・3だった時代や、上位シードが1回戦を免除される時代があったりと、プレーオフの形式は時代ごとにかなり違います。現在の16チーム制になったのは1984年、1回戦が7戦制になったのは2003年からです。この記事では、古い時代のラウンドも現在の呼び方に「相当」として当てはめて書いていきます。

優勝した24回の顔ぶれ

NBA公式が2026年6月16日に公開した記事のリストによると、MVPの年に優勝した24回は、15人・11フランチャイズに分かれています。ジョーダンとラッセルが各4回、レブロン、バード、カリーム・アブドゥル=ジャバーが各2回で、この5人だけで14回です。残りの10回は、ボブ・クージー、ウィルト・チェンバレン、ウィリス・リード、モーゼス・マローン、マジック・ジョンソン、ハキーム・オラジュワン、シャキール・オニール、ティム・ダンカン、ステフィン・カリー、そしてシェイ・ギルジャス=アレクサンダー(SGA)が1回ずつです。

ちなみにカリームの1回目、1970-71シーズンの優勝とMVPは、当時の名前であるルー・アルシンダーとして獲ったものです。名前を変えたのは翌シーズンの前だったそうです。

ここでもう少し掘って、複数回MVPを獲った選手の結果も見てみましょう。3回以上受賞した9人を並べてみました。

選手 MVP受賞 うち優勝 優勝しなかった年の結果
カリーム・アブドゥル=ジャバー 6回 2回 ファイナル敗退1、カンファレンスファイナル敗退2、プレーオフ未進出1
マイケル・ジョーダン 5回 4回 2回戦敗退1
ビル・ラッセル 5回 4回 ファイナル敗退1
ウィルト・チェンバレン 4回 1回 カンファレンスファイナル敗退3
レブロン・ジェームズ 4回 2回 カンファレンスファイナル敗退1、2回戦敗退1
ラリー・バード 3回 2回 ファイナル敗退1
マジック・ジョンソン 3回 1回 ファイナル敗退1、2回戦敗退1
モーゼス・マローン 3回 1回 1回戦敗退2
ニコラ・ヨキッチ 3回 0回 2回戦敗退2、1回戦敗退1

(1969-70シーズンまではディビジョンファイナルを含めて「カンファレンスファイナル敗退」と表記しています)

ジョーダンとラッセルは、5回受賞して4回優勝です。やっぱりこの2人は別格だな、と思います。一方でカリームは6回受賞して優勝は2回、ヨキッチは3回受賞して0回です。ヨキッチのナゲッツが優勝した2022-23シーズンは、MVPがジョエル・エンビードだった年です。ヨキッチ本人がMVPを獲った年と優勝がかみ合っていないのは、ちょっと不思議な巡り合わせです。

2回受賞した選手も含めると、複数回MVPを獲った選手は16人います。その中で、受賞したシーズンすべてで優勝した人は1人もいません。ジョーダンでさえ、1987-88シーズンは2回戦でピストンズに1勝4敗で敗れていますし、ラッセルも1957-58シーズンはファイナルでホークスに2勝4敗で負けています。「MVPイコール優勝」というイメージは、あくまでイメージなんだなと感じました。

時代別に見ると、2000年代が飛び抜けて少ない

71シーズンを、おおよそ10年ごとに区切ってみます。

期間 MVP受賞シーズン数 うち優勝
1955-56〜1969-70 15 7
1970-71〜1979-80 10 2
1980-81〜1989-90 10 4
1990-91〜1999-00 10 6
2000-01〜2009-10 10 1
2010-11〜2019-20 10 3
2020-21〜2025-26 6 1
71 24

一番多いのは1990-91〜1999-00の6回で、ジョーダンの4回に、オラジュワンとシャックが加わります。逆に2000-01〜2009-10は10シーズンで優勝が1回だけ、2002-03シーズンのダンカンしかいません。この10年のMVPのうち、優勝したダンカン以外でファイナルまで進んだのは、アイバーソン(2000-01)とコービー・ブライアント(2007-08)の2人だけです。スティーブ・ナッシュとレブロンは2回ずつMVPを獲っていますが、いずれもカンファレンスファイナルか、それより手前で止まっています。

一番古い1955-56〜1969-70の15シーズンでは、セルティックスの存在感が目立ちます。セルティックスの選手がMVPだった年は6回で、そのうち5回は優勝しています。一方で、セルティックス以外のMVPが止められた相手がセルティックスだった、というケースも多いんです。ウィルトが3回(1959-60、1965-66、1967-68)、オスカー・ロバートソンが1回(1963-64)で、計4回、MVPがセルティックスに直接敗れています。

もちろん10年ごとの数字はサンプルが少なく、ブレも大きいので、これだけで「この時代はMVPが優勝しにくかった」と言い切るつもりはありません。ただ、時代によって「MVPのチームが勝つ」という感覚がここまで違うのか、というのは数字にして初めて実感しました。

ファイナルまで行って負けた9人

優勝を逃した47回のうち、最後のファイナルまで進みながら負けたMVPは9回です。

シーズン MVP チーム ファイナルの結果
1957-58 ビル・ラッセル ボストン・セルティックス ホークスに2勝4敗
1973-74 カリーム・アブドゥル=ジャバー ミルウォーキー・バックス セルティックスに3勝4敗
1984-85 ラリー・バード ボストン・セルティックス レイカーズに2勝4敗
1988-89 マジック・ジョンソン ロサンゼルス・レイカーズ ピストンズに0勝4敗
1992-93 チャールズ・バークレー フェニックス・サンズ ブルズに2勝4敗
1996-97 カール・マローン ユタ・ジャズ ブルズに2勝4敗
2000-01 アレン・アイバーソン フィラデルフィア76ers レイカーズに1勝4敗
2007-08 コービー・ブライアント ロサンゼルス・レイカーズ セルティックスに2勝4敗
2015-16 ステフィン・カリー ゴールデンステート・ウォリアーズ キャバリアーズに3勝4敗

面白いのは、1992-93のバークレーと1996-97のカール・マローンという2人のMVPを、どちらもブルズがファイナルで下していることです。ジョーダン自身がMVPではない年でも、MVPのチームを倒して優勝しているわけです。

一番インパクトがあるのは、やはり2015-16シーズンのカリーでしょう。ウォリアーズはレギュラーシーズンで73勝9敗という数字を残しましたが、ファイナルではキャバリアーズに3勝1敗とリードしながら3連敗し、3勝1敗のリードを逃した史上初のチームになってしまいました。73勝のMVPチームでも、ファイナルで負けることはある、という象徴的なシーズンです。ちなみに、MVPがファイナルで敗れたのはこの年が最後で、以降はファイナル敗退のMVPは出ていません。

カンファレンスファイナルで止まった20回

一番多いのがこのパターンで、優勝を逃した47回のうち20回です。1969-70シーズンまではディビジョンファイナルという呼び方でしたが、ここでは同じ位置づけとしてまとめて数えています。

たとえば1967-68シーズンのウィルトは、76ersを62勝20敗に導き、ディビジョンファイナルでセルティックスに3勝1敗とリードしました。そこから3連敗して敗退していて、これがNBA史上初めて3勝1敗から逆転されたシリーズだと言われています。時代を飛んで1994-95シーズンは、デビッド・ロビンソンのスパーズが62勝20敗で西の第1シードとなりながら、前年にオラジュワンでMVPを出したロケッツにカンファレンスファイナルで2勝4敗と敗れ、そのロケッツがそのまま優勝しました。

2000年代以降にも、レギュラーシーズンでは圧倒的だったのにここで止まったMVPが何人もいます。2004-05シーズンのナッシュのサンズは62勝20敗で西の第1シードでしたが、優勝したスパーズに1勝4敗。2008-09シーズンのレブロンのキャバリアーズは66勝16敗、2010-11シーズンのデリック・ローズのブルズは62勝20敗と、いずれもイーストの第1シードでした。それでもカンファレンスファイナルで敗れています。2017-18シーズンのジェームズ・ハーデンのロケッツ(65勝17敗、西の第1シード)は、優勝したウォリアーズに3勝4敗という惜しい負け方でした。

ほかにも、2013-14シーズンのケビン・デュラント(サンダー、スパーズに2勝4敗)や、2018-19シーズンのヤニス・アデトクンボ(バックス、ラプターズに2勝4敗)も、負けた相手がそのまま優勝しています。優勝するチームがMVPのチームを倒す、というのは考えてみれば自然な流れなんですが、こうして並べてみると、レギュラーシーズンの強さとプレーオフで勝ち切る力は別物なんだな、と思わされます。

2回戦・1回戦で終わった17回

もっと手前で終わったケースもあります。カンファレンス準決勝(2回戦相当)で敗れたのが11回、1回戦で敗れたのが6回です。

2回戦で敗れた例から見ていくと、1989-90シーズンのマジックのレイカーズは、63勝19敗で西の第1シードだったのに、第5シードのサンズに1勝4敗で負けています。2001-02シーズンのダンカンは、前年王者のレイカーズにカンファレンス準決勝で1勝4敗、2019-20シーズンのヤニス(56勝17敗、イースト第1シード)は、第5シードのヒートに1勝4敗でした。2022-23シーズンのエンビードの76ersはセルティックスに3勝4敗で敗れ、この年に優勝したのは先ほど触れたヨキッチのナゲッツです。そのヨキッチは、2023-24シーズンには前年王者としてウルブズと戦って3勝4敗で敗れました。

1回戦で敗れた6回は、次のとおりです。

  • 1968-69 ウェス・アンセルド(ボルチモア・ブレッツ): 57勝25敗でイースト第1シード。当時のディビジョン準決勝、現在でいう1回戦相当で、第3シードのニックスに0勝4敗
  • 1978-79 モーゼス・マローン(ヒューストン・ロケッツ): 47勝35敗。ベスト・オブ・3の1回戦でホークスに0勝2敗
  • 1981-82 モーゼス・マローン(ヒューストン・ロケッツ): 46勝36敗で西の第6シード。ベスト・オブ・3の1回戦で、第3シードのソニックスに1勝2敗
  • 2006-07 ダーク・ノビツキー(ダラス・マーベリックス): 67勝15敗で西の第1シード。第8シードのウォリアーズに2勝4敗
  • 2016-17 ラッセル・ウェストブルック(オクラホマシティ・サンダー): 47勝35敗で西の第6シード。第3シードのロケッツに1勝4敗
  • 2021-22 ニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ): 48勝34敗で西の第6シード。第3シードのウォリアーズに1勝4敗

ここで少し注意したいのは、時代による違いです。アンセルドの年は「1回戦」という名前ですらなくディビジョン準決勝でしたし、モーゼス・マローンの2回はベスト・オブ・3という短いシリーズでした。1984年に現在の16チーム制になって以降に限ると、1回戦で敗れたMVPはノビツキー、ウェストブルック、ヨキッチの3人です。

それにしても、67勝15敗の第1シードが第8シードに1回戦で負けたノビツキーは、なかなか衝撃です。ヨキッチとウェストブルックのように、MVPなのにチームが西の第6シードだったケースも、レギュラーシーズンの勝敗とMVPの評価が必ずしも一致しないことを示しているように見えます。

プレーオフにすら進めなかった唯一のMVP

そして、プレーオフに進めなかったMVPが1人だけいます。1975-76シーズンのカリーム・アブドゥル=ジャバーです。

NBA公式の「Season Review: 1975-76」(2021年9月13日公開)によると、この年のカリームは平均27.7得点、リーグ最多の16.9リバウンドを記録してMVPに選ばれました。ただ、所属するレイカーズは40勝42敗で、プレーオフを逃しています。WikipediaのMVPのページにも、チームがプレーオフに進めなかったにもかかわらず受賞した唯一の選手、という記述があります。

カリームの6回のMVPを振り返ると、優勝が2回(1971年と1980年)、ファイナル敗退が1回、カンファレンスファイナル敗退が2回、プレーオフ未進出が1回と、結果がバラバラです。数字上は突出していても、チームとしての結果がここまでばらつくのは、個人の成績と優勝が別の話であることをよく表していると思います。1975-76シーズンの投票がどういう基準で行われたのかまでは今回調べていないので断定はできませんが、個人成績の突出ぶりが評価された年だったのだろうな、と想像しています。

直近の傾向と、SGAの2年間

最近はどうなっているのか、直近10シーズン(2016-17〜2025-26)を見てみます。優勝が1回(2024-25のSGA)、カンファレンスファイナル敗退が3回(ハーデン、2018-19のヤニス、2025-26のSGA)、2回戦敗退が4回(2019-20のヤニス、2020-21のヨキッチ、2022-23のエンビード、2023-24のヨキッチ)、1回戦敗退が2回(ウェストブルック、2021-22のヨキッチ)です。ファイナル敗退はありません。

もう少し広げると、MVPが優勝した最後の年は2014-15のカリーで、次にMVPが優勝したのは2024-25のSGAまで待つことになります。間の2015-16〜2023-24の9シーズンは、MVPの所属チームが優勝していません。直近15シーズン(2011-12〜2025-26)で数えると優勝は4回、割合は26.7%で、71シーズン全体の33.8%を下回っています。ただ、2000年代も10シーズンで1回だけでしたし、15シーズン分の数字で「最近のMVPは優勝しにくくなった」と決めつけるのは慎重でいたいところです。

そんな流れの中で迎えた2025-26シーズンが、SGAのMVP2連覇でした。連続MVPとしては14人目、複数回受賞した選手としては16人目にあたります。平均31.1得点はリーグ2位。サンダーはリーグ最高の64勝18敗で、西の第1シードとして臨みました。前年の2024-25シーズンにはMVPと優勝を両方手にしていたので、2年連続のダブル達成がかかったシーズンでもありました。

実際、プレーオフでもサンダーは1回戦でサンズに4勝0敗、2回戦でレイカーズに4勝0敗と、最初の2シリーズを8連勝で突破しました。ところがカンファレンスファイナルでスパーズに苦戦します。3勝2敗とリードしていましたが、第6戦を118-91で大敗して第7戦に持ち込まれ、2026年5月30日の第7戦は、ホームのオクラホマシティで103-111と敗れました。SGAは第7戦で35得点を挙げています。カンファレンスファイナルのMVPには、ビクター・ウェンバンヤマが選ばれました。

その後、サンダーを破ったスパーズもファイナルでニックスに1勝4敗で敗れています。ニックスは第5戦を2026年6月13日にサンアントニオで94-90で制し、1973年以来53年ぶりの優勝。ファイナルMVPはジェイレン・ブランソンで、全11票の満票だったそうです。SGAにとっては、64勝18敗のリーグ最高勝率、しかも最初の2シリーズを8連勝で駆け抜けながらカンファレンスファイナルで止まった、というシーズンになりました。MVPになって優勝できた年もあれば、圧倒的に見えても届かない年もある、というのを、この2年間で体現しているように見えます。

まとめ

冒頭の疑問に戻ると、MVPを獲った選手が、そのシーズンに全員優勝しているわけではありませんでした。71シーズンのうち優勝は24回で約3分の1、ファイナルに進んだのが33回、カンファレンスファイナル以上が53回で、プレーオフには70回進んでいます。MVPのシーズンにプレーオフを逃したのは、1975-76シーズンのカリーム・アブドゥル=ジャバー1人だけです。

3分の1という数字は、こうして数えてみると意外に低く感じます。複数回MVPを獲った16人の中に、受賞シーズンのすべてで優勝した選手が1人もいないという事実を見ると、MVPは個人賞で、優勝はあくまでチームの結果なんだな、と数字で納得させられた感じです。

来シーズン以降は、MVPの発表を見るときに、その選手のチームがどこまで勝ち上がるのかも合わせて追いかけてみようと思います。

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